No.49512

とある12月のとある出来事

華詩さん

気がついたらシーリズになってました。
とあるの続編です
とりあえず完結してます
めずらしくちょっと長いので年末の暇つぶしにご覧ください。

2008-12-31 21:23:20 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:553   閲覧ユーザー数:517

 今年も残すところあと数時間。

小さな弟妹がクリスマスにあげたオモチャで遊んでいる。

私はそれを眺めながら甘栗を剥いている。

すると一番下の妹が遊ぶのをやめて私の隣に入って来た。

「おねえちゃん。きょうはおにいちゃんはこないの。?」

一番下の妹が嬉しそうに聞いてくる。

「ばっかだな。くるにきまってんだろう。らぶらぶなんだから。」

どこでそんな言葉を覚えて来たんだろう。

彼の影響ならとことん問いつめてやらねば。

可愛い弟が変な色に染まってしまう前に。

そんなことを沸々と思っていると隣からも声が上がる。

「あー、おねえちゃんのかおがあかい。やっぱりらぶらぶなんだね」

妹はさらに嬉しそうな顔をして私に引っ付いてくる。

そんな可愛い仕草をされるとすべてを許しそうになるが、時には心を鬼にして接しなくては。

「そんなこと言うと、もう遊んであげないよ。」

その言葉を聞いた妹の表情は嬉しそうだった顔から見る見るうちに泣きそうな顔に変わっていく。あれ、ちょっと大人げなかったかな。

そう思い私は剥いておいた甘栗の一つ妹の口に放り込んでやる。

「もう、嘘だから、そんな顔しないの。」

そう言って頭を撫でてやる。

すると泣きそうだった顔はまた元のように笑顔に戻っていった。

口に入った甘栗を噛み砕いていく。

「おいしいね。」

そんな私たちを見ていたのか弟も

「ずるい。ぼくもたべる。」

そう言うが早いか私の隣に弟も入ってくる。

「もう、なんで反対側にいかないの。あっちが広いでしょう。」

横に長いコタツなので三人並んで入れない事はないけど、反対側がもったいない。

弟にも甘栗を口の中に入れてあげる。

「はい、どうぞ。」

弟も嬉しそうな顔をして甘栗を食べていく。

「あら、仲がいいわね。」

そう言いながらお母さんがお茶をもってはいってきた。

「二人ともお姉ちゃんが大好きだもんね。」

私たちの反対側に座りお茶を置いてくれる。

「「うん」」

二人の声が揃う。二人ともとってもいい子だ。

何だか恥ずかしくなってきた。

「でも、そろそろお兄ちゃんがくるから。邪魔しちゃダメよ。ラブラブなんだから。」

えっとつまりこの子達の言葉の乱れの犯人はお母さんですか。

正直勘弁してください。

さて、ここで言う「お兄ちゃん」とは11月のあの日から私の彼氏なった彼だ。

「もう、お母さん。二人に変な事教えないの。」

「だってね。こうも毎日見せつけられるとね。」

「べ、別にそんなことないでしょ。一緒に宿題してあとはしゃべっているかこの子達と遊んでいるだけでしょう。」

「そう、本当にまじめに宿題したり、話してたり、あの子達と遊んだりばっかりで見ていて面白くないのよね。」

何を期待しているんだろうか。そんなに何か間違いが起きてほしいんだろうか。

そう、宿題をしてりたわいもない話をしたり、弟妹達と遊んだりとそんな事をしているだけだ。お母さんと話をしていると両腕をギュッとにぎられた。

「ん、どうしたの。二人とも。」

「……。」

二人とも何も言わない。

そんな二人を見てお母さん苦笑いしていた。

「ほらほら、お姉ちゃんが困っているでしょう。」

「だって」

二人が困ったような顔をして、こっちを見る。

何が二人をそうさせるのかよくわからない。

でも、無理に解くのは忍びない。

「お母さん、いいよ別に。そんなに困ってない。」

私がそう言い。二人を見る。二人はすごく嬉しそうだった。

「まるで、親子よね。お母さん妬けちゃうな。そこに彼がはいると新婚夫婦だしね。」

新婚夫婦ってそんな。私は顔が熱くなるのを感じていた。

「真っ赤になっちゃって可愛いわね。あの時なんか、この世の終わりみたいな顔してたのに。」

「むぅ、あの時の事は言わないでよね。忘れたいぐらい恥ずかしいんだから。」

「それに親がいる目の前で、彼もなかなかやるわね。」

「もう、それも言わない。」

「ね、ママ、なにがあったの。」

「あ、なんでもないよ。なんでもね。」

もう、なんで年の終わりにこんな目にあっているんだろうか。

原因は三分の二以上は彼にある。

本来ならば半分半分ってところなんだけど、こうなっている以上はこの割合で間違っていない。

まぁ確かにあの出来事を知っていればこんな風に言われるに決まっている。

不幸と幸福が一度に押し寄せた聖夜にまつわる出来事を私は思い出していた。

 

