キリトたち9人は安全エリアで休息ついでに話をしていると遠くから、やけにそろった足音が聞こえて来た。
アスナ「キリト君、軍よ。」
アスナがそう言ったとき、軍のプレイヤーは、ちょうど入口から入って来る所だった。
相当に疲弊しているようだ。
身に纏った黒鉄色の鎧が重いと主張するように肩を落としている上に、足取りも重く、剣士らしき六人のうちの五人は、腕に付けた城の紋章が描かれた盾を持つのが辛そうだ。
それでも編隊を崩さずにキリト達とは反対側の壁に停止した。
?「休め!」
司令官と思われるプレイヤーが言うと崩れ落ちるようにその場にへたり込んだ。
男は隊員を睨みつける様な視線を送った後、キリトたちの入る方に向かって歩いて来た。
デュオ「俺が相手をする。みんなは下がってて。」
デュオはキリトたちにそう告げると前に進み出る。
?「私は、アインクラッド解放軍、コ―バッツ中佐だ」
デュオ「デュオ、ソロだ。」
コーバッツ「君たちはもうこの先も攻略しているのか?」
デュオ「ああ、ボス部屋の手前までマッピングしてある。なんならマップデータを転送しようか。」
コーバッツ「ああ、そうしてもらいたい。」
それが当然のことであるかのように言うコーバッツにクラインが反応する。
クライン「てめえ!!マッピングする苦労がわかって言ってんのか!?」
クラインに続いてアスナもコーバッツに食って掛かる。
アスナ「未攻略区域のマップデータが高値で取引されてるのを知らないの!?」
2人の言葉にコーバッツも言い返す。
コーバッツ「我々は、君ら一般プレイヤーの解放のために戦っている。諸君らが協力するのは当然の義務である!」
アスナ「ちょっとあなたね・・・!!」
クライン「てめえな・・・!!」
デュオ「戦っている・・・ね・・・」
デュオの一言で騒いでいたアスナとクラインが口を閉じる。
デュオ「1年近く街に閉じこもって震えてた奴らの台詞とは思えないな。」
デュオの言葉にコーバッツは不快そうな顔をする。
デュオは余裕そうな笑みを浮かべるとマップデータを送信する。
デュオ「まあいいや。ほい、これでデータは転送したよ。」
転送されたデータを見たコーバッツが言う。
コーバッツ「協力感謝する。」
しかし、全く感謝しているという様子は無い。
むしろ手間を取らせるなという感じだった。
デュオ「先に言っておくけど、ボスには挑まないほうがいいと思うぞ。」
コーバッツ「それは、私が判断する。」
デュオ「はいはい。じゃあせめて、仲間をもう少し休ませてやれよ。かなり消耗してるみたいだし。」
コーバッツ「私の部下は、この程度で音を上げるような軟弱者ではない!!」
デュオ「それはお前じゃなくて、本人が決める事だろう・・・」
コーバッツはデュオの言葉を無視して、すたすたと仲間のいるところへ戻る。
コーバッツ「貴様等さっさと立て!!」
軍のプレイヤーはのろのろと立ち上がると、編隊を組み直し、コーバッツに続いて迷宮の奥に消えた。
クライン「大丈夫なのか、あの連中?」
軍を見送ってから、クラインが呟いた。
アスナ「いくらなんでも、ぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど・・・」
デュオ「どうかな・・・」
アスナ「えっ・・・!?」
デュオはいつもとは違って真剣な顔をしている。
キリトも同じだ。
キリト「確かに、あのコーバッツって男ならやりかねない。」
デュオ「様子だけでも見に行っておいたほうがいいな。」
どうやら、それには全員賛成のようだ。
クライン「じゃあ、装備の確認が済んだら追いかけよう。」
クラインの言葉を合図に、全員装備を確認する。
そして装備の確認を終えたキリトたちはボス部屋に向かった。
途中でリザードマンロード4体に遭遇したが、あっという間に片付けて先を目指す。
安全エリアを出て三十分。俺たちはボス部屋に続く長い回廊を進んでいた
クライン「ひょっとしてもうアイテムで帰っちまったんじゃ・・・」
?「うわあああ・・・!!」
クラインがアイテムで帰ったという可能性を言おうとした瞬間、悲鳴が聞こえてきた。
キリト「みんな!!」
アスナ「うん!」
デュオ「ああ!」
クライン「おう!」
エルフィー「はい!」
キリトたちはスピードを上げて走る。
やがてかなたに大扉が見えてきた。
それは左右に大きく開き、内部の闇で燃え盛る青い炎の揺らめきが見て取れる。
そしてその向こうでうごめく、巨大な影。
アスナ「バカ・・・!」
敏捷度の高い、キリト、アスナ、デュオ、エルフィーがクラインたちより先に扉の前に辿り着く。
