遥かに広がる宇宙。その一部に、地球人はある星系を見つけた。
その星々の色から、付けられた名は―――レインボー星系。
そんなレインボー星系に、危機は突然訪れた。
突如別の宇宙から現れた宇宙人達による、レインボー星系征服作戦。
宇宙人は各星々の核であるコアを奪い。洗脳光線により先住民を洗脳、戦闘員として星々を襲わせた。
その危機に、地球人はレインボー星系救出を決定。
救出チーム、通称
ISNAではレインボー星系の宇宙人達にも通用する攻撃力を持つアイテムを開発。
更に洗脳を解くアイテムを開発し、洗脳された宇宙人達を救出していった。
当初はエージェントと呼ばれる、地球人達によるレインボー星系救出作戦が続いていたが、次第に星々の宇宙人が共に戦うと決意。
ISNAのメンバーは増強され、奪われたコアの回収も順調に進んでいた。
そんなISNAエージェントの働きにより。ついに、リーダーの討伐に成功。
レインボー星系の危機は去ったのだった……
だが、予想を遥かに超える洗脳された宇宙人の数に、
エージェント達は、今だ救出を続ける日々を送っている――――――
そして……
レインボー星系。その星の一つ―――パープル星は、ポーライの街。
ここに現在、ISNAの本拠地が存在していた。
星系征服を企む集団による大事件が解決し、戦闘員とされていた星の住民達の洗脳も少しずつ進んでいる。
今、基地の入り口を1人の人が通った。
長く真っ直ぐな濃い青色の髪を左側一ヶ所だけ結び、橙色の縁のメガネをかけている。十代くらいの少女だ。
「ここも久しぶりね、最近は各自行動が多かったし。でもいきなりの呼び出し……何か問題が…」
その時、
「ちこくちこくー!」
入り口の扉を力いっぱい開けて人が飛び込んできた。
背はメガネの少女より少し低いくらい、首下で切り揃えられたような、ボサボサの赤い髪に、藍色の髪留めをしている。同じく十代くらいの少女だ。
「……陸葉?」
「へ? あ、海菜!」
少女2人はお互いに知り合いらしく、青髪の少女を
「ひょっとして、海菜も呼び出し?」
「そういう陸葉こそ」
「うん、でも時間に遅刻しそうでステーションから走って来たんだよ」
「ここからステーションって結構あるけど……その時間って何時?」
「えっとね、15時ちょうど」
「あたしと一緒じゃない」
「えぇ? じゃあもしかして海菜とミッションやるのかな」
「陸葉とか……」
「む、なにかなー、その若干嫌そうな顔はー?」
「別に、それよりも時間だから行きましょう」
陸葉の不満の声をさらりとスルーし、海菜は階段へと向かう。
「あ、待ってよー」
陸葉も後を追って階段を上がり、二階、三階へと到着。
会議室のような場所、そこに2人を呼び出した人物は座っていた。
「よく来てくれた。ISNAエージェント リクハ、並びにウミナ」
彼はここ、ISNA本部の上官で、多くのエージェントの旅立ちを見送り、派遣をしている古株だ。
「君たちを呼び出したのは他でもない、2人で、あるミッションに挑んでもらいたいからだ」
やっぱりか、2人は同時に思った。
「その、内容とは」
海菜が訊ねると、上官はファイルに収まった紙の束を取り出した。
「大事件が終結し、脅威は無くなったが、まだ多くの人の洗脳がとけず、エージェントが奔走しているのは知っていると思う。そこでISNAは、洗脳をとく事に特化した新たなアイテムの開発を行っていた。君たちには、そのアイテム開発の手伝いをしてもらいたい」
ISNAのエージェントには、四つのアイテムが存在する。
一つが攻撃力強化の、パワーグローブ。
一つが移動力強化の、ジェットブーツ。
一つが防御力強化の、ビームシールド。
そして宇宙人の洗脳を解く、通信バッジ。
前二つの内一つとビームシールドがエージェントに渡され、洗脳された宇宙人と戦い、通信バッチを用いて洗脳をといていた。
「詳しい話は、研究室に向かって聞いてほしい。頼めるかな」
『はい』
陸葉と海菜は揃って返事をすると、上官からファイルをもらって階段を降りていった。
「新しいアイテムってどんなのだろうね」
「さぁ、でも洗脳をとく事に特化してるとなると、効率が上がるのは確かよね」
会話をしつつ、一階に到着。
「ちょっとそれ見せてー」
陸葉はファイルを受け取り、研究室に向かいながら中の紙を見る。
「前見て歩かないと危ないわよ」
「だいじょーぶだよー」
しかし、
「わわ!? そこの人危なーい!」
「へ?」
ドシーン!!
