No.490656

真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第48話

葉月さん

ども~
書く量を少なくしたことで少しだけ早くアップすることが出来ました。
今回から劉備軍と紫苑の攻防にはいります。
とりあえずは今回を含め、三話程度で終わらせる予定です。

続きを表示

2012-09-30 22:58:27 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:6066   閲覧ユーザー数:4545

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第48話

 

 

 

 

【開戦、城壁の上で何を思う】

 

 

 

《黄忠視点》

 

「……」

 

城壁の上から遠くに見える牙紋旗を見つめる。

 

「黄忠様!」

 

「なにかしら?」

 

「前方、約一里付近にて劉備軍が兵の展開を開始しはじめました!」

 

「ええ。見ていたわ」

 

「如何いたしましょう」

 

「……」

 

関・張・超・馬・呂それぞれが名だたる武将ばかり……

 

そして、それらの牙紋旗は中心にある劉と十の牙紋旗を守るように展開していた。

 

あそこにあのお方が……運命とはなんと残酷なことでしょう。

 

十と書かれた牙紋旗を見つめながら(わたくし)はこの運命を受け入れられずに居た。

 

ですがこれは現実……いくら目を逸らそうとも変えられない事実。

 

「あ、あの……黄忠様?」

 

「……篭城をします。準備をお願いします」

 

「御意!」

 

(わたくし)の命を受け、作戦を伝えに走り出す。

 

「篭城とは言いましたが、後ろ盾もない状況でどこまで耐えられるのでしょうか……」

 

成都は今、跡継ぎ争いで内紛を繰り返している。そんな状況でこちらに増援をくれるとは到底思えないでしょう。

 

「いえ、送れるだけの余裕があったとしてもそれは無いでしょうね」

 

民の安全より、自身の安全を優先するような人が増援など、万が一にもありえないでしょう。

 

「はぁ……来ない増援の事を考えても仕方がありませんね。今はこの状況をどうするかを考えなければ……」

 

勝てる見込みがあるとすればどれだけの間、篭城できるかに掛かっている。ですが……

 

「戦況は不利、ですわね」

 

劉備軍を目視で確認する限り、兵数は約3万と言ったところでしょうか。そして(わたくし)の兵数も3万。

 

兵法に沿って言えば、まだこちらに分があるように見えますが……

 

「厄介なのはやはりあのお二人ですわね」

 

一人は云わずと知れた天下無双の武将、呂布。3万もの黄巾党を一人で倒したと云われ。先の戦、反董卓連合軍の時も虎牢関で連合軍を苦しめたと聞いています。

 

そして、もう一人……

 

「天の御使い、北郷一刀……」

 

(わたくし)の娘を助けてくれた人、そして、真名を預けた人でもある。

 

あの方の武勇はあの呂布をも凌ぐ、数は呂布よりも少ないですが、一万近い黄巾党を一瞬で打ち倒したと聞いています。

 

そして何より、あの呂布を仲間に引き入れている。

 

「中々の難題ですね……」

 

大人しく降伏する、という手もある。あの方でしたら、捕虜となる兵たちの身柄をぞんざいには扱わないでしょう。

 

「黄忠様!篭城の準備整いました!」

 

一人考え事をしていると、先ほど報告を伝えに云った来た兵が戻ってきました。

 

「わかりました。(わたくし)も直ぐに向かいます」

 

「はっ!」

 

兵は報告を済ませると自分の持ち場へと戻って行きました。

 

「……あのお人柄からして、侵略してくる様なことをするとは到底思えませんが、攻めてくるからにはこちらもそれ相応と対応をしなくては」

 

(わたくし)の中であの方に対して、そんな事をする人だったなんてと落胆する反面、なにか事情があるのではないかと思いたい自分がいた。

 

「おかぁさ~~~ん!」

 

そんな考え事をしていると、城壁の階段を駆け上り璃々が姿を見せました。

 

「璃々!こんなところ居たら危ないでしょ。お部屋で待っていなさい」

 

「でも……これからたたかうんでしょ?」

 

「璃々……」

 

(ぎゅっ)

 

「大丈夫よ、璃々。ちゃんと帰ってくるから」

 

