No.490047

勇者伝説セイバスター 第5話「強大なる雷光」

紅羽根さん

アニメ『勇者シリーズ』を意識したオリジナルロボットストーリー。中学生の頃に書いていた作品なので、文章の稚拙さが著しいのでご注意を。

2012-09-29 21:52:48 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:377   閲覧ユーザー数:377

 

第5話「強大なる雷光」

 

 ある日の午後。京才(きょうさい)市のとある街道を瞬治は野菜などが入ったビニール袋を手に持って歩いていた。その顔はあまり機嫌がいいとはいえない。

「まったく、石橋司令官も人使いが荒いな。いくら俺が暇だからって俺に買い物を頼むなよ」

 瞬治が思わず愚痴をもらす。どうやら石橋に買い物を頼まれたらしい。

「おーい、瞬治!」

 その時、後ろの方から誠也の声が聞こえてくる。

「はぁ……今度はこっちか……」

「ん? 何か言ったか?」

「別に……」

 瞬治の顔はますます不機嫌な表情になっていく。

「ま、いいや。お前に話があるんだ」

 それを無視するかのように誠也は瞬治に話しかける。

「俺はお前に用はない」

「ちょっと待てって。いいじゃねーかよ、話ぐらい」

「悪いが、俺は今暇じゃない」

「その買い物、どうせ石橋司令官に言われてのことだろ?」

「………………」

 誠也の言葉を無視して瞬治が黙ったまま再び去ろうとする。

「とにかく、暇なら一緒に来いって」

「わっ、ちょ、ちょっと待てって……」

 誠也が去ろうとした瞬治を無理やり引っ張ってどこかへと向かっていく。瞬治は抵抗しようとしたが、

(……まあ、話ぐらいならいいか)

 と思い、抵抗するのを止めた。

「引っ張るのをやめろ」

「ああ、悪い悪い」

 

 

 ここはさっきの場所からそう遠くない公園。その公園内にあるベンチに瞬治と誠也は腰掛けていた。

「こんなところに連れてきていったい何の用だ?」

「まあ、そんなにあせるなよ。取り合えずジュースでも買ってきてやろうか?」

「だから、いったい何の用だって聞いてるんだ。用が済んだら早くこっちの用を済ませたいんだ」

 瞬治がいらいらしながら言う。これ以上じらすと本気で怒りそうだ。

「わかったって……」

 誠也は「やれやれ、短気な奴だな」といった顔をして話し始める。

「この前の戦闘、覚えてるよな?」

「2日前の事か?」

「あの時、ヴァリアントの攻撃があまり効かなかっただろ」

「………………」

 瞬治が誠也の言葉を聞いて沈黙してしまう。

「地球外知生体が現れた当初は十分に効いてたのに今はあまり効かなくなってきている」

「それがどうかしたのか?」

 瞬治が声のトーンを低くして誠也に言い返す。その表情は何か負の感情を抑えてるような感じがする。

「お前も気づいてるだろ? ヴァリアントの力不足を。地球外知生体は確実に強くなってきている。しかし、ヴァリアントは人間と違ってロボットだ。ひとりでに強くなっていくわけじゃない」

「だったら、お前はなにかできるのか?」

 誠也の話を黙って聞いていた瞬治が口を開いて誠也を睨み付けるような形相になる。

「ヴァリアントの力不足は確かに感じている。ヴァリアントが地球外知生体の強さに追いつけないのもわかっている。だけど、俺達に何ができるんだ? 俺達が何かすればヴァリアントは強くなるのか?」

