これはまだデジタルワールドがゾーンに分かれていた時の物語。キサキはデジタルワールドで出会ったデジモン達とデジタルワールドを回っていた。といっても、コードクラウンは集めない、ただの観光のようなものである。そして彼らは今「エウレストゾーン」に来ている。
「♪~~~。」
デジモンと同様に彼に付いて来ている少女は楽しそうだが、キサキは全然面白くない。
「しかしつまらんところじゃのぉ。」
何もない周りの様子を見ながらエクスブイモンは言った。さっきからずっと歩いているのだが、一向に何も見えてこないのだ。
「ねえねえキサキ、次はどうする?」
キサキは自分に付いてくるショートブロンドの少女を見ながら思った、なんでこんなに元気なんだ、と。
「確か”し”だったよな。なら”白洲”。」
キサキは素っ気なく言った。
「じゃあスキンケア?」
少女がこう言ったところで、
「だからアリシア、なんでそこまで元気なんだよ?」
キサキは少女「アリシア」に訊いた。
「たく、いくら”しりとり”だからって、変な事思い出させることばかり言いやがって。」
キサキがこう言うと、
「ええ、別にいいじゃん、キサキは私の未来の妻なんだから。」
アリシアはこう言った。
「せめて夫と言ってくれないか、一応男なんだけど。」
キサキが言うと、
「うんうん、やっぱり可愛いよキサキ。」
アリシアはキサキに密着しながら言った。キサキは何も起こらない事で頭に来たのと、アリシアの割と豊満な胸の感触の為、頭に血が上っていた。
そしてそろそろ怒ろうか、と思った時、どこからか喧噪のような音が聞こえてきた。
「ん?どうしたの?」
「静かに!!」
顔を覗き込んできたアリシアを制して、キサキは耳をすませた。結果、その喧騒が近づいてきている事が分かった。
(この喧噪は祭りか何かじゃない。まるで戦争をしてるような)
キサキがこう思ったと同時に、どこからか武装したデジモンが数多く現れ、それぞれ戦い始めた。
「ええ?なに?!」
アリシアが驚くと同時に、空の上から何かが降って来た。それも爆弾ではなく、
「島だ!島が降ってくる!!」
キサキが叫んだとおり島である。その島が地面に着くと同時に、キサキ達は巻き上げられてどこかへと飛んで行った。
「ツツツ、痛ってえ。」
キサキが目を覚ますと、剣道の面のような物を身に着けた小竜型デジモンと、丸っこいデジモンが顔を覗き込んでいた。
「大丈夫?ケガはない?」
面を身に着けたデジモンはキサキが目覚めると、すぐさま訊いた。
「ああ、大丈夫。お前らが助けてくれたの?」
キサキはこの場にいたデジモンに訊いた。
「そうだよ、僕はコテモン。」
コテモンはこう答えた。
キサキは、すぐさま周りを見渡した。すると、
「いてて。」
「何だったのよ本当に。」
近くには「ギルモン」と「チョ・ハッカイモン」が居た。そして自分の近くにオレンジのクロスローダーが落ちているのを見つけた。
(もしかしてアリシアとクロスローダーが入れ替わった?)
キサキはこう思うと、
「サンゾモン!サンゾモンはいる!?」
とクロスローダーに呼びかけた。
「はい!サンゾモンはここに!」
クロスローダーから声がすると、中から僧服を来た美しい女性型デジモン「サンゾモン」が出てきた。
「どうやらアリシアとはぐれたようで、他の仲間がどこにいるか分かる。」
キサキはサンゾモンに訊いた、
「どうやら、ここにいるのはアリシアのクロスローダーの中のデジモンのようですね。」
サンゾモンが少し目をつむって数珠を触りながら言うと、遠くからアリシアを探して「ゴクウモン」「サゴモン」が現れた。
「これで集まってないアリシアのデジモンは、ボコモンとネーモンか。」
キサキがこう言った時、遠くからにぎやかな音を立てて巨大な乗り物がやって来た。
「こりゃまた賑やかな。」
「何だ?祭りでもやってるのか?」
チョ・ハッカイモン、ゴクウモンが近くにいたデジモン達に訊くと、
「ううん。」
コテモン達は俯きながら否定した。すると、
「ウォオオオオ!!」
どこからか獣のような叫び声が聞こえた。見ると、獣型のデジモンの多くがこちらに走ってきている。
「わあ!ビーストデジモンだ!!」
コテモン達はこう叫んだ、
(ビーストデジモン?)