「……うん」

 

(わたくし)は璃々を安心させるように強く抱きしめました。

 

この子の為にも、勝たなくては……

 

「おかあさん、がんばってね!」

 

「ええ、行って来るわね、璃々」

 

(わたくし)は立ち上がり、璃々の見送りを背に戦場へと足を向けた。

 

《一刀視点》

 

「相手の様子は?」

 

横で双眼鏡を覗いている朱里に話しかける。

 

「どうやら篭城をするようです」

 

「長期戦、か……」

 

「はい……ですが少し不可解ですね」

 

「?何が不可解なのだ?我々に攻められるのだから守るのは普通ではないか?」

 

愛紗の言う事はもっともだ、こんな状況なら普通は篭城がセオリーだろう。

 

だが、朱里はそれを不可解と言う。

 

「それはですね。篭城は後ろ盾があってこその篭城だからなんです」

 

「後ろ盾?それって成都からの援軍って意味か?」

 

「はい。ですが今、成都は跡継ぎ争いで至る所で戦いを繰り広げています。自分の利益の為だけに」

 

「ふむ。そんな中、援軍を送っている余裕はない、と朱里は言いたいのだな」

 

「星さんの言うとおりです。目先の利益にならないことは後回しにしているのが今の成都の現状なんです」

 

「なるほど、確かに朱里の言うことももっともだけど、洛陽とかの場合だって後ろ盾なんて無かったんだろ?今回も似たような感じがするけど」

 

「主よ、規模が違いますぞ。洛陽はこの大陸で随一の都。それに比べここは砦のひとつに過ぎません。食料の備蓄量が違います」

 

「ああ、そっか」

 

俺の疑問に星が答えてくれた。

 

「主もまだまだ勉強不足ですな。もっと精進していただかなくては」

 

「面目ない。でも、こうなる前は雪華とよく二人で夜の勉強会してたからな。落ち着いたらまたやろうな、雪華」

 

「ふえ!?あ、あのその……は、はぃ……」

 

話を振られるとは思ってなかったのか雪華は慌てて最後には恥ずかしそうに口元を隠しながら頷いた。

 

う~む。こういう仕草が可愛いんだよな、雪華は。

 

「……なんだか雪華ちゃんを見るご主人様の目がいやらしぃ~」

 

「ふぇぇええっ!?」

 

「ええ!?ちょ!桃香、何言い出すんだ!?」

 

「だって~、雪華ちゃんをじーっと見つめてるんだもん」

 

桃香はなぜか頬を膨らませて抗議して来た。

 

「じーっと見てるのがなんでいやらしいの!?ただ、俺は雪華の恥ずかしがる仕草が可愛いな~って見てただけだぞ!?」

 

「ふ、ふぇ~~」

 

俺の告白に雪華は更に顔を赤くして等々顔を隠してしまった。

 

「……」

 

(むぎゅぅぅぅぅっ!!)

 

「っ!?!?」

 

「ふん!」

 

無言で俺の横に立っていた愛紗は思いっきり俺の頬を抓り上げてきた。お、俺が何をしたっていうんだ?

 

「ご主人様はもう少しご自身の行動を見直すべきです」

 

いや、それなら愛紗もこうった行動を見直していただきたいんですけど……

 

「何か言いましたか?」

 

「……いいえ、何も言っていません」

 

「あらあら、良かったわね雪華ちゃん。ご主人様に見つめられて」

 

「ふえ~~……う、嬉しいですけど、恥ずかしいです」

 

「菫!今はそのようなことをしている場合ではないだろ!」

 

雪華をからかう菫を愛紗はいつも以上に眉を吊り上げて注意していた。

 

そこまで強く注意しなくても良いと思うんだけどな。いつものやり取りなんだし。

 

「そうでしたわね。では、どう攻めましょう。攻城戦となるとそう簡単には行きませんね」

 

だけど菫はそれに臆することなく直ぐに話を元へ戻した。

 

なんて言うか、流石は子持ちだよな……慣れてるのかな?

