一刀SIDE
・・・
・・
・
ある日、
部屋で目が覚めた時、
隣に誰かが居ないことに不安を覚えた。
そしてそれが至極当然であると気づいた時には…
その日は何もせずに部屋を出て城壁の上で街を眺めていた。
「一刀」
「……」
「流琉があなたが居ないって心配してたわよ。朝から今までずっとここに居たの?」
「…孟徳」
「何?言いたいことがあるなら言いなさいよ」
「今日は暇か?」
「別に暇で見に来たわけではないわ」
「…だろうな」
「本当にどうしたの?あなたらしくないわよ」
「…つまらん」
・
・・
・・・
目を覚ました時、そこは牢屋。
罪、皇帝殺人未遂。
罰、極刑。
…つまらん。
「帰りたい」
恋SIDE
恋は階段から落ちてくる一刀を受け止めた。
「…一刀?」
「………」
一刀は何も言わない。寝てる。
虎牢関からここまで来る間、一刀は何も喋らず、食べずに居た。
恋や霞も簡単な食べ物と水以外には何も食べてないけど、一刀は何も食べてないし、寝てない。
一刀は疲れてた。
体をあんなに追い込まなければいけないほど、心が疲れてる。
「恋、そいつは何なのよ」
詠が階段を登ってきた。
月も…
「…月」
「恋さん…その人は誰ですか?」
「…一刀、恋たちと月を助けに来た」
「助けに来たって、今陛下を殺そうとしていたでしょ?」
「……」
恋は頭を横に振った。
「…じゃあ、なんで陛下に剣を当ててたのよ」
「一刀は怒ってた」
「怒ってた?」
「…月が助ける時も、月が守る時も、月が危ない時も…何もしなかったから」
何もしなかった。
一刀は何かしないのが嫌い。
何も出来ないというのは言い訳にならない。
何かをして責任を取りたくないから何もしないだけ。
出来ることをしないのを一刀は良しとしなかった。
「…陛下、大丈夫ですか?」
「董卓…余は何もしなかったわけではない……何も考えていなかったわけではない…」
「陛下…?」
「すまない……本当にすまない……」
一刀は陛下に伝えようとした。
陛下がそれに気づかないと、一刀は月も陛下も助けない。
助ける価値がないと思ったら、一刀は誰も助けない。
それが陛下でも…
「恋、取り敢えずそいつ監禁しておきなさい。後で起きたら審問するから」
「……分かった」
でも、今は先ず一刀を休ませる。
恋は一刀が考えていることが分かる。
でも、何もしてあげられない。恋には力を振るうことしたできないのに、それは一刀にとっては何の役にも立たない。
月SIDE
私と詠ちゃんが宮殿に辿り着いたのは偶然でした。
道に迷って疲れきっていた私たちは最後の力を振り絞るつもりで道を進んでいました。
そして、上に繋がる階段みたいなのを見つけたのでした。
「やった…やったわよ、月!これで外に出られる!」
「良かったね、詠ちゃん」
でも、どこに出るのでしょうか。
隠れ道には出口らしきものが多く、その中には偽物の罠もあります。
でも、あの時に私たちにも目の前のその出口を開く以外に出来ることがありませんでした。
「行くわよ」
「うん…」
詠ちゃんが天井についた石を退かしたら、外の空気が地下に入って来ました。
「詠ちゃん、…どう?」
「ここって…月も上がってきて」
詠ちゃんに助けてもらって上がってきた先は、御殿の隅っこでした。
私たちが開けた天井は、そこの床の一部でした。
「こんな所にもつながってたのね。張譲の奴、本当に洛陽の下を蟻の巣みたいにしてたわね」
「これからどうしよう、詠ちゃん」
「ここからだと、逃げるには御殿を通らないと駄目よ」
御殿には今陛下がいらっしゃるはず…
「詠ちゃん、やっぱり私、陛下も連れて逃げるべきだと思う」
「無理よ。今は私たちしか居ないし、それに陛下を連れて行ったら例え逃げても連合軍はどこまでも私たしを追ってくるわ」
「でも、陛下をこのままにしたらまた十常侍の時に戻っちゃうよ」