キサキは疑問を感じたと同時に思い出した。デジモンによっては環境によって人の姿を取るものと、獣の姿を取るものがいて、まれにではあるが両方の姿を持つデジモンがいると言う事を。確かにコテモン達は人型であり、やって来たデジモンは獣の姿をしている。
「ビーストデジモンめ!よりにもよってこんな時に!!」
また他の場所からは、背中に大剣を背負ったトカゲの姿をしたデジモン「ディノヒューモン」が現れた。
ディノヒューモンと付いてきた仲間のデジモンは、次々と敵を斬り伏せたが、最後に残った一匹が自爆したことで、ほとんどのメンバーがやられてしまった。
「みんな!仲間の仇を取りに行くぞ!!」
ディノヒューモンは残ったメンバーにこう言うと、町の外へ向けて走って行った。
「待ちなさい!」
すると、赤い装備を身に着けた天使型デジモンが皆を呼びとめた。
「憎しみの連鎖は何も生まない。」
「ダルクモン様!これ以上ビーストの悪行を見過ごすわけにも!」
ダルクモンと呼ばれた天使デジモンの言葉を、ディノヒューモン達は聞かないで飛び出していった。
ダルクモンは近くに落ちていた、戦死した兵士の装備を持ち上げると、
「皆の者!!犠牲になった仲間に祈りをささげるのだ!!」
と、皆に言った。
その様子を見ていたキサキ達は、
「何だ?バグラ軍と戦争してるのか?」
と、コテモン達に訊いた、
「ばぐらぐん?なにそれ?」
コテモン達がこう言ったのはともかくとして、
「僕の仲間たちはここの反対側に住んでいるビーストデジモンと争ってるんだ。」
というコテモンの話を聞いたキサキ達は、
「バグラ軍が各地を侵攻して大騒ぎって時に内乱って?どんだけ平和なんだよ?」
と言った。その時キサキの目に、大きな鳥のような生き物の像が目に入った。
「所であれなに?」
と訊いたところ、この辺りで守り神として崇められているデジモンの「オニスモン」だという。
「そうだぞい!!」
その時、キサキの見ていた像の裏から、ボコモンとネーモンが現れた。
「そしてあれを見るぞい!!」
ボコモンが指差した先には、巨大な壁に赤い竜型デジモンと青い獣型デジモンと一緒にオニスモンが描かれている絵があった。
「あれは竜型のが「エンシェントグレイモン」獣型のが「エンシェントガルルモン」かつてデジタルワールドに君臨した究極のデジモンだぞい!」
ボコモンは勢い込んで説明したが、
「ここの話は?」
ネーモンに突っ込まれて、
「おお、そうだぞい!!」
ボコモンは何かを思い出したかのように叫ぶと、
「キサキはん!エウレストゾーンの幻の里に迷い込んだら最後、永遠に元の世界に帰れないんじゃハラ!!」
と、キサキに言った、
「なんじゃそりゃ!!」
キサキは思わずこう叫んだ、
一方、アリシアとキサキのクロスローダー内のデジモン達はと言うと、現在キサキ達のいる場所の反対側にいた。そして、そこで出会ったデジモンの「ベアモン」の家でごちそうになっていた。
「あ、これってカカオレンジだよね。チョコの味がするから。」
アリシアがベアモンに訊くと、
「うん、そうだよ。」
小熊のような姿のデジモン、「ベアモン」はこう言って、
「いま僕らの仲間が君たちの仲間を探してる。きっとすぐに見つかるよ。」
と、言った。
「ところで、あれは戦車じゃな。」
ふと、クロスローダーの中のエクスブイモンが言った。
