No.499643

ほむほむとまどかの温泉旅行

まどか誕生日合わせて作ろうとした作品の前編
ボツ作品の寄せ集めともいう

とある科学の超電磁砲
エージェント佐天さん とある少女の恋煩い連続黒コゲ事件

続きを表示

2012-10-24 00:22:08 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1583   閲覧ユーザー数:1534

 

ほむほむとまどかの温泉旅行

 

 今日は10月1日。都民の日。

 でもここは群馬県で東京都ではないからあまり関係ない。

 だけど休みでないおかげでこうしてまどかの愛らしい顔を見ることができる。

 平日って最高だわ。

「まどかはあたしの嫁なのだ~。男子にモテモテになろうとするなんてあたしがそんなのあたしが許さない」

「きゃっ♪ もぉ~。さやかちゃんったら急に抱きつかないでよ~♪」

 まどかは美樹何とかに背中から抱きつかれてちょっと嬉しそうな声を上げている。

 しかも美樹何とかの右手はまどかのほとんどないペッタンコな胸に触れている。

 平日って最低だわ。

 生きる価値を全く見出せない醜悪な存在をこの目に映さないといけないのだから。

 まったく…寝取られてプッツンして自滅するしか能のない淫乱女がぁああああぁっ!!

 と、その時私のほむほむイヤーは銃のセーフティーロックが解除される音を聞き分けた。

 窓の外からだ。

 顔は動かさないまま目だけ動かして犯人を確かめる。

「ティロ……」

 制服姿のまま無表情で銃を構えている巴マミの姿を発見した。

 あのまどか好きの変態ストーカーは美樹何とかの蛮行が許せないらしい。

 勿論私としては止める謂われはない。

 正面を向いたまま静かに十字を切ることで彼女の行動に対する評価を表す。

 巴マミは一瞬私へと目を向けて頷いてみせ、そしてその悪を滅ぼす正義の銃弾を放ったのだった。

「フィナーレっ!!」

 サイレンサー加工が施された狙撃銃から弾丸が放たれる。

 照準は確実に美樹何とかのソウルジャムを狙っている。

 銃弾が当たれば美樹何とかは確実にジ・エンド。

 悲しみに暮れたまどかは私に癒しを求め2人は傷を舐めあうように結ばれる。

 そして1年後にまどかは私の娘を産む。

 完璧ね♪

 だがそこで全く予想外の事態が起きたのだった。

「さやか……危ねえっ!」

 赤い服の魔法少女が突然教室の中に入って来て巴マミの銃弾を槍で薙ぎ払ったのだった。

 あん子だった。

 