「………………」

 瞬治の言葉に今度は逆に誠也が沈黙してしまう。

「とにかく、今は力不足でも戦うしかないんだ。それしかできないんだからな」

 そういったきり、瞬治は暗い表情で黙り込む。

「………………」

「………………」

 その場にしばらく沈黙のときが流れる。二人とも黙り込んでしまったので、ますます気まずくて重い空気が流れ、なかなか口を開く事ができない。

「…なあ」

 そんな空気の中で沈黙を先に破る事ができたのは誠也だった。その本意は場の雰囲気を変えるためであろう。

「なんでお前は戦う決意をしたんだ? 普通なら……」

「だったら、お前が先に話したらどうなんだ?」

「…わかったよ」

 瞬治の言葉を聞いて誠也は軽くため息をつく。そして、ゆっくりと口を開いて話し始めた。

「最初は、ただロボットが見たかっただけだった」

 誠也のその言葉に瞬治は少し拍子抜けしてしまう。

「そんなくだらない理由で戦ってたのか?」

「最初はそうだったよ。でも、実際にこんなことになったらそんな気持ちで戦うわけにはいかないだろ?」

「…確かに、そんなよこしまな気持ちだったら戦うときの邪魔になるだけだな」

「だから、今は本当に地球を守りたいという気持ちだ」

「………………」

 誠也がどことなく歯が浮きそうな事を真剣な顔で言う。普段の誠也ならこんなことは口が裂けても言わないだろう。それほどこの場の雰囲気が重くなっていたのである。

「さあ、俺は全部話したぞ。今度は瞬治の番だ」

「…俺は、地球外知生体の侵略を阻止する事で償いになるから戦っている」

 瞬治が意味深な事を深刻な顔をして話す。

「償い? 何の償いだよ」

「悪いが、それだけは言えない」

「なんだよそれ。教えろって」

 誠也が瞬治に飛びつき、瞬治の首に手を回す。

「うわっ、やめろ! こんな事しても言わないぞ!」

「ちぇっ……」

 誠也はあきらめて手を放し、ふてくされるように頭の後ろで手を組む。どうやらいつもの誠也に戻ったらしい。

(これは、俺の責任だ。だから誠也でも言えない。本当に悪い……)

 瞬治が暗い顔をして心の中で誠也に謝る。

 

 ここは地球からそうはなれていない宇宙。人間の手によって打ち上げられた人工衛星が無数にある中に宇宙帝国デストメアはあった。

「ゴルヴォルフはいるか……」

 デストメアのメインルームにヘルゲイズの声が響く。

 メインルームのモニターには、暗くてよくわからないが人のようなシルエットが映し出されていた。その姿は一見何も感じられなさそうだが、かなりの威圧感が漂っている。

「ここにいるぜ」

 ゴルヴォルフがそのメインモニターに映るヘルゲイズの前に変な笑みを浮かべながら姿を現わす。

「珍しいな、ヘルゲイズ様が俺を呼び出すなんてよ。もしかして、俺に任務を任せてくれるなんて言うんじゃ……」

「そのとおりだ」

「へ?」

 ヘルゲイズの言葉にゴルヴォルフが一瞬驚く。

「そ、それって本当か?」

「ただし、今後のソルダーズの動きによってはそれを撤回する」

「結局はソルダーズか……本当にあいつだけは邪魔だな……」

 そうつぶやいてゴルヴォルフはしばらく考え込む。

「…なあ、ヘルゲイズ様」

 そして何かを思い付いたのか、ヘルゲイズに再び話しかける。

「一回だけ、やらせてくれないか?」

「…その理由は?」

「偵察だよ。偵察して邪魔な奴の力を知りたいから……」

「前にも偵察はしたのではないか?」

「うっ!」

 ヘルゲイズの言葉にゴルヴォルフがドキッとする。

「べ、別にもう一回ぐらい言いじゃねーか」

「…よかろう。お前に偵察の許可を出す。もし、そのまま邪魔な物を排除する事ができるのなら排除するのだ」

「わかってるって。それじゃ、あばよ」

 ゴルヴォルフが得意げにその場を去っていく。

「………」

 そしてしばらくの間、ヘルゲイズは黙り込んで何かを考えていた。これからの事なのか、以前の事なのか、それは誰にもわかる事ではなかった。

 

 

