No.497344

魔法少女リリカルなのはStrikerS~二次創作~ 第24話 「ミス!訓練場より」

4mさん

続きです

2012-10-17 23:04:12 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3450   閲覧ユーザー数:3228

「ティアナさんの様子がおかしい・・・ですか?」

 

「ああ・・・何だか焦ってるらしいんだ、ホテルアグ スタでの一件もあるし、強くなりたいと思うのはいい んだが・・・」

 

夜、訓練が終わった食堂

 

椅子に座っているヴィータさんに、コップに入ったオ レンジジュースを差し出す

 

「強くなりたいなら・・・それでいいんじゃないです か?」

 

「やり方に問題ありなんだ」

 

ヴィータさんはテーブルの上に肘をつき、そして組ん だ手の上に顎を乗せて少し悩んだような顔をして言う

 

「お前はわからんだろうが、ムチャクチャして強くな ろうとしてるんだ。ただ強さだけを求めているような ・・・、さっきなのはとフェイトに聞いたが・・・過 去のことも含めてな」

 

「過去・・・ですか」

 

オレンジジュースの入ったコップの側面から、テーブ ルに水滴が落ちる

 

ヴィータさんは、顎を手から離して言った

 

「ああ。最初に言っておく、聞きたいか?」

 

「ここまで来たら・・・一応」

 

俺は一応聞いておくことにした

 

ヴィータさんが言うには、ティアナさんにはお兄さん がいて、管理局では優秀な魔導師だったらしい

 

任務もしっかりこなし、上層部の人達からも一目置か れていたという

 

しかし、ある任務で犯人を取り逃がし命を落としてし まったという

 

そんなティアナさんのお兄さんに上層部の人達が掛け た言葉は、慰めのようなものではなく、それはそれは 酷い言葉だったらしい

 

「犯人を取り逃がすとは何たる実態、死んでも捕まえ るべきだった・・・とか、役立たずはいらない・・・ とか、他にもいろんなことを言われたらしい」

 

「だから・・・ティアナさんは無茶を?」

 

食器を洗いながら、俺はヴィータさんの言葉に耳を傾 ける

 

最近夜にもシフトが入り、今日はおばちゃんがいない ため一人で動いていた

 

いつの間にか他の職員の姿も消え、食堂にはヴィータ さんと俺の二人だけになっていた

 

「ああ、多分な」

 

「・・・」

 

そうか・・・ティアナさんにはお兄さんがいたんだ

 

そりゃあ、家族のことをそんな風に言われたら・・・ 傷つくのは当たり前か

 

ティアナさんがまだ小さい頃の話だし・・・余計にっ てわけだ

 

俺は、お皿を拭きながらいろいろと考えていた

 

「まぁ、訓練のことをお前に話してもしょうがないん だけどな。悪いなダンテ」

 

「いえ、みんなのことは応援しているので聞けて良か ったです。ヴィータさんは大丈夫ですか?無理しちゃ ダメですよ」

 

「そんなにヤワじゃねぇよ。自己管理くらいできる。 じゃあこれ、いただくな」

 

そう言ってヴィータさんはオレンジジュースを飲んだ

 

疲れた時には甘いものが一番

 

「ほら、ヤドカリくんもヴィータさんのことが心配だ ーって言ってますよ?」

 

「ん?・・・ふふ、お前もいつもありがとな」

 

いつの間にかオレンジジュースの側まで来ていたヤド カリくんが、ヴィータさんをじっと見つめていた

 

たまに食堂に連れてくるうちに、いつの間にかヤドカ リくんは食堂のマスコットキャラクターみたいになっ ていた

 

『おーすヤドカリくん、朝から元気だなー』

 

『ヤーくんおはよー』

 

という風に朝になると機動六課の人達は挨拶してくれ て、おばちゃんも忘れないようにヤドカリくんの餌を 置いておく場所をカウンターに作ってしまう程の溺愛 っぷりである

 

