No.487964

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

二年生に進級だ!

2012-09-24 11:42:19 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1180   閲覧ユーザー数:1138

長いようで短かった春休みが終わり、今日からいよいよ俺たちは二年生になる。

 

俺たちは始業式があるのだが、それは新入生の入学式が終わってから。今は生徒会のメンバーとして入学式に顔を出している。

 

目の前では楯無さんが新入生の生徒たちに話をしている。去年の反省を踏まえて、入学式に挨拶をしようということになったんだ。

 

…なったのはいいんだが。

 

「…なぁ、一夏………」

 

俺は隣に立っている一夏に小声で話しかけた。

 

「なんだ? いま楯無さんが話してるんだぞ…」

 

一夏も小声で返事をする。

 

「なんかさぁ…めっちゃ見られてね?」

 

「…………」

 

そう。そうなのだ。新入生たちは楯無さんの話を聞いてはいるんだが、その目は俺たちに向いている。

 

なんか、こう…動物園に来たパンダを見るような目でこっちを見てる。(わぁ、本当にいるんだぁ…)的な。

 

はたとえが微妙? ンなもん知るかよ。

 

「きりりんもおりむーも、完全に学園の名物になってるね~」

 

横に立ってるのほほんさんが言う。

 

「名物って言われてもな………」

 

「これ、喜ぶべきなのか?」

 

二人で苦笑いを浮かべると、楯無さんがくるっとこっちを向いた。

 

『それじゃあ、あなたたちの視線がどうも私の後ろに飛んでるみたいだから―――――――』

 

 

グイッ

 

 

そしておもむろに俺と一夏の腕を引っ張って、スタンドマイクの前に立たせた。

 

『二人にも挨拶をしてもらいましょー!』

 

 

『わああああああああっ!!』

 

 

そらもう凄い拍手と歓声。楯無さん、余計なことをしてくれたもんだ。

 

「ちょっ、楯無さん、そんなアドリブ―――――」

 

一夏が楯無さんに抗議しようとする。

 

「おねーさんのめ・い・れ・い☆」

 

「……………」

 

抗議、強制終了。

 

「一夏、こうなったら腹括るしかあるめぇよ」

 

「そ、そうだな………」

 

一夏が諦めたのを見て、俺はマイクを掴んだ。

 

『あー、新入生のみなさん。入学おめでとう。ご存知だと思うが、俺が桐野瑛斗。その横にいるのが』

 

マイクを一夏の口元に置いた。

 

『あ、お、織斑一夏です。よろしく』

 

一夏がペコ、と一礼する。

 

『さて………何を話せばいいんでしょう』

 

俺が言うと笑い声が上がった。まだ何も面白いことは言ってないんだがな。

 

『えっと………』

 

話題を探すけど、どれも空回りしそうで嫌だ。入学したばっかりの一夏の気持ちがよく分かる。

 

「…………」(ニヤニヤ)

 

くぅ! チラッと見えた楯無さんのニヤニヤが腹立たしい!

 

困った俺は一夏にアイコンタクトする。

 

(おい一夏…どうにかしろ)

 

(どうにかって……どうするんだよ)

 

「ほらほら、二人とも、早く早く」(ニヤニヤ)

 

「頑張れ~」(ニヤニヤ)

 

いつの間にかニヤニヤするヤツが増えていた。

 

(ど、どうする? どうしよう!?)

 

(落ち着け瑛斗! 仕方ない。ここは俺に任せろ)

 

一夏が俺からマイクをひったくった。何する気なんだ…? 嫌な予感がビンビンするんだけど。

 

「………」

 

「!」

 

ここで俺は直感した。

 

(まさか、コイツ…!)