 —小さい子達が一年のうちで一番落ち着きをなくす時期。クリスマス大晦日お正月などなど、楽しいことが短い期間に次々と訪れる時期。そういう私もこの年である理由から落ち着きをなくしている。あんなにも落ち着かなかったのはいつ以来だろうか。

 あの11月の出来事によりめでたく恋人同士になった。私と彼。そう、私にとっては初めて恋人とすごすクリスマスがもうすぐそこまでやってきいた。まぁ今回は二人っきりではなく、親友達と一緒に過ごすつもりだけど、それはそれですごく楽しみだった。それは休み前のあの日の親友の一言から始まった。—

 

 

「ねぇ、二人はどうするの。」

期末テストも終わり、あとは三者面談を控えそれすら終われば冬休み間近という、とても平和なお昼休み。親友はこんな事を聞いてきた。

「どうするって何を。」

私は親友の質問の意図が分かりかねず。注いであるお茶を飲みながら聞き返す。

「何ってクリスマスイブ」

クリスマスイブもなにも、私は休みの日はいつも家で過ごす。

なので私は、何も考えずに告げた。

「たぶん、家にいると思うよ。」

そう答えて、水筒から新しくお茶を注ぐ。やっぱり食後の暖かいお茶はおいしい。

「えぇ、何それ。二人はデートしないの。」

デートと聞いて私は咽せる。お茶が変なところに入っていったようだ。

「大丈夫。」

隣にいる彼が背中を撫でてくれる。

あのとき以来、私の隣には彼が座るようになった。

「大丈夫。」

そう言いながら私は呼吸を大きくして、親友の方を向く。

「どうして、そういう風になるの。」

 親友は信じられないものを見たというような表情をしこう言った。

「何言ってるの恋人同士がイブの日にデートしなくてどうするのよ。」

そう言うものなんだろうか、まぁ確かに世間一般ではそんな感じがしないでもないけど。

「あのね、普段のデートとは違ってこういう日は特別なんだよ。」

親友は普段のデートとイベントが絡んだ時の違いを説明しだした。

 まぁそもそもまだ私たちは休日にデートはしてない。

彼がヘタレが理由ではない。

私の事情が最大の理由。

彼が勇気を出して誘ってくれたことがたびたびあった。

その時はすごく嬉しかったし、行ってみたかったけど。

私だけ楽しむわけにはいかないから。

その度に断っていた。

彼にはものすごく悪いとは思っている。

「ちょっと聞いてる。わかっている。」

「わかっているって。」

私そう言ってもう一度、お茶を飲む。

やっと落ち着けた気がする。

「それはそうと、アンタ達普段はどうしてるのよ。」

再び咽せる私。

「ちょっと何で咽せてるのよ。」

「いやあの、その。」

「もしかして、まだしてないの。キスしたのに。」

もう、大きな声で言わない。

そもそもキスだってあの時のアレいらしてない。

「いいでしょう。まだでも。私たちの勝手でしょう。」

もうそれぐらいで勘弁しておいてほしいそう思いまだな事を教えた。

「よくないよ、一ヶ月以上も経つのにまだデートもしてないなんて。異常だよ。」

大きなお世話です。教室が少しだけざわざわしてくる。

親友よ、もう少し声を小さくしてもらえないだろうか。

私は周囲をキョロキョロと見る。とっても恥ずかしい。

救いを求めて彼をみると視線をそらされた。

 あれ、何で視線を反らすんだろうか。

親友を見る何だかとっても楽しそうな顔をしている。

そして、親友の彼氏をみている。

そこには予想した通りのニヤニヤした表情があった。

そうですかアナタも共犯ですか。

そっか、彼が二人に頼んだのか。悪いことをしたな。

私が断り続けたのもな。正直な話、彼とデートはしてみたい。

クリスマスイブ、私も一応は女の子だから一緒に過ごしてみたい。

「じゃ、決まりね。イブの日にダブルデートね。」

「いいね。それ。なぁ、お前もそう思うだろ。」

親友の彼氏が彼に振る。

「そうだよな。いいよな。じゃ決まりな。」