「と、突然どうしたんだよ、杏子?」

 命を救われたとも知らずに美樹何とかがあん子の登場に驚いている。

「どうしたもこうしたもねえ! 誰かがお前の命を狙ってやがるんだ!」

 あん子は美樹何とかの狙撃犯が誰なのだか気付いていないらしい。

 美樹何とかの危機を感じ取っただけで周りがよく見えていなかったのかも知れない。さすがは純愛型ストーカー。目標以外に対する理解が粗雑極まる。

 一方で私は目だけを動かしてもう1度窓の外を確かめてみる。

 巴マミの姿は既になかった。さすがはまどかの変態ストーカー。音もなく逃げる技術は敬服に値する。

「とにかく、さやかは狙われてるんだ。ここにいちゃ危ねえっ!」

 あん子はさやかを肩にひょいっと担いだ。さやかはくの字の状態で制服のスカートがずれ上がって何ていうかギリギリだ。

「ちょっ、ちょっと何すんのよ!? こんな担ぎ方されたら……恭介にパンツ見られちゃうじゃないのよっ!」

 スカートを必死に抑えつつバイオリン坊やを気にする美樹何とか。けれどそんなことは全くの無駄。

「だから僕は妹のそのふざけた幻想をぶち殺してやったんだよ。この右手でね」

「まあ。バイオリンを演奏する右手で実の妹をそげぶするなんて。上条くんは鬼畜ですのね」

 確か名前を上条京介といった坊やは恋人である本名不明のワカメと楽しくお喋り中。美樹何とかのことなんて欠片も見やしない。

「きょっ、京介~~~~~~っ」

 美樹何とかはガックリと肩を落として脱力した。

「よしっ! 今の内に逃げるぞ」

 一方であん子は顔をホクホクさせながら教室を出て行こうとしている。

 私はそんなあん子に向かって制服の中に隠し持っている細長い金属を投げて渡した。

「何だ、こりゃ?」

 あん子が鍵をキャッチしながら私に尋ねる。

「保健室の鍵よ。立て篭もるのには最適でしょ」

 まどかと2人で使おうと思っていた保健室。まどかに娘を産んでもらう為の婦婦の営みをする為の大切な空間の鍵。

 その鍵を美樹何とかを排除する為に敢えてあん子に渡す。

「分かった。借り受けるぜ」

 頷きながら受け取るあん子。

 あの食欲しか知らないお子ちゃまあんこが美樹何とかを期待通りにものにしてくれるのかは怪しい。

 出来れば二度とまどかに近付けなくなるように徹底的に調教を施して欲しい。もしくは愛の力であん子のことしか追わなくなる様にして欲しい。

 けれど、それは高望みだろう。しばらくの時間まどかに近付けなくなってくれれば十分だ。

 そうなることを願いつつ教室を走り去るあんこと美樹何とかを生暖かい目で見送る。

「ちょっ! どこ行く気なのさ~~っ!」

「言っただろ。独りぼっちじゃ寂しいもんな」

「意味わかんないわよ~~っ! 助けて恭介~~~~っ!!」

 2人の姿は見えなくなった。

 これでまどかを狙うお邪魔虫を1人駆除することに成功した。

 さて……。

 

「さやかちゃんと杏子ちゃん。一体どうしたんだろうね。めがほむちゃん?」

 可愛いくて大きな瞳を丸くしながらまどかが私の席へとやって来た。

「先生のいない保健室。女と女が1つベッドの上にいたらやることは1つよ、まどか」

 初心でお子ちゃまなまどかにさり気なく性教育を施す。

 近い未来に私と一つになる際に知識がないのでは困る。何も知らないまどかに1つ1つ大人の世界を教えるというのも魅力的だけど。

 ちなみに今の私はまどかの言うとおりにめがねを掛けている。髪形はみつあみ。

 昔ながらのめがほむスタイルだった。

 

 私も最初はデキる美少女転校生スタイルをとっていた。けれど、ある日ちょっとした気まぐれで元の格好で学校にやって来た。

 そうしたらまどかは瞳をキラキラと輝かせながら言ったのだ。

『普段の凛々しいほむほむちゃんも素敵だけど……めがねにみつあみ姿のめがほむちゃんも可愛らしくて親しみ易くて好きだよとっても♪』

 まどかのその瞳の奥にギラギラした野獣のにおいを感じ取った。体育倉庫に呼び出されれば純潔を散らされてしまうに違いない下種な肉欲の野望をまどかから感じ取った。

『まあ、まどかがそんなにもこの髪型を気に入っているというのならしばらく児戯に付き合ってあげるわ』

『わあ~。ありがとう、めがほむちゃん♪』

 まどかに背中から抱きつかれた。感じるほどの胸の感触はほとんどなかったがそれでも至福の瞬間だった。

 そして私はめがほむとして再び生を送ることに決めたのだった。

 

「保健室のベッドでやること? あっ、お昼寝だね。私も授業中に保健室に行ってお昼寝するの大好きだよ。ウェヒヒ」

 まどかはいたずらっ子な表情を見せながら陽気に笑ってみせた。

「まったく、まどかはただでさえ成績が良くないのだからサボることを考えないでしっかり授業を聞かないと駄目じゃない」

 この小悪魔は、無邪気な小悪魔は微笑み1つで私の理性を突き崩す。女神のようなオーラを放ちながらその実は淫魔。本当に恐ろしい子だ。

「めがほむちゃんに怒られちゃった~♪」

 怒られたと言いながらまどかはどこか楽しそう。

 まどかは私がめがほむになってからより親しく接してくれるようになった。だけど困ったことに私の注意を聞いてくれなくなってしまった。

 舐められているとも言えるがまどかは無罪。だって可愛いのだから。可愛いは正義なのだから。

 