 場所は変わり、ここはHBC開発室。巨大な戦闘機のようなメカが大勢のHBCスタッフの手によって開発を進められていた。

「ついに、ついに完成した……」

 一人のHBCスタッフが一機の巨大な戦闘機を眺めて感動していた。どうやらつい先程に完成したらしい。

「やっと完成したか、神波君」

 そこに、タイミングを見計らったかのように石橋が開発室に入ってくる。

「あ、石橋司令官」

「見てください、この『サンダージェット』を。この空気抵抗を可能な限りまで減らし、どんな爆発や衝撃にも耐えられる機体、どれをとっても最高です」

「ほう、それはすごいな」

「これでヴァリアントと合体すればファイナルセイバスターに勝るとも劣らない力を手に入れる事ができるはずです!」

 神波が説明していくうちにだんだん言葉に力が入ってくる。

「それで、データ入力はすんだのか?」

「あ……」

 神波が石橋に言われてその事に気付く。それを見た石橋の表情は完全にあきれている。

「まったく……データを入力しなければヴァリアントが合体することが不可能ではないか」

「すみません。今すぐデータ入力をします」

 石橋に言われて神波は急いでサンダージェットの方へ向かっていった。

「やれやれ。メカニックとしてはいい腕なんだがな……どうもあと一つ抜けているな」

 神波の後ろ姿を見て石橋は軽くため息をつく。

「それより、一刻も早く戦闘に出せるようにしなければ……瞬治君にこれ以上気負いさせたくないからな」

 

ビーッ! ビーッ!

 

 その時、HBCに非常警報が鳴り出す。

「!? こんな時に何が!?」

 石橋がそれに驚き、急いでグレートオーダールームへと向かっていく。

「荒井君! 何が起こった!?」

「京才市内に地球外知生体出現! 数は一体です!」

 荒井が起こった事態を明確に伝える。

「すぐに空人君達に連絡するんだ!」

「わかりました」

 荒井は通信のスイッチを押し、空人達に起こった事態を伝える。

(何か、嫌な予感がする……)

 その時、石橋が何かを予感し、グレートオーダールームを出て行こうとする。

「あ、石橋司令官。どこ行くんですか?」

「開発室だ! サンダージェットの完成を急がせる!」

 石橋はそう言い残すと急いでグレートオーダールームを出ていった。

 

 

 京才市の街中。そこでファイナルセイバスター達は魔物と戦っていた。

「ファイナル、がんばれ!」

「負けんじゃねーぞ、グランドレオン!」

 空人と誠也はそれぞれの勇者を応援している。その応援を受けながら勇者達はダメージを受けたり与えたりしながら必死に戦っていた。

「フェザーキャノン!!」

「サンダーエッジ!!」

 ファイナルセイバスターが魔物に向かって構えると肩のキャノン砲からエネルギー弾が飛んでいき、ヴァリアントがサンダーエッジを魔物に向かって振ると雷の刃が魔物に向かってものすごい勢いで飛んでいく。その攻撃を見た魔物がよけようとするが、

「アイフラッシャー!!」

 グランドレオンの頭部となっている獅子の目から放たれた光によって動きを封じられる。それによってさっき放たれたフェザーキャノンとサンダーエッジが魔物に命中した。

「グアッ!」

 魔物はその攻撃を受けて体勢を崩してしまう。

「ヴァリアントサンダー!!!」

 その瞬間にヴァリアントが腕を振り上げ、魔物に向かって手を突き出すとものすごい勢いでヴァリアントの手から雷が魔物に向かって飛んでいく。

 

ズドオォォォォォォォォン!!

 

 雷撃が魔物とぶつかった瞬間、激しく大爆発が起こる。

「やったか!?」

「…いや、まだだ!」

 ヴァリアントサンダーを受けて激しくダメージを受けたにもかかわらず、魔物はふらふらになりながらもまだその場に残っていた。

「ちっ!」

 それを見て瞬治は悔しそうに舌打ちをする。

「ファイナル!」

「ファイナルブレード!!」

 ファイナルセイバスターが腰についていた剣の柄をつかみ、剣を抜く。そして魔物に向かって構えると刃が炎に包まれる。

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 ファイナルセイバスターが激しく咆哮しながら魔物に向かって走り出す。

「ドラゴンスラッシャー!!!」

 次の瞬間、ファイナルセイバスターは魔物の手前で飛び上がり、はるか上空から炎に包まれた剣で魔物を一刀両断する!

「グ……グオォォォォォォォ!!」

 

ドオォォォォォォォォン!!

