No.493440

恋姫†無双 関羽千里行 第1章 5話

Red-xさん

恋姫†無双の二次創作、関羽千里行の第5話になります。
ついにこの世界に来てから初めての戦です。
と言っても相手が相手なので...
それではよろしくお願いします。

2012-10-07 22:17:13 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3796   閲覧ユーザー数:3072

第1章 5話 ―初陣。そして...―

 

 

一刀「あれか...」

 

 荒野の先にモゾモゾと蠢く塊が見える。あれが霞の言っていた黄巾党のひいた陣だろう。

今、4千といってもその数の多さに恐れることはない。

 

 ここまでの道中、俺はまだ不安そうにしている村人がいると一人一人声をかけていった。そのおかげか、今はみんな緊張しているものの恐怖で動けないといった人は見られない。むしろ皆、士気も高くやる気に満ちていると言えるだろう。俺は愛紗、霞、華雄を集めると皆に具体的な作戦を伝えた。

 

一刀「3人とも聞いてくれ。これからみんなにやってもらいたいことを伝えるよ。」

 

霞「何か策があるんやな。」

 

華雄「策?あの程度のやつら、策など用いなくても我ら3人とこの士気の高さ。我らを先陣として突撃すればそれで終わりではないか?それとも我らの武に不安でもあるのか?」

 

一刀「そうじゃないよ。まだ華雄が戦っているところを見たわけじゃないけど、愛紗と自分の実力差をしっかり見極めていた華雄もかなりの使い手だってのは俺にもわかるし、信頼してるよ。でも確かに突撃しても勝てるだろうけど、可能な限り村の人たちの被害が出ないように俺のやれることはやっておきたいんだ。」

 

華雄「そうか、そこまで考えてのことだったのか。私は知略に疎いのに出すぎた真似をした。謝る。」

 

一刀「いやいや。今後も疑問に思うことや意見があったら遠慮なく言ってよ。これまで武を鍛えてきた華雄だからこそ気づけることもあるだろうから。霞も何でも言ってくれな。」

 

華雄・霞「応っ。」

 

一刀「じゃあその策なんだけど、相手はこちらの接近にも気付いてないみたいだ。それに霞が報告してくれた通りなんだか揉めているみたいだね。だからまずお年寄りの多い愛紗の部隊の人たちで斉射をかけてくれ。狙いは適当でもいいから。そうすれば黄巾の奴らは急な襲撃で混乱するだろうからその隙に俺と華雄の部隊で突撃をかける。で俺と華雄の部隊が敵と交戦になったら機を見て霞には横撃をかけてもらいたい。それまでは敵に見つからないようにしておいてくれ。横撃をかける時期は霞に任せるよ。うまくいけば敵はこっちが大勢いると思って逃げ出してくれるはずだ。そこまでいけば俺たちの勝利だよ。」

 

華雄「追撃はかけないのか?」

 

一刀「下手に追撃をかけると相手が追い詰められたと思ってやけくそになって抵抗するかもしれないからね。それにこっちは戦いに不慣れな人が多いからあんまり色々してもらうのはきついと思う。」

 

霞「横撃をかける時期が重要やな。そない重要な役割を任してもろた限りは、張りきっていくでぇ~!」

 

一刀「頼りにしてるよ。それと愛紗の部隊は斉射がすんだら周囲を警戒していてくれるか?ないとは思うけど、黄巾党の別部隊がいるかもしれないからね。愛紗の部隊は接近されると厳しいから愛紗がみんなを守ってくれ。」

 

愛紗「承知しました。...やはり一刀様は危ない役回りを受けるのですね。くれぐれも気をつけて下さいね。怪我でもしたら許しませんよ?」

 

 心底心配取った表情で愛紗が俺を見つめている。その視線をしっかりと受け止めた。

 

一刀「わかってるさ。それに華雄もいるからね。」

 

華雄「ああ。我らが主君は必ずこの華雄が守り通す。だから大船に乗った気でいろ、関羽。」

 

愛紗「頼んだぞ、華雄。」

 

一刀「よし、それじゃあ...」

 