 と、こんなことをしている場合ではなかったわ。

 そろそろ本題に入らないと。

「まどかは明後日の3日は何か予定入ってる?」

 さり気なくを装いながらまどかの予定を尋ねる。

 10月3日はまどかの14歳の誕生日。

 つまりこの世界で最も偉大な記念日。

 まどかを如何にしてもてなすか。そして如何にしてまどかと身も心も一つになるか。

 それだけがここ数日私の頭を占めている事象だった。

「あっ、めがほむちゃん。もしかして私の誕生日を覚えていてくれてるの?」

 まどかがパッと顔に花を咲かせた。

「…………そうよ」

 本人にそれを確認されてしまうと立つ瀬がないというのに困った子だ。

「えへへへ。ありがとうね♪」

 まどかが無邪気に手を握って来た。

「めがほむちゃんは優しいね♪」

 

 な、何なのっ!?

 何が起きていると言うの!?

 も、もしかしてこれは……まどかに誘惑されているっ!?

 

『ねえねえ、めがほむちゃん』

『何?』

『私、14歳になった記念にめがほむちゃんを肉奴隷としてプレゼントして欲しいなあ♪』

『そっ、そんな!? に、肉奴隷なんて駄目に決まってるわ。私達は中学生なんだからもっと健全なプレゼントを……』

『まったく、めがほむちゃんは固くてうるさいなあ。私の性欲を満たして子供を産ませるぐらいしか使い道がない癖に』

『使い道ってそんな人を道具みたいに……って、きゃぁあああああぁっ!?』

『肉奴隷のめがほむちゃんには誰がご主人様なのか今すぐ教えてあげるよ。その身体にね』

『い、今すぐって……ここは教室なのよ!? そんなの、嫌よっ! た、助けてっ!』

『騒いだって無駄だよ。みんなめがほむちゃんが私に滅茶苦茶にされる瞬間を楽しみにしているんだから。さあ、観念してもらうよ。ウェヒヒ』

『いっ、嫌ぁああああああああああああああああああぁっ!!』

 

「どうしたの?」

 気が付けばまどかが心配そうな表情で私を見ていた。

 私の中のまどかはいつだってワイルドタイガー。バニーちゃんな私は翻弄されるしかない。

 でも、現実のまどかはまだそのワイルドぶりを私に見せてはくれない。

「別に何でもないわよ」

 めがほむになってもクールキャラを保っている私はちょっと素っ気無く返した。

 今の私は容姿はめがほむでも、中身はクールビューティー転校生という設定なのだから。

「それで、10月3日は空いているのかしら?」

 まどかだって恋人確定の私と過ごしたいに決まっている。だからこれは質問というよりも確認事項。

「それがね……3日はもう予定が埋まっているの」

「…………そう」

 心の中でキープクールと唱える。

 男とデートだったら、その男を明日までに最も残酷な方法で殺害すれば良い。

 女とデートだったら、その女を明日までに最も残酷な方法で殺害すれば良い。

 ただそれだけのこと。

 さあ、私に殺されたいのは一体どこの誰なのかしら?

「家族で温泉に行く予定なんだ」

「…………そう」

 まどかの家族ということは私にとっても家族。

 その家族を殺害だなんてとんでもない。

 まどかが家族と楽しく誕生日を過ごすというのを邪魔することなんて出来ない。

「でも、3日は平日じゃない?」

 まどかはキョロキョロと周囲を見回しながら顔を近付けて来た。

 なっ、何なの、この顔の近さはっ!?

 まさかキス。キスするつもりなのっ!?

