No.501646

ゼロの使い魔 気ままに生きる転生者 16

竹取童子さん

・・・やっちまった・・・!独自解釈モリモリ、捏造モリモリでお送りいたしておりますッッッッッ!!!

2012-10-29 07:25:56 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5177   閲覧ユーザー数:4851

 

巨大な輸送戦車を50台、少し細工をしてから作り、そこにヴァリエールの施設軍の者達を収容した。

 

さて、帰る準備を整えたわけだが、操縦席・・・戦車の屋上の空気が最悪だ。

 

余の右隣に母上が、そして、余の後ろに絶賛意識不明中の「シロガネ」と、それを看病するニューが

 

そして、母上の視線が、絶賛意識不明中の「シロガネ」と余とニューを行き来し

 

「シロガネ」には誰だっけこいつ・・・みたいな視線を、余とニューには、お前なにやったん?・・・といった風な視線を汲められている。

 

余は「戦車」の操作で思考の殆どを使っているため無言、ニューは元から無言、母上は何か考えている様子

 

ぶっちゃけ物凄く気まずい空気が漂っている。

 

さて、あのクレーターからかなり離れたな、始めるとしよう。

 

戦車に仕込んだ術式を起動し、車内に居る(・・・・・)兵士達を全員、強制的に眠らせ、記憶を改竄する

 

改竄内容は・・・そうだな、千二千を超える亜人の群れと遭遇したのだが

 

突如落ちてきた巨大隕石が亜人達の群れの中心部に直撃した。

 

亜人達はそれで壊滅して万々歳で終わるはずが、隕石衝突による強力な衝撃は、此方側の勢力にまで被害を及ぼした。

 

本来ならそれで、此方側も壊滅するはずだったのだが、母上とニューと余の渾身の風魔法により、衝撃や爆風を何とかやり過ごした。

 

その結果、重傷者は出たものの、死者は0名、全員無事に家に帰りましたとさ。めでたしめでたし

 

とまあ、こんな所で良いだろう。辻褄あわせに隕石落としておくか。

 

座標はクレーターの中心――<メテオストライク>――発動

 

天より滑り落ちる、紅い光が、余の頭上を過ぎ去って行った。

 

「・・・む?母上、あれを。流れ星とは珍しい」

 

「あら、本当に珍しい。流れ星なんて何年ぶりでしょう」

 

「聞いた話によれば、流れ星が光っている間に願い事を三度唱えれば、願いが――」

 

未だ紅い軌跡を残す隕石を指差しながら、気まずい空気を如何にかすべしと、余の口が勝手に動きだす。

 

しかし、言い切る前に、隕石が着弾。此方まで響く轟音と振動、少し遅れて衝撃による強風が吹き荒れた。

 

「≪術式起動 対物魔法障壁展開 形状 ワイド ―――衝撃到達 衝撃無効 損害ゼロ オーダーの遂行を再開します≫」

 

かなり離れた余の場所にも衝撃が届いたが、ニューが衝撃を無効化してくれたため無事に走行を再開した。

 

そして気まずい空気再び・・・

 

ひたすら速度を上げつつ、時速400リーグ程に達しようと云うところで、ヴァリエール家の訓練所その1に到着したのだった

 

屋敷に到着した頃には既に日は沈み、夜が更けていたので、母上との「お話」は翌日の朝食を終えてからと云う事になった。

 

ああ、眠い。6歳の身体ではさすがに夜更かしはキツいな。

 

 

 

 

翌朝 ヴァリエールの屋敷 会議室その1にて

 

「約束通り、貴女とニューの魔法について、話してもらうとしましょう」

 

約束の通り、話すのは吝かではない

 

数瞬の間を置いて、整理した伝えるべきことを話す事にした。

 

「まずは、そう――端的に言えば、異世界の技術をこの世界で再現し、使えるようにアレンジを加えたものが、あの魔法である」

 

まずは、事実のみを話す。

 

そこからとある実例を参照し、真実から遠ざけるように

 

