No.487560

IS~音撃の織斑 四十二の巻:次の一手

i-pod男さん

さて、デュノア社を抹殺した一夏達は・・・?

2012-09-23 11:21:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4840   閲覧ユーザー数:4659

「う・・・・」

 

「もーー・・・・治したばっかりなのにまたあんな無茶して・・・」

 

「悪い・・・・ああ言う奴にはどうも我慢が効かなくてな。」

 

一夏は現在ホテルでぐったりしていた。2人部屋に簡易ベッドが運び込まれており、一夏はそれに寝そべっていた。シャルロットは念の為ラウラと隣の部屋にいた。シュヴァルツェア・ハーゼの皆は、今度ドイツに行くと言う約束を取り付けて別れを告げた。彼女達は一夏をお兄様と呼び始めた事にラウラはおかんむりだったが。

 

「けど、ああでもしなければ奴らはしつこく追って来る様な気がしてな。しかし、久々に大量の銃を使ったぜ。すっきりした。」

 

一夏は起き上がったが、再び頭を枕に押し付けられた。枕と言っても簪の膝枕なのだが。

 

「まだ、起きちゃ・・・・・駄目・・・・」

 

一夏は仕方なしに従い、楯無もまた一夏の腹や胸を枕にしながらゴロゴロしていた。

 

「ねえ、これからどうする?一夏の回復を待つのは別に良いけど、みだりに外に出てデュノア社のならず者に掴まったら元も子も無いんじゃない?観光もある程度済んだし・・・・」

 

「ああ。確かに今回の目的は休息を取る事だけど、まだ解明出来ていない事もある。あの織斑マドカと名乗る女の正体と、ファントム・タスクの今後の動き。今の所確認されているIS乗り三人の内一人は拘束、一人は死亡、残り一人は恐らく魔化魍に食われたか、上手く逃げ果せたか・・・・いずれにせよ行方不明扱いになっている。福音の防御は成功したが、まだ楽観視は出来ないな。」

 

すると、一夏の携帯が鳴る。

 

「はい。」

 

『私だ。』

 

声の主は千冬である。どこか重苦しい。

 

「・・・・箒とマドカはどうなった?」

 

『篠ノ之は自室謹慎中だ。あの織斑マドカと名乗っていた女の事に関しては、調べた所私とお前のDNAが完全に一致した。何者かが私かお前、ないし両方の細胞のサンプルを元に作り出したクローンだと言う事は最早明白だ。サイレント・ゼフィルスもイギリスに返還された。イギリスからお前に感謝状が贈られたらしいぞ。借りが一つで来たと。』

 

「そんな事はどうでも良い、彼女に何をした。」

 

一夏の苛立ちが伝わったのか、千冬も少々語気を荒らげる。

 

『奴はファントム・タスクのIS乗りだった女だ。少しでも多く情報を引き出す必要がある。これはIS委員会の命令でもある。』

 

「委員会の奴らなんて犬にでも食わせてやれ。日和見主義で拝金主義の男を偏見の色眼鏡で見る様なクズ共の言う事なんて聞く価値も無い。拷問しようなんて考えているなら、俺がお前を直々にぶっ飛ばしに行くぞ。彼女は今どこにいる?」

 

『・・・・教える訳にはいかない。』

 

僅かな沈黙の後にそう絞り出した。我慢の限界が近付いて来たのか、一夏は舌打ちをした。

 

「それで良く俺の姉が勤まるな。ご苦労様。お前が教えないなら、俺が探し出すまでだ。もし彼女に何かしたと言う事が分かれば・・・・俺は二度とお前を姉とは認めない。許さない。存在すら認識しない。一瞬でもお前の弟として戻ろうと思った俺が馬鹿だった。そんな事を考えていたと知っていたら・・・・・いや、言った所で無駄だな。じゃあな、偽善者。」

 

『ま、待ていち』

 

ブツッ

 

忌々し気に電話を切り、それを無造作にリュックの中に投げ捨てる。

 