「だからね、明日の学校が終わったら出発して3日は学校をお休みするの。クラスのみんなには……ナイショ、だよ」

 まどかは本当に小悪魔だった。

「まったく。学生が誕生日を理由に学校を休むだなんて」

「それは分かっているんだけどぉ~。でもママが会社休める日がたまたま3日で、温泉にでも行って羽を伸ばしたいって言うから~」

 まどかは嬉しそうで困った顔をしている。

「とにかく正当な理由なく学校を休むことは認められないわ。でも……学校自体が休校になるなら、問題ないわよね」

「へっ?」

 まどかが首を傾げた瞬間だった。

 ボーンという巨大な爆発音が校舎内で起きたのは。

「えっ? 何? 何が起きたのかな、めがほむちゃん?」

 爆音に驚き私にしがみついて来たまどかが尋ねる。

「神様からの素敵なプレゼント。じゃないかしら?」

 まどかを抱き締め返しながら不安を取り除くように優しく諭す。

 すると間もなく放送が入った。

『ただいま保健室にて正体不明の爆発が起きました。被害の規模は不明ですが生徒及び教職員はただちに校庭に避難してください』

 予定通りの放送が入る。

「ばっ、爆発だってめがほむちゃん。こ、怖いよ~~~~」

「大丈夫よ。貴方は死なないわ。私が守るから」

 まどかを固く抱き締める。

 無人の保健室を狙って爆発したつもりだけど、誰かいたような気がしないでもない。

 でも、そんな些細なことはどうでも良かった。

 まどかが私を頼ってくれるのなら。

 

 そして私の予想通り今日から見滝原中学校は1週間の休校を迎えることになった。

「これでまどかは学校をサボる必要はなくなったわね」

「でも、いいのかな? 学校がこんな大変な時に私だけ家族旅行に行っちゃって…」

 恐縮するまどか。

 そんな彼女に向かって優しく微笑む。

「きっとこれはいつも一生懸命に頑張っているまどかに神様がくれたプレゼントなのよ。だからありがたく受け取るのが吉よ」

 私がまどかに密かに贈れるプレゼントはこれぐらいのもの。

 だからまどかを気持ち良く送り出してあげたかった。

 

 でも一方で私は……まどかと一緒に温泉に行きたいという欲望に脳を支配されつつあった。

 

 

「それで折り入って僕に話って一体なんだい、暁美ほむほむ? めがほむと言った方が良いのかな?」

 自宅(年季入った2階建てアパート)の庭。私の目の前にいるのは淫キュベーダー。

感情を持たないことを言い訳にして少女たちを騙しては魔女化させてきた生粋の詐欺師。

 この淫獣にだけは絶対に気を許してはならない。

 あたしは慎重に、殊更慎重に話を進めないといけない。

 そう、決して甘言に騙されないように。

「多重契約をしたいのよ」

 慎重に本題を切り出した。

「うわっ。僕も長い間魔法少女のコーディネーターを勤めてきたけれど、詐欺をこんなに堂々と持ち掛けられたのは初めだよ」

「それで、願い事を追加することはできるの? できないの?」

 私にはこの命と引き換えにしてでも叶えないといけない夢がある。

「そんなの不可能に決まっているだろう? 魂をソウルジャムに変えられるのは一度きりなのだから、叶えられる願い事も1つだけに決まってるよ」

「叶えてくれないと、巴マミに差し出すわよ。友達として」

 淫キュベーダーはビクッと体を振るわせた。

「……実は、幾つでも願い事は叶えられるんだ。1つと言った方が魔女化させやすくて誰にも言わなかったけど」

 そして俯きながら遂に白状した。数千年に渡って繰り返してきた詐欺の実態を。

「それじゃあ、私の願い事をもう3つ叶えてもらうわよ」

 キュゥべえにジリジリと近寄る。

「お手柔らかに頼むよ」

「大丈夫。宇宙の因果律までは壊しはしないわ。ええ」

「その願いとは一体なんだい?」

 仏様に祈るように両手を合わせる。

 そして清らかに澄み切った心で心からの願い事を唱えた。

「私はまどかと一緒に温泉旅行に行きたいの」

 まどかと温泉旅行。

 それは女の子同士だから何の不思議もない行事。いえ、温泉に1回も行かないことこそがおかしい。魔法少女モノで一度も温泉に行かないなんてあり得ない。

 よって私は魔法少女アニメが本来あるべき姿になることを提唱する。

「それは君の命を賭けるに値するものなのかい、暁美ほむほむ?」

「まどかと一緒に温泉に入れば私は99%の確率で鼻血による失血死を迎える自信があるわ。これは命を賭ける願い事で間違いないでしょう?」

「最低だね、君は」

 最低の詐欺師に最低と言われてしまった。

 まあ良い。

 

