No.496114

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ四


 お待たせしました!

 今回は劉備を担いでやって来る曹操と戻って来た劉弁様を

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2012-10-14 14:13:08 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:8753   閲覧ユーザー数:6332

 「洛陽も久々じゃの。妾が出て行く前より遥かに活気に満ち溢れておるのぉ。

 

 これも夢や月や一刀達の尽力の賜物じゃな」

 

 洛陽の賑わいを見ていた劉弁様が嬉しそうに呟く。

 

「これ一刀、今の妾は『李儒』じゃぞ。そこの所間違えないようにの」

 

 …心を読むのはやめて欲しいのだが。劉弁様は仰ったように、今は仮面をつけ

 

 て『李儒』の偽名で来ている。何故そうしてるのかというと、

 

「妾にちょっと考えがあっての。まあ、見ておればわかる」

 

 との事で、本人がそう言うのであればとそれで来ているのであった。

 

 ちなみに既に劉弁様からは真名である『命(みこと)』を預かっており、俺の事

 

 も一刀と呼んでいる。とはいえ、軽々しく真名を呼べないので(本人からは二人

 

 っきりになったら真名で呼んでも良いと言われているが)劉弁様のままで進めさせ

 

 てもらう。

 

「ご主人様~」

 

 そこへ朱里が駆け寄ってくる。朱里には留守の間、陛下の崩御後混乱するであろ

 

 う月の補佐にまわってもらう為に洛陽に留まってもらっていたのだ。

 

(ちなみに領内の留守は雛里と水鏡先生に任せてある)

 

「ただいま朱里、すまなかったな。面倒な役回りをさせて」

 

「いいえ、そういう事をする為の軍師ですから。輝里さんも流琉ちゃんもご苦労様

 

 でした。…もしかしてそちらのお方が?」

 

「ああ、詳しい話は城内に入った後でな」

 

 

 

「なるほど、わかりました。そういう事でしたら、しばらくは李儒さんとお呼びす

 

 れば良いのですね?」

 

「そういう事じゃ。よろしく頼むぞ、諸葛亮」

 

 城内に入り、宛がわれていた部屋に入った俺達はこれまでの経緯を朱里に説明した。

 

 あまり細かくは説明出来なかったが、さすがは朱里というべきか、その説明だけで

 

 どうやら劉弁様のやらんとする事を理解したらしい。

 

「ところで現在曹操軍はどの辺まで来ているんだ?」

 

「はい、今は青州にて盧植将軍の歓待を受けているそうです」

 

「では洛陽に来るのはもう少し先か」

 

「おそらく数日のうちには」

 

 ちなみに盧植将軍の歓待は曹操軍を足止めする為の策でもある。おそらく曹操も

 

 気付いてはいるだろうが、何せ盧植将軍は劉備の師匠でもあるので歓待を無下に

 

 断る事も出来ず、そしてこちらには対抗する術は無いという慢心もあって、青州

 

 に留まっているのである。さらに言えば、おそらく自身が権力を握った際に精強

 

 の誉れ高い青州兵を取り込む事も考えているのだろう。

 

「さて、それではまず月達と協議をしなくてはね。よろしいですか李儒殿」

 

「うむ、妾も久々に月に会いたいしの」

 

 

 

「おかえりなさい、一刀さん。ご苦労様でした」

 

「月達に比べれば大した事はしていないよ」

 

 月は陛下亡き後、相国として政に支障が出ないように不眠不休で働いていると言

 

 っても過言ではない。それに比べれば俺の任務など楽なものだ。

 

「久しぶりじゃな、月よ。元気そうで何よりじゃ」

 

 俺の後ろから劉弁様が顔を出すと月の顔が喜色満面となる。

 

「命様!戻って来てくれたのですね。…良かった、これで夢様もきっとお喜びに」

 

「月には迷惑をかけたの。じゃがまだこれからじゃ。もう少々頑張らねばの」

 

「もしかしてまた仮面なんかつけてるのは…」

 

「その通りよ。あやつ…曹操がどのような事を言い出すのか少々見物といこうと思う

 