キリト「大丈夫か?」
デュオ「1,2,3,4・・・」
エルフィー「2人足りない・・・」
その時一人が斬馬刀の横腹で薙ぎ払われ、HPをレッドゾーンに落としつつ床に激しく転がった
キリト「何をしている!早く転移アイテムを使え!!」
キリトが叫ぶが男は絶望したような顔で、最悪の状況を告げた。
隊員「だめだ・・・!く・・・クリスタルが使えない!!」
キリト「なっ・・・」
アスナ「なんてこと!結晶無効化空間なの!?」
デュオ「ボス部屋でそれはまずいな・・・」
キリト「まずいなんてもんじゃない、最悪だ!!」
エルフィー「ちょっと待って、じゃあ足りない2人って・・・」
離脱ができない今、姿が見えないということはつまり・・・
コーバッツ「何を言うか・・・っ!!我々解放軍に撤退のニ文字は有り得ない!!戦え!!戦うんだ!!」
キリト「馬鹿野郎・・・!!」
デュオ「何考えてるんだバカ!!このままだと死ぬぞ!!」
クライン「おい、どうなってるんだ!!」
ようやく追い付いたクラインたちに簡単に事態を伝える。
キリト「結晶無効らしい。」
エルフィー「人数が2人足りないの・・・」
クライン「何だって!?つまり死んだってことじゃねえか!!な、何とかできないのかよ・・・」
アスナ「人数が少なすぎるわ・・・!」
そうしているうちに体制を立て直したらしいコーバッツが叫ぶ。
コーバッツ「隊列を崩すな!全員・・・突撃!!」
キリト「やめろ・・・っ!!」
残る八人を横列に並べコーバッツが剣をかざして突進を始めた。
軍『うおおおお・・・!!』
グリームアイズ〔ゴアァァァァァァァ・・・!!〕
ボスの方は突進してくるプレイヤーに白い息を吹きかけてHPを激減させる。
そして、右手に持っている大剣が1人のプレイヤーの体を貫いた。
コーバッツ「ぐわ・・・・!!」
コーバッツだった。コーバッツのHPは凄まじい勢いで減っていき、消滅した。
コーバッツ「・・・ありえ・・・ない・・・」
そう言った瞬間、ガラス塊を割り砕くような大音響と共に、コーバッツは無数の欠片となって砕けた。
その光景に、キリトの傍らでアスナが短い悲鳴を上げる。
隊員「隊長がやられた・・・!俺たちもおしまいだ・・・!!」
リーダーを失った軍のプレイヤーは完全にパニックに陥っている。
アスナ「だめ・・・だめよ・・・もう・・・」
キリト「アスナ・・・?」
デュオ「まずい・・・!!」
キリトとデュオはアスナの腕に手を伸ばすが、アスナは掴まれるより早く飛び出した
アスナ「だめええ・・・っ!!」
飛び出すと同時に抜刀、真っ直ぐボスに突っ込んでいく。
キリト「アスナッ!ええい!」
そんなアスナを追うようにキリトも剣を抜き放って、飛び出す
クライン「どうとでもなりやがれ!!うおおお・・・!!」
クラインもカタナを引き抜いて続く。
エルフィー「デュオ君!!」
デュオ「ああ!行くぞエルフィー!!」
デュオとエルフィーもそれぞれの剣を抜き放つと、キリトたちに続く。
アスナ「せえぇぇぇい!」
裂孔の声の元、アスナはボスに攻撃を仕掛けた。
その攻撃は見事背中に命中する。
しかし、不意打ちでの背部への攻撃にも関わらずあまりダメージを受けていない。
グリームアイズは大剣を振りかぶりアスナに攻撃を仕掛ける。
辛うじてアスナはその一撃を避けたものの、衝撃波で体勢を崩し、地上に叩き落される。
その隙に、グリームアイズはもう一度、剣をアスナ目掛けて振り下ろした。
アスナ「きゃあああ・・・!!」
キリト「アスナ・・・!!」
ガキン!!
間一髪、キリトがアスナと大剣の間に入り、ボスの1撃を受け止める。
アスナ「キリト君・・・」
キリト「下がれ・・・!!」
キリトはグリームアイズの剣を押し返そうとする。
だが、あまりの剣圧に押し返すことができない。
キリト「なんて、剣圧だ・・・」
このままではキリトは押しつぶされてしまう。
そこへデュオとエルフィーが到着した。
デュオ「エルフィー!!」
エルフィー「任せて!」
二人はキリトの左右に構える。
デュオ&エルフィー『せええの・・・っ!!』
そして剣を野球のバットのように構えて振り抜く。
強力な衝撃を受けたグリームアイズは自分の剣に引っ張られるようにして後退する。
キリト「このままではやられる。使うしかない。」
キリトは自分の持つ最強のスキルを使うことを決意した。
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コーバッツ登場そしてコーバッツ退場