第10話 白斗の珍道中 その参
白斗「………………」
白斗は荊州にいた。
荊州の北で黄巾党の本隊が暴れ、その討伐に袁術の客将である孫策が出陣したのを聞いて戦場に来ていた。
白斗の目線の先、荊州の荒野は真っ赤な炎に包まれている。
白斗「火計か……」
白斗は炎に包まれた黄巾党の陣地を見つめていた。
白斗「これが江東の虎、孫堅の娘、孫策の戦、か……」
白斗はそう呟くと踵を返した。
白斗「そういえば……南にも黄巾党の分隊がいるらしいな……
一応そっちにも行ってみるか」
戦場から離れた白斗は南に向かって歩を進めていった。
荊州の南では黄巾党の分隊が暴れていた。
その分隊を討伐せんと、袁術率いる銀色の軍勢が戦場に広がっていた。
戦場は数では袁術軍が勝っていたが、なぜか黄巾党が袁術軍を圧倒していた……
白斗「…………あの戦力差で押されてるのか?…………様子を見に行って見るか」
――――袁術軍の陣中にはひらひらした服を着た小さな女の子と白い軍服を着た女性がいた。
袁術「七乃~蜂蜜水が飲みたいのじゃ~」
張勲「もぉー。美羽様ったら~今は戦の最中ですよ?」
そんな会話をしている二人のもとに一人の副将が報告にくる。
副将「張勲大将軍!我が軍が敵に押されています!」
張勲「はいは~い」
袁術「聞いておるのか七乃!妾は蜂蜜水が飲みたいというておるのじゃ!」
張勲「は~い、すみません、そう言う訳なので部隊の指揮はあなたにおまかせしますね~」
そう言い残して張勲は袁術のもとへ向かう。
副将「……このままではダメだ。早く何とかしなければ……」
???「まったくだな」
副将「っ!?誰だ!!」
副将の背後に何者かが現れる。
白斗「俺の名は単福、流れの軍師をしている」
副将「ぐ、軍師?」
白斗「ああ、苦戦してるように見えたから気になってな、良ければ兵の指揮を代わろうか?」
副将「……出来るのか?」
白斗「軍師だからな、当然だ」
副将「見ての通りこの有様でな、まともに指揮が出来る者がおらんのだ、すまないが頼めるだろうか?」
白斗「ああ、任された」
白斗は悠々と前線に向かった。
前線に赴いた白斗は袁術軍に指示を出す。
白斗「全部隊に通達!鶴翼の陣を敷いて敵を包囲殲滅する! ただし、完全に包囲するのではなく逃げ道は残しておけ!」
そう言って白斗は各部隊に伝令を放つ。
副将「なぜ完全に包囲しないのだ?」
白斗「ん? ああ、包囲されて逃げ道が無ければ敵は生きる為に必死に噛み付いてくるだろ?
しかし、逃げ道があれば逃げるのに必死になりこちらには噛み付いてこない、敵の本隊は既に殲滅されているんだから後は、ゆっくりと追撃を掛けるなりすればいい」
副将「なるほど……流石だな」
こうしてーーーーーーーー。
白斗の指揮のもと、包囲は成功し、黄巾党の分隊は殲滅された。
戦の後、白斗は先ほどの副将に呼ばれていた。
紀霊「単副殿、今回は助けられたな……名乗るのが遅れたが私の名は紀霊という。それでだな……我が主、袁術様が貴殿に是非とも会いたいとおっしゃっていてな、会ってもらえるだろうか?」
白斗は少しだけ考えるが、
白斗「……いいだろう、紀霊殿の主にも少し言いたいこともあるしな」
紀霊「そうか!では案内しよう」
白斗は紀霊に先導されて袁術のもとに向かった。
袁術軍の本陣、天幕にて。
袁術「お主が単副とかいう軍師かや?」
白斗「はい、この度は貴殿の軍が苦戦しているようにお見受けしましたので、僣越ながら私が指揮を取らせていただきました」
白斗は袁術に向かい包拳礼をした。
袁術「うむ!紀霊から話しは聞いておるぞ!大儀じゃったの!」
白斗「御褒めにあずかり光栄です」
袁術「うむうむ。妾は気分がよいぞ!そうじゃ!おぬしに何か褒美を出そう」
白斗「……褒美…ですか?」
袁術「そうじゃ、何かないかや?」
白斗「……そうですね、……では一つだけ発言することを御許し下さい」
袁術「ふむ。なんじゃ?申してみよ」
白斗「はっ!では失礼ながら…………
ーーーーーー貴女は戦を何だと思っている!!」
白斗の氣が膨れ上がる。
袁術「……ぴっ!?」
張勲「……っ!?」
紀霊「……なっ!?」
白斗「戦の最中に蜂蜜水が飲みたいだぁ?我が儘も大概にしろよ?……お前の我が儘で兵が死ぬ! 民が死ぬ! 国が死ぬ!!」
袁術「ガタガタブルブルガタガタブルブル」
張勲「大丈夫ですよ、お嬢様!」
白斗の怒気に袁術が恐怖し、それを張勲が庇うが……
白斗「お前もだ!張勲!『兵とは国の大事なり』この意味がわかるか?」
張勲「え?ええっと……国にとって戦うことは大変なことだって意味だったと思いますけど?」
白斗「ああ、その通りだ……戦をするには兵士の他にも武器や鎧、兵糧や天幕がいる、そしてそれらを買う為の軍資金がいる。そしてその金は民からの税だ!それをお前達は無駄に使い民を飢えさせて国を疲弊させている!!」
紀霊「単副殿!お言葉が過ぎますぞ!」
