そして数日後、クラス対抗戦が開かれた。最初の対戦カードは・・・・・なんと一夏と鈴音だった。
「運命の悪戯にしちゃ出来過ぎてるな。まあ、お前なら問題無くやれるだろう。途中でちょっとしたサプライズが起こるかもしれないが、心配するな。」
「サプライズ?・・・・・束さん、ですか?」
「良くご存知で。物わかりの良い奴は好きだ。武装の調子はどうだ?」
「大丈夫でした。中々に面白い物で。俺もこれで使える武装が増えましたよ、左腕に元々装備されている物でしたし。『
「行って来い。」
一夏は無言で頷き、アリーナに射出された。上空では鈴音が既に待機している。
「鈴音、勝ったら聞かせてもらうぞ。何故お前があのデッキを持っているかを。」
試合開始のブザーがなると同時にダークバイザーを使って攻撃した。鈴音はそれを青龍刀の双天牙月で受け止め、押し返す。数合か打ち合うと、鈴音が両肩のアンロックユニットから放つ衝撃砲を使用した。
『Guard Vent』
だが、当然それが効く筈も無く、ウィングウォールによって全て防がれた。
「え?!嘘!」
「あの時は使わなかったからな。勝負中に手札って物はおいそれと見せる物じゃない!」
近付きながら左腕の一対の翼の形をしたパーツが左右に弓の様に開き、黒い矢が放たれる。鈴音は咄嗟にそれを避けたが、爆発の余波と熱でダメージを受けた。
「こんのお!!」
接近して来るのを迎え撃ちに行く為に、イグニッションブーストを使って更に速く接近し、ダークバイザーを振るおうとした瞬間・・・・・爆発が起き、アリーナのシールドが破られた。
「おいおい・・・・(サプライズってのはあれか?!)」
現れたのは自分と同じフルスキンタイプのISであり、腕が異様に長く、砲門やブースターがそこかしこに付けられた物だった。
「なんだありゃ・・・うおっと?!」
一夏は突然攻撃を仕掛けて来たISから距離を取った。
「何なのコイツ?!アリーナのシールド突き破るなんて・・・・こんなの食らったら只じゃ済まないわよ?!」
「そう言う事か・・・だったら、遠慮はいらないな。鈴、下がってろ。お前のISじゃ、あいつには傷を付けられない。山田先生、織斑先生、コイツは俺が足止めしますけど、良いですよね?」
『良いだろう。上級生達が現在システムのクラックを行っている。それまで時間を稼げ。最悪倒してしまっても構わん。』
『お、織斑先生?!』
「五分もあればどうにかなります。その間に避難誘導をして下さい。あのビームがもし観客に当たったら・・・・死人出ます。」
通信を切ると、DDウィングを閉じ、ダークバイザーにカードを装填した。
『Nasty Vent』
ソニックブレイカーで思考回路がおかしくなったのか、そのISは奇怪な動きを始めた。
「さっさと片付ける。消えろ。」
「待って一夏!こいつ人が乗ってるのよ?!」
「いや、乗ってない。生体反応はないからな。思いっきりぶち壊してやるよ。」
『Trick Vent』
「そんな・・・・無人機なんて聞いた事無いわ!!」
「俺がコイツをこの場で潰す。今は頗る気分が悪いんだ。折角色々と聞き出せる場が設けられたのに、水の泡になってしまった。」
八人に分身して、零落白夜を最大で発動、四人はDDウィングを一斉掃射、残り四人はフルスキンの謎のISをバラバラに切り裂いた。
「ふう・・・・・っち!」
『Final Vent』
気配を感じ、上空に現れたもう一体の
「汚い花火だな。」
肩にウィングランサーを担いで首を回した。
(凄い・・・・あの無人機をたった一人で、それも二体とも・・・・勝てる筈、無いわ・・・!!)