俺は待機している村人たちの方に向き直った。動きを察した全員の視線が俺に向かって注がれている。

 

一刀「これから先少し行ったところに黄巾党の陣地がある。敵は約四千。だが今の俺たちに恐れるものは何もない!みんな!生きて村のみんなの所に戻るぞ!」

 

村人たち「応っ!!」

 

一刀「じゃあみんなは各部隊の隊長の所に集まってそれぞれの指示に従ってくれ。俺と華雄の部隊は一緒に行動するからまとめて俺から説明するよ。」

 

 そういうと村人たちはそれぞれ自分たちの部隊長の所に集まっていた。霞の部隊は敵の横に回り込むため早速移動を開始するようだ。俺の所にも村人たちが集まってきた。

 

村人A「御遣い様。我らはどうすればよろしいのでしょうか?」

 

一刀「初めに愛紗のところの弓部隊が敵に斉射をかける。俺と華雄の部隊は弓の合図と同時に奴らに対して突撃をかける。みんな、近くの人と二人一組になってくれ。お互いがお互いの隙を補い合うんだ。常に二人で敵一人に当たれば絶対に勝てる!」

 

村人たち「応っ!」

 

一刀「それと明らかに強そうなやつがいたら無理に戦わないで俺か華雄を呼んでくれ。」

 

村人B「ホントに兄ちゃんが戦うのかい?」

 

一刀「みんなに戦わせて一人だけ後方になんていられないよ。でも俺も凄い強いってわけではないから、厳しい時はみんなの力を貸してくれ。」

 

村人A「安心してください。御遣い様は俺たちが守って見せますよ!」

 

一刀「ありがとう。でもくれぐれも無理はしないでくれ。君たちには帰るべき場所があるんだから。」

 

村人B「わかってんよ!兄ちゃんも無理すんなよ!」

 

 そこまで言って自分を見つめる視線がさらに熱くなったような気がした。

 

一刀「よし、みんな!それじゃ準備を始めてくれ!」

 

村人たち「応っ!!」

 

 

愛紗「皆の者準備はいいか!狙いはそこまで正確でなくてもいい!とにかく敵めがけて矢を飛ばすことを考えろ!」

 

村人たち「応!!」

 

愛紗「よし。では...――ってぇーい!!!!!」

 

 俺も腰の逆刃刀を鞘から抜き去り、あらん限りの声で叫んだ。

 

一刀「俺たちも行くぞ!突撃ー!!」

 

村人たち「うおおおおおお!!!!!!!!」

 

 

 

 

その頃黄巾党の陣では...

 

黄巾A「くそ腹が減ったぜ...」

 

黄巾B「あんなに食糧があったのに持って帰れたのはあれだけかよ...くそ、こっちの人数誰も把握してなかったのかよ!」

 

黄巾C「仕方ないだろ、大した数じゃなかったが自警団のやつらにも抵抗されたしな。まああの分じゃ明日は楽に食糧が手に入るだろ。」

 

黄巾A「もう明日なんて待たずに今すぐ奪いに行こうぜ!腹が減って仕方ねぇ!」

 

黄巾C「今日はこっちも疲れている。わがまま言ってないでそこらへんで寝てたらどうなんだ。」

 

黄巾A「なんだとこらぁ!?」

 

 うおおおおおお...。

 

黄巾B「うっせぇぞ!こっちまで腹が減ってくらぁ。」

 

黄巾C「...なあ今何か聞こえなかったか?」

 

黄巾B「だからうっせぇって言って...」

 

 ブス...。そこまで言った黄巾の男の胸に矢が刺さった。

 

黄巾C「て、敵襲だああああ!!」

 

 

 

華雄「敵は混乱しているぞ!押せぇー!!」

 

村人たち「うおおおおおお!!」

 

一刀「常に隣の味方と二対一の態勢をとるんだ!どんどん押しこむぞ!」

 

村人たち「応っ!」

 

黄巾A「畜生、村の連中か!ぶっ殺しちまえー!」

 

黄巾C「くそ!あいつらビビって逃げ出したんじゃねぇのかよ!」

 

