第3話 黄巾の乱の終わり
一刀達、蜀軍が中央に出てから数週間が経つ。
一刀達以外にも元々実力のあった将達やとある義勇兵部隊の活躍により、黄巾軍は最初の勢いを無くしていった。
しかしそれでも黄巾軍の兵数はかなりものであった。
そんな中、一刀はある情報を耳にする。
「黄巾党の首領である張角がこの近くにいる?」
「そうみたい」
美咲からそのことを聞いた一刀。
「私は冀州にいると聞いたのだけれど……」
「私もそう思ったわよ。斥候の方もそちらに向かわせてはいるけど、斥候の一人がそんなことを聞いてきたのよ」
「それが罠と言う可能性は?」
「私個人の感想を正直に言うと、ないと思う」
「なんで?」
「その斥候はこう聞いてきたみたい。
『この近くで天和ちゃん達の秘密ライブをやるんだ。冀州にいる連中は災難だったな』って…」
「その天和って言うのが……」
「張角のことみたい。多分天和ってのは真名ね。ちなみに張宝が地和、張梁が人和ってのが真名みたい。
三人で『役満姉妹』って言うのを組んでやってる」
「随分変わっているな」
「……」
「千歳?」
「いや、ふと思ったことなんだけど、ひょっとして、その三人が軽はずみなことを言ったからこの戦いが始まったんじゃないかって……」
「軽はずみな事?」
「例えば……『天下取ってみたい!』とか……」
「いくらなんでもそれは……」
「…………」
「美咲?」
「ああ、ごめん。とりあえずその張角達がいるところに近づいてみるしかないわ。策はそこから考えてみるわ」
そして一刀達は張角達がいるとされる陣へと向かった。
張角がいるとする陣営では……。
「やっほー!」
「みんな元気?」
『ほああああああああああああああああ!!』
「みんな大好きーーー!」
『てんほーちゃーーーーん!』
「みんなの妹ぉーっ?」
『ちーほーちゃーーーーん!』
「とっても可愛い」
『れんほーちゃーーーーん!』
観客となった黄巾兵達が張三姉妹の声を聞いて盛り上がっていた。
「随分すごいことになってるわね」
一刀達は張角達がいる野営の側にあった少し高い森の丘でその様子を見ていた。
「あれは戦闘の士気をあげるための儀式か?」
「それはともかく……、美咲、策は決まったか?」
「敵の士気がこれ以上上がる前に敵襲を仕掛けたいわ。
けれど……」
自分達将が先行していたために連れている兵士達の数は決して多くない。
「………」
一刀は周りを見て、あることを思いつく。
「美咲、この森を利用できないか?」
「森をどうするの?」
「ここ、ちょうどいいことに坂になってるだろ?」
「そう言えばそうね」
「それで、木もいいところにある。そんでもって木を切り倒して……」
「その木を転がして相手に奇襲をかけるということね」
「そう言うこと」
「あの盛り上がりからして木を倒してもまず音が聞こえることはないわね。
けれど時間がかからないかしら?」
「それは大丈夫だ」
一刀が刀を抜き、一本の木の前に立つ。
「せやっ!」
一刀が刀でその木を一撃で切り倒した。
「本当、すごいわね」
「それほどでも……、とりあえずその倒した木をここに止めておこう」
坂があるとはいえ、きちんと押さない限りは木が転がっていくことはない。
「美咲、お前は兵達の方に戻って指揮を頼む」
「分かったわ」
美咲は置いてきた兵士達がいる方へと戻る。
「綾、千歳は俺と一緒に木の切り倒しと木の留めを手伝ってくれ」
「承知しました」
「分かったわ」
「他の人達は周りに俺達以外の人間が来ないかの見張りを頼む」
『はっ!』
そして一刀達の作戦が開始され、準備は思ったよりも早く終わった。
「報告します! 法正様がそこまで来ています!」
美咲からの伝令がやって来る。
「そうか……開始だ!」
一刀の声に合わせ、木が転がり始まる。
「大変だ!」
「うるせえぞ!」
「今天和ちゃん達の声を聞いてるんだ! 静かにって……」
「なんだこの音?」
「木がこっちに転がって来てるんだ!」
「何いいいいいい!?」
転がってくる木のせいで黄巾党の陣は大混乱を起こし、その隙をついて美咲が兵を進めた。