私には分かりました。
陛下は、ご自分の口で言ったことは一度もありませんけど、多分皇帝になりたくなかったんです。
ただ周りが無理矢理自分を棚に上げて、自分たちが好きなようにするためにご自分を利用していることが耐えられなかったのです。
「だから、私たちが陛下をたすけないと…」
「私だけじゃ無理よ。今頃周りには兵士たちがたくさん…
「りょ、呂布だぁああ!!」
突然外からそんな声が聞こえてきました。
「詠ちゃん、今の聞いた」
「聞いたわ。まさか、恋が帰ってきてるの?」
もし恋さんや霞さんたちが帰ってきているのなら、陛下も助けられます。
「詠ちゃん、行こう」
「ああ、ちょっと待って、月!」
詠ちゃんが止めるのも聞かずに、御殿に向かいました。
今宮殿に恋さんが来ているのなら、あんな悲鳴がする場所はあそこしかありえませんから…
・・・
・・
・
そして御殿に着いた時には、既に兵士たちは皆死んでいて、玉座に座っている陛下に剣を当てている男が居ました。
すぐに気を失ったその人を恋さんは必死に弁護しました。
取り敢えず牢に入れておくようにして、私たちは今衝撃を受けている陛下をご自分の部屋まで連れてきました。
「恋、一体どういう状況だったのよ。説明して」
「…恋たちが来た時は陛下が兵士たちに囲まれていた。だから全部殺した」
「…あの男は誰?」
「一刀」
「だからその男がどこの馬の骨か聞いてるの」
詠ちゃんが恋さんから詳しい状況を聞き出そうとしている間、私はただ座って震えてる陛下を見ていました。
「陛下」
「…董卓」
「はい」
「余は無能だ」
「…陛下のせいでは…」
「そういう問題ではない」
陛下が震えている理由。
最初は自分の目の前で起きた状況におびえているのだと思っていました。
でも、そうではなかったのです。
「余は何かしなければいけなかった。民のためにでも、董卓のためにでもなんでも良いから…何かしなければいけなかったのだ。なのに余は何もしなかった」
「…後悔なさってるのですか?」
何もできなかったご自分の姿を悔しがっているその姿。
陛下を守ってきてそう長くはありませんけど、私が今まで知っていた、人形のように感情を表に出さない陛下の姿とはまるで違っていたため私は驚かざるを得ませんでした。
ずっと十常侍や張譲さんに利用され続けた陛下には、もう心なんて残っていないかのようにも見えました。
でも、今はそうではありません。弱くても、そこには確かに自分の考えを持っている姿があった、人形だった陛下の姿は消え始めていました。
「だけど、どうすれば良いんだ」
「…」
「今更余に出来ることがあるのか。なんでも良い。教えてくれ、董卓。余に出来ることがあるならなんでもする。だから…」
「…駄目です、陛下」
「え?」
「ご自分で考えてなければ意味がありません」
自分の頭で考えて行動しなければ人形だった頃と何も変わらないというもの。
でも、長い間ご自分で判断なさらなかった陛下にはいきなりそんなことは無理かもしれません。
だけど…
「陛下」
ご自分で判断できるようにお助けすることなら出来るでしょう。
「…陛下は誰のために行動なさりたいのですか?」
「誰のため…?」
先ずそれを決めなければ何も始まりません。
「ご自分のためですか。それとも民のためですか。私や詠ちゃんたちのため?それとも連合軍のためですか」
「………」
「誰もが陛下の助けを求めています。陛下が考えているより陛下はもっと大事な方なのです。ですからご自分で何かをなさるつもりならば決めて頂きたいのです。誰のために何をしようとしているのかを」
「誰のため…に……」
陛下は少し考えてる顔をしてまた私のことを見ました。
「董卓、聞いていいか」
「私に答えられるのでしたら」
「汝は何故余を十常侍らから助けたのだ?それは誰もためであった」