 ておる」

 

 そう言って劉弁様はそっくり返っていた。

 

「曹操は劉べ『李儒と呼べ!』…李儒とは面識はあっても仮面の事までは知らないと

 

 いう事なのか?」

 

「ああ、妾はあやつの前では仮面はつけた事は無いのでな。ふっふっふ、妾の正体を

 

 知った時の曹操の顔が今から楽しみじゃ」

 

 そう言っていた劉弁様はとてもうれしそうな顔をしていた。

 

「ところで月、他の皆はどうしてるんだ?」

 

「西涼軍は葵様も翠さんも五胡の動きを見張っていて今は動けないそうですので、名代

 

 として蒲公英さんが来られるそうです」

 

 蒲公英が?…何か不安な人選だな。

 

「孫家も蓮華さんは南方の豪族の動きを抑える為に動けないので、雪蓮さんと冥琳さん

 

 が来られると連絡がありました」

 

 まあ、こっちは妥当か。一応右将軍だしね。

 

 それでは数日後に来るであろう曹操ご一行の出迎え準備といきましょうかね。

 

 

 

 そして四日後、遂に曹操が軍勢と劉備を連れて洛陽へとやって来た。

 

「華琳様、遂にここまで来ましたね」

 

「ええ、青州で足止めをくった時には何か罠でもはっているのかと思ったけれど、何も

 

 なかったわね。ちょっとだけ拍子抜けね、私だったら軍勢が洛陽に入る前に三回は足

 

 止めの策を考えるわ」

 

 曹操はそう言いながらもご満悦の表情であった。

 

 洛陽の民は曹操の軍勢を遠巻きに眺めていたがさらにその後方で関羽達四人が佇んで

 

 いた。

 

「遂に来ましたねー」

 

「ええ、これほどの準備をして来たのであれば今度こそ曹操様の勝ちで決まりのはず。

 

 やはり私の目に狂いは無かった。曹操様こそ…」

 

「おいおい稟よ、まだ曹操殿の勝ちと決まったわけではないぞ。なあ、愛紗」

 

「……………………桃香様、鈴々…………………」

 

 関羽は劉備と張飛の姿に気を取られ、趙雲の言葉が耳に入っていないようだ。

 

「やれやれ、仕方のない事か…誰だ!!」

 

 趙雲がその気配に気付いた時には既に四人の周りを数十人の兵に囲まれていた。

 

「初めまして趙雲さん、私は諸葛亮と申します」

 

 そこに現れたのは朱里であった。

 

「諸葛亮?…あの?そんなまさか…」

 

 戯志才は噂の天才軍師のそうとは見えない見た目に狼狽を隠せず、

 

「…おやおや、大変な事になりましたねー」

 

 程立は見た目は普段の調子のまま、その頭脳をフル回転させ始め、

 

「…私の事は既にばれていたという事か」

 

 まさか目の前の少女が違う世界の自分と面識がある事など露ほども知らぬ趙雲は驚き

 

 ながらも好奇心を隠さずに相対し、

 

「…諸葛亮殿、ご無沙汰しています」

 

 関羽は挨拶を交わすのが精一杯であった。

 

「それで?我らを囲んでどうしようというのだ?言っておくが我らは曹操の為にここに

 

 いるわけではない『それはわかっています。あなた方が洛陽に入ってからずっと動向を

 

 調べさせてもらっていましたから』…やれやれ、恐れ入った。既にどころか最初から

 

 ばれていたのか」

 

「そうすると、あなたは風達を捕まえる為ではなく、何か用があってここに来たという事

 

 ですねー」

 

「はい、実はお願いしたい事があります。特に関羽さんと趙雲さんに」

 

「ほう、とりあえず聞いておくだけ聞いておこう」

 

 

 

 曹操が城門まで達するとそこには文官・武官を引き連れた董卓が出迎えに来ていた。

 

「遠路はるばるご苦労様です、曹操殿」

 

「私の苦労など大した事はないわ、それよりも『劉備殿下』がお疲れになっているわ。

 

 何処か休める所を用意して頂戴」

 

