No.494230

IS~インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―五十八話

黒猫さん

さぁ、行きましょうか

2012-10-09 21:27:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4370   閲覧ユーザー数:4123

 

学園side-

 

 

士の誘拐から二日後

 

 

「よし、全員揃ったな。フォーメーションは昨日の通りだ……行け!」

 

 

千冬の言葉と同時にたくさんのISが空へ飛び立った

 

 

 

士side-

 

 

「スコール。エムとオータムは行ったぞ……俺は行かなくていいのか?」

 

 

「ええ……貴方はまた後でね」

 

 

「分かった」

 

 

「偉いわね」

 

 

そう言うとスコールは俺の頭を撫でた

 

 

気持ちいい……

 

 

スコールは撫でていた手を背中に回し、俺を抱き寄せる

 

 

豊満な胸が俺に押し付けられた

 

 

「スコール」

 

 

「ふふ、士君♪」

 

 

またぎゅっと抱きしめられる

 

 

そんな彼女を俺は抱きしめ返す

 

 

「あ……嬉しいわ」

 

 

頭を俺の胸板に預け、スコールは甘えた声を出す

 

 

「スコール……」

 

 

「もっと、私を求めて……もっと」

 

 

そうしたまま俺は時間を過ごした

 

 

 

 

学園side-

 

 

「見つけたぞ!エムとオータムだ!座標を送る!すぐに応援を!」

 

 

箒の連絡に全員に緊張が走る

 

 

「動くな!」

 

 

地上に降り立つと同時に箒が怒鳴りつけた

 

 

「篠ノ之束の妹か……楽しませてくれよ」

 

 

オータムが邪悪な笑みを浮かべる

 

 

「箒だけではないぞ!」

 

 

そんな声がしてオータムとエムは更に後方に目をやると

 

 

IS学園総動員で来たのだろうか……かなりの数のISが

 

 

「楽しくなってきたな……」

 

 

「そろそろメインも来るしな!」

 

 

エムの呟きにオータムが答える

 

 

「亡国機業のオータムとエムね……貴方たちを神谷 士の誘拐、ISの違法所持、IS強奪、国家反逆罪の現行犯で逮捕、もしくは殲滅するわ」

 

 

楯無が一歩前に出て告げた

 

 

「ほう……やってみろよ!」

 

 

オータムが二本のカタールを抜くと同時に

 

 

 

 

 

 

「やめろ、オータム」

 

 

男の声がした

 

 

その声は聞きたかった声で……

 

 

しかしどこか冷たい

 

 

「コイツ等は俺がやる。邪魔するな」

 

 

「ちっ!なんだよ」

 

 

「その代わり、教師陣を頼む。エムもだ」

 

 

「ふん。分かっている」

 

 

呼び慣れたように彼女達と言葉を交わす彼

 

 

『士!(さん)(っち)(くん)(君)!!』

 

 

全員が声を張り上げ彼の名前を呼ぶが……

 

 

「あ?」

 

 

彼の目は不機嫌で染まっていた

 

 

「うるせえよ……」

 

 

「え?」

 

 

誰かが戸惑いの声をあげる

 

 

皆も驚きで声を隠せない

 

 

どこかに監禁されているのだと思っていた彼女達からしてみれば、目の前に彼がいるだけでも驚きなのに、その彼は今……

 

 

「スコールの頼みだからな……お前等を潰す!」

 

 

バックルをかざす

 

 

「士……なんでそっちにいるんだ!」

 

 

箒が声をあげるが

 

 

それに答えたのは士ではなくエムだった

 

 

「コイツは今、スコールの催眠状態にいる……残念だが、諦めろ」

 

 

「嘘……嘘よ!」

 

 

鈴が頭を振って叫んだ

 

 

「士くん……」

 

 

「士……」

 

 

楯無と簪が呼びかけるが士の耳には届かない

 

 

「変身……」

 

 

カードが曲がるほど強くかざした彼はカードを挿入しバックルを回す

 

 

『KAMEN RIDE・DECADE』

 

 

それは見慣れたマゼンダの姿ではなかった

 

 

一瞥するとそれは確かにディケイドだ

 

 

しかし、ディメンションヴィジョン(緑色の複眼)の形状が禍々しくなり、額のシグナルポインターの色が黄色から紫に変化している

 

 

「俺は……全てを破壊する」

 

 

そう呟くと同時に走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃ!!」

 

 

シャルがライドブッカーのソードモードによる剣戟を受け、身を引く

 

 