白斗「いいえ!紀霊殿。幾ら袁術様がまだ幼いとはいえ君主であることには変わりません、君主であるならば良く国を納め正しい政治を行わなければなりません!なればこそ私は敢えて厳しく言わせて頂きます!貴女は戦を何だと思っている!!」
白斗は袁術に向かって一喝する。
袁術「う、ぐしゅ………うわぁぁぁ~~~んっ!」
張勲「おっ、お嬢様!?」
袁術は泣き出してしまった…
白斗「……はぁ、しかたないな」
そう言うと白斗は懐から何かを取り出して袁術に手渡す。
袁術「ひっく、……これはなんじゃ?」
白斗「飴と蜂蜜を混ぜて固めた物です、袁術様は蜂蜜がお好きみたいですから良ければどうぞ?」
袁術「ぐすっ、……はちみつを使っておるのか?……はむっ」
蜂蜜入りの飴を袁術がコロコロと口の中で転がすと、泣いていた顔が次第に笑顔に変わっていく。
袁術「むぐむぐ……む、おお?なんじゃこれは!とっても美味なのじゃ!」
白斗「お気に召して頂いたようで良かったです」
袁術「………もう一つおくれたも」
白斗「ええ、どうぞ」
白斗は懐からもう一つ飴を取り出して袁術に手渡す。
袁術「はむっ!美味しいのじゃ~♪」
張勲「えーっと……お嬢様?」
袁術「……うむ!気に入ったのじゃ!単副よ妾に仕えよ!」
白斗「…………は?」
張勲「ちょっ、ちょっとお嬢様!?」
袁術「なんじゃ?七乃」
張勲「いきなり素性のわからない人を士官させるなんて……あとあと、さっきはあんなことを言われてたのにいいんですか?」
袁術「うむ、単副は良い奴じゃ!」
張勲「…………」
白斗(なんだかこのまま話しが進みそうだな…)
白斗「………ちょっといいか?」
袁術「む?どうしたのじゃ?」
白斗「そもそも、私は士官するつもりは無いのですが……」
袁術「なんじゃとっ!?妾の誘いを断るともうすか!」
白斗「私は今、仕える主を探して旅をしている最中なのです。 なのでお誘いは嬉しいのですが士官はお断りさせて頂きます」
袁術「むぅ……そうなのか? そうじゃ!ならば客将としてならどうじゃ?」
白斗「客将……ですか?」
袁術「うむ!」
白斗「……ふむ。
(まぁ、暫くの間なら別にいいか)
ーーーーわかりました、では今おきている乱が終息するまでの間、お世話になりましょう」
袁術「うむ! よろしくなのじゃ!」
ーーーーこうして白斗は袁術軍に客将として仕えることとなった。
荊州に居を構える袁術の本城、そこには袁術と張勲、白斗の他に袁術の客将となっている孫策が顔を合わせていた。
袁術「――――というわけでの。こやつは妾に客将として仕えることになった、単副じゃ!」
孫策「……と言われてもねぇ、……それじゃ自己紹介でもしときましょうか、我が名は孫策。同じ客将同士仲良くしましょう」
白斗「はじめまして、私は単副と申します。 小覇王と称される孫策殿と共に戦えるとは光栄です」
孫策「……へぇ」
心の奥を見透かすように、孫策は白斗を見つめる。
白斗「…………何か?」
孫策「ううん、なんでもないわ」
袁術「孫策と単副、共に妾の客将としてしっかり働くのじゃぞ!」
白斗「はっ!」
孫策「……はいはい」
白斗は包拳礼をして、孫策は投げやりに返事をする。
互いに顔合わせがすんだ白斗と孫策は揃って玉座の間から退出し、しばらく歩いた後、孫策が話しかけてくる。
孫策「あなたはどうして袁術なんかの所に来たの?」
白斗「どうして、ですか?
ふむ。……成り行き、……ですかね」
孫策「そうなの?」
白斗「はい、たまたま戦場で袁術軍が苦戦してたので手を貸したんです」
孫策「それってもしかして黄巾党の別働隊との?」
白斗「ええ、そうです」
孫策「苦戦するような相手じゃなかった気がするんだけど……」
白斗「いろいろあったのですよ……」
そう言うと白斗は苦笑いした。
孫策「ふふ、あなた面白いわね♪ そうだ!よかったら、うちにこない?」
白斗「孫策殿のところにですか?」
孫策「ええ、うちの子達を紹介するわよ?」
白斗は少し考えるが、
白斗「………そうですね、これから暫くお世話になるわけですから自己紹介くらいはしておきたいですね」
孫策「それじゃ、決まりね♪」
白斗(そういえば、孫策軍には天の御遣いがいると聞いたな……どのような人物なのか、今から楽しみだ)
そうして孫策に連れられた白斗は孫策軍のもとへ向かうのだった。
あとがき
第10話終了です!
というわけで白斗は一時的に袁術軍に所属します。
次回は孫策陣営との会合です。
秋らしく虫が鳴き出した今日この頃…
それではまた次回~!
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真・恋姫無双の二次創作です。
主人公はオリキャラです、苦手な方は御遠慮下さい。
今回は遅くなってしまった……
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