 

「一夏やめ―――!」

 

俺が止めたときには、もう一夏の口は動いていた。

 

 

『入学式と掛けまして!』

 

 

この後の結果は、言うまでもないだろう………。

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

「……………」

 

「え、えっとぉ…二人とも、大丈夫?」

 

シャルが机に突っ伏している俺と一夏を心配してくれる。始業式が終わり、HRである。

 

「だいじょーぶなわけあるかー…」

 

一夏が力無く答えた。

 

「ったくよぉ、おめーがあんなこと言うから俺まですべったみたいになっただろーが」

 

俺は一夏に恨み節。

 

結局あの後の一夏の玉砕覚悟の謎掛けは見事玉砕に終わった。あの空気、二度と味わいたくねえ・・・。

 

「もとはと言えばお前が気の利いた言葉を言えないから悪いんだぞ」

 

「あんだとぉ? それを言うならあんな悪魔みたいなタイミングでアドリブ振ってくる楯無さんが悪い」

 

「ぐ…そういうことにしとこう。これ以上は心が折れちまう」

 

ということで俺と一夏はこの恨みの矛先を楯無さんに向けることにした。

 

「い、いや、会長も『や、ごめん。本当にごめん』ってマジな顔で言ってたし~…」

 

のほほんさんがそう言ってくるが、このやりきれん気持ちがなぁ…

 

「一夏のセンスは今になって始まったわけではなかろう」

 

「箒さん、刺さってます。言葉が一夏さんの背中に刺さってますわ」

 

箒の言葉をセシリアが諌める。

 

「もうやめてくれぇ…俺のライフはとっくにゼロなんだぁ………」

 

一夏がうめくような声で言う。

 

「お兄ちゃん」

 

マドカがポンと一夏の肩に手を置いた。

 

「元気出して、お兄ちゃん」

 

「マドカ……」

 

マドカは天使の微笑を浮かべて一夏に言った。

 

「お兄ちゃんのジョークがいくらつまらなくても、私は応援するよ」

 

「…………がふっ」

 

あ、一夏が吐血した。

 

「わぁ!? ど、どうしたの!?」

 

「マ…マドカ、善意と悪意は紙一重………なんだぜ」

 

「どいうこと!? 新作のジョークなの!? わからない! 深すぎてわからないよー!」

 

机に突っ伏す一夏と頭を抱えるマドカ。織斑兄妹は今日も元気だ。

 

 

ゴスンッ!

 

 

いきなりマドカの頭に出席簿がクリーンヒット。

 

「痛っ!?」

 

「席に着け。HRを始めるぞ」

 

マドカの後ろには『学園でスーツが良く似合う先生ランキング』ダントツトップの織斑先生が。

 

「お、お姉ちゃ―――――」

 

 

ガスンッ!

 

 

「ここではそう呼ぶな。『織斑先生』と呼べ」

 

「は、はいぃ………」

 

マドカは涙目で頭をさすりながら席に着いた。

 

「そら、お前たちも席に着け。進級早々懲罰を食らいたいなら話は別だがな」

 

その一言でみんなテキパキと自分の席に着いていく。

 

「さて、まずは挨拶…は必要ないか。前とメンツは変わらんからな」

 

IS学園はその特殊な構成上『クラス替え』というものがない。代わりに二年生から『整備科』という別のクラスへの異動がある。それとリボンの色が変わる。俺と一夏はリボンはつけてはいないから変化はないけど、女子たちは制服に黄色いリボンを通している。ラウラはネクタイだけど。

 

クラス替えに関しては俺は別段気にしてはいなかったのだが、この通知になぜか鈴と簪の二人は不服だったようだ。鈴は二組で簪は四組なんだけど、そんなに一組がよかったのだろうか。

 

「まぁ、特に言うことはないが、お前たちが二年生になるということは後輩ができるということだ。新入生の模範となるよう今まで以上に努力するように。私からは以上だ」

 

と織斑先生が言い終えると、その後ろにいた眼鏡が少しずれてる一組の副担任の山田先生が教壇に立った。

 

「みなさん進級おめでとうございます! 織斑先生も言ってましたが、新入生の人達のお手本になれるように頑張ってください! それと、整備科への編入申し込みは来週の月曜日まで受け付けますので、希望する人は忘れないでくださいね?」