 

 しばらく魔物はそのままの状態でいたが、やがてそのダメージに耐え切れずに大爆発を起こす。それを確認したファイナルセイバスターが後ろを振り向き、剣を腰に納める。

「やったあ!」

「よし!」

 空人はそれを見て喜び、誠也はガッツポーズをとる。

「さてと、地球外知生体も倒した事だし……」

「待ってくれ」

 全員がその場から去ろうとしたその時、ヴァリアントが全員を引き止める。

「何だ?」

「何者かが、上から来る」

 ヴァリアントがそういった瞬間、上空からさっきとは別の姿をした魔物が降りてくる。

 

ズウゥゥゥゥゥゥン!!

 

「うわっ!」

 その着地の瞬間、激しい地響きによって全員が体制を崩してしまう。

「地球外知生体が、もう一体だと!?」

「そんな! 今までそんな事なかったのに……」

「グオォォォォォォォ!!」

 空人達がその状況に慌てふためいていると、魔物が激しく咆哮して今まさに破壊活動を始めようとしていた。

「と、とにかく今はこの地球外知生体を何とかしないと……」

「! 危ない!」

 その時、魔物が空人達に向かって持っていた鎚で攻撃しようとする。

「うわあっ!」

「サンダーシールド、オン!」

 しかし、ヴァリアントが魔物の攻撃をサンダーシールドで防御し、空人達をまもる。

「ぐっ……」

「ファイナルセイバスター! グランドレオン! 今のうちにこいつを……」

「わかった!」

 ファイナルセイバスターがうなずくと、魔物に向かって構えを取る。それとほぼ同じタイミングでグランドレオンが魔物に向かって突進していった。

「レオンクロー!!」

 そして手の甲に装着された爪で魔物に向かって攻撃する。しかし、

 

ガキィン!

 

「何!?」

 レオンクローは確かに魔物にヒットしたのだがその魔物の硬い体によって弾き返されてしまう。

「くそ! なんて固い奴なんだ!」

「ドラゴンバーン!!」

 ファイナルセイバスターの胸にある竜が口を開け、口から炎を放つ。その炎は魔物に向かって真っ直ぐ飛んでいく。

「フン!」

 だが、魔物は持っていた鎚で炎をかき消してしまう。

「な!?」

 それと同時にファイナルセイバスターに向かって鎚を振り下ろす。

「ぐあっ!!」

「ファイナル!!」

 ファイナルセイバスターがその攻撃をかわそうとしたが、かわしきれずに打撃を受けてしまう。

「この野郎!」

 瞬治が怒りに身を任せてヴァリアントを操縦する。

「サンダーエッジ!!」

 ヴァリアントがサンダーエッジを魔物に向かって振ると雷の刃が魔物に向かってものすごい勢いで飛んでいく。

「ガアッ!」

 魔物がドラゴンバーンをかき消したのと同じようにサンダーエッジを鎚でかき消す。

「くそ!」

「ヴァリアントサンダー!!!」

 続けてヴァリアントが腕を振り上げ、魔物に向かって手を突き出すとものすごい勢いでヴァリアントの手から雷が魔物に向かって飛んでいく。

 

ズドオォォォォォォォォン!!

 

 雷撃が魔物とぶつかった瞬間、激しく大爆発が起こる。

「どうだ!?」

 しかし、魔物はまったく平然とその場に立っていた。

「く……まだくたばらないのか!?」

「瞬治、頭に血が上り過ぎだぞ! もう少し落ち着けって……」

 誠也が瞬治をなだめようとするが、瞬治にその言葉は届かなかった。

「くらえ!」

 瞬治はレバーを倒してヴァリアントに攻撃させるようにする。しかし、ヴァリアントはまったく動こうとしない。

「ヴァリアント、どうした? 攻撃だ!」

「瞬治、少し落ち着くんだ。落ち着いて状況を判断して……」

「もたもたしているとこっちがやられる! だから攻撃するんだ!」

 ヴァリアントの言葉にも全く耳を貸さず、ただ「攻撃」の指示しかしない瞬治。瞬治は完全に怒りに心を支配されていた。

「攻撃するんだ! 攻撃してくれ!」

 瞬治が必死にレバーを動かすがヴァリアントはまったく動かない。

「くそ! くそ! くそおぉーー!!」

 瞬治は完全に怒りで我を忘れ、その叫び声が空しく響いていた。

「ガアッ!!」

 その時、魔物がヴァリアントに向かって鎚で攻撃してきた。

ズガッ!