 

「何か言いたそうですね。ご主人様?」

 

「あ、いや。流石は馬一族を纏めてた人だなって思って」

 

「ふふふ♪そういう事にしておきましょう」

 

う゛っ、なんだか菫に見透かされてるみたいだな。

 

「え、えっと……し、朱里、何か策は無いのかな?」

 

「策ならあります」

 

「ほ、ホントに?」

 

「はい」

 

菫の笑みに冷や汗が出てきた俺は、苦し紛れに朱里に話を振ったら策があると言われ思わず聞き返してしまった。

 

「どんな策なんだ?」

 

「はい。既に私たちがここに到着する何日か前に行商として間諜を忍ばせてあります」

 

「間諜を?何のために?」

 

「その間諜に内側から噂を広めてもらっているんです。『劉備様がこの蜀の国を救ってくださる』っと」

 

「へ?わ、私?」

 

桃香は行き成り自分の名を出され慌てながら自分を指さしていた。

 

「はい。桃香様です」

 

「その噂を流すのにどんな利点があるっていうんだよ」

 

「翠、少し勉強が足りませんよ」

 

「う゛……」

 

翠は朱里の策にどんなメリットがあるのかを聞こうとして、それを菫に注意されていた。

 

「あ、(あたし)だけじゃないだろ、分からないのは!た、蒲公英はどうなんだよ!」

 

「え?分かってるよ」

 

「なっ!?」

 

「これでも少しは勉強してるしね。お姉様見たいに武術馬鹿にはなりたくないしね」

 

うわ、何気に蒲公英酷いこと言ってるな。まあ、間違ってはいないとは思うけど……

 

「そ、そうだ!鈴々!お前も分からないよな!な!」

 

「うにゃ?ん~……」

 

「ほ、ほら見ろ、鈴々だって……」

 

「多分だけど内部から混乱させるためじゃないのか?」

 

「なっ!?」

 

「流石ね、鈴々ちゃん。翠にも見習ってほしいわね」

 

(あたし)が、鈴々に負けた……」

 

「にゃはは!なんだかよくわからないけど翠に勝ったのだ!」

 

嬉しそうにする鈴々の横で翠は膝を着き項垂れていた。

 

「はぁ……これは徹底的にもう一度勉強し直さないといけませんね」

 

「そ、そんな!?か、母様の勉強はっ!」

 

「拒否は許しませんよ、翠」

 

「うぅ……」

 

菫の微笑みに翠はさらに全身から負のオーラをだしていた。

 

「……なあ、蒲公英。菫の勉強はそんなにひどいのか?」

 

「酷いってものじゃないよ。たんぽぽも受けたことあるけど、一度受けたら十日は部屋から出してくれないんだから」

 

「……雪華!」

 

「ふえ!?な、なんですか?」

 

「俺は雪華が優しく教えてくれる子でよかったぞぉ!」

 

(ぎゅっ)

 

「ふ、ふえぇえ!?ご、ご主人様!?皆さんが見ています!」

 

「……ふん!」

 

(ゴンッ!)

 

「~~~~~~っ!?!?」

 

脳天に重い衝撃を受け、俺は頭を押さえ蹲った。

 

「だ、大丈夫ですか、ご主人様」

 

「うぅ……割れる様に痛い……」

 

「雪華よ、ご主人様は放っておけ。今はそれどころではないからな」

 

「ふえ、で、ですが……」

 

「雪華よ、今は愛紗の言う通りにしておいた方が良いぞ。主にこれ以上、頭のこぶを増やされたくないのであればな」

 

「何か言ったか、星」

 

「いや、何も言っていないぞ。さあ朱里よ、主と翠は放っておいて話を進めようではないか」

 

頭を押さえて蹲る俺と絶望に打ちひしがれる翠を無視して、星は話を進めた。

 

「は、はい……こほん。、それでは作戦を伝えます……」

 

朱里は俺を心配しながらも攻城戦の作戦を説明し始めた。

 

「いつつ……まだ、頭の天辺がジンジンする……」

 

「自業自得だよ、ご主人様」

 

朱里の作戦を聞き終わり、それぞれが自分の隊へと戻っていき、本陣には俺と桃香、そして雛里だけが居た。

 