黄巾D「うああああああああ!」

 

予測通り敵は混乱に陥っていた。混乱した敵に、士気の高いこちらの突撃の勢いが止められないのは明白だった。しかし、一番前で突撃をかけている俺たちの前に大剣をもった大柄な男が現われた。

 

村人B「なんてでけぇやつなんだ!」

 

黄巾E「なんかすんげぇ服着てんなぁ。お前がこいつらの大将かぁ?ならお前を倒せばおらたちの勝ちなんだなぁ。」

 

一刀「!みんなは下がっていてくれ!」

 

 上段から振り下ろされる剣を見切って避ける。大丈夫、相手はでかいだけで速さはまるでない。一撃一撃は重そうだが、愛紗と鍛錬してきた俺にはその動きは止まって見えると言えるほど遅く、脅威には感じなかった。俺は振り下ろされる何本かの剣筋を全て刀で受けずに避けきった。

 

黄巾E「おまえちょこまかとうっとうしいぞぉ。避けるなぁ。」

 

一刀「そんなんあたってたまるか!ふっ!はあああっ!」

 

俺はひと際大きく振り被られた剣線を避けると、隙だらけの上半身に逆刃刀で渾身の一撃を放った。

 

黄巾E「う..っ.。」

 

 大柄な男は地面にうつ伏せに倒れた。逆刃刀ゆえ致命傷にはいたらないが、あれはかなり効いただろう。

 

村人A「御遣い様が敵を討ち取ったぞ!」

 

村人たち「うおおおおおお!!」

 

目立つ敵を倒したことで周囲から歓声が上がる。そこで少し安心して一息ついたところに、一本の矢が一刀めがけて放たれた。

 

黄巾F「死ねぇえええ!」

 

一刀「!」

 

 キンッ!!

 

華雄「油断しすぎだ、北郷。ここは戦場だぞ。」

 

その矢は華雄の戦斧によって見事にたたき落とされていた。殺気には反応できていたため、そのままでも致命傷は避けられたが完璧に避けることはできなかっただろう。

 

一刀「その通りだ。ありがとうな、華雄。」

 

華雄「礼なら後にしろ。そら、行くぞ!」

 

 そう言って華雄は再び敵陣の中へ颯爽と飛びこんでいった。

 

一刀「俺たちも華雄の後に続くぞ!押せぇー!!」

 

村人たち「うおおおおおお!!」

 

四千もの黄巾賊がだんだんとその数を減らしていく。しかし時間がたてばたつほど、黄巾党もだんだんと冷静さを取り戻していく。そうなれば、圧倒的に数の少ないこちらは不利になってしまう。しかし...

 

黄巾C「下がって一回態勢を立て直せ!固まって敵をぶちのめせ!」

 

黄巾A「大した数じゃねぇんだ!押し返せー!」

 

黄巾G「うああああああ!あっちからも敵襲だぁぁ!」

 

霞「うりゃぁ~!どけどけどけぇー!お前ら、ウチに続いて突撃せぇい!」

 

村人たち「うおおおおおお!!」

 

 絶妙なタイミングで霞が横撃をかけてくれた。新たに戦火が広がったことで敵の間に動揺が走る。

 

黄巾H「こいつ強いぞ!」

 

霞「おらおらおらぁ!泣く子も黙るこの張文遠が相手や!死にたいやつからかかってきぃ!」

 

黄巾C「あいつらまだいやがるのか!?くそ、このままだと殺られるっ!俺は逃げるぞっ!」

 

黄巾A「待て、逃げるのは俺が先だっ!」

 

 霞の横撃がよほど効いたのか、敵は少しの間討ち合い、霞に勝てないことがわかると、蜘蛛の子を散らすように散り散りになって逃げ出した。

 

 敵の戦意喪失を感じ取ると俺は周囲を見渡してから叫んだ。

 

一刀「敵が逃げていくぞ!俺たちの勝利だ!みんな勝ち鬨をあげろ!」

 

村人たち「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

 

 こうして黄巾党との戦闘はこちらの圧勝で決着を迎えた。

 