「始めに「異世界の技術」に興味を持ったのは「召喚されし書物」を読んだ時の事。その本に描かれていた内容は所謂『異世界の図鑑』のようなものだった」

 

因みにこの世界で始めて読んだ召喚されし書物は「テイルズ オブ イノセ○ス」の攻略本で、少し微妙なテンションになったのはいい思い出である

 

本来なら片手で扱う剣である「フランベルジュ(赤い刀身を持つ剣)」や「ヴォーパルソード(青く透き通る刀身の剣)」を、両手剣サイズで打ってみたり

 

身の丈ほどの大きさの「エターナルソード(時を越える剣)」を創ってみたりもした覚えがある。

 

閑話休題(それはともかく)

 

「その本には興味深いことが書いてあった。そしてこの世界にも、それが存在する可能性が高いという結論に至った」

 

その「存在」とは即ち

 

「既存の系統、火、水、風、土・・・それ以外の属性が存在する可能性。そして余は、その存在を見つけたのだ」

 

エルフの民も、四大系統の属性と精霊しか認識できていない可能性がある。

 

他の亜人も同じく、余の確認できる、此方側の記録では、四大属性の魔法しか行使していなかった。

 

使っていないだけで、認識自体はされているのやもしれんが、今は置いておこう。

 

「つまり、それ以外の系統属性が存在すると言うのですね?」

 

「然り。火、水、風、土、雷、氷、光、闇、元素、時、音・・・この程度しか観測できなかったが、他にも在るだろうと、余は予測する」

 

「そして、それに順ずる精霊も存在する、と」

 

「然り。ただ、四大属性のみが使われ、他の属性の精霊達は忘れられている。故に、その精霊達の存在が薄れてきているやもしれん」

 

ブリミルの時代から6000年以上の月日が流れていても、未だに様々な、魔法を含めた技術が進歩していないのは

 

時の精霊の力が薄れ、「停滞」が深まってきている所為でもある可能性が高い。

 

それはともかく

 

「精霊とは「概念」と云う情報の塊のようなものであり、それが忘れ去られることで「存在意義」が消滅する。それは即ち、精霊そのものの消滅を意味するのだ」

 

その世界からは・・・な

 

「属性を司る精霊は、世界の理を支える存在である。故に、その存在が消滅すれば、人はおろかあらゆる生命が死に絶える。故に余はそれを防ぐための、その一段階目として、とある事をした」

 

「それが、あの魔法であると?」

 

「否、そうではない。もっと簡単で、しかし最も重要な事……「名」を余が観測した精霊達に付けた」

 

「火を司る――イフリート」

「水を司る――ウンディーネ」

「風を司る――シルフ」

「土を司る――ノーム」

元素(虚無)を司り、四大の長である――マクスウェル」

「雷を司る――ヴォルト」

「氷を司る――セルシウス」

「光を司る――レム」

「闇を司る――シャドウ」

「時を司り、過去現在未来を識る精霊の王――オリジン」

「音を司る――ローレライ」

 

目に見える現象を発生させる属性は、よく解るよう、指の先に火種などの小さな属性の特徴を灯し、名を述べ終えると同時に掻き消した。

 

「―――こう云った具合に名を付け、精霊とこの世界とのつながりを強化し、異世界より召喚された書物を読み漁り、あの魔法を創り上げた」

 

「では、召喚されし書物を集めていのはそのための資料集めであった、と。ですが、当時貴女はまだ・・・いえ、今更ですね」

 

3歳、4歳の時点で精霊の存在に気付いていた、と言うのは流石に異常ではあるが、それ以上の「異常」を見ている為、感覚が麻痺してきているのか。

 

「うむ、そうして出来上ったのが「演唱魔法」と言う、想いを「()」に変え、「()」を紡ぐ事で「詠唱」とする」

 

まあ、余の趣味が多分に入っている上、即席で不完全だったために、威力は本来のそれより大きく劣る結果になったのだが・・・

 