「…洛陽の人々のためでした」
私が最初に洛陽に来ようと思ったのは、洛陽から逃げてきた人々の姿を見たからでした。
その顔は希望を見つけたかのように笑顔をに満ちていました。
でも私たちが居る長安をまるで天水のように見ていたということは、つまり洛陽が地獄のように見えたということ。
そんな時洛陽に居られる大将軍何進さまからの密書が届きました。
十常侍を一緒に倒そうという密書をもらい私は洛陽の人々のために行かなければいけないと思いました。
何進さまが十常侍たちの謀略によって殺されてからも、私は退かずに洛陽に来ました。
それは誰かに言われたからではなく、私自身がその人たちを助けたかったからです。
「私はここに居る人たちを助けたかったのです。そしてそこには陛下も含まれます」
「汝は本当に邪心がなかったのか。自分が洛陽を制して、余を傀儡にしようとは思わなかったのか」
「私はただ、皆が笑顔で居られるのでしたらそれで構いませんでした。私の力が足りなかったばかりにこうなってしまいましたけど」
「…いや、それでも汝は余より何倍も偉大な英雄だ」
「……」
「決めた。余は汝を助けようと思う」
「陛下…」
「余が汝を助ければ、汝は洛陽の民を助けてくれよう。それで良いのではないのか」
陛下。
既に状況はそれだけでは済まないところまで来てしまいました。
だけど、
「それが陛下が悩んだ結果でしたら私も力尽くして陛下を支えます」
「董卓、まだ汝に礼を言ったことがなかったな。余を助けてくれてありがとう」
「私は今日陛下を守るために何も出来ませんでした。…ですが」
誰かが、陛下の体だけではなく、その奥までも癒したみたいです。
そしてそれをした人は今…
「ゆえーーー!!」
「え?ひゃっ!」
「無事でよかったでー!」
外に居た霞さんたちに私たちがここに居ることを伝えておいたのですが、その霞さんたちが陛下の部屋にまで駆けてきました。
そして霞さんは私を見る次第抱きついて泥まみれになってる顔を私に擦るのでした。
「ちょっと、霞。そんな泥まみれになってどうしたの?」
「一人で月殿を探しに行くと地図も無しで地下通路に突っ込んで罠をぶち当てたのですぞ。泥まみれになるぐらいで済んだのが奇跡ですぞ」
「…霞、慌てすぎ」
「し、霞さん、もう大丈夫ですから離れてください」
「嫌やー、もっとこうしてるー」
もう…皆さんが見てらっしゃるのに…
「ちょっと、いい加減月から離れなさいよ。今それどころじゃないでしょ!」
「ええやん、むっ、また甘えたりないっちゅうに…」
「あの…霞さん、後で好きなだけ甘えてもいいですから、今は…」
「ほんまやな。約束したんやで」
「は、はい」
それでやっと霞さんは離れてくれて周りを見回しました。
「…恋、北郷は?」
「……」
「話は恋から聞いたわ。あなたたちと一緒に来た男なら今牢屋に入れてあるのよ」
「え、なんでやねん」
「だって陛下の体に傷を与えたのよ。即決殺してても文句言えないわ。緊急事態だったから先ず牢に入れといたけど」
「あぁ、頭痛くなってきた…」
それを聞いた霞さんは頭を抱えました。
「賈詡っち、あいつ今すぐに出したらアカンの?」
「出来るわけないでしょ。言ったけど死刑されても言える口ないのだから」
「あいつ殺したらアカン」
「…一体あの男は誰なのよ。なんで恋もあなたもそんなにあの男のこと護ろうとしてるわけ?」
「……これをよんでみぃ、アイツが持ってきた物や」
詠ちゃんは霞さんからもらった竹簡を開いて内容を読みました。
そして、
「な、何よこれ…」
「見ての通りや。本人曰く、原本だそうやで。そこにちゃんと印もついたるし」
「袁紹の奴…本気なの?」
「詠ちゃん、どんな内容なの?」
私が顔が赤くなっている詠ちゃんに聞きました。