 

 

その後...黄巾党を追い払った俺たちは意気揚々と街に凱旋した。すると街に残っていた人々が街の大通に沿って並び笑顔で迎えてくれた。皆の感謝や喜びの声が道の両端から飛び交い、その声は俺たちが勝利したこと、無事に帰ってこれたことへの実感を深めてくれた。この時、戦いから帰ってきた村人たちは皆一様に温かな笑顔を浮かべていた。

 

そして俺たちは街の人々に手を振りながら役所前まで行進すると、最後に全員の労をねぎらって解散した。参戦した村人たちは一度俺や愛紗達の前までやってくると感謝の言葉を伝えてそれぞれの待つ家族の元へと駆けていった。しかし、圧勝といってもこちらの被害が全くなかったというわけではない。解散した役所前の広場では帰ってこなかった家族の消息を求めて、涙を流す人たちもいた。

 

村人D「ああ、あなた...うっ、うう...」

 

伴侶を失って泣き崩れる女性。そんな光景にいてもたっても居られなかった俺は、その女性に声をかけた。

 

一刀「ご主人のこと、申し訳ありません。俺が戦いに巻き込んでしまったから...」

 

 徐々に小さくなる声に、その女性は顔をあげると、涙で滲んだ顔を袖で拭って精いっぱいの笑顔を浮かべてこう言った。

 

村人D「御遣い様は悪くありません。御遣い様が来て下さったからこそ、主人と今まで暮らしてきたこの街と街のみんなは守られたのです。だから面をおあげになって下さい。主人もこの街が守られたこと、御遣い様に感謝しているはずです。」

 

一刀「...ありがとう。」

 

 自分のご主人を失ったのに謝りに来た俺のことを気遣ってくれた女性の心遣いに胸の中に熱いものが込み上げてきた。これ以上戦いのせいで涙を流す人を出さないよう、乱世を鎮める。その決意が俺の中でまた確たるものになっていった。すると肩の上にポンと誰かの手が置かれた。

 

霞「そうや。一刀はなんも悪くあらへん。悪いのは襲ってきた黄巾党の連中や。だから一刀は今日多くの民を助けられたことを誇りに思えばええんや。」

 

華雄「そうだぞ。おまえはよくやった。それは隣で戦場をかけた私が一番よくわかっている。だからお前が落ち込む必要はない。」

 

 温かい言葉に救われた気持ちになっていく。そして最後に愛紗が俺の正面にやってきて、そっと俺を抱きしめてこう言った。

 

愛紗「一刀様はよくやりました。周りを見て下さい。多くの人が笑顔に包まれているでしょう。これはあなたが守ったものです。ですから今日は貴方の仰ったように村人たちと命ある喜びを分かち合って下さい。そしてその裏で涙を流した人がいたことも覚えておいて下さい。これがこれからのあなたが、私たちが行く道です。それを今日はあなたの胸にしっかりと刻みつけておいて下さい。」

 

一刀「ありがとう愛紗...」

 

 緊張が解けてついつい涙腺が緩くなる。このまま愛紗の胸に埋もれて泣いてしまいたい、そんな気持ちがこみ上げてきた。

 

一刀「霞も華雄も元気づけてくれてありがとうな。それに華雄はさっきの矢の件についても礼を言わせてもらうよ。ありがとう。」

 

 満面の笑みを浮かべてそう告げると、なぜか華雄は頬を赤くしてこう言った。

 

華雄「た、大したことではない。これに懲りたら今度はもっと気をつけるんだな。」

 

 あ...