『わああああああああ!!』
「天和ちゃん達は早く逃げて!」
「う、うん」
張角達は陣の裏から出て逃げていく。
「この辺りまで来れば……平気かな」
「もう声もだいぶ小さくなってしねー。…でもみんなには悪いことしちゃったかなぁ?」
張角がそばにはいない黄巾党兵ならぬ自分達のファンに申し訳なさそうに言う。
「難しい所だけれど…正直、ここまでのものになるとは思っていなかったし、潮時でしょうね」
張梁が冷静に言う。
「けど、これでわたし達も自由のみよっ! ご飯もお風呂も入り放題よねっ!」
「お金ないけどね」
「う……」
「そんなものはまた稼げばいいのよねー」
「そう……そうよ! また三人で旅をして、楽しく歌って過ごしましょうよ!」
「今度こそ大陸で一番の…」
「そうよ! 今度こそ歌で大陸の一番に……!」
「大陸の一番?」
そこに千歳がやって来る。
「こんなところまで!」
「どうしよう…もう護衛の人達もいないよー?」
「まだあんな事やこんな事もしてないのにー!」
「あなた達、張三姉妹ね? あなた達に聞きたいことがあるから大人しく付いて行くなら殺す気はないわよ」
そこに黄巾党兵が2人ほどやって来る。
「張角様、大丈夫ですか?」
「貴様、俺の張宝ちゃんになにを!?」
2人の黄巾兵が千歳を襲うが……。
「甘いわね!」
千歳は戟で刃の付いていない部分で殴り倒す。
「安心しなさい、この人達は死んでないわ。
それで、あなた達はどうするのかしら?」
「どうする?」
「諦めましょう、姉さん。……いきなり殺したりはしないのよね?」
「しないわよ、とりあえず話を聞いてからね」
張三姉妹は一刀と対面した。
「君達が張三姉妹?」
「そうよ、悪い!」
「いや、悪いとは言わないよ……」
「ところであなたは誰?」
「俺? 俺は劉璋」
「劉璋? 聞いたことないけど、人和ちゃん、知ってる?」
「私も知らない」
「まあ自分で言うのもなんだけど、少し辺境の所からわざわざ来たくらいだからな。知らないのも無理ないか。
ところで色々聞きたいことがあるんだけど……」
「話したら斬る気でしょう! わたし達に討伐の命令が下ってるんだって、知ってるんだから!」
張宝の言うとおりであり、張三姉妹には討伐命令が下されていた。
「それは話を聞いてから決めることだな。それから、ひとつ誤解をしているようだけれど……」
「何よ?」
「あなた達の正体を知っているのは、おそらく私達だけだわ」
「へ?」
張宝はあぜんとする。
「どういうこと?」
「首魁の張角の名前こそ知られているが…他の諸侯達の間でも、張角の正体は不明のままなんだ」
「誰を尋問しても、張三姉妹の正体を口にしなかったからよ。大した人気じゃない」
「そんな……!」
その言葉に張三姉妹は驚きを隠しきれなかった。
「それに、この騒ぎに便乗した盗賊や山賊は、そもそも張角の正体を知らないもの」
「そいつらのでたらめな証言が混乱に拍車をかけてね…、今の張角の想像図は…これだ」
一刀が絵が描いた紙を出す。
その絵には身長が三メートルあるだろうひげもじゃの大男の絵だった。
しかも腕が八本、足が五本、おまけに角と尻尾まである。
「で、結局は何が言いたいの?」
「これから聞く君達の話を聞いてからの判断になるけど、場合によっては黙ってあげてもいいってこと」
「なんで?」
「君達が悪いことを企んでるように見えないからだよ」
「まあ全部の判断は話を聞いてからになるけどね……」
「それで何故このようなことになったんだ?」
「実は……」
張梁が話した。
このようなことになった理由、それはファンから大平要術の書と言う本をもらい、そこに書いてあった妖術の力で大物になろうとした。
そして軽はずみで「天下を取る」と言ってしまったらしく、それが原因で大事になったとのこと。
ちなみに「天下を取る」と言うのは武力によるものではなく、歌で取ると言うものであった。
「なるほどな……」
「要は自分達の力をうまく使えずに暴走したものってことね」