「さっさと願いを叶えなさい」

「ほむほむが自分で誘えば良いだけの気がするよ。まどかも君の誘いなら断らないと思うよ、きっと」

「わっ、私から温泉に誘うなんてなんて破廉恥なことを言うのかしらっ!?」

 両腕で自分の体を抱きしめ、前屈みになって体を隠す。

「女の私から温泉……しかもお泊りを申し出るなんて恥ずかし過ぎるわよ!」

「鹿目まどかも女じゃないか」

 淫キュベーダーには人の心がわからない。

「私から温泉旅行を誘ったらきっとまどかに淫乱な女だって思われる。まどかの中で私は24時間エロいことしか考えていないビッチな雌豚だって誤解されちゃうわ!」

「誤解も何も事実じゃないか」

 淫キュベーダーには人の心がわからない。

「そして私はまどかの友達からペットに格下げされて、裸で首に鎖を繋がれてまど部屋で飼われて、まどか専用の性奴隷として雌豚ライフを送ることになるの! 最高じゃない!」

「僕がほむほむの願いを叶える必要はどこにもないように思えるのだけど?」

 淫キュベーダーには人の心がわからない。

「いいから早く叶えなさいっ! まどかと私が一緒に温泉旅行に行けるようにっ!」

「僕の肺と心臓だけを治癒魔法で再生しながらジワジワとなぶり殺すのはやめて欲しいなあ。でもそんなことをしても僕には感情が……って、魔法で痛覚と痛みに苦しむ感情を植えつけたのかい? ぎゃぁああああああぁっ!!」

 淫キュベーダーに人間のことをもっと知ってもらおう。

「それで、願いを叶えてくれるの? 叶えてくれるのなら、私は貴方に安寧をもたらしてあげても良いわよ」

「君は僕よりよほど人類にとって危険な存在なんじゃないかい? ぎゃぁああああぁっ!」

「叶えるの? 叶えないの?」

「わ、わかった。望みを叶えるから僕を痛めつけるのも、不快な感情だけを植えつけるのもやめてくれないか?」

「そう。わかったわ。今、貴方に安寧をあげるわ」

 人類と淫キュベーダーは有史以来初めて和解を果たした。

 頭を打ち抜く1発の銃弾によって。

「あ、暁美ほむほむ? 肉体を入れ替えた時の痛みの感情が忘れられなくて僕は頭がおかしくなりそうなんだけど?」

「おめでとう。貴方は痛い・辛いという感情を魂の奥からインプットしたのよ。これで貴方は1歩人間を理解することに近付いたわ。これからも、その体が傷付くと痛いわよ」

 銃口を淫キュベーダーに向けながら伝える。

「君は魔女を越える邪悪な存在だね」

「これからは口の利き方に気を付けるべきよ、淫キュベーダー」

 私の銃の引き金は軽い。2秒後、キュゥべえは絶叫し、また新たな体に入れ替わることになった。

 