「別に悪いことなんてしてないと思うんだけどな~」

 

「はぁ、ご主人様は……」

 

「な、なんでそこで溜息を……」

 

桃香は『やれやれ、これだからご主人様は……』と言いたそうな溜息を吐いた。

 

「いいご主人様。愛紗ちゃんも女の子なんだよ?目の前で他の女の子とイチャイチャしてたら怒るに決まってるでしょ」

 

「う゛……た、確かに」

 

「私だって怒ってるんだからね、ご主人様」

 

桃香は頬をぷくーっと膨らませて怒る仕草をとる。

 

「……」

 

(ぷにぃ)

 

「ぷっ……~~~~っ!!」

 

俺は桃香の膨らんだ頬を指で押した。すると、桃香の口から空気が漏れ出る音が聞こえた。

 

「も、もーーっ!ご主人様!?」

 

(ぽかぽかぽかっ!)

 

「ごめんごめん、桃香の頬が可愛かったからさ」

 

「そ、そんなことで誤魔化されないですからね!」

 

「あ、あの……そろそろ攻撃を開始したいのですが」

 

「あぁあ!?、ご、ごめんね、雛里ちゃん!うん、それじゃ、始めよっか。ご主人様も、いいよね?」

 

桃香は少し躊躇いがちに聞いて来た。

 

「ああ、始めよう。桃香、号令をお願い」

 

「……本当に良いの、ご主人様?」

 

桃香はもう一度、確認するように聞いて来た。

 

「だって、あそこには……」

 

「良いんだよ、桃香。これは仕方が無いことなんだから……」

 

「で、でも!……うん、わかったよ。でも今回、ご主人様は前線に出ないでね」

 

「え?」

 

「だって、いつも以上につらそうな顔してるもん。そんな顔してたらみんな心配しちゃうよ」

 

「そ、そんな顔してる?」

 

「うんうん、雛里ちゃんもそう思うよね」

 

「はい」

 

いつも通りにしてるつもりだったんだけどな。

 

「ご主人様って考えてることが結構顔に出るんだよ。だから嘘も直ぐ分かっちゃうんだから」

 

「うぐっ……そ、そうだったのか……そんなに?」

 

「うん」

 

「はい」

 

確認のためにもう一度、桃香と雛里に聞くとすぐさま頷かれてしまった。

 

「それに、好きな人の事だから直ぐに分かるんだよ……きゃ♪」

 

自分で言って恥ずかしくなったのか桃香は両頬に手を当てて恥ずかしがっていた。

 

「ありがとう、桃香、雛里」

 

(なでなで)

 

俺は感謝の意を込めて二人の頭を撫でた。

 

「えへへ、撫でられちゃった♪よかったね、雛里ちゃん」

 

「は、はい。と、とても光栄でしゅ……あわわ、噛んじゃいました」

 

「はは」

 

二人の笑顔を見て、思わず俺は笑ってしまった。

 

「よし!それじゃ、俺は桃香に云われたとおり、本陣で待機してるよ」

 

「はい。雛里ちゃん、ご主人様の為にも頑張ろうね!」

 

「はい。全軍突撃します!」

 

「「おおおおぉぉぉぉぉおおおおっ!!!」」

 

雛里の合図で攻城戦が開始した。

 

《優未視点》

 

「はぁ~」

 

「おや、どうしたのですかな、優未殿」

 

私は城を見つめて深い溜息をついた。

 

そんな私を見て、星が話しかけてきた。

 

「え?うん……攻城戦だな~って思って」

 

「攻城戦ですな」

 

「地味だよね~」

 

「地味ですな」

 

「暴れたいよね~」

 

「なるほど、攻城戦ではなく、野戦をしたいと」

 

「そう!そうなんだよ!うぅ~~!体を動かしたい~~~~!」

 

私はその場でバタバタと地面を踏みつけた。

 

「確かに、攻城戦で我々は指示を出すだけですからな、得物が弓矢なら弓兵と共に戦えますがな」

 

「やだ!弓矢なんて面白くないよ。やっぱりぶつかり合わないと!」

 

「そう言うものですか」

 