ヘタレな彼が何時になく積極的に決めようとする。

そして私に了解を求めるように、私を見た。

このとき私はどんな顔をしていたんだろうか。

たぶん、困ったような表情をしていたんだろうな。

彼がすごくすまなさそうな顔していたから。

「まって、私、聞いてみないとわかんないから。」

「ええなんで。」

親友の彼氏が聞く。

「ごめんね。ちょっと家の事情があるから。一回聞いてみないとダメなの。」

詳しく説明する必要もないので、私はそういう風に答えた。

「もう、ノリが悪いな。もしかしてつき合っていることを親に話しないの。」

親友は悪戯っぽく笑いながら聞いてくる。

「ううん、話してあるよ。でもそれとは別でね。」

私は教室のカレンダーをみる。

今年のイブは水曜日か。火曜日か金曜日ならよかったのに。

「じゃ、わかったら私にメー……。」

そう言いかけて親友は私を見る。なんだろうか。ああそうか。

「ごめん、電話するから。」

「もう、七時以降なら家にいるから。」

「わかった。」

お母さんに聞いてみないとな、でもたぶんダメだろうな。

そして、その夜に私はダメ元でお母さんに話をした。

私は自分が我がままを言っているのを自覚していた。

普段も忙しいがこの週が一番忙しいのは小さい時から知っている。

無理だと言われたら潔く諦めるつもりだったので、お母さんは少しだけ困った表情をしたのを見て私は諦めることにした。

「ごめん、無理だよね。忙しいもんね。」

そう言って私が部屋に戻るついでに何か暖かい飲み物をと思い。

戸棚を漁って準備をしていると、後ろから抱きしめられた。

それもギュッと力強く。

「ちょっとお母さん何、苦しいよ。」

「ごめんね。」

お母さんはそういってさらに強く抱きしめてきた。

「いいよ別に、もう頼ってくれてもいいんだからさ。」

私はお母さんの腕を触りながら答える。

私たちの為に頑張ってくれている。

だから少しでも負担や心配を取り除いてあげたい。

「行ってきなさい。初デートなんでしょう。」

「何で初デートだって知っているの?」

「あなた電話切るたびに、寂しそうな顔していたし。彼氏ができたって聞いたのに、出かけたいんだけどって今みたいに相談された事もなかったしね。本当は気づいてあげなきゃいけなかったんだけど。」

私は携帯電話をもっていない。

だから彼との連絡は家の電話にかかってくる。

電話をしている横にお母さんがいたことも何回かある。

「いつも誘いを断っていたでしょ。」

「でも。」

「遊びたいの今まで我慢してくれてたの知ってた。大丈夫よ。その日は仕事が半日で終わるから、あの子達の留守番も半日。それぐらいなら大人しく留守番できるから。」

それでもあの子達は寂しがる。弟妹の顔が浮かぶ。

あんまり寂しい思いはさせたくない。

お母さんが仕事の日は私が帰ってくるのを楽しみに待っている。

だから三人しかいない土日はずっと一緒にいる。

私も小さいとき一人で留守番していた。それはとっても寂しかった。

だからあの子達に私は寂しい思いはしてほしくない。

「何迷っているの。」

すごく真剣な表情で怒られた。さらに続けてこう言われた。

「家族も大事だけど、恋人も大事よ。大切にしなさい。」

私は力強く頷いた。

「じゃ、決まりね。」

「ありがとう。電話してくるね。」

私は電話をしに廊下に向かった。

 

—こうして私はイブの日に彼とデートする事になったのだ。でもそれからが大変だった。デートに着ていく服がない事、男の子にプレゼントを渡すのはいいけど何がいいのかさっぱりわからなかったこと。私は悩みに悩みぬいたすえに、ギリギリの23日にデートのため服と彼へのプレゼントを買いにいったのだ。

 それがあの出来事を起こしたのだった。もっと早く準備していればよかった。でも準備してたらアレもなかったかわりに今もなかった。どう繋がっているかなんて物事が終わったあとじゃなきゃわかんない。—

 

 