「密書よ。今の陛下は十常侍によって建てられた傀儡の皇帝だから廃位させて、代わりに并州の劉虞を皇帝にあげようという内容よ」
「!」
それは…
「余を…引き下ろすのか」
「決してそんなことはさせません!」
「…いや、それで良いのかもしれない」
「陛下!」
「彼も言っていた。余以外のどんな者がこの座に居ても、今よりは良かっただろうと」
「それは違います、陛下」
「董卓…?」
「確かに陛下は今まで十常侍たちのせいで何も出来なかったかもしれません。ですが、自分で何かをしようと決めた今の陛下なら誰よりも国に愛される皇帝になれます」
「余が…国に愛される?」
「はい」
国とは即ち民です。
今洛陽を含め、多くの天下の民が苦しみ、天を恨み、朝廷を恨んで乱を起こしたりもしました。
それらから『自分は何の悪さもしていない』という理屈で逃げようとするのなら、あの男が言った通りソレ以上に酷い皇帝はないかもしれません。
ですが今の陛下なら変われます。
「私たちが側に居てお支えします」
「董卓…」
「ですから、これ以上逃げてはいけません。陛下が自分で何かをしようと決めたのでしたら、それのために全身全霊を持って問題に当たってください。さすれば他の人たちも陛下のその努力に心を開いてくれます」
「…今皆余を引き下ろすために来ているのにか?」
「陛下が己の意志を堅くして皇帝としての威厳を見せれば、本当にこの国を愛する人達なら陛下の力を貸すでしょう」
「余が何をすればいいんだ?」
「……今はお休みください。今回の事件で疲れているでしょうから」
「董卓はどうするのだ」
私は…
「陛下が心を決めるとすれば、私ももう逃げません。陛下のために全てを賭けて、できなければここで散りましょう」
「董卓…」
「…董卓、字は仲穎、真名は月と申します。民たちを愛する者として、陛下のために尽くします」
私は陛下の前に跪き臣下の礼を取りました。
一度は私自身も目に見える全てを見捨てて逃げようとした身です。
ですがもう逃げないことにします。
陛下と洛陽の民を守るために、
私はもう逃げたりしません。
明命SIDE
董卓が現れ、北郷さんが倒れた所で、元々連合軍の斥候として来ていた私たちはその場を去るしかありませんでした。
幸い視線が全て陛下に剣を当てていた北郷さんに向いていたため、私たちは素早く逃げてバレずに宮殿内を探索することができました。
皇帝を守っていたはずの禁軍は恐らく袁家の奇襲によって殺されたらしく、その死体が宮殿のあっちこっちにありました。
その袁家の兵たちも全て居なくなったので、宮殿は私たちのような訓練された斥候じゃなくても容易に出入りできるほどでした。
そして今私が居る場所は宮殿地下の牢屋です。
普通牢屋と言う所はとても人が居て心地いい場所ではありませんけど、宮殿内でもあるせいか、光が入らないことと自分で出ていくことが出来ないことを除けば椅子や寝床もあってなかなか快適な牢屋といえるでしょう。
「北郷さん」
私は外から牢の中の寝床で死んでるように寝てる北郷さんに声をかけました。
でも中の北郷さんは反応しません。
助ける義理はありませんけど、蓮華さまの命令もあります。
一応借りを作っておいても悪くないでしょう。
「えっと、この門を開くには…………」
牢の門、開いてます。鍵かかってません。
「……」
なんで入れておいたのでしょう。
取り敢えず北郷さんの様子を見て連れて行くかほうっておくかすることにしましょう。
「北郷さん」
「……はぁ……はぁ…」
「…北郷さん?」
ちょっと様子がおかしいです。
「…ああつっ」
額に手を乗せると一瞬で高熱があることが分かりました。
さっきまではなんともなかったのにどうして…
「まさか、最初から…?」
洛陽にたどり着いて、張譲の屋敷に入り、宮殿に入って無数の敵を抜けて陛下に剣を当てていた時からずっとこんな状態だったとしたら…?