「わかった。君の願いを3つとも叶えるからこれ以上僕に痛みを植え付けないで!」

 キュゥべえは焦っていた。

「ちなみに1つ目はもう叶えているわ」

「えっ? いつの間に?」

「さっき、貴方と会話している最中にザ・ワールドを発動させて、見よう見まねで貴方に願いを叶える時の仕草を取らせて奇跡が起こるか実験してみたの」

「僕は何とかに刃物という言葉が君ほど似合う少女を知らな……うぎゃぁあああああぁ!」

 今まで痛みを認識できなかった淫キュベーダーは迂闊過ぎる。雉も鳴かないなら撃たれないって言うのに。

「それじゃあまさか、ほむほむが叶えた1つ目の願い事というのは!」

「そうよ。貴方に一部の感情を植え付けること」

 ニヤッと微笑んでみせる。

「でもね所詮は猿まね。植えつけた筈の3つの感情の内、発動が確認できたのは1つだけ」

「後の2つは何だと言うんだい!?」

 キュゥべえが痛みを堪える瞳で私を見る。それはキュゥべえが持っている唯一の感情。

 でも、私はほんのちょっとの慈悲で淫キュベーダーに他の感情も知ってもらいたかった。

「ゲロの海に身を沈めた時にだけ感じられる喜びの感情」

「僕はゲロの海の中にいる時にしか喜びを感じられないのかい!?」

「酷く歪んだ存在ね、貴方は」

「それを願ったのは君だろっ!?」

 淫キュベーダーと人間が真にわかり合うにはまだまだ時間が掛かりそうだ。こんな変態と少なくとも私はわかり合いたくない。

「それと、中年オヤジのお尻に夢中になって臭いを嗅ぎたくて溜まらず悶々として、しまいには狂い死にしたくなる快楽の感情を植えつけたの」

「何でよりによって中年オヤジなのさっ!?」

 その時、まどかのお父さま、つまり私のお義父さまがアパートの前を通り掛った。

 買い物袋を提げたお父さまは淫キュベーダーの姿を確認すると、ニコッと笑った。

「さあっ」

 そしてお父さまは私たちに背を向けると、おもむろにズボンとパンツを脱ぎ捨てた。

 お義父さまのプリンとした肉付きの良いお尻が私たちの前に晒される。

 お義父さまでなかったら撃ち殺している所。だけど、お義父さまだから許す。私はまどかの嫁なのだからまどかの父親は私にとっては神にも等しい存在。故に、無罪。

「ふ~。暁美ほむほむの願い事発動が中途半端で良かったよ。僕はまどパパのお尻を見ても何とも思わな……あっ、あれ? まどパパのお尻が気になって視線が逸らせないっ!?」

 お義父さまは顔だけ振り向いて誇らしげな表情を浮かべている。さすがはまどかの父親。因果律の歪み方がパネェわ。

 

「まあ、そんな訳で私が願い事を貴方に発動させると中途半端な効き方しかしないのよ」

「僕にとっては最悪を10度ほど枕詞にしたいほど嫌なことが既に叶っているのだけど?」

「バカね。願い事は3つと言った筈よ。まどかとの温泉旅行を叶えてくれたら、貴方にも良いことがあるわよ。私だって鬼ではないのだから」

 ほっこりと微笑んでみせる。

「わかった。君の要求を呑もう。魔法少女コーディネーターである僕は自分の願い事を叶えることはできないからね」

 キュゥべえは承諾し、その体を光らせ始めた。その動作を一つ残らず目に焼き付けていく。

「さあ、暁美ほむほむ。命と引き換えに値するたった1つの願い事を唱えるんだ」

 たった1つじゃないけれど、私は理想の限りを訴える。

「私は……まどかと一緒に温泉旅行に行きたいのっ!」

 まどかと裸のお付き合い。

 そして、夜は野獣と化したまどかに思うがままに弄ばれる私。弄ばれるまどかでも可。そんな一夜を過ごせば2人の間にベイビーが出来てしまうのは当然。むしろ出来ろ。

 大丈夫、3人ならどんな苦難も立ち向かっていくことができるわ。私とまどかと私たちの娘の3人なら……。

「何だか邪念ばかり感じるけれど、とにかく君の願いを叶えるよ!」

 ソウルジャムが一時的に私の体から離れて光り輝く。煙幕にサーチライトを当てたような濁った光が辺りを包み込む。

 そして──

「君の願いは叶ったよ、暁美ほむほむ」

 キュゥべえはほっこりと微笑んだ。

 それからすぐに奇跡は起きた。

「暁美ほむほむくん。実は今日、君に話があってこちらに寄らせてもらったんだ」

 お義父さまが私に向かって歩いてくる。

 下半身丸出しのまま。

 お義父さまでなかったら撃ち殺している所だけど、お義父さまだから許す。

「実は妻が温泉旅行に行きたいと言っていてね。家族旅行をすることになったのだけど、僕に急に予定が入っちゃってね。それで、代わりと言ってはなんだけど、まどかの親友である君に娘の旅行に同行してもらえないかなと思って」

「一生ついていきます、お義父さま」

 膝を折って最敬礼を取る。しゃがんだ事でお義父さまの何かが目の前に見える位置になったけれど気にしない。お義父さまのお尻を爛々と輝く瞳で見ている淫キュベーダーが気になるだけ。中年オヤジのケツがいいなんて、文字通りの淫獣ね。汚らわしい。

「出発は明日で急ですまないけれど、娘をよろしくお願いするよ」

「娘さんは一生涯私が幸せにしますっ!」

 お義父さまはニッコリと微笑むとお尻をプルンプルン振りながら去っていった。下半身露出したまま。

「まどパパの放つエロスはぺったんこなほむほむやまどかの数百倍、いや、宇宙のエントロピーを凌駕する。つるぺたほむほむには何の魅力もないって僕もようやく理解できたよ」

「死になさい」

 キュゥべえを新しい体にまた交換する。

 