リィンさんと仲が良いらしい

 

そして、こうやってたまに散歩させている

 

「さてと、こいつにも元気づけてもらったし、アタシ はもう行くな。じゃなダンテ、ありがとよ」

 

「あ、はい。おやすみなさーい」

 

カウンターにコップを置くと、ヴィータさんは俺に背 を向けて手を振り去っていった

 

「さてと・・・そろそろ俺も帰るとしますか。ほれ、 おいでおいでと」

 

俺はテーブルの上をトコトコ歩いていたヤドカリくん を、シャムお手製そう簡単には潰れないコンパクトヤ ドカリくんハウス(シャム命名)に入れ食堂を後にした

 

~外~

 

「さてと・・・歩いて帰りますか」

 

玄関を開けた瞬間、涼しい夜風が吹いてきた

 

シャムは最近また何かを作っているため研究室に籠も っていた

 

それがようやく完成し、運良く休みも取れたので早く 帰って寝たいとのことで先に家に帰ってしまった

 

というわけで、研究していようがしていまいがどっち みち歩いて帰ることになるのだ

 

「・・・ん?」

 

少し歩くと、端っこの方の林に何やら光と一つの人影 が見えた

 

どこかで見たことがあるような服装と、これまたどこ かで見たことがあるような武器を持ち、ひたすら的の ようなものに何かを撃ち出していた

 

「・・・ティアナさん」

 

そう、そこにはティアナさんの姿があったのだ

 

ヴィータさんの言う通り、ひたすら自分の鍛練に励ん でいる

 

「声を掛けても無駄だぜ。ダンテの兄貴」

 

後ろから声が聞こえたので振り返ってみると、そこに はヴァイス陸曹がいた

 

「・・・ヴァイス陸曹」

 

「堅いこと言わんでくれよ兄貴。局員じゃないんだろ ?」

 

「なんで・・・兄貴なんですか?」

 

「あんたの戦い方見て感動したぜ~。だからもう兄貴 って呼ぶことに決めたんだ」

 

そう言って俺の背中をバシッと叩くヴァイスさん

 

「それにしてもティアナさん・・・」

 

「ああ・・・言っても聞かないんだ。頑張るのはいい んだが、頑張りすぎるのもな・・・」

 

そう言ってる間にも、ティアナさんは黙々と自主練習 を続けていた

 

「っておい兄貴!行っても無駄だぜ~!」

 

「大丈夫です~!おやすみって言うだけですから~! 」

 

全く・・・俺はいつからこんなに機動六課のことにつ け込むようになったんだろ

 

ーーーーーーーーーー

 

「こんばんわ・・・」

 

「・・・ダンテさん」

 

ティアナさんは練習を一旦やめ、こちらに振り向いた

 

その顔色と様子からは、相当キツい練習をしていたの が伺えた

 

「こんなに遅くまでやってたら・・・風邪ひきますよ ?」

 

「・・・自己管理は・・・自分で出来ます」

 

ティアナさんは息を切らしながらそう言った

 

「でも、疲れてるんだし・・・そろそろ」

 

「私は凡人ですから・・・これくらいしないといけな いんです。疲れなんて・・・日頃の訓練に比べたら」

 

ティアナさんの撃った弾丸が、次々と的に当たる

 

「俺は、ティアナさんが凡人だなんて・・・思ってま せんが・・・、ちゃんと訓練しててすごいなぁと」

 

ティアナさんの手が止まった

 

「ダンテさんにはわからないんですよ・・・!私も・ ・・ダンテさんのような力が欲しいんです!」

 

「俺は・・・こんなに力はいらないんだけど・・・」

 

俺のその言葉に、ティアナさんは怒りをあらわにして 迫ってきた

 

「ダンテさんはその力に何不自由がないからそんなこ とが言えるんです!凡人がそれを手に入れるのにどれ だけ・・・!」

 

ティアナさんはそこまで言うと、途中で黙り込んでし まった

 