「うりゃああ!!」

 

 

ダリルはその足技をかますが、全て避けられた

 

 

さっきから何一つ攻撃が通らない

 

 

楯無さんのクリア・パッションすら効かないのだ

 

 

ラウラのAICも無意味なもので

 

 

勝つ見込みなどなかった

 

 

「そろそろ終わりにしよう」

 

 

そう言うと士はカードを取り出し、挿入した

 

 

『FINAL FORM RIDE・bu,bu,bu,BLUE TEARS』

 

 

突如、セシリアはその姿を「スターライトmkC」へと変え、士の元へと浮遊した

 

 

無言で引き金を引く士

 

 

狂ったように……それでいて正確な射撃

 

 

阿吽の叫び声が響き、派手な爆発が起こる

 

 

『FINAL ATTACK RIDE・bu,bu,bu,BLUE TEARS』

 

 

スターライトは碧く光り、大量の光弾を放った

 

 

再び起こった爆発音

 

 

その煙が晴れた先にはボロボロの専用機持ちが

 

 

「お前も、もういらん」

 

 

乱暴にそのライフルを投げ捨て、セシリアのファイナルフォームライド状態が解除された

 

 

『FINAL ATTACK RIDE・de、de、de、DECADE』

 

 

自分とセシリアの間に現れる13枚のホログラム状のカード型エネルギーを潜り抜け跳び蹴りを叩き込むディメンションキックを決めた

 

 

「きゃああああ!!」

 

 

セシリアは体を転がし、皆の元へと滑るように転がった

 

 

「その程度か……」

 

 

手を弾くように叩く士

 

 

「ぐぅ」

 

 

それでも一人、また一人と立ち上がる

 

 

「まだやるか……」

 

 

「さっさと目を覚ましてやる」

 

 

「ええ……そろそろ、おねーさんも本気を出すわ」

 

 

ラウラと楯無はそれぞれの武器を構え士気をあげる

 

 

「まあいい……さあ、恐怖しろ。そして絶望し、破壊されるがいい」

 

 

彼はその言葉を否定されると思っていた

 

 

「恐怖も絶望もしない」と

 

 

しかし……

 

 

「怖いよ……恐怖もしてる」

 

 

シャルが唐突に言った

 

 

「でも、その理由は、簡単……だよ」

 

 

簪も続く

 

 

「いつものお前ならあまりに大きすぎて……」

 

 

「強くて、次元が違いすぎて」

 

 

「怖がるのも、馬鹿馬鹿しい……」

 

 

箒、セシリア、鈴も

 

 

「それが士……私の嫁だ……」

 

 

ラウラは一歩滲み出て

 

 

「恐怖を感じるってことは、今の君がそれだけ弱いってことっス」

 

 

「力の底が見えている証拠だ」

 

 

ダリルとフォルテも続いた

 

 

「許せないわ……そんなに弱くなった貴方を、許すものですか!」

 

 

「「「「「「「「「返してあげる(あげます)(やる)!!お前に(貴方に)(君に)教えて貰ったこと全部!!」」」」」」」」」

 

 

その瞬間、少女達は弾けた

 

 

「うおりゃ!」

 

 

「はああ!」

 

 

ダリルと鈴はその刀を分け合い、士を斬りつける

 

 

「アンタが教えてくれたことでしょうが!」

 

 

次は簪とフォルテ

 

 

「「力の意味も!」」

 

 

箒とラウラ

 

 

「「その使い方も!」」

 

 

シャルと楯無

 

 

「「私(僕)達の在り方も!!」」

 

 

「違います……こんなの士さんじゃありません!!」

 

 

セシリアも

 

 

「「「「「「「「「私(僕)(ウチ)の士じゃなーーーーーい!!!」」」」」」」」」

 

 

彼女達の武器は輝いていた

 

 

「(なぜだ……なぜ勝てない……っ!そうか……)」

 

 

「僕達の力は何かを守る力」

 

 

シャルが

 

 

「守ることが力あるものの義務」

 

 

ラウラが

 

 

「アンタがそう教えてくれたんじゃない!」

 

 

鈴が

 

 

「守る……」

 

 

士はつぶやく

 

 

「お前は私に言った……鬼の力を制御できればその力を使ってもいいと……」

 

 

箒が

 

 

「君は……その力を何のために使おうとしているの」

 

 

楯無さんが

 

 

「なんで、そんなつまらない夢見てるんスか!」

 

 

フォルテが

 

 

「何を……守ろう、と……している、の……!」

 

 