「ぐああっ!」

「瞬治さん!」

「瞬治! ヴァリアント!」

 その攻撃がヴァリアントを激しく吹き飛ばす。

「ぐ……」

 その攻撃を受けてしまったヴァリアントは何とか立ち上がる。しかし、激しい攻撃によるダメージによってまともに立つ事ができなくなっていた。

「ガアアッ!」

 そして、魔物はヴァリアントに止めの一撃を刺そうとする。

「やられる!!」

「く!!」

 瞬治とヴァリアントがその一撃を受ける覚悟で身構えたその時、

 

ドォン!

 

「グアッ!」

 魔物の腕にミサイルが直撃し、魔物は体勢を崩して思わず鎚を落としてしまう。

「……?」

 そのミサイルを飛ばしたのは一機の巨大な戦闘機だった。

「何が起こったんだ?」

『間に合ったか!』

全員があっけにとられていると瞬治に石橋の通信が入る。

「石橋司令官? あれは何だ?」

『あれこそがヴァリアントが合体するためのサポートメカ、その名も『サンダージェット』だ!!」

「サンダージェット……」

『ヴァリアントとサンダージェットが合体すれば雷光の勇者『ヴァリアントセイバスター』となる事ができるのだ!!」

「………………」

 石橋がいちいち大きな声で説明するので瞬治が思わず耳をふさいでしまう。

「それはわかったから、合体の方法を教えてくれ……」

『おお、そうだった。合体の方法は「ヴァリアント・ドライブ! カモン、サンダージェット!」と言うのだ!』

 瞬治が石橋の口から出た合体のキーワードを聞いて思わず脱力してしまう。

「な、なんか恥ずかしくないか?」

『何を言う! そんな事で恥ずかしがっては地球を守る事ができないぞ!』

「わかったよ。とにかく、やってみる」

 そういって通信を切り、気持ちを落ち着けるために軽く深呼吸する。

「VALIANT・DRIVE! Come on、THUNDERJET!!」

 瞬治がキーワードを叫びながら指を鳴らす。『サンダージェット』とヴァリアントの合体が始まる!

 

 サンダージェットの後部、エンジンとなっている部分が左右に分かれる。その左右に分かれたエンジン部分が半回転し、半分から外側が下にさがると上半身を形成した。

 上半身の左腕についていた翼が分離して右の翼と結合する。それは『V』の形をしている装飾品となった。

 次にサンダージェットのコクピット部分が分離し、機体の前部が戦闘を中心にして前に回転する。完全に前に来ると横についていたパネルが開き、回転の中心となっていた部分を閉じた。

 そして前に降りた機体前部が二つに分かれ、爪先が降りると足を形成する。

 今まで機体後部の位置の横にあった翼が分離してボディの背中と結合する。

 その機体は胸の部分が欠乏していた。

「はっ!」

 ヴァリアントがその胸の部分に向かって飛んでいく。するとその姿を変形させて機体の胸へと結合した。

 それが終わると同時に機体の腕から手が現れる。

「VALIANT、Let’s go!」(ヴァリアント、行くぞ!)

 瞬治がそう言うと機体から顔が現れた。

「雷光合体!!」

 ヴァリアントは叫ぶと同時に顔の前で腕を交差させ、

「ヴァリアントセイバスター!!!」

 腕を振り下ろし、構えを取ると背中の翼にもう一つ、V字の翼が現れた。

 光り輝く黄色のボディ、右腕には『VALIANT』の頭文字となっているV字をした武器にもなる装飾品、そして何よりも全身からあふれ出そうな電気。

 その姿はまさに『雷光の勇者』という名にふさわしい。

「これが、ヴァリアントセイバスター……」

「私の体に、力がみなぎってくる……」

 ヴァリアントセイバスターが拳を握るとその拳に電気が走る。

「この力なら、いける!」

 勝利を確信した瞬治は改めて魔物に目を向ける。

「グアァァァァァァ!!」

 魔物は激しく咆哮して、ヴァリアントセイバスターに向かって鎚を振り下ろす。

「サンダーシールド、オン!!」

 ヴァリアントセイバスターはすかさず左腕を魔物に向けてかざすと電気のシールドが発生し、その鎚を防御する。

「ヴァリアント、押し返すんだ!」

「了解!」

 そして、そのまま腕で魔物を押し返そうとする。

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 力を思い切り込めて前に突き進むと魔物は体制を崩して後ろに倒れてしまう。

「よし、次いくぞ!」

「ヴァリアントエッジ!!」

 ヴァリアントセイバスターが右腕を魔物に向かって突き出すと、右腕についていたV字の刃が魔物に向かって飛んでいく。

ガキィン!