「新しい体系の魔法の一つにして、現在余に出来得る技術の集大成の一つでもあるのだ。まあ、ロマリア辺りがこの話を聞けば、異端だ何だと喚き散らすだろう、故に」

 

「何か考えが有るようですね・・・もしや、もう既に手は打って在るとか?」

 

まあ、此処まで言ってしまえば、よほどの痴れ者で無い限り気付くか

 

「然り。余と母上とニュー以外の記憶を改竄し、『戦闘に入ろうとしたが、敵軍ど真ん中に隕石が振ってきていろいろあって如何にかなった』という記憶に書き換えさせてもらった」

 

外道のような行いでは在るが、ありのままを上に報告して、余計な騒ぎを起す必要は無いからな・・・とつぶやくように付け足した

 

その呟きが聞こえたのか、母上は複雑な表情で「そうですか」と答えた。

 

「今回余が使った魔法はそんなところか。他も多々在るのだが、事細かく話すには時間がかかりすぎる故、割愛させてもらう。秘奥を容易く漏らすのもあまり良くないのでな」

 

「・・・まあ、良いでしょう。まだ問わねばならない事があります。そう、貴女が何処かから連れて来た、未だ意識の無い青年の事を」

 

そういえば、家に連れてきて、客室に寝かせたは良いが、母上にも父上にも、何も言っていなかったか。

 

「あ奴は恐らく、異世界からの漂流者と云う存在であると推測する。余が発見した時、この世界ではありえない技術を持っていた故な。いずれもとの世界に帰してやらねばなるまい」

 

何せ余のミスと、少しの偶然で、この世界に引きずり込んでしまったのだからな

 

「それまで貴女が面倒を見る、と?」

 

「うむ。詳しい理由は調べねば解らぬが、余が原因の一つであることは既に確定している。故に余がその責任を負わねばなるまいよ」

 

原因の一つは、演唱魔法の砲撃の時、圧縮された高密度の力が炸裂するさい、空間に作用し、少しとは言え時空を歪ませてしまったことである。

 

「消滅する寸前」なのか、「呼ばれる前」なのかは、彼奴の意識を覚醒させてからでなくては解らぬ。

 

「……はぁ……解りました、貴女が其処まで言うのでしたら、もはや何も言いません。ですが、其処まで言ったからには、最後までやり遂げなさい。途中で投げ出すことは赦しません。いいですね?」

 

「承知した。余の全力で事に当たるとしよう・・・と云う訳で、早速彼奴の様子を診て来る」

 

そう、全力で・・・な―――

 

「……本当に大丈夫なのかしら……」

 

不安がる母上を他所に、様々な思考を走らせつつ、会議室から一旦自室に戻り、「ネロの赤ドレス」に着替えてから

 

「シロガネ タケル」が眠っている客室に向った。

 

 

 

未だ眠り続ける「シロガネ タケル」の様子を診つつ、今後の方針を組み立てる

 

押し付けられた廃墟の村と土地の復興についてだが、今日の朝食の時、父上にGOサインを貰ったので何時でも行ける。

 

準備はもう既に出来ており、あとは向うだけなのだが、恐らくは一日二日では帰れないだろう事が予測できる。

 

何故なら、最低限の「拠点」を創らねばならないからだ。

 

連れて行く者は、ニューとアンナと、不確定要素である「シロガネ タケル」のみである。

 

移動手段も全て余が前もって準備しているため問題は無い。

 

ゆえに、「シロガネ タケル」の意識が戻るか、三日以内に出発できる。

 

これに関しては問題は特に無いであろう。

 

次に水の精霊の依り代だが・・・これも近いうちに届けるのが吉か。

 

水の精霊の涙の定期的な供給は早めに開始しておいたほうが良い。

 

一応の完成はしているものの、納得できる出来映えではないのが少し引っかかるが、後で改良すれば良いのだ。

 

これは、廃墟の復興が軌道に乗ってから、もしくはひと段落ついてからにするべきか。

 