簪が

 

 

「っ!」

 

 

士の肩が揺れた

 

 

 

 

士side-

 

 

「おいおい、何やってんだ……俺は」

 

 

こりゃ、こんなんじゃ勝てるわけねぇのによ

 

 

「そろそろ、目……覚ませーーー!!」

 

 

ダリルさんの掛け声と同時に、皆が一斉に飛び交う

 

 

それに比べて何て輝いてんだ……皆は

 

 

その瞬間、皆に殴られた

 

 

 

 

 

 

ああ、いってー

 

 

でも、目ぇ覚めたな

 

 

マジで情けねぇ……

 

 

起きるか……

 

 

「よっと……」

 

 

「「「「「「「「「士(さん)(っち)(くん)!」」」」」」」」

 

 

「皆……」

 

 

皆が俺を囲むように立っていた……それは、どこまでも優しい笑顔で

 

 

 

「ごめんな……本っ当にごめん!!……今回だけは、死んでも死にきれねぇ!……許してなんて言わない!だから―――」

 

 

 

「―――何を勘違いしているんだ……」

 

 

ラウラが呆れるように口を開いた

 

 

「私達は怒ってなんかないわよ」

 

 

「うんうん」

 

 

「そう、だよ!」

 

 

鈴とシャル、簪もどこか楽しげに

 

 

「え?」

 

 

「パフェで許してあげる……1つ3000円だけどね」

 

 

「もう、士っちは~。今回だけだぞ!」

 

 

「そうだな……もう勘弁してもらいたいものだ」

 

 

楯無さんもフォルテさん、ダリルさんも続けた

 

 

「嫁は私の嫁だからな……」

 

 

「信じてますわ」

 

 

「次はないぞ!」

 

 

ラウラとセシリア、箒も……そう言ってくれた

 

 

「皆……ありが……とう……!」

 

 

涙が止まらなかった……

 

 

こんなに泣いたのは何時ぶりだ?

 

 

本当に感謝しないとな……

 

 

そう、思った瞬間だった

 

 

「感動の再会……そこまででいいかしら?」

 

 

その声は聞きなれそうなくらいで

 

 

でも、今は許せなくて……

 

 

「スコール!!」

 

 

「あら?士君……目が覚めてしまったの?」

 

 

スコールは上品に口を手で隠しながら笑う

 

 

エムとオータムは教師陣を倒し、スコールの元へと集っていた

 

 

俺は一歩前に出て……

 

 

「戻ってらっしゃい……士君」

 

 

スコールが告げると同時に俺の体は独りでに動いた

 

 

「士さん!?」

 

 

セシリアが声をかけるが、止まらない

 

 

「くそっ!どうなってやがる!」

 

 

「貴方の心まではあの娘達がいる限り支配できないのは分かっていたわ……だから体くらいは……ね」

 

 

スコールは可愛らしく首を傾ける

 

 

「身体の神経経路麻痺させているのか……!」

 

 

ラウラは焦ったように呻いた

 

 

「さあ、帰ってまたたっぷりと遊びましょう♪」

 

 

俺の体が皆とスコール達の中間を行ったときだ……

 

 

「士!」

 

 

声がしてなんとか振り返ると……

 

 

「何を……している!」

 

 

千冬姉だ

 

 

「千冬姉」

 

 

これにはスコールも驚いたのか……目が見開かれている

 

 

「士……私は家族をこんな形で失いたく……ないっ!!」

 

 

千冬姉の涙がほんの少し、巻き散らかったとき、俺の中で何かが弾けた

 

 

「……うおおおおお!!」

 

 

体を無理矢理、動かし方向転換

 

 

千冬姉の元へと歩む

 

 

「やめなさい、士君!無理に動かすと筋肉が使い物にならなくなるわよ!」

 

 

スコールは変わらず焦った声色

 

 

「知るかよ……俺は、俺の体がぶっ壊れるより……千冬姉が泣いてるほうがよっぽど嫌だからな!」

 

 

そう言って千冬姉を抱きしめた

 

 

「士……」

 

 

「心配かけたな……千冬姉」

 

 

「うう……っう。本当に心配かけすぎだ……馬鹿者」

 

 

珍しく泣きこむ千冬姉の頭を撫でた

 

 

「何故?……士君、あなたは何者なの!」

 

 

スコールは怒声を撒き散らす

 

 

「……俺は、お前等の仲間でもなんでもない。俺は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――通りすがりの仮面ライダーだ!覚えておけ!」

 

 

 

 
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