「ただいま」

小さな声でドアを開ける。すると奥から小さな足音が聞こえてきた。

「おねえちゃん、おかえり。」

一番下の妹が駆け寄ってきた。私はしゃがみ込んで妹の頭を撫でる。

「ただいま、いい子にしてた。」

「うん、してたよ。」

「そっか、じゃプレゼントをあげよう」

「ほんと、なにをくれるの」

私は手に持っていた袋からぬいぐるみを出して渡す。

本当はもっと大きなのを買ってあげたかったけど、私のお小遣いじゃこの大きさが限界だった。

「わぁ、ありがとう。大きいな」

無邪気な笑顔を浮かべる妹。

ぬいぐるみを気に入ったのか両腕を目一杯使って抱きしめている。

そんな様子を見ていたはずなのに、気がついたら私は抱きしめていた。

「おねえちゃん、どうしたの」

「なんでもないよ」

するとまた小さな足音が聞こえてきた

「ねえちゃん、僕にはないの」

お土産という言葉が聞こえていたのだろう。

弟が僕もっといって、私の腕の中に入ろうとする。

私は二人をギュッと抱きしめる。

「二人とも今日いい子にしてたから、明日午前中の二人でお留守番はなしになったからね。」

「ほんと」

妹はすごく嬉しそうに聞いてくる。

「本当だよ。一緒に遊ぼうね。」

「やったー。ママにもいってくる」

弟は私から抜け出して台所に走っていく。

「こら、走らないの。」

すると今までニコニコしていた妹が私の顔を触ろうとする。

「どうしたの、私の顔何かついてる。」

「おねちゃん、どこかいたいの。おめめがぬれてる。」

私は手を目に当てる。本当だ涙がこぼれている。

「大丈夫だよ。なんでもないから」

私がそう言う前に妹は大きな声で

「まま、たいへんおえねちゃんが」と言いながらキッチンに走っていった。

弟のプレゼントを袋から出してリビングに置き自分の部屋に戻る。

私は取合えずベットに荷物を置いた。

使うことがなくなってしまった服を見ていると涙が次から次へとでてきた。

部屋のドアがノックされる。

「……。」

上手く返事ができないでいると、お母さんがコーヒーを二つもって入ってきてくれた。

「さっき、あの子達が明日はお姉ちゃんが遊んでくれるって言いに……。」

お母さんはそこまで言いかけたが、私が泣いていたのに気づくと、部屋のテーブルにコーヒーを置き。私が腰掛けているベットの横に座った。

「何があったの。あんなに嬉しそうに出かけていったのに。」

横にいるお母さんの温もりはとっても落ち着いた。

「うん」

取合えずうなずく、

「明日デートなんでしょう。」

「いいの、止めたから」

「なんで、あんなにも楽しみにしていたのに」

なんでもないと答えようとしたが、この状況でなんでもないなんていっても納得してはくれないだろう。

 「ごめんなさい。」

「彼と喧嘩でもしたの。でも今日は一人で買い物にいったんだよね。何があったの」

そう言うとお母さんは私を抱きしめた。暖かい、何だかとっても安心できる。

「ほら、ほら、我慢しちゃダメよ。聞いてあげるからね。ゆっくりと落ち着いて」

小さな子がされるように私はあやされながら、私は自分が見たままの状況をお母さんに話した。

 着ていく服と彼へのプレゼントを求めて私はクリスマス一色に染まった街を歩いていた。

多くの家族連れやカップルが街中に溢れている。

明日は自分もその中に紛れ込めるんだろうか。

浮いたりはしないよね。ガラスに映る自分の姿を見ながらそんなことを考える。

それしにても、もう少し普段からお洒落に気をつけておけばよかったな。

取合えずは私のよく行くお店にいって。プレゼントは親友お勧め店で選んでみよう。

彼はどんなものをあげると喜んでくれるのだろうか。

手編みのマフラーとかセーターが編めれば最高なのだか、生憎私にはそんなスキルは微塵もない。

けど、練習すれば何とか形にはなるず、だからそれは来年へと後回。

今年は気持ちが伝わる物を探して渡す事にした。

取合えずいつもいくお店で服を選んでいると、顔なじみの店長さんが声をかけて来た。

「いらっしゃい。明日のデートの服?」

あれ、なんで知っているんだろうか。

間違っていないので何も言えずオロオロしていると店長さんは一人で納得していた。

「そっか、そっか。それならそっちじゃなくてコッチね。」

そう言うなり、私が手に持っていた服を奪い。

となりにかけてある服をとり私にあてがう。

「ほら、これもってあっちにね。後はアレとアレよね。」

そう言いながら向こうにいこうとする。

「あの」

私が声をかけると

「いいから、いいから私にまかせなさい。早くあっちで着て来て。」