ニューのアップデートは水中での機動性と、航空戦闘能力の向上にしよう。あと、通常形態での武装の追加も視野に入れよう。

 

余の技能習得については、しばらくは既存の技能の研磨と応用の練習と云った所か。

 

そろそろメインとなる戦い方も編み出して効率化してみるのも有りだな。

 

あと、余の外見の原典である彼の皇帝の衣装ではなく、余だけの戦闘衣装の作成もしてみたくはある。

 

・・・まあ、何をするにも、件の場所へ行ってからの話か。さてさて、どうなることやら

 

「うっ・・・」

 

不意に、ベッドの上から男のうめき声が聞こえた

 

「≪対象の意識レベルの上昇を確認 対象の意識が覚醒します≫」

 

―――さてさて、どうなる事やら・・・

 

 

 

「―――っ俺…は…ッ…!」

 

ベッドに横たわっていた青年が目を覚まし、身体を起した。

 

何かを確かめるように、何かを思い返すように頭を抱え、物思いにふけるかのようにしているが

 

残念ながらそれは後にして欲しい。

 

気配を消してコッソリと耳元に近づき、息を吹きかけつつ

 

「―――ぅおはぃようぅ」

 

朝の挨拶を一つ、挨拶は大事である。初対面ならなおさらに。

 

ただし今の余の声は 若 ○ ヴ ォ イ ス である

 

「ッヅォ!?」

 

部屋に響く奇妙な悲鳴・・・まあ、仕方ない。

 

耳元に息を吹きかけられつつ○本ヴォイスで声をかけられれば誰だって驚く。

 

余だって驚く。ついつい悲鳴をあげつつ恥も外聞も無くカリスマガードをしてしまいかねないほどに。

 

一番下の姉上の爆発魔法?あれは何処で爆発していようが音が聞こえれば余は無条件でカリスマガードに移行する。

 

これについては異論は認めん、断じて認めん、余が法である、黙して従え。

 

・・・雑念が入ったか、思考を元に戻すとしよう

 

椅子に座りなおし、落ち着いて会話ができるように佇まいを直す。

 

「すまぬ、少しおふざけが過ぎた。改めて――」

 

あれ、何か違和感が・・・余の声、こんなに図太かったか・・・?

 

「お嬢様、お声が元に戻っておりません」

 

自分の声に違和感を持っている余の後ろに控えたアンナから、その違和感を指摘された。

 

――おやうっかり、通りで図太い声だと思った

 

「んっんんっ―――あ~あ~・・・よし、では改めて、おはよう」

 

元の声に戻し、今度こそちゃんとした挨拶をする。

 

「えっ、ああ、おはよう・・・?」

 

未だ状況を良く把握できていない様子、仕方ないといえば仕方ないか。

 

「うむ、よろしい。さて、そなたは色々と状況がつかめていない様子。事情を説明するのは構わんのだが、まずは名前を交換しようではないか。」

 

一拍を置いて

 

「余はネロ 『ネロ・ド・ラ・ヴァリエール』 本当はもっと長い名前なのだが、「ネロ」と呼んでくれれば良い」

 

「余の後ろに控えているのは、余の教育係の「アンナ」」

 

シロガネ タケルが余の後ろに控えているアンナに視線を向け、アンナはその視線に答えて一礼をする

 

「そして余の隣に居るのが「ニュー」と言う」

 

同じくニューに視線を向け、ニューもその視線に答えるように一礼した

 

「では、そなたの名を聞こう」

 

既に名前はドッグタグを見て知っているのだが、こういうのは相手の口から直接聞いておくべきである。

 

そうして自分達の自己紹介を終え、「シロガネ タケル」の自己紹介を促す

 

「俺は、「白銀 武」。「タケル」って呼んでくれて構わない・・・ってそうじゃない、一体此処は何処なんだ?」

 

まあ、妥当な問いではある。

 