「それで暁美ほむほむ。そろそろ3つ目の願い事をして僕をこの痛みから解放してくれないと、本気で魂が消滅しそうなんだ」

「ええ。わかったわ」

 3つ目の願いを叶えるべく、ゆっくりと移動しながらキュゥべえの前に立つ。

 この3つ目の願いが叶わない限り、私の計画は完璧に至れない。

「3つ目の願いは僕に良いことが起きるんだろう? 早く、この痛みとゲロと中年オヤジのケツにしか感情を覚えられない悲惨な状態から解放しておくれよ」

「ええ。解放してあげるわ。でもね、貴方の想定とはちょっと違うやり方でね」

 ニタッと笑う。

「その歪な笑みは一体!?」

「私の願いはね、有史の影にずっと存在し続けながら、感情がない故に人間と心を通わせることが出来なかった可哀想なキュゥべえに巴マミを永遠の友達にしてあげることなの」

 クックックと笑みが漏れ出て止まない。

「な、何を言っているんだい、暁美ほむほむっ!? 巴マミは“ぼっち”だ。彼女は既に“ぼっち”の概念に到達している存在なんだよ!」

「そうでしょうね。アルティメット・まどかよりよほど巴マミ=ぼっちの方が強い概念でしょう。ええ、わかるわ」

「その巴マミに永遠の友達だなんて宇宙が一瞬にして消失しかねないほどの矛盾が生じる」

「ええ、そうでしょうね。大きな矛盾が起きるわよねえ。じゃあ、矛盾を最小限に抑える為に宇宙はどんな選択をするかしらね」

 笑いが止まらない。

「ま、まさか君はっ!?」

「さようなら、淫キュベーダー。これでも私は貴方のおかげでまどかと温泉にいけることになったのを感謝しているのよ。……ザ・ワールド」

 時を止めてキュゥべえの体を動かしながら願いを発動させる。

「キュゥべえを……巴マミの永遠の友達にしてあげて」

 最後の言葉はキュゥべえの耳にも届くようにザ・ワールドを解除した状態で。

 ソウルジャムが輝き出し、その光が私とキュゥべえを包み込む。

「ぼ、僕の体が、存在が、消えていくっ! こ、これは一体!?」

「実体のまま巴マミの友達で居続けるなんて不可能に決まっているじゃない。だから貴方はなるのよ。巴マミの脳内友達という概念にっ! エア友達にっ!」

 キュゥべえが光の中にかき消されていく。ぼっちであることを宿命付けられている巴マミの友達になる以上、実体として存在できる訳がないのだ。

「何故君は僕を消そうとするんだ、ほむほむっ!? エア友達なんて、巴マミのぼっちを強固にするだけの存在じゃないか!」

 キュゥべえが吼える。コイツ、絶対感情あるだろってぐらいに激しく。

「私はね、少女たちの願いを無差別に叶えていく貴方が邪魔になったの」

「何故だい? 僕はこれでも一応少女の夢を叶える手伝いをして来たつもりだ。君だって僕に勇気と機会をもらった少女だろう?」

「だって……次に願いを叶える女がまどかの独占を願わないとは限らない。なら、その芽は潰しておかないとダメじゃない。ねえ、その芽となる淫キュベーダーさん」

 コイツが少女の願いを叶え続ける限り私のまどかは誰かにさらわれてしまう可能性が消えない。

 なら、淫キュベーダーを消して少女の欲望に満ち満ちたエロ過ぎる願いが叶わないようにするのみ。

「確かに僕を概念化させてしまえば、魔法の力でまどかを奪われることはなくなろうだろう。でもね……」

 消失する直前、淫キュベーダーは私を見ながら黒い笑みを浮かべた。

「まどかは女の子じゃなくて格好良い男の子の方が好きなノーマルな思考の持ち主なのさ。ほむほむ。君の想いが成就することはないんだよ。はっはっはっはっは」

「なっ、なんですって~~~~っ!?」

 それは私の知る世界を根本から否定する一言。

 私はキュゥべえが何を血迷っているのか問い質そうとした。

 だが、地球に繁栄と絶望をもたらしてきた淫キュベーダーは消えてしまった。概念に成り果てて私の前から永久に消えてしまったのだった。

 