「誰かと戦いを始めるのか?私たちがここに来る前にも争っていたが?」
ベアモンは、言いにくそうに、
「実は。」
と言ったときである、
先ほど町を飛び出したヒューマンデジモン勢のディノヒューモンが攻めてきた。
「ヒューマンデジモン達だ!!」
ベアモンが叫ぶと、中からおおがらな熊型のデジモン「グリズモン」が出てきて、
「落ち着いて応戦しろ、ヒポグリフォモン様にも連絡しろ!!」
戦いの場に赴きながら部下に指示を飛ばした。
その間にも、ディノヒューモンと付いてきたヤシャモンは次々とビーストデジモンを斬り伏せている。そして、
「出て来いヒポグリフォモン!!」
ディノヒューモンは大声で叫んだ、
「ディノヒューモン!俺が相手だ!!」
全戦にグリズモンが出て叫んだが、
「グリズモンは引っ込んでろ!!ヒポグリフォモンを呼べ!!」
ディノヒューモンはこう叫んだ。すると、ビースト勢の戦車の一台が動いて、砲弾をディノヒューモンめがけて発射した。ディノヒューモンは何とか回避に成功したが、他のデジモンは爆風に飲まれて消滅した。
「卑怯だぞ!!堂々と戦え!!」
「その台詞、そのまま返してやる!!」
ディノヒューモンにグリズモンが叫ぶと、再び砲弾を発射した。しかし今度は完璧に回避され、ディノヒューモンもこの場から去って行った。
「ひどいことを。」
ディノヒューモンが去ってから少しして、戦車の中から大きな翼を持った獣型デジモン「ヒポグリフォモン」が現れた。
「もう黙ってはいられない!ヒューマンデジモンを排除すれば、我々の正義は保たれる!!」
ヒポグリフォモンが涙ながらに言うと、
「その言葉を待ってました!!」
というグリズモンの言葉を筆頭に、兵士たちは皆一様に士気を高めた。
その様子を、アリシア達は微妙な面持ちで眺めていた。
「つーか、ほんとにこの先なの?」
森の中の道を進みながらキサキは先導するコテモンに訊いた、
「うん、僕らの仲間から連絡があったの。」
コテモンはこう言ってどんどん先に進んでいく、そして皆と合流すれば、
「キサキ様は勘違いしておいででござりまする!」
と、エビバーガーモン、
「勘違いはエビバーガーモンの方だろ!エビのくせにカニの味するくせに!」
と、サゴモン、と言った具合に、キサキ組とアリシア組で喧嘩になった。
「ヒューマンデジモンは非道です、いきなりやって来て襲い掛かって暴れまわって!」
「そういうビースト組だってヒューマンの一般デジモンども次々と血祭に上げていきやがったんだぞ!!」
特にアリシアとキサキの喧嘩はたちが悪かった、
「なんでそんなやつの肩を持つんですか!?」
「連中の悪口を言うなら許さんぞ!!」
そしてとうとう夫婦喧嘩並に手におえない争いになろうとした時、
「喧嘩はダメ!!」
コテモン、ベアモンらに止められた、そして、
「やめて!やめて!喧嘩はやめて!!」
他の丸っこいデジモン達も泣き出してしまい、仕方ないので互いに矛を収めることにした。
「そういえば、なんであんたたちヒューマンとビースト同士なのに仲がいいの?」
チョ・ハッカイモンが皆に訊いた、
「友達だもん。」
皆一様にこう答え、
「内緒だよ。」
とも言った。言うには、一緒にいるところを他のデジモンに見られると叱られる。のだと言う。
「もし内緒にしてくれるなら、いい物見せてあげる。」
「付いて来て。」
ベアモン、コテモンはこう言って、再びキサキ達を先導して歩き出した。