「トリステイン王国、ヴァリエール公爵領に在るヴァリエール家の屋敷の客室……と言っても、そなたには解らぬだろう、何せ、そなたからすれば此処は異世界なのだからな」

 

何せ、地球ですらないのだからな

 

「・・・・・・マジで?」

 

余の言葉に、驚愕と困惑の表情を浮かべる「タケル」

 

「子供の戯言と思って一笑に付すのは構わんが、事実だ。丁度その窓から見えるだろう?二つの月が」

 

窓越しに沈まない二つの月(・・・・・・・・)を指差し、事実であると証明した。

 

「・・・なっ・・・」

 

余の指した指の先を辿り、空に浮かぶ二つの月を見た「タケル」が有り得ないものを見たと言わんばかりに絶句する

 

―――かなりまいっているな・・・まあ、行き成り「遠い」世界に来たのだ、無理も無い。

 

・・・が、それ故に聞いておかねばならぬことがある。

 

「この世界にくる直前、何があった?覚えている範囲で良い、余に話してみよ」

 

「………俺は――」

 

タケルは、ぽつりぽつりと、思い出すように、かみ締めるようにして語りだした。

 

あいとゆうきのおとぎばなし・・・その一部分を

 

曰く、此処に来る前にも、気付けば自分がもと居た世界とは似て非なる世界に居た

 

曰く、その世界ではBETAと言う人類の敵が出現し、それに抵抗していた

 

曰く、闘って繰り返して戦って繰り返して戦い抜いて、最後には一つの目標を打ち倒したが、それは同時に―――

 

「―――なるほど、そうして恩師と仲間に見送られ、気付けば此処に居た、と」

 

「本当なら、元の世界に戻るはずだったんだけど、如何云う訳か目覚めたら此処に居たんだ」

 

成る程、終わった後の(・・・・・・)白銀 武か―――しかし・・・

 

「・・・ふむ、少し、そなたの身体を調べさせてもらっても構わんか?なに、痛くはしない……ムフフ」

 

両手の指をちょっと洒落にならないくらい生々しくワキワキと動かし、ベッドで上半身を起した状態のままのタケルに近づいてゆく

 

じわじわと、怪しい笑い声と共に、ゆっくりと近づいてゆく

 

「……えっちょっま――」

 

逃げ出そうとするタケル。しかし甘い。この部屋には余とその仲間しか居ない

 

「ニュー、アンナ、やっておしまいなさい」

 

無慈悲にもアンナとニューに、逃げ出そうとしているタケルを抑えるように命令を下した

 

「≪『諒解(アラホラサッサー)』≫」

 

「はい、お嬢様――申し訳ございませんタケル様。ネロお嬢様の命令が出た以上・・・うふふ」

 

なんだかんだでノリの良い一人と一体。

 

ニューもノる事を覚えたようで何より。

 

さてさて、軍人となり鍛えたとは言え、それでも人間としての範疇を超えていないタケル

 

対して、元の姿が韻竜のアンナと、余が改良に改良を加え、腕力のみを見るならば人間の範疇を軽く超えているゴーレムのニュー

 

結果は見るまでも無くタケルの捕縛で終わる。

 

「知らなかったのか?余からは逃げられない」

 

「いったい何処の大魔王様!?・・・ってアッ――!!」

 

 

 

                            四女様検査中(なうろーでぃんぐ)・・・

 

 

 

「・・・ふむ、成る程、そういうことか」

 

タケルの顔、首、上半身をペタペタと触診し、最後に手を調べる

 

此処までで解ったことといえば、外見の年齢に似合わず鍛え抜かれている、と云うのがまず一つ目

 

これは物理的な側面で診ただけに過ぎないため、このくらいの身体の持ち主なら、この世界にゴロゴロ居る

 

次に、霊的、存在概念的な側面を診た場合、まず有り得ない事になっている。

 

「ああ、もう良いぞアンナ、ニュー、離してやるが良い」

 

触診が終わり、抑えておく必要が無くなった。

 