「まあ良いわ。これでまどかの誕生日はまどかと温泉旅行を楽しめることになった。最高よ。まどかと2人、最高の誕生日を過ごせるじゃないの」

 目の前が晴れ渡っていくのを感じていた。

 10月3日は最高の日になる。

 それを確信して疑うなんてできない。

「最高の誕生日をプレゼントしてあげるわ……まどか~~~~っ!!」

 私は自分の人生の勝利を高らかにうたい上げたのだった。

 

 

 

 翌10月2日午後2時。

 午前中で仕事を終えたというお義母様と合流すべくまどかとタッくんと共に駅に向かって歩く。

「でも驚いちゃったなあ。パパの代わりにめがほむちゃんが参加することになるなんて」

「家族水入らずの旅行にお邪魔してしまってごめんなさいね」

 私が望んだこととはいえ、まどかにとってはせっかくの家族旅行に水を差されたことになる。

 私はお邪魔虫……だろう。

 それを悟ると急激に落ち込んでしまう。

「ちっ、違うのっ!」

 まどかは慌てて大きな声を出した。

「私はね、めがほむちゃんと一緒に温泉旅行に行けることになってとっても嬉しいんだよ♪」

 まどかはパッと顔を輝かせた。

「本当?」

「本当だよ♪ 私はめがほむちゃんと一緒でとっても幸せなんだよ♪」

 まどかはタッくんの左手を私に握らせた。

「今日はめがほむちゃんにタッくんのパパ役をしてもらおうかな~? パパと同じでめがねを掛けているしね」

「えっ?」

 まどかは一体何を言っているのだろう?

「でね。私はタッくんのママになるの。どうかな? ウェヒヒ」

 まどかの提案を聞いて私は一瞬目の前が真っ白になった。

「それって、それって……私とまどかが夫婦、みたい……」

 そんなうれしい申し出を現実のまどかから聞けるなんて……。

 感動のあまり魔女化してしまいそうだった。

「えっ? もしかして私と夫婦なんて嫌だった? パパ役なんて嫌だった?」

 勘違いしたまどかは当惑しながら声を掛けて来る。

「違うわ」

 いつもの私らしく毅然とした態度で背筋を伸ばす。

「私は夫としてパパとしての覚悟を固めていただけよ」

「へっ?」

 まどかの顔をジッと見つめる。

「この旅行の間、貴方のごっこ遊びに付き合ってあげるわ」

 髪を掻き揚げながら極めてクールに、かつ優雅に言ってのける。

「じゃあっ」

 期待の瞳を見せるまどか。

 私は彼女にコクンと頷いてみせた。

「旅行が終わるまで私はまどかの夫でタッくんのパパね」

 内面の歓喜の喜びを表情に出さないように艶っぽく言ってのける。

「うん。それじゃあ旅行が終わるまでよろしくお願いするね……ア・ナ・タ♪ なんちゃって♪」

 まどかが私のことを可愛らしくア・ナ・タ……だなんて。

「めっ、めがほむちゃんっ!? 鼻血が、口からも耳からも血が出てるよ!?!?」

「鼻血は心の汗だから心配要らないわ」

「鼻だけじゃなくて色々な所から、遂には目かも血が~~っ!?」

 

 こうして私とまどかの1泊2日の温泉旅行は最高の始まりを告げた。

 

 

 

 

「ねえ、エア友達のキュゥべえ。暁美めがほむさんの幸せをぶち壊せば私にもっと友達が増えるというのは本当なのかしら? まあ、私の後輩魔法少女になる筈だった鹿目さんに近付いている時点で以前から邪魔に思っていたのだけど」

 

「昨日の爆発事件で行方不明になってしまったさやかさんを偲ぶ旅行を企画するなんて上条くんはとてもお優しいのですね。惚れ直してしまいますわ」

「昨夜、さやかが僕の枕元に現れてね。犯人は今日から温泉に向かう筈だって囁いたんだ。だから僕は……温泉に行ってみようと思うんだ」

「犯人確保に余念がないとは素敵ですわ。そんな上条くんに従って私も一緒に温泉に同行しますわ。宿泊まで同行を……ポッ」

「志筑さんとは別々の部屋を確保しておいたから安心してね」

「チッ……このへたれ坊やが。……犯人探しよりも私を堪能しろっての」

 

 そして私はまだ近付きつつある嵐に気付いていなかった。

 

 

 つづく

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択