「すいません・・・少し感情的になってしまいました 」

 

「いえ、いいんです・・・」

 

「それでは、私は訓練に戻りますから」

 

「あ、はい・・・」

 

ティアナさんは俺に一礼すると元の場所に戻ってしま った

 

俺は、そこにずっと居るわけにもいかず・・・

 

・・・いや、居られるような雰囲気ではなかったので その場を後にした

 

その時、後ろからはティアナさんの弾丸の音だけが聞 こえてきた

 

~シャムの家~

 

「・・・ただいま~」

 

「んにゃ・・・?あ、ダン。お帰り~・・・」

 

リビングに入ると、シャムが目を擦りながらソファか ら起き上がった

 

どうやらまだ寝ていたようだ

 

「あ、ごめん。起こしちゃったね」

 

「ううん、いいよ。もしダンが来なかったらこのまま 寝ちゃうとこだったし・・・ふぁ」

 

そうやってあくびをするシャムの格好は、機動六課の 制服そのままであった

 

「ちゃんと着替えて寝なくちゃ」

 

「はーい・・・。あ、そうだ」

 

シャムは自分の部屋に行こうとする途中で、話したい ことがあるのだろうかこちらに振り向いた

 

「明日休みとれたんだ。前に言ってた服買いにいかな い?」

 

「うん・・・そうだね。明日はバイトないし、シャム がいいならいいよ」

 

「わーい!約束だよ!約束!」

 

そう言うとテンションが上がったままシャムは自分の 部屋に行ってしまった

 

さすが機動六課の職員なだけあって体力がある

 

ティアナさんのことも気になるけど、相棒のスバルさ んがいるし何とかなるかな?

 

ーーーーーーーーーー

 

それは、シャムと服を買ったり、色んなところを案内 してくれたり、目に黒い眼帯をした迷子の少女のお姉 さんを見つけてあげたりした日の次の日のことだった

 

「スバルさんまで・・・」

 

なんと、朝早くなのにも関わらずティアナさんが訓練 しているではないか

 

しかもいつの間にかスバルさんまで一緒に

 

「・・・倒れたりしなければいいけど」

 

それが一番心配なことだった

 

頑張りすぎるのもいいけど、そのせいで倒れて医務室 行きなんてことになったら本末転倒だ

 

「・・・」

 

だからと言ってもう・・・何も言えなかった

 

俺は機動六課へ向けて歩きだした

 

俺は訓練のことなんて何も知らないし、知ったとして もどうこうなる問題じゃない

 

あの二人に俺が何を言っても聞かないだろう

 

「あ、ダン兄!」

 

「あ、ああ・・・スバルさん」

 

こっちから話しかけるまでもなく、あっちから声をか けてきた

 

「やっぱり朝早いんだね!」

 

「まぁ・・・これくらいから準備しないと間に合わな いし・・・」

 

スバルさんの後ろには、なんだか居心地が悪そうなテ ィアナさんがいた

 

「実は今日模擬戦をやるんだ!午前中だからダン兄も 見に来ない!?普段とは違う私たちが見れるよ?」

 

「まぁ・・・暇があったら」

 

「やったー!よーし頑張るぞー!」

 

そう言ってスバルさんは元の場所に戻っていった

 

ティアナさんは、俺に一礼したあとスバルさんのとこ ろに戻っていった

 

・・・普段とは違う私たちってどういうことだろう?