 だが、さっきまでと同じようにその攻撃は魔物の頑丈な体によって弾かれてしまう。

「くそ! やっぱりだめか!」

「瞬治、落ち着くんだ!」

 その時、誠也が瞬治に向かって忠告をする。

「ああ、わかった!」

 今度は瞬治の耳にしっかりと届いた。

(地球外知生体の体はほとんどがその頑丈な体によって守られている。だが、かならず『穴』はどこかにあるはずだ。その頑丈な体を破る『穴』が……)

 瞬治はものすごい早さで状況を把握し、魔物の体を観察する。

「ん?」

 すると、魔物の頑丈な体にある、所々の関節部分に目をつける。そこはごくわずかではあるが、ゆとりを持たせるために少しだけ隙間が空いていた。

(もしかして、あれは『頑丈な体』じゃなくて『頑丈な鎧』なのか? もしそうだとすればあの中は生身のはず。だったら……)

「瞬治、何か分かったのか?」

「ああ、一か八かだが、やってみるしかない!」

 そういって瞬治はある操作を始める。しばらく瞬治がその操作を続けていたかと思うと、

「よし、わかった」

 ヴァリアントセイバスターは何かひらめいたようにうなずく。そしてさっきと同じ構えを取り、

「ヴァリアントエッジ・サンダー!!」

 右腕を魔物に向かって突き出すと、右腕についていたV字の装飾品が魔物に向かって飛んでいく。そのヴァリアントエッジはさっきと違って電気を帯びていた。

「瞬治! それじゃさっきと変わらないじゃないか!」

「見てろって!」

 瞬治がそういったその時、

 

ズシャァッ!

 

「グアアッ!!」

 魔物の腕が切れる音が聞こえ、魔物はその激痛と電気によるショックで激しく苦しむ。

「よし! 俺の勘は当たっていた!」

 瞬治がその魔物の姿を見てガッツポーズをとる。

「……??」

 空人はその光景を見て何がなんだかよく分からない状態になっていた。

「…そうか! そういう事だったのか!」

「な、何がわかったの?」

「地球外知生体に攻撃が通用しなかったのはあの頑丈な体のせいだった。だが、あれは『体』じゃなくて『鎧』だったんだ」

 誠也が空人に説明をする。

「つまり、鎧の中には本当の『体』がある。瞬治、もといヴァリアントセイバスターはその『中身』を狙ったんだ」

「だから急に攻撃が効いたんだ」

「そう、そのとおり!」

 空人が納得すると誠也はどこかで聞いたセリフを言いながら人差し指を立てる。

「グ……グオォォォォォォォ!!」

 その時、魔物が立ち上がって攻撃対象を変え、ファイナルセイバスターに向かって持っていた鎚で攻撃しようとする。

「ファイナルブレード!!」

 だが、ファイナルセイバスターは剣を取り出し、その剣の刃でその鎚を受け止めた。

「よし、今だ!」

「了解!」

 瞬治の掛け声にヴァリアントセイバスターはうなずき、魔物に向かって構えを取る。

「ヴァリアントボウガン!」

 ヴァリアントセイバスターはどこからかともなく銃を取り出し、右腕を上に突き上げる。するとその右腕に装着されていたV字の装飾品が飛び上がって銃に装着された。その形はまるでボウガンのようだ。

「グランドレオン!」

「おう!」

 瞬治がグランドレオンに向かってアイコンタクトで何をさせたいかを伝える。それを見てグランドレオンはすかさず魔物に向かって走り出した。

「トライアングルフィールド!!!」

 グランドレオンは魔物の目の前でジャンプし、魔物の真上に来るとからバリアを発生させて魔物をそのバリアの中に閉じ込めた。

「今だ! ヴァリアントセイバスター!」

「THUNDERARROW,FIRE!!!」(サンダーアロー、発射!!!)

