そう言って竜児は頭を下げた。
奈々子はなにが起きているのか分からなかった。
目の前の愛しき人の発した言葉は自分の想像と百八十度ちがったから。
「えっ?だってみのりちゃんとか。あ、亜美ちゃんだって」
「櫛枝には昼休みに言われたよ、結局幽霊は見えなかったごめんってな。
でもそれを言われる前から決めてたんだ、香椎を選ぼうって。言いわけっぽいけど信じてほしい」
「ほんとに高須君はそれでいいの?みのりちゃんみたいに明るくないし
亜美ちゃんみたいに可愛くない、こんな私でいいの?」
「ああ、っていうか結構Sっ気があって冗談も言えて、しかも、か、可愛い香椎じゃないとダメだ」
奈々子の目からはこらえきれなくなったように涙がこぼれた。
恋愛ドラマで想いが成就して泣くシーンを、リアリティがないなどと思っていた奈々子だが
いまこの瞬間にその気持ちを痛感した。
「あ、ありがとぅ・グスッ、ほんとありがとうね」
「え、あ、いや泣くな香椎!?」
まさか泣かれるとは思っていなかった竜児がおろおろしていると
帰ってこない親友を心配したであろう麻耶たちが向こうからやって来た。
「あーーっ!!高須君、なに奈々子泣かせてんのよ!!
あっ!?まさかあんた奈々子のこと振ったんじゃないでしょうね!!」
「い、いや俺はそのだな」
「違うわよ、その逆」
亜美とはまた話さなきゃいけないことが出来てしまったが
それでも心配してくれている親友のためにいつまでも泣いているわけにはいかない。
「奈々子、大丈夫?ってか逆って……え!?まさかもしかして!?」
「私達このたびめでたくカップルになりました。宜しくね」
「カ、カップルって、まあ嘘ではないんだが」
いきなり女子に囲まれてしまいすっかり委縮してしまった竜児をおいて
奈々子たちは会話に華をさかせる。
「はぁー、亜美ちゃん宣戦布告した瞬間に終戦とかまじ切ないんですけど…」
「ごめんね、亜美ちゃん」
「なーに謝ってんの、さっきの約束もう忘れたの?
それにあんまり油断してると横からかっさらうからね!ねっ、竜児!!」
「ちょ、ちょっと亜美ちゃん人の彼氏にちょっかいださないでよ!高須君も反応しないで!!」
自分は告白をしに来たはずなのに相手に泣かれて
なぜか川嶋に名前で呼ばれ、出来たばっかの彼女に怒られ
ただでさえ落ち着かない自分の周りが一層騒がしくなってしまった。
そううろたえる竜児だったが、その顔には自然と笑顔が浮かんでいた。
Tweet |
|
|
7
|
0
|
追加するフォルダを選択
28です。
コメント返しになります。
よしおさん。>ブログのほう読んでくれていたということですかね?ありがとうございます。みのりんは原作でもあぶなっかしいですよねw
続きを表示