まえがき コメントありがとうございます。前回の拠点で三人も仲間を増やした蜀勢ですがそろそろ人数的にどう纏めていこうか心配になってきた今日この頃です。今回は普段はあまり視点の行かない兵士たちにスポットを当ててみました。一般兵で名前が出たのは蒼だけでしたしね。それではごゆっくりしていってください。
「あ~、平和だな。」
「平和っすね~。」
今城の前で見回りをしているんだが、暇だ。仕事だから文句は言わないがこんな朝早くからしなくてもいいだろうに。まぁ、戦争するよりは断然マシだけどな。
「それにしても、男二人で見回りなんて華がないっすね~。北郷隊の方に目の保養に行きたいっす。」
「あと二刻で交替の時間だ。喋る暇があったら口より目を動かせ。」
「うっす。」
俺だって本音を言えば北郷隊に目の保養に行きたい。劉備様たちの隊は男女比率が同じくらいなのだが、なぜか北郷様の隊だけほとんどが女性なのだ。北郷様の趣味なのだろうか?聞ける機会があったら是非とも聞いてみたいところだ。俺は董卓軍二番隊、張遼様の隊なんだが女っ気なんて全くない。確かに張遼様は美人だが鍛錬が地獄のようにキツイ。何度死んだ方がましだと思ったことか・・・。張遼様は加減を知らないからな。
「手ぇ抜いたら鍛錬にならんからなー。」
その一点張り。あの人基準で動いていたら体がいくつあっても足りないぜ・・・。
「ん?街の方から人が近づいてきますよ?」
「こんな朝っぱらからどこの誰どいつだ?」
よく見たら有名な食堂で働いている一人の少女が一人こちらに歩いてきている。そういや昨日城の宴会にいたな。そんときも見回りしてたから分かる。
「あの、すみません。お尋ねしたいことがあるんですけど、良いですか?」
「はい、どうしました?」
「あの、謁見の間まで行きたいんですけど行き方を教えてもらえませんか?」
「いいですよ。正面玄関から入ってまっすぐ進んでください。そして一番奥に扉がありますのでそこを入ると謁見の間です。」
「はい♪ありがとうございました。」
その少女はお礼を言うと城の中へ入っていった。それにしても結構な量の荷物だったな。あの包み、一体何が入ってるんだろうか・・・。
「あの子、可愛いっすねぇ。」
「あれ?この前は諸葛亮様と鳳統様のこと可愛いって言ってなかったか?」
「小さい子は皆可愛いんです!」
「お前、幼女好みだったのか・・・。」
ひょんな事からこいつの好みが分かってしまった。そんなに嬉しくない・・・。
・・・。
「今日はお休みだなんて北郷様も大胆なことするよね~。」
「そうね、明日が黄巾党の討伐だから十分に体を休めておくようにって。他の隊は昼から鍛錬らしいけど、うちは大丈夫なのかしら?」
「大丈夫ですよ~。なんせうちの隊長が動くんですから。あの人の隊にいれば正直負ける気がしませんもん!」
今日は休みを久しぶりに休暇をもらったので三人で市に来ています。洛陽に来てから警邏では街に出ることはあってもこうして何もない日に来るのは初めてですからね。今日は楽しんじゃいましょう!
「とりあえず、私はお洋服見に行きたい!」
「いいわね。こんな事がない限りなかなか新しいものは買えないもの。」
「早速・・・、あれ?ねぇ、あれって張遼様だよね?何されてるんだろう?」
張遼様が露店の酒屋さんで二本の酒瓶を持って何やら唸っています。結構真剣に悩んでるみたいですね。というか、
「こっちの白酒の方が・・・いや、今日は奮発してこの老酒にした方が・・・。」
「張遼様、どうなされたのですか?」
「ん?お前たちは一刀んとこの隊の子たちやないか。警邏中か?」
「いえいえ、今日は隊長が休暇をくださったので市に遊びに来ているんですよ。」
「一刀はお気楽やな~。明日が討伐に出発する日っちゅーに。」
「明日が出発だから体を休める意味も込めて休暇をくださったんです。お優しい方ですから。」
「私は昼から鍛錬した方が良いと思ったのですが、それだと隊長に心配を掛けてしまいますので。」
「あんたらんとこの隊長は心配性なんや。優しいんも間違ってはおらんのやけどな。部下に怒ってるとこなんて見たことないやろ?」
張遼様はそう言いながら若干苦笑いしています。そういえば怒られたこともないし、誰かが怒られてるとこも見たことないかも・・・。この間の盗賊には相当怒っていらしたけど。
「そう言われてみると、ないですね。」
「怒るというより、助言をいただいてそれをどう生かすかという形が多いです。」
「あれな、一刀のおかんの影響らしいねん。」
「隊長のお母様、ですか。」
「せや。小さい頃から叱られるときもダメだしをくらうとかじゃのうて、おかんから助言をもらってそれをその先どう生かすか考える。みたいな感じらしいねん。まぁ、うちはそないな気の利いたことは出来ひんけどな。にゃはは。」