 

ーーーーーーーーーー

 

スバルさんに誘われたのもあり、現在またはやてさん に頼んで訓練場の端っこを借りて訓練していた

 

隣ではティアナさんとスバルさんがなのはさんと模擬 戦を始めている

 

そっちにも気を配りながらも俺は訓練に励んでいた

 

今やっているのは、銃が俺の中にある魔力を弾に使っ ているなら、もうちょっと魔力を込めたらより強い弾 丸が出るんじゃないかという訓練だった

 

「まずは一発目!」

 

俺は銃に魔力が行くようイメージし引き金を引いてみ た(訓練なので弱くであるが)

 

すると・・・

 

「・・・あれ?」

 

弾丸は出た

 

出たのだが・・・ただサッカーボールくらいの球体が 空中に浮いているだけだった

 

色は赤

 

「・・・おかしいなぁ」

 

なのはさんたちのようなでかいのが出てビュンビュン 飛び回るのかと思いきや、空中で止まっているだけだ った

 

もう一発撃ってみたが同じだった

 

もうちょっと強く込めた方がいいのかなと思い、もう 少し力を込め撃ってみたが結果は同じ

 

「・・・やっぱりおかしいなぁ」

 

と思った次の瞬間だった

 

最初に撃った弾丸が、なのはさんたちが模擬戦をして いるところに飛んでいってしまった

 

俺は慌ててそれを追う

 

訓練の邪魔にでもなったら大変だ

 

ーーーーーーーーーー

 

「おかしいな・・・二人とも・・・どうしちゃったの かな」

 

なのはが、ティアナとスバルの攻撃を素手で受け止め ていた

 

手からは、うっすらと血が滲んでいる

 

「頑張るのもわかるけど・・・模擬戦は、喧嘩じゃな いんだよ?」

 

「あ、あの・・・」

 

そんななのはにスバルは何も言えず、ただうろたえる だけだった

 

「言うこと聞いてるふりしてこんな無茶するんじゃ・ ・・訓練の意味、ないじゃない」

 

なのはの目から光が消え、ただ喋り続ける

 

「私の教導、そんなに間違ってるかな・・・?」

 

「く・・・!」

 

ティアナが後ろに飛び、なのはから距離をとる

 

「私は・・・強くなりたいから!もう・・・誰も傷つ けたくないから!強く・・・強くなりたいんです!」

 

そう言ってティアナはなのはにデバイスを向ける

 

「・・・少し・・・頭冷やそうか」

 

そんなティアナになのはは指先を向けた

 

その周りには魔力が収束されていく

 

「な、なのはさ」

 

それが一気に魔力弾となりティアナに向け発射された

 

「ティ・・・ティア!」

 

煙が晴れると、立ってはいるものの、完全に意識を失 いかけているティアナがいた

 

「・・・!バインド!?」

 

気がつけばいつの間にか、スバルにバインドがかかっ ていた

 

なのはは、一発撃ってもなおティアナに指先を向けて いる

 

もう一回撃とうとしているのだ

 

「な、なのはさん!」

 

スバルの呼びかけも虚しく、次々と魔力が集まってい く

 

「スバル・・・」

 

そして、今にも撃とうとしている時だった

 

「よく見ておきなさ」

 

バコン!・・・と、なのはの頭にサッカーボールくら いの赤い球体が当たり、魔力の収集がストップした

 

もう一度収集するが

 

「・・・よく見ておきなさ」

 

バコン!・・・とまたしてもサッカーボールくらいの 赤い球体が頭に当たった

 

「・・・」

 

なのはが、球体の飛んできた方向を見ると

 

「・・・ダンテ君」

 

訓練場に再現されたビルの屋上に、何やらとんでもな いことをしでかしてしまったという表情のダンテがい た

 

「どういうことかな?ダンテ君・・・」

 

「すいません!少しミスしてしまいまして!」

 

「・・・三度目はないからね?」

 

「はい!すいません!」

 

そう言って頭を下げるダンテの後ろからまた球体が飛 んできた

 

さっきのよりも少し強いものらしく、またなのはの頭 に当たるとギュルギュルと回転し、少しの間留まって 消えた

 

「・・・今日の模擬戦はこれで終わり。二人とも私に 撃墜されて終了」

 

するとなのはは、デバイスを今度はダンテに向けた

 

「私は一度・・・きっちりダンテ君とお話してくるか ら」

 

へたり込むスバルの横を、なのははダンテに向けて飛 び立った


 
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