そして、再び皆でしばらく歩き続けると、洞窟のような場所にたどり着いた。そこにはオニスモンと思われる巨大な生物の絵が描かれていた。
「オニスモン、お願いです。」
「戦いを止めて。」
ベアモンとコテモンは、それぞれこう願った。因みにボコモンとネーモンは、他の場所に書いてあった古い文字を見ていた。
「ボコモン、なんて書いてあるの?」
アリシアが訊くと、
「所々かけてるんじゃが。」
ボコモンはこう答えた。それでも何かわかるらしく、彼方此方を見回している。そして、
「デジコードを緑の羽根に満たすべし。」
と言った。しかし皆にはどういう事か分からなかった。
再び外に出た時、外は夕方だった。
「オニスモンはこの島の守り神で。」
「平和のシンボルと言う事か。」
ゴクウモン、スティングモンはこう言った、
「デジコードを緑の羽根に満たすべし、この言葉が何かのヒントになっているのかもしれません。」
サンゾモンがこう言うと、
「ほんとに!」
コテモンとベアモンは揃って嬉しそうな顔になり、
「争いも止められるの!?」
と訊いた、
「それは分かりません。でも言い回しから察するに、何かを呼ぶ手がかりかもしれません。」
サンゾモンはこう答えた、
「それはきっと、オニスモンを呼ぶための儀式やおまじないのやり方じゃないかな!!」
アリシアがこう言った時である、どこからか剣が飛んできた、
「お前ら!何をしている。」
見ると、ディノヒューモンが部下と一緒にこの場に来ていた。
「危ねえだろ!!」
と、キサキが叫ぶと、ディノヒューモン達はキサキ達の元へやって来て、ヒューマンデジモン組をビーストデジモン組から庇うように割って入った。
それと同時に、グリズモン達も突進してきた。ディノヒューモン達はそれをかわすと、やって来たデジモン達と争いを始めた。
「いい加減にしなさいよ!!」
アリシアが、周りで泣いているデジモン達を横目で見ながらこう叫ぶと、
「よそ者が口出しするな!!」
と、ビーストデジモンが、
「君たちも見たはずだ、連中は横暴な種族!許すわけには!!」
と、ヒューマンデジモンがそれぞれ言った。その時、キサキとアリシア達は、覚えのある悪寒を感じた。見るとサンゾモンが俯いた状態で、拳をワナワナ震わせていた。
(あ、やばい)
この時、ほぼ同じタイミングでアリシアとキサキは思った、
「無限弾幕心経!!」
サンゾモンが特殊な念仏を唱えると同時に、今まで戦っていたデジモン達は一様に目を覆って何かを回避するように動き始めた。
「戦いをやめなさい。」
サンゾモンは怒りのこもった静かな言葉で皆に言った。このままサンゾモンのありがたい小言に移行しなかったのは、ある意味では幸運であった。
それでも、この場はそれぞれ自分たちの町に帰ることで事は収まった。
別れ際、ベアモンとコテモンは寂しそうにしていたが。
解散後、ふとエビバーガモンが気が付いた。
「この石、何か書いてある。」
そしてその日の夜、ヒューマンデジモンの町では、ダルクモンが皆に演説をしていた。
「ヒューマンは平和を愛するデジモンである。それゆえこれまで………」
それを横で聞くキサキに、ディノヒューモンは言った。
「今回は君にも戦ってもらいたいのだが?」
しかし、キサキは返事をしないでアリシアのクロスローダーからデジモンをこっそり解放した。
(やるべきことはわかってるよな?)