それだけ言い残すとあっという間にいなくなってしまった。

「これ、こんな可愛いの似合わないよ。」

私はそうこぼしながらも最初に手に取ったヤツと似たデザインの服と、渡された服をもって試着室に向かった。

「はぁい。着替え終わってる。開けてもいい。」

店長さんが声をかける。

「あ、はい、大丈夫です」

そう答えるとカーテンが開かれる。

「どうですか、変じゃないですかこれ。」

私はとりあえず手渡された物を着ていた。

「変じゃないわよ。すっごく可愛いよ。ベースはそれに決まりね。」

そういって店長さんは手に持ってい服を次から次へとあてがっていく。

「すみません、お金そんなにもってないから。これだけでいいです。」

服の値札を見ると予算はこれだけでいっぱいいっぱいだった。

「どれぐらいなら大丈夫なの。」

私は正直にこれぐらいと伝える。

「それなら大丈夫。割引してあげるから。まぁクリスマスプレゼントだと思って」

そういって店長さんはコーディネートをつづけていく。

「はい、完成。これで彼氏も喜ぶわよ。」

私は鏡に写った自分を見る。ちょっと自信ないな。

「大丈夫だから。自信もって。」

店長さんはそう言ってくれた。この人にそう言われるとそんな気がした。

取合えず店長さんが揃えてくれた一式を買う事にした。

「ありがとうございました。」

私は選んでくれたのと割引してくれたお礼をいう。

「いいのいいの、デート頑張ってね。」

「はい」

私は元気よく店を出て、プレゼントを買いに次のお店に向かう。

彼のプレゼントを選ぶ、その前に弟妹達のを買う。

妹にはちょっと大きめのヌイグルミ。

弟には今はまっているシリーズのオモチャを買った。

それぞれに簡単なクリスマスのラッピングをしてもらい。

残るは彼のプレゼントのみ。親友に地図を書いてもらったお店へと足を運んだ。

親友が教えてくれたお店はとっても落ち着いた雑貨屋さんだった。

お店の前には色々なクリスマスの関する商品がセンスよく飾ってあった。

それらをゆっくりと見て、お店の中に足を入れる。

そこにはところ狭しと色々なものが陳列してあった。

一個一個を手に取ってみていく。可愛いのから、面白いのまでいろいろ。

さて、彼には何がいいんだろうか。彼が好きそうな物をあれこれ考えてみる。

ダメだお店に来ればなにかいい物があると思っていたけど、ありすぎで決められない。

「どうしょう。何がいいだろう。」

私は一人小さくごちった。

「プレゼントですか。」

振り返ると店員さんがニコニコして立っていた。

こういう時は一人で悩まず相談した方がいい。

そう思い私は店員さんに何か記念になるものはないですかと尋ねた。

「そうですね。そう言う時は変に飾らずシンプルな物とあとこれ。」

そういって店員さんはエプロンのポケットから綺麗なカードを取り出す。

「これに、あなたの思いを添えて渡してあげれば大丈夫だから。」

店員さんからカードを受け取る。とっても綺麗なカードだった。

私はお店にあるいくつかの品から変わった彼好みのデザインのシャープペンを見つけた。

そして、それに私の思いを改めて書いて一緒に包んでもらった。

「良い、クリスマスを」

店員さんがそう声をかけてくれた。

「お兄さんも良いクリスマスを」

私は答え、お店を出て、家に帰ろうとした時。

偶然にも彼を発見した。声をかけようと思ったが、やめた。

彼の後ろから女の子が近づいてきて、腕を組むように抱きついたからだ。

そして彼の耳元に何か囁いている。誰だろうあれ、なにしているんだろう。

彼の表情は彼女の顔で隠れていてよくわからない。でも嫌そうではない。

すると二人は腕を組んだまま歩き出した。

気がついたら私は二人のあとをつけていた。気づかれないように、距離をとりながら。

二人は色々なお店に立ち寄っては楽しそうにしている。

何で彼の隣にいるのが私じゃないんだろうか。

彼が何やら手に持って彼女に聞いている。彼女はウンウンと頷きながら、ニコニコしている。彼女が何か言うと、彼は少し困ったような表情したが頷いていた。

すると彼女は彼に抱きつき、頬にキスをした。

出かける前はすごく明日が楽しみでしかたがなかったのに今は何でこんなに悲しいんだろうか。

ここ数日の楽しくてワクワクしていた気持ちはいったいどこにいったんだろう。

私は二人のあとをつけるのを止めて家に足早に帰ってきた。

 

—今思うと、あの光景を見て私はよく怒らなかったな。頭で、ああ、二股かけられていたんだとすっごく冷静に捉えていた。いや怒りのゲージが一回りしていただけだったんだろうけど。—

 

 