 

愛紗「矢...?気をつける...?一刀様、それはいったいどういう意味でしょうか...?」

 

 し、しまったぁ!!何かが愛紗の後ろから轟音をたてて盛り上がってくるのを感じる。

それと同時に俺の体に回された愛紗の腕に力が入っていく。

 

一刀「い、いやぁ。ちょっと油断して矢に当たりそうになったんだけど...大丈夫!華雄が気づいて守ってくれたし、それに俺も殺気自体には気づいてたから万が一そのまま飛んできても致命傷には...」

 

 なんだろう!愛紗とこんなに顔が近いのに嬉しくない!俯き加減でよくは見えないが目の前のそれは半ば文字通り鬼の形相に近づいている。

 

愛紗「あれほど気をつけろと言ったのに貴方という人は...覚悟はよろしいですね?」

 

一刀「ごめん、愛紗!いや、愛紗様!だから許してくださ...」

 

愛紗「許さないと言ったはずですよ?」

 

一刀「実際怪我はしてないだろ!」

 

愛紗「怪我しそうになったのは事実です。ですから...」

 

村人A「あー、お取り込み中の所恐縮ですがよろしいですか?」

 

 ナイス団長さん!あんたは天才だ!最高のタイミングで自警団の団長さんが声をかけてきた。愛紗はすぐに自分がとっているポーズを恥じてサッと離れると居住まいを正した。俺も改めて周りを見ると、団長さんの後ろにはたくさんの村人がずらりと並んでいた。その様子に愛紗は真っ赤になりながら答えた。

 

愛紗「どうかしましたか?」

 

 いや、どうかしましたかって言われたらどうかしましたよという表情を村人たちは浮かべたがあえてそれを口にはしない。代わって少し苦笑した団長さんが皆を代表して答えた。

 

村人A「俺たち全員で決めたんだ。今ここにいないやつも反対することはないだろう。」

 

一刀「決めた?それは?」

 

村人B「兄ちゃん!あんたこの街の県令になってくれよ!頼む!」

 

一刀「...」

 

 この村に来た時、状況が前の外史と酷似していたことからこういう流れになるのではないかと思っていた。確かに天下統一を目指すなら拠点となる場所は必要だ。しかし、前は流れに押されて受けてしまったが本当にそれでいいのだろうか...そんな疑問が頭の中をよぎる。そんなことを考えているともつゆ知らず村人たちは先を続けた。

 

村人C「俺たちの村の県令は、黄巾党に襲われたどさくさにまぎれて逃げ出しちまったみたいなんだ。だから俺たちはそいつを探して役人のいなくなった役所跡に集まっていたんだ。」

 

村人B「もう朝廷が派遣してくる役人なんか信じられねぇ!それはここにいる全員が思ってることよ!だからこれからはこの街は俺たちみんなで守ろうぜって決めたんだ!」

 

村人A「しかし、私たちは役人のような知識を持っておらず、街を治めることなどできません。それに恥ずかしい話、このまま再び黄巾党が襲って来れば、私たちだけでは到底太刀打ちできないでしょう。ですから...」

 

村人B「なんも関係がない俺たちを助けてくれたあんたたちにこの街を治めてもらいたいんだ。助けられておいて身勝手なお願いだってのもわかってる。だけど頼む!」

 

そういってその場にいた全員が地面に額をつけた。

 

村人A「天の御遣い様!私たちの街を治めて下さい!」

 

村人B「俺たちを導いてくれ!」

 

村人C「俺たちにはあんたたちが必要なんだ!」

 

村人たち「お願いします、御遣い様!」

 

 前の外史がどうとかなど関係ない。今この人たちは今のこの俺を信じて土下座してまでお願いしてくれてるんだ。その思いを無下にすることなどできない。俺は一度だけ後ろに立っていた三人の方に目を向けた。どの顔も笑みを浮かべながら早く答えてやれと言った顔をしている。俺たちの気持ちはあの晩、霞と華雄が俺と共に来てくれると言ってくれた時から一つだ。俺は村人たちの方に向き直ると地面に膝をついてこう答えた。

 

一刀「みんな、面をあげてくれ。俺はみんなが考えるような、凄い才能があるわけでも、無双の武勇があるわけでもない。それでもみんなは俺にこの街を預けてくれるのか?」

 

村人A「私たちと一緒に戦ってくれたあなただからこそ、我々はこの街を治めていただきたいのです。そのように謙遜なさらないでください。」

 

 そこにいる皆がその通りだと言わんばかりに視線を向けてきた。その視線に、自分を慕ってくれるこの人たちを守りたいという気持ちが湧き上がってくる。

 

