第九十九技 明かす正体 ヴァル編
ヴァルSide
『ミーシェ』の街、いつもの宿屋に着いた僕達。
「それじゃあ……「(ギュッ)」シリカ?」
去ろうとした僕の服の裾を、いまにも泣き出しそうなシリカが握り締めていた。
「教えて……ヴァル君のこと…」
「……辛いと思うけど…いいの?」
僕が尋ねるとシリカは小さく頷いた。僕はシリカに話すために部屋へと移動した。
シリカの部屋でベッドに並んで座る僕達。ピナは既にベッドで眠っている。
「シリカは……『嘆きの狩人』って知ってる?」
「う、うん…。噂でなら…PKとかを、その…倒しているっていう人達だよね…?」
「それじゃあ、僕がロザリアを殺した時になんて言ったか覚えてる?」
「えっと…『狩りし者を狩る者』って……っ!?」
シリカは思い至ったように驚愕と怯えの眼差しで僕を見ている。
「シリカが考えてる通りだと思うよ。
僕は非公式PKKギルド『嘆きの狩人』の一人、『
だから僕はシリカと居ちゃいけないんだ…」
「……り、理由は…? なんで…そんな事を……」
「……僕達はね………」
僕は全てを語った。
かつて迷宮で
僕達を守る為にキリトさんが人を殺してしまった事、襲った奴らがPoHと後の『
少しでも犠牲者を減らす為にみんなで『嘆きの狩人』を作った事、全部話した。
「僕達は人を殺したくない為に……キリトさんに人を殺させてしまったんだ。
だけど僕も…みんなも、キリトさん一人に背負わせたくなかった。
少しでも一緒に覚悟を背負いたかったんだ。
家族を亡くして絶望していた僕を救ってくれたのは……キリトさん達だったから…」
「家族を……」
「うん……殺されたんだ、強盗にね」
「っ!?」
僕の言葉にシリカはさらに驚いて、顔を青くしている。
「だから…人の命をなんの意味もなく踏みにじる奴らに、怒りが抑えられなくなるんだ。僕も人殺しなのにね……」
僕は自嘲気味に笑う。所詮は僕も人殺しなのに、勝手な正義を掲げている偽善者なんだ。
「結局のところ僕は悪い人なんだよ。だからシリカとは居られな「(ギュッ)」シ、リカ…?」
シリカは僕を抱き締めた。それが温かくて、優しくて……そのまま委ねてしまう。
「ヴァル君は悪い人じゃない…」
「そ、んな事…ないよ…。僕は…人を……」
シリカは僕を抱き締めながら語りかけてくる。
「悪い人なんかじゃないよ。だってヴァル君は……」
シリカは僕と顔を見合わせた。彼女の目尻には涙が溜まっている。
だけど彼女は満面の笑顔を浮かべながら僕に言ってくれた。
「あたしを助けてくれたもん」
「あ………」
その言葉を綺麗な笑顔で言ったシリカ。そうか…僕は……。
「あ、あっ……う…ぁ…っ、うぁぁぁぁぁ!」
僕はシリカに
キリトさん達は同じものを背負っているから言い出せるはずなんかない。
でも、シリカは……全てを知っても僕に優しくしてくれた。それがとにかく嬉しかった。
「あああぁぁぁぁぁ、ぅあぁぁぁぁぁ!」
泣きじゃくる僕にシリカは優しく頭を撫でてくれている。僕はしばらくの間、そのまま泣き続けた。
「ご、ごめんね。みっともないところを見せちゃって…///」
あんな風に泣いてしまったところを見られて、かなり恥ずかしい。穴があったら入りたい。
「そんなことないよ。ヴァル君の助けになれてよかったから…」
「ぁ…ありがとう///」
満面の可愛い笑顔で言われた。
好きな人にこんな風に言われると反則だと思うのは男女問わないと思う。
そこでシリカが頬を赤らめてから僕を見つめてきた。そして…、
「あたしね…やっぱりヴァル君のことが好きだよ…//////」
「シリカ…」
ヴァルSide Out
To be continued……
後書きです。
キリトの時の二番煎じのような気もしますが、あまり手を込みすぎるのもあれかと思いました。
そして、ヴァルのことを知っても好きでいるというシリカにヴァルは・・・。
それは次回にて・・・。
Tweet |
|
|
25
|
8
|
追加するフォルダを選択
第九十九話です。
シリカに正体を明かすヴァル、一体どうなるのか。
どうぞ・・・。