お母さんは何も言わずに最後まで聞いてくれた。

私の話が終わってしばらくしてから優しく話しかけてきた。

「そっか、店長さんが割引してくれたのか。その服、あとで見せてね。」

「うん」

「彼に渡すプレゼントも決まったんだ。」

私は返事をしなかった。たぶんもう渡す事はない気がする。

黙っているとお母さん抱きしめてくれた。

すると止まっていた涙が再び溢れ出してきた。

声も洩れそうになる。優しく優しく再び抱きしめられた。

しばらくそのまま腕の中に身を委ねた。

「落ち着いたかな。」

「うん」

私が返事をするとお母さんは抱いていた手をほどき、両肩に手を置いて私を見つめる。

「何?」

「あのね彼の事なんだけど、彼に確認はしたの。」

私は首を横に振る。そんなの怖くてできない。

「じゃ、確認しないとね。あの子はそんな事絶対しない。っていうか出来ないよ子よ。」

あれ、なんでお母さんはそこまで言い切れるんだろうか。

彼の話をした事はあるけど、そんな詳しくは言った事がない。

「どうしたの。」

「なんで彼がそんな子じゃないって言えるの。」

「ああ、前にね。あなた宛で電話があったとき。話すことがあったの。」

へー初耳だ、いつあったんだろう。

「あなたがお風呂に入っているときに電話がかかってきた事があったのよ。そのときにね。」

その時に彼は、娘とはどういった関係ですかと聞かれ。正直に彼氏だと名乗ったらしい。

普段のヘタレ具合からすると考えられないな。そして少しだけ世間話をっていうか私の話をしたらしい。そこで得た印象が良かったらしい。

「それと後は、あなたがほぼ毎日彼の話してくれてるでしょう。」

そう言われて顔が赤くなるのを感じていた。

私はよく学校の話をお母さんにする。

でもそんなに彼の話ばかりしていた記憶はない。

「今さら恥ずかしがらないの。つき合うことになったって聞いたときはやっとかって思たんだから。しかも、……からだなんて」

そっと私の耳元でささやく。

「もう、止めてよ。それ。」

しかもやっとってどういう事なんだろうか。

もしかしてつき合う前から好きだって事がバレていたのかな。

「いいでしょ。別に減るもんじゃないし。ほら元気がでてきたなら。電話をしなさい。」

「でも……。」

「でもじゃないでしょう。彼を信じなさい。あなたが好きになった人でしょう。」

お母さんはそう言って私を抱きしめてくれた。

「悪いことばかり考えちゃダメよ。私が保障してあげるから。母を信じなさい。」

そだよ。あの彼があんなのありえない。それは私が一番良く知っていたはず。

「わかった。もう少し落ち着いたら電話してみる。たぶん、まだ外にいるだろうし。」

「携帯番号はきいてないの。」

「うん、聞いてない。家の番号だけ。だってかけると高いし。」

私は携帯電話をもっていない。だから彼の携帯は聞いてない。

彼は恥ずかしいから携帯にっていうんだけど、恥ずかしいのはお互い様なので私はあえて家の電話にかける。まぁ彼からかかってくる時はどっちからかけているのか知らないけど。

一時間後、私は意を決して彼の家に電話をかける。

明日がワクワクできるとっても楽しい日になるように。

「ねえ、今日なんだけどさ……。」

なぜか、その先がでてこない。

「ん、今日がどうかしたのか。」

彼がいつも調子で聞いてくる。

「あっ、うん今日さ。誰かと出かけてた。」

「いいや、でもどうして。」

「嘘。」

私は短く言い放った。何で嘘つくんだろう。

やっぱりアレは私以外の彼女なんだろうか。

お母さんの彼を信じなさいという言葉が頭をよぎる。

でも彼が嘘をいった。それが私にとってすごくショックだったんだろう。

私はあの怒りが再燃して一気に吹き出した。

「何でそうなるんだよ。」

「だって私、街で見かけたもん。」

「えっ。」

「すごく楽しそうだった。」

「ちょっと待って、何を見たんだよ。」

私は見た場所とその時の光景を告げた。

「女の人と腕を組んで歩いてた。」

そこから先は言えなかった。思い出すだけで胸が痛い。

「げっ、アレ見てたのか。」

一瞬の間があった。

「あのな、ちゃんと聞いてくれよ。アレは俺の姉だ」

彼の声は少し震えていた。

嘘だ。だからもう一度シンプルに言葉を告げる。

「嘘。」

「嘘じゃないって。」

「じゃ、なんで抱きつかれたり、キスされてたの。」

今度は胸が痛くなるのを感じるより前に言葉が出た。

「それも、見てたのかよ。最悪だ。」

最悪なのは私の方だ。

「今いるから、代わって説明させるから。」

「ふ〜ん、家に一緒にいるんだ。明日もその人と一緒にいればいいよ。」

私は勢いに任せて電話を切った。

キスまでされておいて、姉だなんてあるわけがない。

嘘つくならもう少しましな嘘をつけばいいのに。

嘘がつけない人が嘘をつくからこうなるんだ。

ワクワクどころか最悪だった。

 

ーこのとき冷静ならよかった。嘘がつけないから、彼は嘘をつかない。こんな簡単なことも私は忘れていた。ー

 

 