確かにそう言われれば思い当たるところが結構ある。隊の列を乱してしまった時も怒鳴るとかじゃなくて一人ひとりに助言をされてた。皆に同じことを言うんじゃなくて、その人に合うように考えてくださって。
「とりあえず、一刀は出来た人間や。あないな良い男は他におらへんからな。絶対離れたらあかんで~。」
「それは勿論です!」
「私も微力ながら隊長の力になることでお世話になっている恩返しが出来たらと思っていますので。あの方から離れるのは死別以外にありません。」
「同じく!」
「一刀はええ部下を持ったなぁ。とりあえず・・・うちの酒決め、手伝ってくれへんか?」
張遼様はまたお酒に視線を移してしまいました。う~ん、私はお酒に弱いからあんまり知らないんだよな~。
「そのお酒はどのような用件と言いますか、どなたとお飲みになるのですか?」
「ほれ、明日は討伐に向けて出発するやろ?せやから一刀と一緒に呑もう思っとったんやけど、変に良いもん持っていくとあの性格やから気ぃ遣うんちゃうかなーってな。せやかていつもの酒じゃなんかしっくり来ぃひんしで。」
「それならこちらの老酒にしておけば無難ではありませんか?量に対して若干高めではありますがそこまで高級感はありませんし。私も一度味わったことのあるものですからお勧めします。」
「そうか。ならそっちにしようかな。ほんま、おおきにな!」
「どういたしまして。」
「ほなうちは城に戻るわ。付き合せてもうて悪かったな。」
「そんなそんな。私たちも張遼様とお話し出来て嬉しかったから謝らないでください。」
「機会があれば今度は一緒にお買いものしましょうね♪」
「せやな。機会があれば今度はうちから誘わせてもらうわ。ほなな。」
「お気をつけて。」
張遼様は嬉しそうにお城の方まで歩いて行きました。張遼様、いいなあ。隊長と二人でだなんて・・・。
「へぇ~、お酒そんなに呑んでる感じないのに詳しいんだね~。」
「一人のときにたまに呑む程度よ。それで呑んでいるうちに勝手に覚えたという感じね。」
「いいなぁ。私、お酒呑んだらすぐに寝ちゃうから味とかそんなに覚えられないし・・・。」
「そういう時はお酒より水を多くしてみて。そしたらそんなには酔わなくなると思うから。」
「うん、今度やってみるね♪」
「(私も今度やってみよう。)」
「それより、ここでたむろっていても仕方ないし、そろそろお昼なのだから向こうにある茶店でお茶にしない?」
「そうだね、私もお腹空いたから何かお腹に入れたい。」
「さんせ~!」
私たちはちょっと歩いて今人気の茶店『花より団子』に着いた。着いたんだけど、今日はやけに人が多い。座れるかな~?
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「三人です。」
「ただ今外の四人掛けの卓が空いておりますがそちらにお通ししてもかまいませんか?」
「はい。」
「それではこちらへどうぞ。」
「空いてて良かったね。」
「今日はついてるんだよ、きっと。」
「それでは注文がお決まりになりましたらお呼びください。失礼します。」
私たちは席に着くと店員さんは料理表を人数分おいてお店の中に入っていった。うひゃ~、お店の中もあんなにいるんだ。店員さんも大変だよ~。
「さて、何を頼む?」
「杏仁豆腐!」
「私も!」
「・・・もしかしなくても、来る途中から決めてたでしょ?」
「だって、ここの杏仁豆腐すっごく美味しいんだよ!私、やみつきになっちゃって。」
「ねぇ~。私もここに来たら毎回食べてるよ!って言ってもまだ三回目なんだけどね。」
「それは毎回って言わないわよ・・・。じゃあ私もそれにするわ。」
私たちは注文を済ませると先ほどの張遼様について話を始めた。
「張遼様、いいなぁ。私も隊長とお茶飲みたーい!」
「張遼様のはお酒だけどね。けど、そうね。私も機会があればご一緒したいものだわ。」
「瑠偉(るい)さん、隊長のこと好きですもんね~♪」
「ち、違うわよ!私のは尊敬であって・・・そ、そう!好意とかじゃ全然ないのよ!本当なんだから!」
「そんなこと言って~。私、知ってるんですよ?」
「な、何をかしら?」
「鍛錬が終わってすぐのときとか警邏のときとか、隊長を見つけるとぽぉ~っとしながら隊長のこと見てるじゃないですか~。」
「あ、私も知っます。確かあれは先月の黄巾党討伐の後くらいでしたっけ。瑠偉さんが少し怪我した時にその時に衛生兵の人が席を外してたから北郷様が治療してくださって。その時の瑠偉さん、しばらく顔を真っ赤にして喋りませんでしたもん!」
あの時は初めて隊長に話しかけてもらって嬉しかった・・・じゃなくて!