 自分が次期皇帝を擁しているといい気になっているのであろう、本来なら位が上である

 

 董卓に対する敬意すら今の曹操は忘れてしまっているようだ。

 

「はい、こちらへどうぞ」

 

 董卓は気にしない様子で応対していた。しかし側に控えていた賈駆の心の内は…

 

(なっ!?何よこいつ…相国である月に対してその態度は何なのよ!!本当ならここから

 

 叩き出したいところだけど…ああやって、月が普段通りな以上ここでボクが騒いだら…

 

 ああ、もう!いっその事、華雄が騒いでくれればまだ何か出来るのに、今回に限って

 

 静かだし…ううっ、見てなさいよ曹操、月に対するその態度絶対に許さないんだから…)

 

 モヤモヤしたものが渦巻いていたのであった。

 

 ・・・・・・・・

 

 その頃、一刀達がいる部屋に朱里が戻って来て報告をしていた。

 

「ご主人様、あちらは手筈通りに。曹操さんは用意された部屋で休憩中との事です」

 

「よし、詠も華雄もとりあえずは自重してくれたようだな。それじゃ俺達は先に玉座の間へ

 

 行くとしよう。李儒もそれでいいですね?」

 

「ああ、妾はしばらく一刀の後ろで畏まっておるからの。その間は曹操の相手を頼んだぞ」

 

「一応改めて聞くのですが、最初から素顔を見せて玉座にいるというのは『無いな!』

 

 …そうですか」

 

 劉弁のその言葉に一刀はそっとため息をついたのであった。

 

 

 

 

 そして玉座の間に全員が集結したのであった。

 

「それではこれより亡き劉協陛下の葬儀の段取りについて説明したいと思います」

 

 一応、月が進行役で進めようとしたのだが、

 

「待ちなさい、董卓。葬儀の段取りの前に決める事があるでしょう」

 

 曹操が待ったをかける。と言うより敬称無しかよ、とちょっと怒りを覚えるがその怒り

 

 は後まで取っておく事にしよう。

 

「何でしょう、曹操殿?」

 

「陛下が亡くなられた以上、後継者を決める事が先決だわ。葬儀の段取りなど後継に立つ

 

 者が決める事のはずよ」

 

「ですが、陛下には御子はおられません。後継を決めると言ってもそれは一朝一夕に決まる

 

 話ではないはずですが?それよりもまず陛下の御霊を安んじ奉る事が重要かと」

 

 月のその言葉に驚きと感動を覚える。ここに劉弁様がいるのを知っているからこそ、言え

 

 るのであろうが。

 

「陛下の御霊を安んじ奉る為にも、一刻も早く後継者を決めるべきよ。そしてその方の名を

 

 以て陛下の喪を発するのが最上の策なはず」

 

 曹操もこれに関しては一歩も退く気は無いようだ。俺はそっと李儒の様子を見るが、一家臣

 

 として畏まっているまま微動だにしない。

 

「それでは曹操殿は誰か後継者にふさわしい御方がおられるという事なのですか?」

 

「もちろん、あなたもわかっている事と思ってたけど、ここにおられる中山靖王の末裔たる

 

 劉備玄徳殿下こそ次の皇帝にふさわしいと思っているわ。そして既にこれだけの諸侯の賛同

 

 を得ているわ」

 

 曹操はそう言うと一つの木簡を広げる。そこには劉備が皇帝になる事に賛同する諸侯の名が

 

 書かれていたが、それは全て反董卓連合に与し劉協陛下に元の知行を召し上げられた者達の

 

 名でもあった。しかもそこには劉璋の名まで書かれていた。…ここまで露骨だと笑いしか

 

 おきないが、笑う場面でもないしもう少し見ている事にしよう。

 

「劉備さん、あなたはそれでいいのですね?それがあなたの言った『正しい事と正しくない事

 

 を見極める』という事なのですか?」

 

 月に問われるが、劉備は何も言わずじっと正面を見つめているだけであった。

 

「董卓、それは愚問よ。殿下はそう決めたからこそ、ここまで来られたのよ。さあ、道を開け

 