小声でデジモン達に告げた。
(ええ勿論です、コテモンを連れて他と合流しあの場所にですね)
サンゾモンはこう言って、チョ・ハッカイモン、サゴモン、ボコモン、ネーモンを連れてその場を後にした。
そしてもう一方のビーストデジモンの町でも、ヒポグリフォモンが皆に演説して、他のデジモンが士気を高めていた。
ベアモンはその様子を遠くでつまらなさそうに眺めていたが、ふと誰かに呼び止められたのを聞いて、それに付いて行った。
「クラクラクラ。」
前を先導するクラゲのようなデジモン「クラモン」に付いて行くと、オニスモンの壁画のある場所に付いた。そこには一足早くこの場に来ていたサンゾモン達とコテモン達がエビバーガーモンと一緒に作業を行っていた。エビバーガーモンが、文字の書いてある石が落ちていることに気が付き、それをジグゾーパズルのように組み合わせて何が書いてあるか確かめようと言う事になったのだ。
「ですがなるべく早く完成させましょう。外では今にも戦いが始まろうとしています。」
サンゾモンの言葉を受けて、一同は作業の手を早めることにした。
そして、ヒューマンとビーストの町の境目では、ヒューマンデジモンの軍団とビーストデジモンの軍団が睨み合っていた。これを最終決戦とするようで、互いに全戦力を叩きこんでいる。それぞれの陣営にはキサキとアリシアもいる。ほかの目を集めるために、あえて参加しているのである。
そしてとうとう戦いが始まった。デジモン達が進軍し、戦車が砲弾を発射しその場所は文字通り「西軍対東軍」と言った様子になった。
しかし、早くも問題が発生した。
「ダルクモン様を知りませんか?」
部下の一人がディノヒューモンに訊いた、ダルクモンの姿が見えなくなっているらしい。
この報告を聞いたキサキはその場から飛び出した。ほかのデジモンが驚いていると、突然砲弾が降って来た。
「奇襲か?!」
見ると、物陰から戦車が飛び出していた。その様子を見たキサキは兵士をかき分けて進むと、
「いくぞ!ギルモン!ゴクウモン!」
「うん!」
「任せな!!」
残っていたギルモンとゴクウモンと共にうって出た。
因みに、他の場所で戦の様子を見ていたダルクモンは満足げな表情だった。その様子は自分のヒューマン勢が不利な様子だったが。
一方、ビースト勢に加わっているアリシアはと言うと、
「こんなふざけた戦いなんてやめなさいよ!!」
と、グリズモンに言っていた。
「なにをぉ!!お前に俺たちの苦しみは分かるまい!!」
グリズモンはこう言いかえしたが、
「はっ!だったらあんた達にベアモン達の気持ちがわかると言うの?!!」
アリシアはさらに言った。
グリズモンは答えに困った様子を見せたが、
「どけ!!」
自ら戦場に立つために出て行った。その様子を後ろから見ていたアリシアは、
「くだらない戦いね。」
と、一言言った。
「なんじゃ?やるのかアリシアよ。」
「キサキのクロスローダーをお前が使っても、パイルドラモンくらいは出来るはずだぜ。」
傍にいたエクスブイモンとスティングモンが言うと、
「ええ!行きましょう!!」
アリシアはこう言って、二体と飛び出していった。
「いい加減にしなさい!!」
アリシアはエクスブイモンとスティングモンと一緒に敵味方関係なくデジモンを蹴散らしていく。また別の場所でもキサキがギルモンとゴクウモンと共に暴れまわっていた。
ダルクモンはその様子を見て、
「何をしている!邪魔をするなら血祭にあげよ!!」
と、自軍の兵士たちに命令した。そしてその後、なぜかグリズモンがヒポグリフォモンを呼ぶ声を聞いた時、難しい顔をした。
そして、オニスモンの壁画を再生させようとしているメンバーは、何とか一部だけだが重要な部分をもとに戻した。
「ボコモン様、読んでくださいまし。」
壁画の傍から離れたエビバーガーモンは、ボコモンに言った。ボコモンは少し壁画を見つめると、
「えーと、にくしみの。」
と言った、
「にくしみの?」
と、全員が言うと、