「あの時はただ恥ずかしかったのよ!男の人に手当してもらったのなんて初めてだったから・・・。だから、その・・・。//」
「きゃ~、やっぱりこの瑠偉さん可愛い~!お持ち帰りしたい~!」
「も、もう!からかわないでちょうだい!」
「でもでも、可愛いのは本当ですよ。知らない人が見るとガラッと印象が変わるでしょうね。」
「か、可愛いとか言わないで!恥ずかしい・・・//。」
いや~、こういうのが可愛いんですけどね~。おや?どなたかこちらに近づいてきますね。
「随分と楽しそうな声が聞こえると思ったら見知った顔が三人もいるじゃない。お邪魔するよ。」
「隊長!」
「北郷様!こんにちは。」
「うん、こんにちは。お昼ご飯食べに来たの?」
「はい。と言っても杏仁豆腐しか頼んでないんですけどね~。」
「それ、お昼ご飯じゃなくて3時のおやつじゃん。」
「惨事のおやつって、そんなに悲惨なことは起きてないですよ?」
「惨事って・・・。天の言葉でさ、お昼ご飯を食べてちょっとしたらおやつを食べる時間があるんだよ。それが3時のおやつ。まぁ、必ず食べないといけないってわけじゃないんだけどね。」
「それいいなぁ。ねぇ隊長、うちの隊にもそれ導入しましょうよ!」
「それはあくまでお休みの時だけならいいよ。流石に仕事がある日には出来ないけど。」
「それでもいいですよ!」
「うんうん!私も!」
「それで、瑠偉は何でさっきから黙ってるの?」
「ひゃい!な、何でしょうか!?」
うわぁ~、瑠偉さん、めっちゃ緊張してるよ~。
瑠偉さん、ここが正念場ですよ!
「いや、俺が来てからずっと喋らなかったから機嫌悪いのかなって思って。」
「そ、そのようなことはありません!いきなり来られたので少し驚いただけで・・・。」
「それは悪い事をしたね。ごめん。」
「い、いえ、私が勝手に驚いただけなので謝らないでください。」
う~、こんなことを言いたいんじゃないのに・・・。普通に楽しく話したいだけなのに・・・。
そ、そうよ!いつも通り話せば良いだけじゃない!
「こうやってお休みをいただけた日に隊長とお話し出来ただけで嬉しいです。」
「そっか、良かった。俺も瑠偉たちとこうやってお喋りする機会は少ないからね。俺も嬉しいよ。」
そう言うと隊長は私たちに微笑みかけてくれました。うちの隊の大半の子はこの笑みにやられちゃったんだよね~。
「この隊長の笑顔は反則だよね~。恥ずかしくてお顔を直視出来ない~。」
「私も見れないです~。お、瑠偉さんは意外と大丈夫みたい・・・そんなわけはなかったですね。」
瑠偉さん、隊長のお顔を見たまま固まっちゃってます・・・。普段はキリッとしていてカッコいいのに隊長の前になった途端、緊張でガチガチになっちゃうんですよ。まぁ、そこが瑠偉さんの可愛いところなんですけどね♪
「三人ともどうしたんだ?いきなり顔を真っ赤にしちゃって。」
「そ、そんなことないですよ?ねぇ、瑠偉さん。」
「え!?そ、そうね。何でもありません。」
「???まぁ、いっか。」
良かったわ。隊長のお顔に見惚れていただなんて恥ずかしくて言えないもの・・・//。
「とりあえず俺も何か注文しようかな。店員さんいいですか?」
「はい。追加でご注文ですか?」
「はい。この麻婆豆腐とご飯を一つお願いします。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
・・・。
「なぁ、なんで北郷隊の女の子を見つけたらその度に北郷様が現れるんだ?」
「そういう宿命なんじゃないんすか?北郷様の。」
茶店で女の子を見つけ、しばらく観察していたら北郷様が現れ、食事を終えられぶらぶらされているとまた女の子に遭遇されて・・・。似たようなことがしばらく続き、俺たちは尾行を諦めることにした。途中でたまたま合流した趙雲隊の兵士たちも同じことを考えていたらしく、俺たち四人は尾行を終えると揃って溜め息を吐いた。
「最近、北郷様って改めて凄いお人なんだなって分かってきた気がする・・・。」
「前まではそこまでなかったのか?」
「いや、前は前で村に立ち寄っては女の子を惚れさせ、その事にお自分は気付かれていない。というか、賊の大将だった韓飛様を家臣にするほどのお方だ。しかも心底敬愛されている。」
「先日は大衆の面前で口づけされてましたっすからね~。きっと大物っすよ。」
「はぁ~、俺らもあのお方の一割くらいの女運があれば・・・。」
男たちが溜め息をつく光景はその日、昼夜問わず目撃されたそうな。そして、女性たちが一刀に見惚れている光景も、以下同文。その夜は城にて宴が開かれ、その日だけは兵士たちも無礼講で参加することを許可され大いに盛り上がった。そして夜が明け、黄巾党討伐の日を迎える。
あとがき コメントありがとうございます。拠点:兵士はどうだったでしょうか。最初は武将たちをそれぞれ出したあとに最終日に纏めて出そうと思っていたのですが、あれ?兵士もいるじゃん。じゃあ最終日は兵士たちに頑張ってもらおう!ということでこれにしました。これでやっと拠点フェイズ終了です。それでは次回 第参節:蒼天と黄天が交わるとき・・・出現! でお会いしましょう。
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何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。