「ふう・・・・」
残骸の中からISのコア二つを摘出した。
「先生、これ、無登録のISコアです。」
『分かった。良くやった織斑。』
『あー、そうそう、一夏。ちょっと俺からのお知らせ。お前の幼馴染みが別の管制室のマイク取ってお前を応援しようとしたみたいだから森次に捕縛させた。あの状況で余計に混乱するかもしれないからさ。どうする?』
『く・・・・離せ、貴様!!』
「教師陣に任せた方が良いと思う。」
ISを解除し、ピットに戻った一夏は管制室に向かう。そこでは、森次のワイヤーに縛られている箒がいた。千冬はそれを睨み付けている。
「あの時私に出来る事はあれしか」
「ふざけるなよ、小娘。お前一人が言った所で状況が何か変わる訳でもない。変わったとしても、お前が場を更に混乱させるだけになる。結果的には死人、怪我人は出なかったが、もし出ていたら、お前はどう責任を取る?死人は戻らんのだぞ?」
千冬の底冷えする様なドスの効いた声に、箒は竦み上がった。
「普通ならば軍法会議物だが・・・・一週間の自室謹慎処分にする。離してやれ。」
森次はワイヤーを収納して司狼の後ろに下がった。立ち上がった箒に、一夏はこう囁いた。
(お前じゃ、ライダーにはなれないな。その内死ぬぞ。力とは、使い方次第では己の破滅を招く。)
「DDウィングの実戦データもそれなりには集まった。改良の余地はまだあるかな。(その為のカードも作ってるし。)一先ず帰るぞ。」
箒を取り残し、管制室は空になった。
(何故だ・・・・・私は、私は一夏の為に・・・・)
握り締めた手からは、血がポタポタと流れ出していた。
「あーあ・・・・これで試合は中止か。残念だ。」
一夏は廊下から窓の外を眺めてそう言った。
「一夏・・・・」
「何だよ?」
「その・・・・・あの、ね・・・・・私は」
「一夏さん!!」
後ろからセシリアが駆け寄って来た。
「セシリア。他の皆は大丈夫だったか?」
「ええ、一夏さんこそお怪我はありませんでしたか?」
「俺は見ての通りさ。あー・・・・・ちょっと鈴と話があるから、少し外しててくれるか?」
「分かりましたわ。(話とは・・・・・まさか鈴さん、一夏さんに・・・!!)」
セシリアがいなくなったのを確認すると、再び鈴音に向き直る。
「で?何を言いかけてたんだ?」
「私が、ライダーになった理由・・・・それはお父さんとお母さんとまた三人で一緒に暮らしたいから・・・・それでまた、昔みたいに一夏や弾と一緒に馬鹿やって騒いで・・・・だがら・・・っ!」
鈴音の目には涙が浮かんでおり、段々と涙声になって来ている。
「分かった。それなら、俺は別に構わない。ライダーになったら、その宿命からは死ぬまで逃れられないと言うのを理解しての上でやったなら俺は止める気は無いし、何も言わない。だからもう泣くなよ。今夜、何か美味いモン作ってくれるか?」
「・・・・っうん!」
(ふーん、あいつの願いはあれか・・・・親を捜し出すのは、簡単だがな・・・・問題はこれから起こる事だ。)
「社長。」
「おお、斉藤さん。ワザワザありがとうね。」
「いえいえ、再び法曹界に返り咲けたのは社長の恩恵があってこそですから。今回の訴訟もかなり儲かりそうですしね。今度また、お食事にでもご一緒して頂きたい物です。フランスが相手とは、え私も腕が鳴ります。」
「気合い十分で何よりだ。では、いつも通り、成功報酬の20〜25パーセントは」
「分かっています。それが契約ですし、私の義ですから。」
「それは何よりだ。それより・・・そんな所で何をしているんですか?織斑先生。盗み聞きとは感心しませんよ?」
「何故弁護士がここにいるのだ?」
「俺の、というか企業の顧問弁護士だから。早速餌に食らい付いて来た奴がいるからね、どの企業か分かり次第潰すつもりだ。その訴状とか下準備の為に来てもらっただけですから、ご心配無く。」
「・・・・・・お前・・・・・一体何が目的で・・・・・?!」
「言ったでしょう?俺はこの世界を変えたいって。だから、俺はいずれこの世界を元に戻す。そして、色々と暴こうかと思ってる。例えば・・・・白騎士が誰なのか、とか、本当に怪我人、死者があの事件で出なかったのか、とか、ね?」
司狼のその顔に、千冬は悪寒を感じた。その奈落の様な底知れぬ瞳に・・・・
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クラス対抗戦、スタートです。新しい武装が出ます。恐らくオリジナルのアドベントカードも出しますので、よろしくお願いします。