私は自分の部屋にこもり、ベットの上でうずくまっていた。

すると心配そうな顔をして弟と妹が部屋に入ってきた。

入ってきて二人は私を挟むようにベットに座る。

私は抱きしめていたぬいぐるみを横に置き、弟と妹の頭を自分に寄せ付ける。

二人は私に体をあずけ何も言わずじっとしている。

こんな小さな子にまで心配かけてなにやってんだろうな。私は、

下で電話が鳴る。彼からかな。出たくない。

電話の音がなくなる。お母さんが出た。

何やら話し込んでいる。お母さん仕事関係の人だったか。

そんな事を思っていると横で妹が小さなあくびをする。

「ちゃんとお昼ねしたの。」

「したもん。」

「うそつけ。ずっとおきてたくせに」

「だっておねえちゃんがしんぱいだったんだもん。」

私は泣きそうになった。

「ごめんね。もう大丈夫だからね。一緒にお昼しようか。下にいこう。」

「ううん、ここでねたい」

妹はトロンとした表情をしていた。

「いいよ。」

そう言って頭を撫でてやる。

「あっ、ぼくも。」

二人が争うように私のベットに潜り込む

「はいはい、仲良くね。」

私は二人を寝かせつけながらいつのまにか寝ていた。

家のチャイムが鳴る。誰か来たのかな。

そう思い目を覚ます。二人は仲良くまだ寝ていた。

玄関を開ける音がした。

お母さんのお客さんかな。そう思い私は再び目を閉じる。

そして再び眠りについた。

「ほら、起きなさい。お客さんよ。」

肩をゆすられる。

「お客さんて誰。」

「誰でもいいから起きた起きた。」

お母さんの楽しそうな声で起こされる。

「ほら、一回顔を洗ってらっしゃい。あと、これ」

洗面所で顔を洗い、乱れていた髪を整える。

そして、リビングに行くとそこにはあの女の子が座っていた。

私は後ろを振り返った。お母さんは私を見て大きく頷いた。

「ほら、行きなさい。ちゃんと話を聞いてきなさい。」

私はおずおずとテーブルつく。何て話していいのかわかない。

事情をしっているらしいお母さんはお茶の準備をしている。

すると、女の子から話しかけて来た。

「はじめまして。話は弟からよくきいてます。」

女の子はそう話をはじめた。

「彼女は嘘ついてないわよ。正真正銘彼のお姉さんよ。」

お母さんがそういいながらお茶をもってきてくれた。

「さっきね。彼から電話があって彼を問いつめたの。どういうことって。」

さっきの電話は彼からの電話だったのか。でもなんで彼女が家にいるの。

「そしたらね。その女の子はお姉さんだって言うから。とりあえず電話を代わってもらって話をしたの。その後に彼のお母さんとも話をして完全に誤解だって事がわかったから来てもらったの。あなたには直接話を聞いてもらった方がいいと思って。」

なぜ彼女がここにいるのかをお母さんが丁寧に説明してくれた。

「ごめんなさい。あれはアイツをからかってしただけ。もう絶対にしないから。」

彼のお姉さんが深々と頭を下げる。本当にアイツのお姉さんだったんだ。

嘘と決めつけて酷い事しちゃったな。ちゃんと謝っておかないと。許してくれるかな。

「でもビックリしたな。アナタみたいな可愛い子がアレの彼女何て。アレのどこがよかったの。」

「えっと、あのどこって言われても。」

そんな感じで常にお姉さん主導で話が始まった。

私が明日のためのプレゼント選びとかをしていたとか。

彼が女の子の喜ぶものがわからずプレゼントが決めれず焦っていたこと。

あとは今日のあの事を話してくれた。

プレゼント選びで街に出ていた彼をたまたま見つけて、アドバイスを求められ一緒にプレゼント探しをしたこと。

そして、プレゼントが決まりアドバイスした代償の約束をさせ、そのお礼とちょっとした嫌がらせを兼ねたキスした事。

まさかそれを私に目撃されているとは思いもしなかった事。

私からの電話のあと彼にすっごく怒られた事。

 

話をしていると不意に後ろから抱きしめられた。

誰、お母さんじゃない。お母さんはニヤニヤしながらキッチンからこっちを見ている。

お姉さんを見るお姉さんは驚いた表情をしたあと。

とっても優しい顔を私に向けて頷いていた。

誰だろう、そう思っていると耳元で聞き慣れた声が聞こえた。

「ごめんな。でもホッとした。これで終わりなんて嫌すぎるから。」

その声は彼だった。えっなんで彼がここにいるの。どうして。この時、私は完全にパニックになっていた。それに彼は悪くない。ちゃんと確認せずに一人で悩んで勝手に怒っていた私が悪い。