「そう言うものだよ。星だってそうでしょ?」

 

「ふっ、否定はしませんよ」

 

私は星に同意を求めると、頷いてくれた。

 

「む~……あ、そうだ!また特攻しちゃおうか、汜水関の時みたいにさ!」

 

「っ!い、いや、止めておこう」

 

「え~、なんで?」

 

星なら乗ってくると思ったのに意外な反応だな。

 

「また主に禁酒令を出されたくないのでな。優未殿も、帰る時に報告されてしまうかもしれないぞ」

 

「う゛……それはやだな。冥琳のお仕置きは怖いからな~。はぁ、仕方ない、我慢するしかないか」

 

そう言えば、あの時も酷く叱られたっけか……

 

「うへ~、思い出したら頭痛がしてきた……はぁ、ここに雪華ちゃんか雛里ちゃんが居ればスリスリして慰めてもらうのに」

 

「優未殿も苦い思い出があるようですな」

 

「まあね」

 

も~!なんでここに居ないのよぉ~!一刀君のイジワル!

 

……

 

…………

 

………………

 

『ねえ、一刀君。なんで私の配置の所に雪華ちゃんか雛里ちゃんが居ないの!?』

 

『なんだか雪華と雛里が優未と同じ配置は遠慮してほしいって言われちゃったんだよ。ごめんな』

 

『えええぇえええ!?』

 

……

 

…………

 

………………

 

「はぁ~~、幼女成分が足りない……」

 

「はわわ……わ、私は無視ですか……」

 

私と星の間で一人複雑な顔をする朱里ちゃん。

 

「う~ん。朱里ちゃんも悪くないんだけどね~。ただ……」

 

「ただ、なんでしょうか?」

 

「雪華ちゃんや雛里ちゃんより、小動物感が足りないんだよね」

 

「はわわ。な、なんだか複雑です」

 

(おおおおぉぉぉぉぉおおおおっ!!!)

 

その時だった、本陣の方から雄たけびが上がって城に向かって土煙が上がっていた。

 

「どうやら始まったようですな」

 

「みたいだね。よ~し!それじゃ、朱里ちゃん。指示宜しくね」

 

「御意です」

 

「この作戦が成功したら朱里ちゃんでスリスリしてあげるからね~」

 

「あ、あは、あはは……こ、光栄、です……」

 

「朱里よ。顔が引きつっているぞ」

 

「はわわ……ひょ、ひょにかく!」

 

「噛んでいるぞ、朱里よ」

 

「はわわ……と、とにかく、私たちも行きましょう!」

 

慌てる姿は雪華ちゃんや雛里ちゃんと同じなんだけどね……何か足りないんだよね、なにか……

 

「それで、私たちはどうすればいいの?」

 

「とりあえず後方で待機でお願いします」

 

「はぁ~、やっぱりか……あぁ~ん!暴れたいよぁ!」

 

改めて待機と聞かされ駄々をこねる。

 

「そ、そう言われましても……これも作戦ですし。ご主人様の為の」

 

(ぴたっ……)

 

「一刀君の為?どういうこと?」

 

「え?あ……」

 

朱里ちゃんはしまったという顔をして動きを止めた。

 

「な、なんでもないでしゅよ?」

 

「噛んでるところが怪しぃ~」

 

「はわわ……せ、星さ~ん」

 

「……曲がりなりにも軍師であろう朱里よ」

 

「はわわ……」

 

「それで、どういう事なのかな?一刀君の為って」

 

「朱里、話しても良いな。ここまで来たら隠しておく必要もないだろう」

 

「は、はい……すみません、星さん」

 

「なに、どうせあとでばれることだ。それが早まっただけの事。優未よ、実はな……」

 

そこで星から一刀君に関係する秘密を聞かされた。

 

「え、ええぇぇえええ!?そ、それ本当なの!?」

 

「うむ。主がまだ私の主になる前の話だ」

 

「そ、そんなことが……私も雛里ちゃんの怖がる姿見たかった!」

 

「そ、そこか?」

 

「え?朱里ちゃんや雛里ちゃんが怖い目に遭ったって話じゃないの?」

 