いつまでも抑えていては疲れるだろうと、ニューとアンナに開放してやるように言う。

 

「≪諒解≫」

 

「・・・畏まりました、お嬢様」

 

ニューは素直に離れ、余の隣に戻り、アンナはなんと言うか、名残惜しそうに離れて世の後ろに控えた

 

「――さて、タケル、そなたの言う元の世界・・・平和な方の世界へは、おそらく帰る事は出来ん」

 

余はタケルに対し、絶望的とも言える結果を述べる。何故なら此奴は―――

 

「―――何、で・・・!」

 

「そなたはいったい幾度死んだ?どれだけ絶望した?何度繰り返した?」

 

「失敗した世界」の「シロガネタケル」と言う存在が集まって形をなした存在なのだから

 

そうなったのは恐らく、最後の作戦で仲間の殆どを死なせてしまった事にある。

 

元の平和な世界に戻る際、そういった未練が、「失敗した世界」シロガネタケルの残滓に対する呼び水となり

 

「成功した世界」での「記憶」を核として、「シロガネタケル」と言う存在を、戦術機と共に再構成したのだ。

 

身近な仲間、友を生還させたいという願いを叶える為に。なにより「彼女」を再び失わないために

 

「さっき話した通り、三度・・・のはず」

 

「覚えていないだけで、何千何万何億と繰り返されていたのうだろう」

 

おぼろげでは在るが、同一の時間軸で別の人を愛していた記憶が幾つも存在するはずである。

 

「――ッ――!」

 

「成功したそなたの「未練」を核として、他のループ世界の残滓が寄り集まり再び形をなしたのが、今此処に居るそなただ」

 

タケルから息を呑むが聞こえてくる。が、気にせずに続ける。

 

精神的にかなり負担をかけてしまうが、知っておかなければならない前提知識でもある故に。

 

「肉体的、筋力的に「偏り」は無い。おそらく、幾多の世界での鍛錬の結果を引き継ぎ、かけた部分を補っているからであろう。高水準で維持されている」

 

それはもう、数値で測ったかのように均一で、しかも、人間の限界値丁度で維持されている。

 

「しかし、そなたの精神面、記憶面や、そなた自身の「魂のカタチ」と言うべきものが、何時乖離してもおかしくないほどツギハギだらけに見えたのだ」

 

かなり不安定で、すぐにでも応急処置が必要だったほどに。

 

過去形なのは、触診の時に既にできることを済ませたためだ。

 

「――なら、俺はこのまま消えるしかないってのか・・・!」

 

自分が偽物だの、消えるかもしれないだのと言われて焦らない者は居ないか。

 

だが、タケルの目には、諦めの感情が見えない。むしろ、「消えない」と断言するような強い想いが篭っているようにも思える

 

なるほど、存在自体は残滓に過ぎなくとも、その想い、その意思は紛れも無く本物である、と・・・

 

もう一度地獄の戦場に舞い戻り、友や仲間を救いたいというその渇望、存在の性格上歪では在るがなかなかに良いモノを持っている

 

「否、そなたは消えん――消えさせはせん。本格的な治療は大掛かり過ぎて此処では出来んが、既に応急処置は済ませているのでな。推測にすぎんが、今の状態でも30年は消えずに存在し続けられるだろう」

 

「――えっ」

 

物理的な意味での治療は必要ないからな、魂とかそういった類の治療であるが故に、手術などの行動は必要ないのだ。

 

「応急処置の内容は、今のそなたでは理解できぬだろう。故に、寿命が30年延びたとでも思っておくが良い」

 

「は、はぁ―――えっ、今は?」

 

おや、如何したというのだ、そんな間の抜けた表情で・・・余は何かおかしいことでも言ったか?・・・ふむ

 

「よもやそなた、余のような六歳児の小娘の脛を齧って自分はのんびり暮らすなどと云う、在る意味この世界で始めての勇者になるつもりか?」

 

「誠心誠意学び、働かさせてせていただきます」

 