 瞬治がそう叫ぶとヴァリアントセイバスターはすかさず引き金を引く。

 

ズキュゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

 その瞬間、銃声と共にヴァリアントボウガンから雷の矢が魔物に向かって飛んでいった!

 

ズドオォォォォォォォン!!

 

 そして魔物に突き刺さった瞬間、激しい大爆発をおこして魔物と共に消滅した。

「I wish you go to the heaven」(お前が天国に行くことを願っておいてやる)

 いつもどおりに瞬治は消滅した魔物に向かって決めゼリフをいう。

「今回は危ない所だったな」

 誠也は一息ついて汗をぬぐうようなしぐさをする。

「でも、瞬治さんとヴァリアントセイバスターのおかげで助かったね!」

「まあ、そうだな。サンキュー、瞬治」

 誠也は空人の言葉を聞いて瞬治及びヴァリアントセイバスターに向かって礼を言う。

「ああ」

 瞬治はそれに向かってかえすように笑顔でサムズアップをする。

 

 

 ここはソルダーズが空に作った異空間の中。そこでソルダーズとゴルヴォルフが激しい口論を続けていた。その原因はさっきの戦闘である。

「だからこうして謝ってるじゃねーか」

「謝ってすむ問題ではない! 私の任務を邪魔するならば今すぐお前を始末する!!」

 ソルダーズはそういった刹那に、背負っていた剣でゴルヴォルフに向かって斬りかかろうとした。だが、ゴルヴォルフはその攻撃を簡単に避け、ソルダーズの後ろに素早く移動してきた。

「そうそう、一つだけ言っておいてやる。お前はもうすぐヘルゲイズ様に捨てられる」

「なんだと!?」

 ゴルヴォルフの言葉にソルダーズは思わず驚いてしまう。

「お前があまりにもへまばっかりしてるからヘルゲイズ様もあきれて次は俺に任せてくれるんだとよ」

「そんなはずはない! この有能な私を、ヘルゲイズ様が……」

「俺は真実しか言ってないぜ。嘘だと思うんだったら自分で確かめてみるんだな。ヒャーッハッハッハ!!」

 ゴルヴォルフは激しく高笑いをしてその場から去っていく。ソルダーズはその場でゴルヴォルフの言葉にあ然としていた。

「くそ! このままもたもたしていたら本当にゴルヴォルフの言葉どおりになってしまう。一体どうすれば……」

 ソルダーズは何かいい方法がないか、しばらく考え込む。そして、

「…しかたない。『最終手段』を使うしかないな」

 何かを思い付いたのか、再び剣を抜き、何か呪文を唱え始めた。

「我、ソルダーズが命ずる。『空の太刀(くうのたち)』よ、空間を切り裂いて我が最強の『鎧』を召喚せよ!」

 呪文を唱え終わると同時に目の前に向かって剣を大きく振る。すると、そこの空間が切り裂かれ、裂け目ができた。その裂け目の中には何やら巨大な『鎧』がそびえ立っていた。

「見てるがいい、ゴルヴォルフ。この最強の『鎧』で勇者どもを抹殺し、私がこの任務を完了させる! ハハハハハ、ハッハッハッハッハ!!」

 ソルダーズが激しく高笑いをする。その高笑いはその場で何度も何度もこだましてしばらく消える事はなかった。

(………………)

 その光景を、謎の男が黙って眺めていた。まるで、ソルダーズを監視するかのように……

(次で終わりだろうな……)

 

第6話に続く

 

 

次回予告

 

こんにちは! 僕、空人。

 

ねえ、ファイナル。確か初めて僕の前に出てきたとき、僕に「勇気を与えてくれ」と言ったよね。

ということは、僕は他の人より『勇気』があったからファイナルと出会えたの?

教えてくれるよね、僕がファイナルと出会えた理由を。

心配しなくても大丈夫だよ。どんな事を言っても僕は驚かないよ。

だって僕も立派な『勇者』だから!

 

次回、勇者伝説セイバスター『最後の勇気』

 

僕と一緒に、「ファイナル・ブレイブ!!」


 
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