 

最後にニコッと笑うところがいかにも山田先生らしい。

 

「では、この時間を使って一組の新しいクラス代表を決めたいと思います。一年生の時と同じように自薦他薦は問いませんよ」

 

(クラス代表か………そういや一年の時はセシリアと戦ったんだよなぁ)

 

ふと思い出す。あの時はバスジャックが起きて、それを止めたらなんやかんやで一夏が代表になったんだよな。

 

あれだけ代表をやりたがっていたセシリアだ。きっと立候補するに違いない。

 

「では」

 

そう思った矢先、セシリアが手を挙げて椅子から立ち上がった。

 

「わたくしは一夏さんの代表続投を提案しますわ!」

 

そうそう。一夏が続投……って、ん?

 

「え!?」

 

驚いた一夏がバッとセシリアの方へ振り返る。

 

「一年間代表をおやりになった一夏さんなら、仕事に慣れていてよろしいのでは?」

 

セシリアの言葉にほかの女子たちが賛同していく。

 

「いいね! 織斑くんがやってくれたら安心だよね!」

 

「慣れてる人がやるのが一番よね!」

 

「セッシーあったまいー!」

 

「お、おいおい待ってくれよ。俺の意見は?」

 

一夏が言うが女子は毎度のことながら普通にスルーしている。

 

(一夏が代表を続けるなら………)

 

「あ、もしかして俺もこのまま副代表続け―――――」

 

『それは違う!!』

 

クラスの大半の女子に食い気味に全力否定された。

 

「な、なんで俺だけ違うんだ?」

 

「副代表というのはクラス代表の補佐をするものですわ。それくらいなら私たちでもできますもの」

 

「え、えっと…つまり?」

 

前の席に座っているシャルに解説してもらおう。

 

「つまり、みんな一夏と一緒に――――――――」

 

 

ガチャンッ!

 

 

「?」

 

何かが倒れる音がした。音のした方を見る。

 

「ああ、すまない。私だ」

 

箒が倒れている自分の日本刀を拾いながら謝った。

 

「おいおい気をつけろよ。一応刃物だからな?」

 

「分かっている。うっかり口を滑らせ…いや、手が滑らないといいんだがな………」

 

箒はチャキ、と刀の鍔を鳴らしながら言った。その顔はなぜかシャルに向いてたけど。

 

俺はシャルの方に顔を戻した。

 

「んで、シャル。つまりどういうことなんだ?」

 

「…………」

 

シャルはなぜかカタカタと震えていた。

 

「シャル?」

 

「つ、つまり。みんな瑛斗の代わりに副代表をやってあげたいんだよ。あ、あはは………」

 

「? そうなのか、みんな?」

 

聞くとみんなコクリと頷いた。

 

「では、副代表の決め方ですが、ここは手っ取り早くじゃんけんでいかがでしょう?」

 

セシリアが完全にこの場を仕切っている。

 

「そうだな。じゃんけん勝負ならば公平だろう」

 

箒も賛成意見を出した。他の女子たちも賛成のようだ。

 

「よし、ならば私に勝ったものがクラス副代表だ。やりたいものは立ち上がれ」

 

織斑先生が山田先生を下ろして教壇に立った。

 

「お、織斑先生がおやりになるのですか?」

 

「…不満か?」

 

ドスの利いた一言にセシリアは黙り込んだ。

 

「ふん…。桐野、お前も参加しろ」

 

「え、俺もですか?」

 

「それくらいしなければ面白くない。いいか、負けたものは座っていけ。言っておくがイカサマは無しだ」

 

みんなガタガタと席を立つ。仕方がないので俺も立ち上がる。

 

「じゃんけん!」

 

織斑先生が手を挙げた。

 

『ポン!』

 

織斑先生の手はグー。さて結果は。

 

「………くっ!」

 

箒、チョキ。

 

「………敵いませんわ…!」

 

セシリア、チョキ。

 