「憎しみの血で塗られたデジコードを緑の羽根に満たすべし、ってええ?!」
ボコモンはここまで読んでから驚いて、大声を上げた。そして、
「オニスモンは平和の守り神じゃない!」
と言った、
「もしかしたら、この地に災いをもたらした言い伝えが風化して、守り神と言われるようになったんじゃ。」
ベアモン達と一緒にここまで来て、再生作業に協力していたエンジェモンはこう言った、
「言い回しから考えると、今以上に戦いが激しくなると、オニスモンは復活しますね。」
サンゾモンがこう分析すると、
「ねえ、ここみて!」
エンジェモンに付いて来ていたテイルモンが、皆にある窪みを指差して言った。
「この形、どこかで見たことない?」
皆は少し考えて、
「ダルクモン様の杖の飾り!!」
「ヒポグリフォモン様の首飾り!!」
と、ほぼ同時に言った。
「争っているはずなのに、なぜか互いに同じものを持っている、か。」
エンジェモン達と一緒に来ていたディアボロモンが言った、
「これが緑の羽かもしれんな。」
と言う事で、エビバーガモンとクラモン、ディアボロモンとコテモン、ベアモン達はこの場に残って残る壁画の再生に努め、エンジェモン、テイルモン達はキサキとアリシアにこの事実を伝えに行った。
そして、キサキとアリシアが暴れまわっている戦場のすぐ近くに来たとき、エンジェモンは何かに気が付いて、他のデジモンを止めた、
「おい、あれは確かダルクモンだよな。」
「確かにそうだけど。それが?」
チョ・ハッカイモンが訊くと、遠くに見えるダルクモンが突然ヒポグリフォモンに変わった。
「何だと?ヒポグリフォモンに?」
ガイオウモンがこう言うと、
「急いで伝えましょう!!」
デジモン達はサンゾモンの言葉を受けて、それぞれ散らばってキサキ達を探すことになった。
そして、ビーストデジモン勢に変化が訪れた、ヒポグリフォモンが現れたのだ。
「平和のために命を惜しむな!!」
ヒポグリフォモンの言葉を受けたデジモン達は、張り切って敵に向かっていった。すると、
「エクスカリバー!!」
どこからか巨大な光の刃が飛んできて、戦場を一刀両断した。
「争いはやめろ!!」
「みなは騙されているのです!」
見ると、ホーリーエンジェモンとエンジェウーモンが戦場の真上に立って、皆を見下ろしていた。
「悪いけど見させてもらったよ。」
「テメェ、さっきダルクモンからヒポグリフォモンに変わってたよな?」
続いて、上空から降りてきたパロットモンとガイオウモンがヒポグリフォモンに言った。
ヒポグリフォモンは驚いた顔になった、
「何を根拠に?!!!」
と、戦場のデジモン達が言うと、
「一緒なんだよ。ダルクモンの杖の飾りと。」
「ヒポグリフォモンの首飾りがね!」
どこからか出てきた、チョ・ハッカイモン、テイルモンが言った、
「そういうことだったんだ。」
アリシアとキサキも事実に気が付いたようで、
「ディノヒューモン、ダルクモンはどこにいるの?せっかく敵の大将が出たんだから、自分も出てきて一騎打ちしたら、って言いたいんだけど。」
キサキはディノヒューモンにこう訊いた、
「あ、そういえばダルクモン様はどこに?」
ディノヒューモンは気が付いた、この場にダルクモンが居ないことに、
「憎しみの血で塗られたデジコードを緑の羽に満たすべし、されば我復活せり。」
エンジェウーモンがこう言うと、
「なるほど、この戦いでオニスモンを蘇らせようとしたんだ。」
アリシアは大声でこう言った、
「ふざけないでよ、正義も平和もへったくれも無いじゃない!!」
ヒポグリフォモンは、
「何の事かな?」
と、言い張ったが、
「他を騙すのもいい加減にしろ!!」
と、キサキに言われ、もはやここまでと思ったのか、
「ヒポグリフォモン、スライドエヴォリューション!ダルクモン!!」
ヒポグリフォモンはダルクモンに変わった。これには、多くのデジモンが驚いた、
「我が秘密、よくぞ見破った!!」