ベッドの上で土下座の姿勢に移行しながら即答するタケル。

 

6歳児に土下座は如何かとも思うが、その誠意には報いねばなるまい。

 

余も精一杯此奴を鍛えるとしよう。それが余の誠意でもあるのだから

 

「よろしい。ならば鍛錬だ、と言いたい所であるが、今日はもう休むが良い、限界も近かろう?」

 

応急処置とは言え、魂を弄ったのだ、肉体的には大丈夫であっても、他の面にはかなり負担が掛かっているはずである。

 

このまま無理して起き続けていると、最悪精神的に死ぬ可能性も出てくる。

 

「いや、全然大丈夫だぞ?」

 

だというのに此奴は・・・!

 

「死んでも知らんぞ。今のそなたは、所謂致命傷の治療を終えてすぐの状態と大差無いのだからな」

 

それが肉体か魂かの違いであるだけで・・・むしろ、魂の方が危うい。

 

「……マジ?」

 

「ああ、故に――ニュー、ヤれ。アンナ、行くぞ」

 

「≪諒解≫」

 

「畏まりました。ではタケル様、お休みなさいませ」

 

「えっ」

 

寝かしつけるよう(・・・・・・・・)、ニューに命令し、アンナを従えて部屋の外に出た

 

「≪――スリープクラウド≫」

 

スリープクラウドの煙が部屋に充満した。

 

「ちょ――zzz」

 

その煙をタケルが吸い込み、否応無く睡眠状態になる。

 

何故否応無く寝かしつけることを選んだのか、理由は複数ある。

 

一つ目は先ほど説明したとおり、手術の後はかならず安静にしていなければならないと云う事

 

二つ目はできる限り父上とあわせてはならないと云う事。何故なら十中八九父上が暴走するからである。

 

暴走した結果どうなるかは・・・な

 

 

 

 

「≪対象の睡眠を確認≫」

 

遅れて出てきたニューが、タケルを確実に寝かしつけた事を余に報告してきた。

 

――あと一日とは言え、どこぞのモノクル親父が暴走したり、御転婆ピンク幼女が悪戯しにきそうだな・・・

 

いくつか手を打っておくか。

 

「ニューはこのままタケルの看病と護衛をせよ」

 

「≪命令 認識 承認 諒解≫」

 

再びタケルの寝ている客室の中に戻っていくニュー

 

閉まったドアに細工を施す。

 

細工と言っても、ドアに看板を書けるだけである。

 

その看板に書いてある内容は・・・・・・

 

我ながら恐ろしい刑を考えたものだ・・・!

 

自身の考えた所業に軽く戦慄していると、廊下の突き当たりからルイズ姉様が歩いてきた。

 

姉上も余の存在に気付いたのか、トテトテと小走りで近づいてくる。

 

――珍しい、客室が並んでいるこの廊下は、姉上の行動範囲から大きく離れているはずなのだが・・・

 

「ネロ、こんな所で何をしているの?」

 

「もう特に何もしておらぬよ、しいて言えば、看板を掛けたくらいか」

 

廊下(こんな所)では・・・な

 

「『ニュー、アンナ、母上、余以外の立ち入りを禁ず。禁を破りし者 永久脱毛の刑に処す』・・・何これ、駄目じゃないこんな悪戯しちゃ・・・まさか部屋の中に何か悪戯していないでしょうね・・・?」

 

看板のことを勘違いしたのか、悪戯を咎めるような口調でそう言った

 

だがあえて言わせて欲しい。

 

「・・・姉上がそれを言うか、つい先日も悪戯が母上にばれてこってり絞られた姉上が・・・」

 

7歳、御転婆盛りのお年頃である姉上は、かなりの頻度で悪戯を繰り返し、母上に怒られる

 

そんな姉上が、余に悪戯をしてはいけないと咎めた。まさに「お前が言うな」である。

 

「・・・怪しいわね、部屋に悪戯をしていないか、貴女の姉である私が確かめなくちゃ・・・!」

 

あっ、聞いてない。それに、何か悪戯を思い付いた顔をしている・・・

 

「言っておくが、今この部屋に入ったらドアに掛けて在る看板に書いてある通りの罰を執行することになるが、構わ<<ガチャッ>あら、ニューじゃない。其処にな眠っているのは誰?>・・・って」

 

既に入っとるぅぅぅ!?

