No.489284 いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生したたかBさん 2012-09-27 23:05:44 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:7149 閲覧ユーザー数:6466 |
第六十九話 本能と誇り
敵対する相手が強大な力を持っていたら?大抵の人は屈してしまう。
その敵対する相手が何かしらの目的を持っていたら?それを差し出して自分の身を守る為にそれを引き渡す。
だが、平和と正義を掲げる『時空管理局』はその敵となりうる相手。
スフィアの為になら世界を滅ぼしても構わないと考える相手に交渉の余地はない。
ならば逆説的に考えてみる。
スフィアが無ければ自分達は助かる。つまり…。
俺とリインフォース。恐らく、アリシアも含まれる。スフィアリアクターが死ねば、アサキムの脅威から世界は救われるのだ。
リアクターが死ねばスフィアも別世界へと転生するのだから…。
漫画やアニメ。ゲームや小説の主人公たちがふざけるなと。そんなことが許されるものかと叫ぶだろう。
抗い、打ち勝つだろう。
でも…。
その可能性に賭けて幾多ものの世界にいる人達の命を天秤に乗せられるだろうか?
見ず知らずの人間に「私が生きるためにあなた達の家族の命を賭けてください!」と言われ、それが本当の事だと知ったら、どのような反応を示しますか?
大概の人ならふざけるなと叫ぶだろう。
自分が火の粉をかぶるのは嫌に決まっている。
それでもなのはやリンディ達のように献身的な人達がいるのはわかる。だけど…。
それは自分に被害が及ばない。もしくは自分の大事な人達に迷惑が行かない程度での話だ。
なのははフェイトの為に、ユーノの為にとジュエルシードを集めることに積極的だった。
だけど…。あの優しい女の子は自分の友人や家族が人質に取られたら?危険にさらされると考えがよぎったら?
「それが本当なら私は今すぐにでも、あなた達スフィアリアクターを管理局の本局に連れて行き厳正な
「…手続きね」
プレシアは自分に課せられた違法の次元航行の依頼の件を思い出しながらリンディを見る目を細める。
そして、リンディが考えていた事は高志と大体あっている。だからこそ、リンディは続ける。
「それなのに高志君。貴方は絶望していない。その訳を教えてくれない?」
「『闇の書事件』があった後だから言いにくかったんだけど…。一つはスフィア無しでもアリシアとリインフォースが生きていけること。そして、スフィアを摘出してアサキムに渡せばいい」
「…その方法は?」
「それは俺もわからない、です。…だから、次から言うのが
強大な化物。何度殺しても生き返る化物。転生する化け物。
スフィアをどうにかリアクターの死以外での解放。
スフィアが出ていけばアサキムも興味を無くしてどっかに行ってしまうだろう。
だけど、リインフォースとアリシアはスフィアを頼りに生きている存在だ。スフィアが無くなれば死んでしまう可能性がある。
だから、現実的な最後の一つ。
「アサキムを、生かさず、殺さず。封印し続ける。…永遠に」
(俺は最低だ。
ギル・グレアムの事を決して悪くは言えない。
彼は親友の敵討ちだけではない。世界の平和。のことも考えはやてを封印しようとした。
だが、俺はどうだ?
自分が生きたいからアサキムを永遠に封印する。
自分の為に…。家族の為に…)
それが沢高志という人間だから。
「「・・・」」
リンディとプレシアは一人の親として高志の言葉を重く受け止めていた。
『闇の書事件』ではやての事もある。何より、高志の人間性からアサキムの永遠封印に手段を提案した覚悟も重く感じ取っていた。
しばらくしてからリンディが高志達に対しての答えを伝えた。
「…ふぅ。確かに私達『管理局』としては貴方達を私達の世界から隔離したほうがいいのかもしれませんね」
「…でしょうね」
さすがにプレシアもこれ以上無理かと諦めるかのように肩を動かす。
せめて、高志が動けるまでは保護を受けていたい。
「ですが、その前に私は一人の親です。ですので、この事は私の独断で秘匿にしておきます」
「そうね。それが、…はぁ?!」
プレシアはリンディを信じられないといった感じで二度見した。
かくいう高志も同じ反応だった。
「リンディさん!俺、言いましたよね!」
「ええ、言ったわね。スフィアを渡してアサキムに了承してもらうと…。ぶっちゃけた話、スフィアは危ないものですからね。持って行くなら、持っていってもらいます」
「だけど、それは…」
「取り出し方法が無ければ探せばいい。それだけですよ。それに高志君。忘れたの?あなたはクロウ君から『揺れる天秤』を受け取っているのよ」
「…あ」
「最後の手段として
「…リンディ。貴女は一体何を考えているの?」
プレシアの言葉にリンディはクスリと笑いながら答えた。
「私だって格好つけたくなるんですよ。…特に子どもの前ではね」
その言葉を聞いたプレシアとタカシは呆然としていたが、プレシアはリンディの所作をみて苦笑する。
「………食えない女ね」
高志は未だに混乱していた。
「…女の人って。…わからない」
「この場合は『母親』というのが正しいですよ。高志君」
リンディさんはウインクをしながらピンと立てた人差し指を自分の唇に当てた。
それが高志には色っぽくというよりも力強く見えた。
「だからね。高志君。…少しは我儘に泣いてもいいんですよ」
「…え?」
「…
高志の目から涙がコロコロと流れていた。
「ガンレオンはあなたにいつも答えていた。あなたのガンレオンはいつもマグナモードのときは泣いていた。貴方の心をガンレオンが映していたのかもね」
「…え、あ、なんで」
「…リンディ。私達も席を外しましょう」
未だに涙が流れていることに混乱しながら泣いていた。
それを見た二人の母親は外に出る。
そして…。
「………す、ま、…ない」
本当は強がっていた。
帰りたかった。この世界の人間なんて関係ない。
今、ここにある『自分』という存在は嘘なんだって思っていた。
「…す、まない」
アリシアを通して時たま見ていた自分の家族を思い出す。
そして、彼女の頭を撫でながらごめんと言っていた理由。
一つはここにいる自分は嘘の存在なのに『ここの世界』の人達。特にアリシアは自分の事を一人の人間として扱ってくれたのに自分自身がそう思わなかった事。
二つ目は、高志がこの世界で見つけた『新しい家族を守る事』。
だけど、それは『元の世界』への決別。それを切り捨てるという事を意味しているようだった。
高志の心は、そう思いたくはなかった。
心の底で溢れ出す『元の世界』に帰りたいという『
だけど…。
自分の親から受け継いだ『
それ以上に、為すべきことが出来た。
リンディに言われた「我儘に泣いてもいい」という言葉が高志の『誇り』が『本能』を呑みこみ、融合した。
それは涙という形でこぼれ出した。
そして、その日。
高志という魂は初めて心の底から泣いた。
「…す、まない。すまない!父さん!母さん!コウ!ハク!ごめん!俺は!俺は帰れない!…帰れなくなった。…俺は、俺には守りたい
一人残された高志は医務室の中で泣きじゃくった。
それは『元の世界』の家族との決別の咆哮でもあった。
あとがき。
次回からはGODまでの空白期を書いていきたいと思います。
時間軸的には舞台は大晦日。ノーシリアス。ノーモアです!
あと、この作品ではヒロインは未だに未確定です。
大晦日編で一応、ロリ系代表アリシア。お姉さん系リインフォースを出すつもりですが、ほかのキャラも!という要望があれば書いていきたいと思います。
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第六十九話 本能と誇り