ダルクモンは持っている杖を掲げると、こう言った。すると、戦で犠牲になったデジモンの亡骸がどんどん杖の飾りに吸い込まれていった。その中でダルクモンは、
「かつてこの地に流れ着いた私は、偶然オニスモンの遺跡を発見した。」
オニスモンの事を話し始めた、
オニスモンは古代にデジタルワールドを散々荒らしまわっていた事。しかし、エンシェントグレイモン、エンシェントガルルモンの倒され、この地に封印されていた事。そして、オニスモンの封印を解いて、デジタルワールドを支配しようとした事を。
「俺たちを争わせたのも。」
「大量のデジコードを集めてオニスモンを復活させるためか!!」
グリズモン、ディノヒューモンも同時に気が付いた、
「今頃気が付いても遅い!!」
ダルクモンがこう叫ぶと、杖の飾りは宙へ飛び出し、はじけ飛んだ。
そして、巨大な翼とくちばしを持つ、巨大な鳥型デジモンが現れた。
「あれがオニスモンか!」
キサキがこう言うと、
「まだ歯向うか!よかろう、オニスモンよ、その力でデジタルワールドをわが手に!!」
ダルクモンはこう言って、オニスモンに飛び乗ると。天使型の姿からアメーバのような姿になった。
「あれは、様々なデジモンに変身するメタモルモンじゃい!」
ボコモンは変化したダルクモンを見ると、こう叫んだ。
「どちらにしても、このままではいけません!!」
アリシアはこう叫びながらキサキと合流し、入れ替えておいたクロスローダーを交換した。そして、
「マトリックスエヴォリューション!!ギルモン超進化!!」
と、叫んだ。
「ギルモン超進化!デュークモン!!」
アリシアと融合したギルモンは、赤いマントを身に着けた騎士型デジモンに変わった。
「行くぞ!!」
デュークモンが叫ぶと、
「応!!」
ゴクウモン、チョ・ハッカイモン、サゴモンはオニスモンに向かっていった。
一方キサキは、
「エクスブイモン、スティングモン、アクィラモン、テイルモン、アンキロモン、エンジェモン、デジクロス!!」
自身のデジモン達と合流し、他のデジモンもリロードすると、次々とデジクロスさせた。
「セイントドラモン!!」
結果、背中に翼を六枚持つ、全身が白い聖竜型デジモンと。
「ディアボロモン、ケラモンズ、デジクロス!!」
「アーマゲモン!!」
足が六本ある巨大なデジモンが現れた。そして、
「行けぇ!!」
キサキの号令のもと、全員でオニスモンに突撃した。
「アラミダマ!!」
「アルティメットフレア!!」
セイントドラモン、アーマゲモンは得意な火力攻撃を放った、しかし、オニスモンにはまるで効いていない。
「ミョルニルサンダー!!」
「エクスカリバー!!」
「ホーリーアロー!!」
続いて、パロットモン、ホーリーエンジェモン、エンジェウーモンが得意な飛び道具をメタモルモンに放ったが、軟体動物以上にやわらかいメタモルモンは全弾回避した。
「かくごぉぉぉぉ!!!!!!!」
「ガイアリアクター!!」
「ロイヤルセイバー!!」
ゴクウモン、チョ・ハッカイモン、サゴモンは渾身の一撃を放とうとして、ガイオウモンとデュークモンはそれぞれの必殺技を放とうとしたが。メタモルモンの体を伸ばす攻撃に阻まれ、そのまま飛んで行った。
様子を見ていたデジモン達は、
「防衛態勢!!」
「ヒューマン、ビーストの関わりなく防衛せよ!!」
それぞれ防衛の態勢を取っていた。
そして、サンゾモン、エビバーガーモンと一緒に様子を見ていたコテモン、ベアモン達はと言うと、
「エンシェントグレイモン!ガルルモン!戦いを止めて!!」
コテモンは壁画に向けて叫んだ。
「無駄でしょう。エンシェントデジモンはデジタルワールドの創世記に活躍したデジモン。生きていたとしても、オニスモンをどうにかするだけの力は持っていないのでは。」
サンゾモンはこう言った、しかし、
「いやだ!!」
コテモンはこう叫んで、祈るのをやめなかった。
その時、オニスモンが壁の隙間を破って顔を出した、
「無駄なあがきを、くたばれ!!」