「いや、確かにそうなのだが……それだけか?」

 

「え?う~ん……やっぱり一刀君は優しい人だなってことが再認識できたかな」

 

まあ、雪蓮から言わせたら優しすぎなんだろうけどね。そこが一刀君の良い所でもあるんだけど。

 

「そっか~、だから一刀君の隊は動いてないんだね。でも、少し過保護過ぎない?こんなこと日常茶飯事でしょ」

 

「まあ、確かにそうなのだがな……」

 

「ええ……ですが、ご主人様も桃香様もお優しい人ですから」

 

「汚れ仕事は我々に任せてくれればよいと言う事だ」

 

「そうですね」

 

「ふ~ん。愛だね~」

 

私は腕を組んでうんうんと頷きながら答えた。

 

「はわわ!あ、愛!?」

 

「あれ、違うの?二人とも一刀君ことが好きだから力になろうって思ってるんでしょ?」

 

「しょ、しょれは!」

 

「まあ、あながち間違ってはいないな」

 

「しぇ、しぇいしゃん!?」

 

「……朱里よ、噛み過ぎだ」

 

「はわわ!」

 

星にまた指摘され慌てる朱里ちゃん。うん、さっきの話を聞いて少し可愛く見えてきたぞ……よし!

 

「なるほどなるほど……了解だよ。それじゃ、ちょっと行ってくるね」

 

私は自分の得物を持って歩き出した。

 

「はわわ!?ど、どこに行くんですか!?」

 

「ちょっと野暮用」

 

「星。後宜しくね~」

 

「まったく……私に負けずも劣らずの傍若無人だな。任されよう、優未殿」

 

星は呆れながらも了承してくれた。

 

なんだか朱里ちゃんが慌ててたみたいだけど。まあ、星に任せとけば大丈夫だよね。

 

私はある場所に向かって歩き出した。

 

《紫苑視点》

 

「戦況は同ですか」

 

日も大分傾き、山に掛かろうとしていました。あと少し耐えれば、夜になり相手は攻めにくくなる。

 

「はっ!左右正面と三面から攻撃を受けていまが持ちこたえています」

 

「そうですか。では、引き続き防衛をお願いします。それと怪我人は後方に下がり治療を受けるように全兵に伝えてください」

 

「御意!」

 

伝令はみなさんに(わたくし)の言ったことを伝える為に駆けて戻って行きました。

 

「今日は何とか耐えられそうですね……」

 

ですがそれはあちらの将が誰も出てきていないからでしょう。

 

「ですが少し気がかりなことが……」

 

それは先ほど、一部の兵たちが話しているのを耳にした時でした。

 

……

 

…………

 

………………

 

『おい。聞いたか?』

 

『何をだ?』

 

(あら?何やらあちらで兵たちが話していますね)

 

『今、そのに展開してる劉備軍の話だよ』

 

(劉備軍がどうしたのでしょうか?)

 

『いや?どんな話だ?』

 

『ああ、実はなんでもこの国、蜀を救ってくれるって話だ』

 

(っ!)

 

『なんだそれ。誰がそんな嘘を言いふらしてるんだよ』

 

『もう民の間では広まってる話だ。なんでも旅の商人が行っていたそうだ』

 

『マジかよ。でも、もしそれが本当ならこの国も良くなるのかな』

 

『そうだな。劉備軍の太守はとても民思いだって話だし。今以上に悪くはならないと思うぜ』

 

(これはまずいですね……)

 

『貴方たち、そこで何を話しているのですか。早く持ち場に戻りなさい』

 

『こ、黄忠様!は、はい!』

 

『直ぐに戻ります!』

 

……

 

…………

 

………………

 

「先ほどの話がすでに民の間で広がっているとなると……」

 

これは少し厄介なことになりそうですね……

 

確かに、今の蜀の王である劉璋には良い話はありません。むしろ逆に悪評の方が遥かに多いです。

 

ですが、だからと言って今攻めてきている劉備軍を易々と成都へ通すわけには行きません。

 

いくら悪評があろうとも、(わたくし)たちの王なのですから……

 

「黄忠様!」

 

「どうかしましたか」

 

