「油断したな。強力な使い魔を持つとはいえメイジ本人はそれ程でもなかろう」
俺の背にブレードを突き刺したワルドは勝ち誇る。
しかし、そんなワルドをルイズ達は冷めた目でみつめる。
「む、仲間がやられたと言うのに、何だその態度は?」
訝しげに問うワルド。
俺も全面的に賛成だ。
なあルイズさんや。同級生が背を突き刺されたら少しは心配しようや。
それと ゆうぼう。お前さんは俺の使い魔だろう。主人を気遣ってくれんのかね。
ついでに才人。それが
「ブレードで切りつけられたくらいで、ソイツがどうにかなるわけないでしょ」
「私は斬られたぐらいでどうにかなるような柔な鍛え方をマスターにしておりません」
「そいつの息の根を止めるなら熱湯か洗剤をかけるのがいいんじゃねえか?」
信用? いただき有難うございます。
それから才人。誰がパタリ○か。大体お前も似たようなモンだろうが。
「確かに俺はまだ動けるが、万一とか思わないのか?」
言いながらブレードを背中から引き抜き、さっさと治癒を唱える。
瞬時に傷は塞がり、失血を最小限に留める。
そんな俺に「「「全然」」」と異口同音に三人が答える。
そして呆然とするワルドの偏在を
「あーあ、服とマントに穴が開いたじゃないか。 だから俺はお前らに関わるのは嫌だったんだ」
「お前金持ち貴族の息子じゃないのか?」
「もったいないだろ。それに金を持ってるのは親父と御爺様だよ。
それよりワルド本体が逃げるがいいのか?」
我に返ったワルド本体が窓からグリフォンに乗って飛び去ろうとしている。
「問題ありません。 イオナズン!」
「えひゃい!?」
ゆうぼうが呪文を唱えると轟音と共に崩れる壁の向こうからなにやら悲鳴が聞こえる。
「ちょっと宮殿を壊さないで」
「形あるものはいつか崩れるものなのです」
「いや、お前がやったんだろ」
咎めるルイズに無責任な返事をする ゆうぼう。そこに才人のツッコミがはいる。
「おい、さっさと逃げよう」
治癒を施したウェールズ王子を回収しながら漫才を始めた同行者達を促す。
「ちょっと待って。奪われた手紙はどうするの?」
「焼いてしまいましょう。汚物も消毒です。 ベギラゴン!」
ゆうぼう が再び呪文を唱えると崩壊した壁で出来た瓦礫が業火に包まれる。
それと同時に外から鯨波が聞こえる。
「おい、王子がいねーから王党派はさっくり壊滅したようだぜ。どーすんだよ」
「ああ、そうだな。さっさと学院に戻ろう」
デルフの催促に才人がルーラを唱えると、一同の姿は宮殿から消え去った。
後には辛うじて瓦礫から這い出し、治癒で全身の火傷を癒したところで、
精神力と体力が尽き倒れたアフロヘアワルドの黒く煤けた姿のみが風に吹かれていた。
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