「あのくそったれが・・・・・」

 

「織斑先生、なんて?」

 

「恐らくマドカを拷問にかけるつもりだ。テロリストだからと言う名目で既にA級戦犯以上の扱いを受けているんだ、何をされても文句は言えないと思っている。それは絶対に避けたい。あいつは、傷ついている。心身共に。だから、俺が守ってやりたい。元織斑として。織斑千冬と同じ顔だろうが、中身は違う。形はどうあれ、俺の家族だ。」

 

「じゃあ、織斑先生は違うの?」

 

簪の言葉に一夏は下唇を噛む。

 

「あいつを姉と思った事は無い。最初は師匠がいたお陰で信じても良いのかと思ったが・・・・今度ばかりは・・・・」

 

「そんなの駄目!」

 

簪が立ち上がる。その拍子に一夏の頭が膝からずり落ちたが、そんな事は気にも止めなかった。

 

「一夏は私とお姉ちゃんを仲直りさせてくれた。なのに自分のお姉ちゃんと仲直りしないなんておかしいよ!」

 

「でも簪ちゃん、今回はそんな生易しい問題じゃないのよ?今回は私達の時みたいには行かないわ。でも、確かにそうね。同じ兄弟持ちとしては、二人の関係を修復したい気持ちは変わらない。」

 

「楯無、お前まで・・・」

 

ドアベルが鳴って会話が中断された。ベルトの背中部分に銃をねじ込み、ドアを開けた。

 

「ラウラ、シャルロット・・・・・・・・聞いてたな、今の会話・・・・?まあ良い。入れ。今後の事についてもお前達と相談したい。」

 

二人は中に入ると、五人はベッドの上で胡座をかき、車座になった。

 

「さてと、現在問題は幾つかある。一、シャルロットの今後の働き口。代表候補生じゃなくなったからには何か考えておかなければならない。これに関してはデュノア社のやって来た事を叩き付ければどうにか片付く筈だ。二、マドカの救出。確かに彼女は言い逃れのしようの無い事をして来たが、ファントム・タスクに踊らされていたと言う可能性も捨て切れない。三、俺の休養。正直俺も体が段々とだるくなって来るのを感じて来ている。ゆっくりと観光でもしながら英気を養いたい。」

 

「四、織斑先生と兄様の中を改善する。」

 

「ラウラ・・・・・まあ、兎に角、この三つの中でどれを優先すべきかを考えているんだが・・・・俺が現在考えているのはまずシャルロットの再就職先を確保して、その脚で学園に帰還、それから休息を取ろうと思っている。ドイツへの観光については、今直ぐに行かなければならないと言う訳でもないから、少しの間延期にする。これが俺の案だ。どう思う?」

 

「妥当な計画です。」

 

「ありがとうね、一夏、僕の為にワザワザここまで・・・」

 

「私は別に構わない・・・・・」

 

「私も賛成したい所だけど・・・」

 

「「「「(教官)織斑先生との関係を直さなきゃ駄目(です)!」」」」

 

四人が同時に食って掛かる。

 

「そうじゃなきゃ賛成しないよ?」

 

「今回ばかりはシャルロットに賛成だ。教官の妹として迎えられたいです!私も協力します、兄様!だからお願いします!」

 

「私達を助けてくれた・・・だから、今回は私達が一夏と織斑先生を助ける番・・・」

 

「お前ら・・・・・ハア・・・・分かったよ。刃向かった所で黙殺されるのがオチだ。今日中にシャルロットを再就職させて、マドカを助けに行くぞ。」

 

「一夏・・・・」

 

「何故です兄様!?あいつは学園を、私達の仲間を傷つけた!」

 

「確かにな。だが、マドカは曲がりなりにも俺の妹だ。試験管で生まれようが、関係無い。俺は兄としての責任を果たす、それだけだ。来るか否かは勝手に決めろ。俺は一人でも行くからな。」


 
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