「敵からの攻撃が止んで来ました」

 

「そうですか……今日は乗り越えられたようですね」

 

兵の報告にホッと一安心をする。

 

「あれれ?攻撃が止んできたからって安心しててもいいのかな?」

 

「っ!?」

 

安心したその瞬間、(わたくし)の背後から声が聞こえ、背中に刃物らしきものを当てられた。

 

 

《To be continued...》

葉月「ふぅ、どもこんにちは葉月です。そして、今回はゲストとお送りします」

 

紫苑「紫苑です。お久しぶりですね」

 

葉月「ホント久々の登場ですね」

 

紫苑「幽州以来ですからね。かれこれ一年半くらいでしょうか」

 

葉月「もうそんなに経ってるんですね……この話いつ完結できるんだろうな~」

 

紫苑「あらあら、途中で投げ出してはダメですよ?」

 

葉月「それは分かってますけど……見てくれてる人は飽きてないですかね?」

 

紫苑「そこは葉月さんの頑張り次第ではないでしょうか」

 

葉月「た、確かにそうなんですけどね……ほ、ほらあるじゃないですか。自分の力量とか」

 

紫苑「あらあら。まあ、それは仕方ないですわね」

 

葉月「それと、もう一つ気になったことが」

 

紫苑「あら、なんでしょうか」

 

葉月「実は、紫苑と菫の設定がほとんど一緒なんですよね」

 

紫苑「そう言えばそうですわね」

 

葉月「まあ、違うとすればねんれっ」

 

紫苑「あらあら、何が言いたいのかしら、葉月さん?」

 

葉月「弓を引かないで!?」

 

紫苑「ふふふ、葉月さんが言ってはいけないことを言おうとしたからですよ」

 

葉月「す、すみませんでした」

 

紫苑「わかればよろしいのです」

 

葉月「(でも、菫の方が、年上なんだけどな……)」

 

(ヒュンッ!ザシュッ!)

 

葉月「ひっ!こ、これは菫の金閃!?」

 

紫苑「葉月さんはもう少し女性の扱いを覚えたほうがよろしいですわね」

 

葉月「な、何も言ってないのに!?」

 

紫苑「女性は勘が鋭いのですよ」

 

葉月「うぅ……」

 

紫苑「そう言えば……」

 

葉月「?どうかしましたか?」

 

紫苑「ええ、今回は愛紗さんの話が無かったなと思いまして」

 

葉月「っ!そ、それを言ったらだっ……」

 

??「フシューーーー……」

 

葉月「き、きたーーーーーーーっ!!」

 

紫苑「あらあら、葉月さん。どちらへ?」

 

葉月「どこか安全な所へ!あ、あとは頼みます!」

 

紫苑「あらあら」

 

愛紗「葉月ハドコニイッターーーーーっ!」

 

紫苑「あちらに行きましたよ」

 

愛紗「逃ガサンゾ、葉月~~~~~っ!!}

 

紫苑「あらあら、愛紗さんも行ってしまいましたね。どうしましょう」

 

璃々「おかあさ~~~~ん!」

 

紫苑「あら、璃々こんな所へどうしたの?」

 

璃々「うんとね……これをお母さんにわたしてくれって、おいかけられてるお兄ちゃんにたのまれたの」

 

紫苑「そう、偉いわね、璃々。ちゃんと持って来てくれたのね」

 

璃々「うん!」

 

紫苑「なんて書いてあるのかしら……『二人で、〆ておいてください』って書いてあるわね」

 

璃々「しめる?」

 

紫苑「最後のご挨拶をお母さんと一緒にしてねって言ってるのよ」

 

璃々「ふ~ん。璃々もするの?」

 

紫苑「ええ。それとも璃々はしたくないかしら?」

 

璃々「う~んとね、う~んとね……璃々もやる~!」

 

紫苑「そう。それじゃ、一緒にやりましょう」

 

璃々「は~!」

 

紫苑「それでは、皆さん。また次回お会いいたしましょう」

 

璃々「また見にきてね。ばいば~い!」

 

紫苑「良くできたわね、璃々」

 

璃々「えへへ~♪」


 
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