「そう言うことになるのかしら」
「それでどうするのですか? 一刀様」
「………決めた、黙っとくよ」
「それ本当?」
「ああ、けれど……」
「何かあるの?」
「正体は俺達しか知らない。けれど、どこで君達がこの戦いの原因の張角達であることがばれるか分からない。
だから最初は窮屈かもしれないけど、俺達と一緒に蜀の方に来てくれ」
「蜀って……あの蜀?」
「そう、あの蜀」
「いやよ、そんなの……」
「地和姉さん、ここで断ることは出来ないわ」
「どうしてよ、人和」
「私達がここにいる時点でもう私達の命はこの人達に握られてる。つまり断ったりしたら殺されるってことよ」
「そんなの嫌だよ~」
「俺は別にそんな……」
「けれど見過ごすことはできない……わよね?」
「ああ……」
「……もう仕方ないわね! 付いてってあげるわよ!」
張宝もしぶしぶ承諾した。
「ごめんね、時間が経って落ち着いて来ればまた回れると思うから……」
「だったら我慢する」
「ところでその大平要術の書ってどこにあるのかしら?」
「美咲、どうしたんだ?」
「そんな危険なもの、すぐにでも処分した方がいいと思ったからよ」
「それだったらあの陣に置いてきたけど……」
「だったら燃やすように手配するわ」
そして美咲の指示により陣は焼き払われた。
それからしばらくして冀州の方も落ちたと伝令が来、張角は死んだことになった。
「それじゃあ、帰るか」
「そうね」
そして一刀達は張角達を連れて蜀へと戻るのであった。
おまけ
作者「第3話だ」
一刀「黄巾の乱があっさり終わった」
作者「あまりひねる要素が見当たらなくてな。まあ、あえて言うなら魏ルートの要素を取り入れたもんだな。っても張三姉妹、そこまで出番ないけど…」
一刀「かわいそう。てかそんなバレ入れるなよ」
作者「ごめんごめん。まあ昔なら、要望があったら、それを取り入れたりしてるけど、もう基本的には全部書き終えてるからな。なかなかいいアイディアじゃない限り、修正は難しいかな」
一刀「ネタ切れってやつか?」
作者「そうなっちまうな。まあこれの場合はネタよりもモチベーション切れだな。
本当に最近は色んなことしてる気がするわ。数日前に3DS買ったし」
一刀「なんのゲームを買ったんだ?」
作者「『閃乱カグラ』」
一刀「ああ、あれね」
作者「少しHなゲームかと思ったが、本格的なベルトスクロールアクションだった。
『ファイナルファイトⅡ』以来だったのもあるが、油断してたら死にかける。実際死にかけた。まあ今は慣れたが、それでも難易度が高いと油断してなくても死ぬからな。結構つらい。
っても本筋は3日でクリアした」
一刀「早っ」
作者「俺はたいていのゲームは1週間で1週のクリアをするんでな。
しかしアクションはすぐに終ってしまうのが欠点だな。そこで次はドラクエでもしようと思ってる」
一刀「『テリーのワンダーランド3D』のだな。でもお前、育成とかRPGは苦手てか好きじゃないだろ」
作者「確かに俺は格ゲーとかアクション系が好きだからな。とはいってもスパロボやテイルズも好きだぞ。それに俺はGB版のドラゴンクエストモンスターズは1、2両方やってる。とはいっても3DSになったからある程度『これじゃない感』は感じるだろうな。技だけでなくモンスターがすごく多くなってるし、調べてみたら、いろいろ変っていたりするしな……。
そうそう、エクシリアと言えば次にエクシリア2が出るが、お金のこともあるが、エクシリア1がすぐに安くなったのもあって、すぐに買おうかどうか迷っているんだよな」
一刀「安いやつの続編となると困るな」
作者「そうそう。
まあ、とりあえずこんなものかな。本当は『そらおと』での月見ネタも考えたけど、あまりに安易すぎたから却下した。てかいつもの感じにしかネタがならなかったよ。
それでは!」
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この作品は作者が最近見かけている「転生もの」の影響を受けて書いたものです。