「………流石は教官…」

 

なんか参加してたラウラ、チョキ。

 

「あ、負けちゃった」

 

同じくなんか参加してたマドカ、チョキ。

 

「…千冬様には勝てないわよぉ………」

 

「じゃんけんもお強いのね……」

 

「なんて強敵なの……」

 

その他の女子のみんな、チョキ。

 

「……………」

 

俺、パー。

 

「では、負けたものは座れ」

 

『……………』

 

ガタガタと席に着く女子たち。一人立っている、俺。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

のほほんさんの『さん、はい』からの………

 

『えええええええええええええええええええ!!!???』

 

教室に響き渡る、『え』。

 

「それはこっちのセリフじゃあああああああああああああ!!!」

 

負けじと俺もシャウト。

 

「嘘だろ!? 一人勝ち!? こんだけの人数がいて、俺の一人勝ち!? 意味が分かんねえよ! あれかお前ら!? お前ら全員グルなのか!?」

 

「だ、だって~」

 

「千冬様には勝っちゃいけない気がして…」

 

「よくわからないけど、私の本能が『負けろ!』って叫んだような気がして」

 

「勝ったらとてもよからぬことが起きそうな気がして」

 

「ますます意味が分からねえよ!」

 

「では、副代表は引き続き桐野にやってもらう。HRは以上だ。授業の準備をしておくように」

 

俺のシャウトを涼しい顔で流して、織斑先生は山田先生を連れて教室から出て行った。

 

シン、と静まり返る教室。しかしみんなの視線は俺に集まっている。

 

「あ、その…えっと………」

 

俺は静かに教壇の前に立ち、そっと正座をした。そして手を床に着ける。

 

「なんか……すいませんでした」

 

進級早々、土下座をする俺なのだった。

チャッチャカチャー! チャラララー!

 

ベタなファンファーレからのタイトルコール。

 

一「インフィニット・ストラトス~Gsoul~ラジオ! 略して!」

 

一&瑛「「ラジオISG!」」

 

瑛「はい! 突然始まりましたラジオISG! このコーナーはいつも本編をご愛読していただいてる読者の皆様の質問やコメントに登場人物たちが応える、作者が『新しい学年になったし、こういうのもやってみたかったんだよね』という思いつきから始まったコーナーでございます! 第一回の進行は俺、桐野瑛斗と!」

 

一「織斑一夏がやります!」

 

一「というわけで瑛斗の綺麗な土下座から始まりました。二年生に入った第一話」

 

瑛「あの時はああするしかなかったんだ。なんだあの空気。罰ゲームか」

 

一「おっと、さっそく主人公がやさぐれてます。オープニングの元気はなんだったのか」

 

瑛「空元気だ」

 

一「仮にそうだったとしても言うんじゃない!」

 

瑛「ま、今日は第一回っつーことで読者のみんなからの質問やコメントはまだ来てないから、これくらいでいんじゃね?」

 

一「やる気なしか! ま、まあ、確かにまだ投書箱は空っぽだから、流石に一回目からはやれないよな」

 

瑛「てなわけで! 今日はここまで!」

 

流れ始める本家ISアニメのエンディング。

 

一「なぁ、これ誰が歌ってるんだ? 聞いたことない声だけど…」

 

瑛「ん? さっきそこで声かけた派手な服のあの人。歌詞カード見せたら、『いい曲じゃねえか』って」

 

一「え? そこでノリノリでギター弾いてる、丸眼鏡の男の人?」

 

瑛「うん。なんか歌手やってるみたいだぜ。ユニットの名前は確か…ファ、ファイヤー………」

 

一「瑛斗…それ以上はやめておけ」

 

瑛「? お、おお。どうした? 汗が尋常じゃないぞ?」

 

一「それでは!」

 

瑛「いきなり? み、みなさん!」

 

一&瑛「さようならー!」

 

???「俺の歌を聞けぇぇぇっ!!」

 

一「早く放送切って!」


 
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