一刀「わかった。ならばこの北郷一刀。どこまできるかわからないけれど、謹んでその役目を受けさせてもらうよ。」

 

村人たち「―――っ!うおおおおおお!」

 

 その瞬間、村人たちは皆、歓喜に包まれた。

 

村人A「ありがとうございます!我らはこれから一生、貴方について行きます!」

 

村人B「兄ちゃんがいてくれるってんならまさに百人力ってやつだぜ!おいみんな、残った酒蔵からありったけ酒を持ってこい!今日はこの街の復興と天の御遣い様との出会いを祝して派手に行こうぜ!」

 

村人C「そこの姉ちゃんたちもこれからよろしくな!あんたたちに命を救われたって奴がたくさんいるんだ!それでお礼したいって奴らがこれから食い物をたくさん持ってくるみたいだから、ぜひそいつらの気持ちも受け取ってくれ!」

 

村人B「おお、なら今日は祭りだな!今日はこの街にとって代々記念すべき日になるぜ!」

 

一刀「...」

 

 ここから...すべてが始まるんだ。

 

 俺は絶対にこの困難な道程を乗り越えて見せる。俺だけじゃない。愛紗や霞、華雄、そして俺を信じてくれるみんなのために... 

 

歓喜に震えやんややんやと盛り上がる村人たちの姿を見て、俺たちはとても温かい気持ちになると同時に、その胸の内の決意をより一層固いものにした。しかしこの次の日、盛り上がり過ぎて黄巾党がきた後以上にしっちゃかめっちゃかになる街の惨状などまだ誰も知る由もない...

 

 

―あとがき―

 

こんばんは、れっどです。読んで下さった方は有難うございます!今までコメントを下さっている方や支援を下さった方も有難うございますね。 

 

やっと5話か!とりあえず拠点ゲットですね。前回いろいろ考えていたというのは拠点ゲットの前にちょっといろんなとこ行ってみようかとも思ったんですが、それだと話が全然進まなそうなので結局ここ2話に渡る形になりました。活動基盤がないと始まりませんしね。この調子で書いていったら想定しているEDまで何話かかるんだろ...まあいいか!

うまく伝えられていない部分もあると思います。気になることがありましたらあとがきなどで可能なものは補足して以降と思うのでよければコメントなどいただければ幸いです!

 

あ、それとキリがいいので補足しておきますと、この話はあくまで無印の関羽ルートが基盤になっています。そこに真とオリジナル要素を足したのがこのお話という感じになってます。オリジナル要素と致しましては、今後の展開という部分以外だと例えば1話と2話で登場した一刀のお爺さんです。本編でも一刀にちょこちょこ有り難い格言を残しているあのお方ですが、どんな人なのかはあんまし描写がなかったんですよね。なので皆さんが考えていたお爺さん像とは異なるかもしれません。彼は現代編に今後も出てくる予定ですのでよろしくお願いします!

 

さらにこの場で言ってしまうとオリキャラですが今のところ彼以外で登場する予定はありません。ちょこちょこモブキャラなんかももう少しキャラ立ちさせてあげられればなぁとも思いますが、今後固有名詞で出てくるのはおそらく彼だけです。おそらく。理由は...想像上の女の子の姿を文章で皆さんに伝えられる自信がない。男キャラに関してはなんとなく伝わればいいかなぁという甘えがあるのですが...オットイケナイイケナイ。書きたい話もあるのでとりあえず出る可能性を匂わせておくのも甘えです、ハイ。

 

備考ですがまだまだ上げた時に改行がおかしくなる不具合があります。ワードで書いてるとうまく毎回40字にならないんですよね...手動で調整しているのですが、何分手作業のようなものなので見落としなどがあるとズレてます。あげた後すぐ携帯で確認して不具合があれば直していますので、読んだ時なんか改行おかしいなーと思ったら5分後くらいに更新すれば直っているかもしれません。何かいい解決法知っている方がいたら教えて下さいな!

 

 それでは少々長くなってしまいましたがこれからもお付き合いいただける方はよろしくお願いします!

 


 
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