 

―――仕方ない、ヤるか

 

確りと看板を見て、口に出して読んで、その上で入ったのだ

 

・・・まあ、悪戯と思って入ったのだろうから、流石に髪の毛を永久脱毛させるなどと言う鬼畜にも程が在る所業はせぬが・・・

 

ふむ、脇と下の毛の可能性とおさらばしてもらうとするか―――さて<毛根を斬滅> そして瞬時に水魔法で傷を塞ぐ

 

気付けたならほんの一瞬だけ、ものすっごく注意していればピリっとするだろうが、余が何をしたのかは、誰にも気付かれない。

 

・・・まあ、将来気付くまで伝えないで置こう。そのほうが面白そうだ。

 

いや、そんな事をしている場合ではない。今にもたたき起こしそうな勢いの姉上を止めなくては・・・!

 

「姉上、其奴は遠い所から来た余の友人でな、かなり危ない状態だった故に、余が直々に治療して寝かせているのだ。そっとしておいてやってくれ」

 

「・・・むぅ、ネロが其処まで言うのなら・・・」

 

余の説得が功を成したのか、姉上は少し拗ねた様子で部屋から出た。

 

余とアンナも姉上に続いて部屋を出る。

 

ついでにロックを5重に重ね掛けし、パズルのように組み合わせ、外からは余でなければ開けられないようにしておく

 

「―――ところで姉上は何故此処に?」

 

「・・・あっ」

 

えっ・・・もしや

 

「・・・本来すべきことを忘れ―――」

 

「なななな何ををいいいい言っているいるのかわわわ――」

 

余の指摘を言い切る前に姉上が慌てて否定する・・・図星か、図星なのだな

 

「・・・姉上ェ・・・」

 

「な、何よ!忘れてないんだから!えっと・・・そ、そう、貴女に用事があったのだけれど、悪戯を咎めていて言いそびれただけよ!」

 

・・・ふむ?言いそびれた・・・と云う事は、余に何か用事があるのだろうか?

 

「ほぅ、余に用事とな?よろしい、では用件を聞こうではないか」

 

その用件を覚えているのなら、という条件は付くが・・・

 

「母様に『貴女魔法が使えないのだから、何か別の身を護る物を貰うか学ぶかして来なさい。丁度私より適任の者も居ることですし』って言われて、紹介されたのが貴女だったのよ・・・と言うわけで何か無い?」

 

・・・えぇぇぇぇー・・・丸投げか母上ェ・・・

 

公爵家且つ魔法が制御不能の爆発魔法のみでは、確かに身を護る術が無いに等しい。

 

「護身、護身か・・・ふむ、いくつかありはする・・・しかし」

 

姉上の顔を確りと見据える。なんと言うか、表情を見ると、余の「知識」からのび太君と言う文字が出てきて、とてつもなく不安を煽る。

 

もし授けるなり学ばせるなりしても、護身の範疇を超えて無駄に振るいそうなのだ。そう、例えば悪戯等に使いそう。

 

しかし教えるなり学ばせるなりしなければ、姉上に危険が降りかかる確立が大幅に上がるのだろう・・・うーん・・・あっ

 

良い事を思いついたぞ!

 

「・・・まあ良かろう、しかし、此処では少々狭すぎる。訓練場へ行くぞ、「劇場」の無い方だがな」

 

「解ったわ」

 

真面目な事は素直に言うことを聞いてくれるのだが、ちと悪戯の規模が・・・なあ・・・

 

そんな事を思いながら、姉上(ルイズ)とアンナを引きつれ、訓練場に向った

 

 

 

 

 

 
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