メタモルモンがこう叫ぶと、オニスモンは口から強力な破壊光線を発射した。
「だめぇ!!!」
コテモンは壁画を守るため、自ら盾になって攻撃を受けた。
「コテモン?!」
皆が上を見上げて驚いた時である。コテモンのデジコードが地面に触れると、幻影のような姿だが「エンシェントグレイモン」と「エンシェントガルルモン」が現れた。
「やったぁ!二体が復活したぁ!!」
様子を見ていたデジモン達が叫ぶと、
「黙れ!復活したオニスモンの敵ではない!!」
メタモルモンはこう叫んだ。すると、オニスモンは破壊光線を二体に浴びせたが、二体はダメージを負うそぶりも見せない。
「今だ!全員でとどめを!!」
キサキの言葉と共に、セイントドラモン、デュークモンはそれぞれ飛び出し。
「ファイナルエリシオン!!」
デュークモンは持っている盾「イージス」から迸る聖なる光をオニスモンに浴びせて目つぶしを行い。
「ホーリーインパクト!!」
セイントドラモンは「ホーリードラモン」の力を憑依させた突撃技で、オニスモンに隙を作った。
「この程度でオニスモンがやられると。」
メタモルモンがこう言った時である、目の前に巨大な翼を持つ青い竜が飛び出してきた。竜形態になったキサキである。
「竜星殲滅刃!!」
キサキは両腕から発生させた聖なる力を持つ刃でメタモルモンを焼き切った。そして、
「決めろ!エンシェントグレイモン!エンシェントガルルモン!」
と、叫んだ。
そして二体は飛び立ってオニスモンに向かっていくと、まずエンシェントガルルモンが持っていた大剣をオニスモンに突き刺し、エンシェントグレイモンがとどめと言わんばかりに、吐き出した炎で焼き尽くした。
戦いが終わってから、
「あんな奴を信じて戦い続けた俺たちがバカだった。すまない。」
グリズモン、ディノヒューモン達はキサキ達に誤った、
「この地が救われたのも、君たちのおかげだ。」
ディノヒューモンが言うと、
「ここを救ったのはエンシェントデジモンだよ。」
キサキはこう言って、
「そして本当に礼を言うべきなのは、彼らですね。」
アリシアが、ベアモン達を見て言った。
「最後まで二つの種族を結び付けようとしたのですから。」
アリシアがこう言った時である。空から何かが降って来た。
「これってコードクラウン?!」
黄金に光り輝くメモリーカードのような物は「コードクラウン」ゾーンの持ち主に送られる支配者の証しである。
「これは君たちが持っていてくれ。」
「これは俺たちで持ってましょう。」
ディノヒューモンやグリズモンの許可も得て、キサキがこう言って、コードクラウンをクロスローダーに差し込むと、
「ああ!忘れてた!!」
突然ディノヒューモンが大声を上げた、
「ここのコードクラウンを持つものは、この地の支配体制を何とかしないとここから出られないぞ!」
「なんじゃそりゃあ!!!!!!!!!!」
エウレストゾーンに、キサキ達の声が響いた。
カットマン
「カットマンと。」
モニタモンズ
「モニタモンズの。」
全員
「デジモン紹介コーナー!!」
カットマン
「今回のテーマはテイルモン。テイルモンは獣型のデジモン。得意技は相手を殴る「ネコパンチ」「キャットテイル」だ。」
モニタモンA
「ネコのような姿をしており、尾に神聖系デジモンの証し「ホーリーリング」を付けていますな。」
モニタモンB
「ネコのような姿ですが、話によると「ハツカネズミ」らしいですな。」
モニタモンC
「付けている手袋は「サーベルレオモン」のデータをもとに作られていますな。」
全員
「それじゃあまたね!!」
次回予告
ムルムクスモンに立ち向かう事が決まったはいいが、移動手段と生活スペースについて問題が生じる。なのでクラウドは、聖地よりかの翼を蘇らせる。
次回「古代ベルカの最強必殺兵器、復活」
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
特別編 幻の里と伝説のデジモン