「ううん、私こそごめんなさい。酷い事言った。」

抱きしめてくれている腕にそっと手を置く。

「ほらほら、泣かないの。せっかく彼が来てくれいるんだから。」

お母さんはそういいながら、飲み物を持ってこっちに来る。

そう言われても私の目からは涙が次から次へと出てくる。

すると頬に彼の指がふれ涙を拭いてくれた。

振り返って彼をみる。彼はすっごく優しい笑顔で私を見ていてくれた。

次の瞬間私の目の前は真っ暗になった。

何事かと思ったら唇がふさがれていた。彼にキスされていた。

私たちのセカンドキス。私は目を瞑りその時間に身を委ねた。

そんな時間はお母さんとお姉さんにより現実に戻された。

「ああ、もう二人の世界にいっちゃって。私たちがいるのに。」

「これでからかうネタがまた、一つ増えた。」

二人の声に、私たち以外がこの場にいる事を今更ながらに思い出して、あわてて唇を離す。

「君も大胆だよね。親の目の前で娘の唇を奪っちゃうなんて。でもいっか。明日もよろしくね。くれぐれも節度をもって帰してね。」

お母さんがそう言うのを聞いて私はあの子達と約束した事を思い出した。

「あっ、どうしよう。」

「行ってこればいいじゃないの。誤解もとけたんだし。」

「うん、そうなんだけど。あの子達に約束しちゃった。一緒に遊んであげるって」

「どういうこと。」

彼が聞いてくる。

私は彼に小さな弟妹がいることを話した。午前中はお母さんも仕事でいなくて、小さな二人でお留守番となっていたことを伝えた。

「もう、前にも言ったでしょう。家族も大事だけど、恋人も大事。大切にしなさいって。」

それを聞いてお姉さんは笑い出した。どうしたんだろうか。

「おばさん、それ普通逆ですよ。」

「そうよね普通逆よね。でも、この子見てるとついね。」

お姉さんは私を見て、それから彼を見る。

「アンタ、わかってるよね。」

彼は小さく頷いた。なんだろう、何をわかっているんだろうか。

「どういうこと。」

そう聞いたら、彼はいとも簡単にこう返した。

「明日はここでデートしよう。あいつらには俺から電話しておく。二人きりでデートする事にしたからって。」

「え、でも」

「弟妹も寂しくないし。俺たちもデートできるし。何も問題ないって」

そう言って私を見る。私はどうしていいのかよくわからずお母さんをみた。

「もう、遠慮しなくていいのに。せっかくのイブなんだから二人で出かけておいで。」

お母さんは私たちにそう言った。

「ありがとうございます。でも一緒にいれれば。それだけでいいです。」

そう言った彼の顔はすごく格好良かった。

お母さんは暫くの間、彼を真剣な目で見つめていた。

「じゃ、お願いしようかな。娘の事よろしくね。でもまだ食べちゃダメよ。」

そう言われて、彼は真っ赤になっている。彼のお姉さんも真っ赤だ。

何だろう、食べちゃダメって。彼を見る、プイッと顔をそらされる。

お姉さんを見る、視線が合うと下を向いてしまった。

お母さんを見る。ニヤニヤしている嫌な予感がする。

そして、近くまで来て耳打ちする。

もう、何てことを言うんだろうか。

二人が真っ赤なのもよくわかった。当然、私も真っ赤だ。

「だって親がいる前でこれだけできるんだから、いなかったらと思うと。」

「お母さん。」

「もう、冗談よ。」

「じゃ、私たちも帰りますね。ほら帰るわよ。」

「ああ、じゃまた明日。」

二人を玄関まで見送った。

 

そうして私たちはイブの日を私の家で過ごすことになった。

お互いにプレゼントを交換した。彼は弟妹にもプレゼントを用意していてくれた。

例年より多くのプレゼントをもらった弟妹が大はしゃぎしてクリスマスイブを楽しんだのは言うまでもない。

そして私たちもそれなりに楽しく過ごすことが出来た。

まぁおまけで彼はその日以降、ほぼ毎日家に来てくれている。

そんなことがあった十二月の出来事。

 

 

そんな風に思い返していると、両隣が大人しくなっている。

二人とも私の腕を掴んだまますやすやと眠っている。はしゃぎ過ぎて疲れたんだろう。

今日は遅くまで起きていると言って昼寝は十分していたはずだけど。

「お母さん。二人寝ちゃった。」

反対側に座って本を読んでいたお母さんに声をかける。

「あらあら、おソバを食べるときになったら起こすから。運ぶの手伝ってくれる。」

私は二人の手をそっと外して一人ずつ抱っこして運んでいく。

二人をベットに運んだあと、コタツに戻りゆっくりとテレビを見る。

「そろそろ、彼も来るころでしょう。おソバ食べたらすぐ出かけるんだから。準備しなさい。」

そう言われて私はまだ何も準備していない事に気がついた。

「その前に、私にも見せてほしいな。あの服着ていくんでしょ。」

そうだった。買ったまま着ずに終わったあの服を今日着ていくんだった。

初めてのお出かけデートは初詣。年またぎになったけど私はすごっく幸せだ。

今年一年が良い年であったように来年もいい年だと良いな

 

fin


 
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