「一体あなたは何のためにここまで出来るのですか」
「…え…ぁぁ……」
「はい?」
何か言おうとしていました。
私は北郷さんの口に耳を傾けました。
「え……へ…か」
「へか?」
「れ……へか…」
良く判りません。
「……ようへい」
「あ、はい。大丈夫ですか」
「…はぁ…貴様が見るにはどうだ」
「介抱もされずこんな所に居れば恐らく死ぬでしょう」
「…だろう……それで結構だ」
北郷さんはそう言いました。
まるでもう生きるつもりなどないかのように天井を見上げました。
「戦争は…もっと興味深いだろうと思った。失ったことも忘れられるほど…忙しいだろうと思ったが…」
「…あなたは何のためにここまで来たんですか?」
「もうどうでも良い」
「蓮華さまはあなたに期待していました。それが何かは知りませんけど、恐らく陛下の体に傷をつけるような真似をするあなたにしか出来ないことでしょう」
「興味を失せた。この戦争がどう終わるか…天下とか…俺は興味ない」
「………」
この人は、
もう生きる意志をなくしているようでした。
もうこれ以上ここに居ても時間の無駄です。
そう思った時廊下から足音がして、私は急いで寝床の下の空間に身を隠しました。
一刀SIDE
鉄にできた牢の門が開く音がしたが、既に視力が頼りにならないぐらい精神が朦朧としていた。
「こんな状況で寝てるなんていい度胸してるじゃない」
「……詠ちゃん、少し様子が変だよ」
声を聞いて相手が恐らく董卓と賈詡と予想できた。
「そういえば、ちょっとおかしいわね。毒でも呑んだの?」
誰かの手が軽く額を触れていった。
「すごい熱、詠ちゃん、水と手巾持ってきて」
「ちょっと月!まさかコイツの看病をする気なの?」
「このままだと死ぬかもしれないよ。それにもうここには侍女も誰も居ないし。自分でやるしかない」
「もうほっといてよ。そんな奴死んでも生きてても私たちとは関係…」
「詠ちゃん」
「……分かったわよ」
門が動く音がして、また静かになった。
と思ったら残った奴が俺の上衣を脱がし始めた。
「私の声、聞こえますか?脱がすので腕を上げてください」
「お前は董卓か」
「…はい、私が董卓です」
「刑罰を受けて死ぬ前に病死したらお困りか」
「あなたを殺すつもりはありません。あなたに私たちを助けて欲しいとお願いするために来たのです」
「…他に当たってもらおう。俺はもう興味ない」
「興味がない…ですか」
董卓の手が止まる。
「あなたはさっき陛下を殺そうとしていました。だけど、陛下は怯えるどころか自分で立つ決心をなさりました。あなたが何をしたのかは知りませんが、その切っ掛けはあなたです」
「…あの女が自分で立つと決心する?」
「皇帝陛下です。あの女などではありません」
「呼び方はどうでも良い……お前が何かしたな」
あれだけで立ち直るほど良い根性をした人間ではなかった。
いつも操られ己の意思なんてなかった奴。俺がやったのは芽生えぬ種に恐怖という肥料を積んだだけ。
誰か水をやって光を浴びせた。
「…お前の仕業だ」
「……」
「半分諦めていたらまさかこんな大物だったとはな…」
見たい。
顔を見なければ話にならん。
「っっ…!」
「あ、まだ動いたら…」
「熱が何だ…邪魔をするな。所詮お前は俺から何も奪えてない」
病気ぐらいでくたばってたまるか。
目を開けると、そこには皇帝よりも一回り小柄な少女の姿がいた。
「董卓、俺にお前がしたいことを言ってみろ
興味が湧けば一枚かませてもらわなくもない」
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延ばして居た緊張の糸が一瞬てぃんと音をしながら切れる。
一度失せた興味を起こしなおすというのは中々できることではないのだ。
それほど価値のあるものだということだろうか。