 なさい!その玉座は最も血筋のふさわしい者が座る場所、あなた達如きで止められるもので

 

 はないわ!!これ以上道を塞ぐのであれば、それは漢に対する反逆になるわよ!!」

 

 

 

 曹操がそう言った瞬間、俺の後ろから笑い声が聞こえる。

 

「…ふふふ、は~っはっはっはっはっはっは!!反逆とな、それは滑稽じゃな」

 

 今まで畏まっていた李儒であった。

 

「…滑稽とは聞き捨てならない言葉ね。北郷、あなたは家臣にどういう教育をしているの

 

 かしら?」

 

「残念ながら妾は北郷の家臣ではないのでな…さて、それでは少々失礼するぞ」

 

 曹操の咎めるような視線をものともせず、李儒は玉座の方へと足を進める。

 

「待ちなさい!そっちは『いいのです、雪蓮さん』…えっ?」

 

 雪蓮は阻もうとするが、月がそれを押しとどめる。

 

 そうこうしているうちに、李儒は玉座に上がりその前に立った。

 

 俺のように事情を知っている人間はともかく、その場の大半の者にとっては不敬極まりない

 

 行動にしか見えないので、当然の事ながら…

 

「なっ!?あなた、今自分が何をしているのかわかっているの!そこは『玉座じゃろ?』

 

 そうよ!それがわかっていてそのような無礼な態度に出るとは…そこに立っていいのはここ

 

 にいる劉備殿下一人よ!!」

 

「無礼な態度とな、それこそ滑稽じゃ。そなた、まだ気付かぬようじゃな。久々に会ったとは

 

 いえ、つれない態度よな」

 

「えっ…!?」

 

 激昂した曹操に語りかけた李儒の言葉に曹操は訝しげな目を向ける。

 

「確かにこのような仮面をつけてお主の前に出た事は無かったがな。昔はあれだけ一緒におった

 

 のに声も忘れてしもうたか?」

 

 李儒のその声に聞き覚えがあったのか、曹操の目が泳ぎ始める。

 

「まあ、仕方ないかの。ならば…」

 

 そのまま彼女は玉座に座ると仮面を外して素顔を見せ、こう言い放つ。

 

「愚か者めが!妾の顔を見忘れたとは言わせぬぞ、曹操!!」

 

「なっ!?…もしや、あなたは…何故ここに!?」

 

 

 

 劉弁様が素顔を見せると曹操だけでなく他の者も息を飲む。

 

 それもそのはず、そこに現れたのは亡き陛下と瓜二つの顔であったからだ。

 

 その雰囲気に劉弁様の顔は完全にいたずらが成功した子供のような得意げな顔になる。

 

「何故とは愚問じゃの。今そなたが申したではないか『玉座は最も血筋のふさわしい者が座る場所』

 

 じゃとな。ならばここで最もふさわしいのは、先々帝である劉宏の子にして先帝である劉協の姉で

 

 あるこの劉弁しかおらぬわ!!」

 

 劉弁様が名乗りを挙げると同時に月が進み出て叫ぶ。

 

「皆の者、劉弁様の御前であります!頭が高い、控えなさい!!」

 

 月のその言葉にその場にいる全員が即座に平伏する。

 

 横目で曹操の顔を見ると、忌々しげに顔を歪めている。さらに劉備に至っては虚ろな顔でただ地面を

 

 眺めているだけであった。

 

 玉座に座る劉弁様は一般的な平服を着て悠然と座り、次期皇帝として煌びやかな衣装を着させられた

 

 劉備が床に平伏している。その図式は一見すると奇妙であるが、劉弁様と劉備ではその身から発せら

 

 れる覇気が天と地ほどの違いがあり、それに違和感を持たせなかったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

                         続く(ように劉弁様より命が下っております)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 大分、中途半端な所で終わらせまして申し訳ありません。

 

 次回はこの続きからになります。愛紗さん達も登場する予定なので

 

 お楽しみに。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ五にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 

 追伸 台詞はありませんでしたがこの場に白蓮さんもちゃんといますので。 

 

 

 

 


 
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