「わぁ!?」
「ひゃああ!?」
陸葉は人とぶつかった。
「だから言わんこっちゃない……」
やれやれとため息を付きつつ、海菜はぶつかった際に散らばった紙を集める。
「いたた……だ、大丈夫ですか?」
「は、はぃぃ……何とか、大丈夫ですぅ……」
陸葉とぶつかったのは、2人より少し背の高い少女だった。
緑色の髪を緩いみつあみにして、後ろに流している。少女はぶつかった衝撃でしりもちをついて目を回していた。
『大丈夫に見えない……』
2人の感想は知らずに被っていた。
「すみません、この子がよそ見しながら歩いてるから」
「えー、わたしのせいなのー?」
「いいから謝りなさい」
「い、いいんですよ。私もよそ見して急いでいたものですから」
少女は立ち上がると、ぺこりと頭を下げた。
「実は約束の時間を10分も過ぎてまして、それを時計で確認して走っていたので気づかなかったんです。では、急いでいるので失礼します」
頭を上げると、走って行ってしまった。
「今の人もエージェントなのかな? 初めて見た気がするけど」
「ふむ……ねぇ陸葉」
「ん? どったの海菜」
「今の人、約束の時間に10分遅れてるって言ってたわよね?」
「うん、言ってた」
「今から10分前って言えば、あたし達が呼ばれた時間、15時ちょうどなんだけど」
「けど?」
「だから……あぁ、いいわ。当たってるとは限らないし、忘れて」
「えー、そこまで言っておいてそれはなくなーい」
「いいから行く。向こうは待ってるのよ」
「あ、待ってよー」
2人は研究室へとたどり着いた。
研究員にファイルを見せると、一つの部屋へ行くように言われ、そこへと向かう。
「失礼します」
海菜が一言かけ、陸葉が扉を開けて中へと入った。
研究室の中は、まさにその名の通りの光景をしていた。
左右の壁には棚、中には紙の資料やファイルが収まっている。
正面は大きなスクリーンと、レインボー星系の地図が埋め、それ等を見るように椅子を向けていた人を2人は発見した。
陸葉はファイル内の資料の表紙に書かれていた名前を見て、
「えっと…………ん?」
「ちょっ、どうしたのよ陸葉」
「えーっと……ねぇねぇ海菜、これなんて読むの?」
「読めないならさっさと渡しなさい」
陸葉からファイルを奪い海菜が名前を呼ぶ。
「碧風、美空さんですか?」
すると、
「へーい、その通りですよー」
椅子が回り、2人を正面に見た。
前髪は左目が完全に隠れるほど長いが、首元で揃えたショートカットの深緑色の髪に、縁の無い丸レンズの眼鏡をかけている。十代後半に見える女性だ。
「ご紹介あった通り、アタシが
「え……あの、えっと……」
「確かにその方が言いやすいですねー」
「だろう? というか副ではあるが第一位はほぼグリーン星にいるから実質アタシが一番なんだぜ」
「そ、そうなんですか……」
さすがは研究者、独特な空気を持っている……海菜は心の中でだけ思った。
「話を戻そう。君たちの事はすでに聞いている。エージェント リクハ、本名、
「そういえばそんな時もあったねー」
「陸葉が一緒に行こうって言ったのよ」
「そだったっけ?」
「まぁなんだ、今回選ばれたのはそれが理由だったりする」
美空博士は手を伸ばし、海菜がその手にファイルを置くと美空は中の一枚を取り出した。
「ミッションの内容は見たか?」
「はい。レインボー星系を回り、新たなアイテムのテストですね」
「そのアイテムってなんなんですか? ファイルには何も書かれてませんけど」
紙を近くの机に置き、キーボードを操作してスクリーンに絵を表示した。それは設計図のようなもので、おそらくこれが造られると新たなアイテムになるのだろう。
「名前だけ先に言うと、名称『スピリットガン』今までに無かった遠距離型のアイテムだ」
「何だかカッコいいー!」
「カッコいいのは名前だけじゃない。なんとこのアイテムを持つことで、4つのモードチェンジが可能になるのさ」
「4つの、モードチェンジ……」
「まぁ所有者の実力次第ではあるけども、理論上では行える筈だ。更に、対洗脳用の技が搭載されている」
「その、技とは?」
「それは追々分かる筈だから、今言うのはやめておこう」
美空博士は壁にかけられた時計に目をやった。時刻は15時22分。
「それで、そのアイテムのテストをあたし達が行えばいいんですね」
「ん? いや、それは違うぞ」
その言葉に、陸葉と海菜は顔を見合わせた。
「わたし達が使うんじゃないんですか?」
「そうだよ、アイテムは君たちと一緒に行く人が使うんだ」
「では、なぜあたし達は選ばれたのでしょう」
「さっきも言ったけど、君たちは一緒に行動していたこともあったし、共に14歳の女の子。なるべく年が近くて同性で、コンビネーションの出来るエージェントを探していたんだよ」
「やっぱり……その、もう一人というのは」
「今しがた、エージェントの証明をもらいに行ったよ。もうそろそろ戻ってきても良いと思うんだけど…」
その時、
ドンガラガッシャーン!!
『ひゃああああ!?』
「「「……」」」
扉の向こう側から、派手に何かが崩れた音と、派手な悲鳴が聞こえ、3人は無言でそちらを見た。
『ご、ごめんなさい! 急いでいたものですから!』
「あれ? この声って」
「予想通りだったわね」
「何だ、もう会っていたのか」
扉が開いて、先ほどの声の主が研究室の中へ入ってきた。
「お、お待たせしました! 本日よりエージェントになりましたクーヤと言います! よろしくお願いいたします!!」
ぴしっ、と左手で敬礼をしたのは、先ほど陸葉とぶつかった、みつあみの少女だった。
「ちなみに、左手の敬礼は間違いだぞ」
「えぇ!?」
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第一話 陸海、空出会う
知っている方は知っている、知らない方は恐らく知らない。
ゲームボーイカラー専用ソフト、「スペースネット」の二次小説。
楽しんでみてください。