No.487447

IS~インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ― 五十四話

黒猫さん

ドンドンいきますね~

2012-09-23 00:38:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2098   閲覧ユーザー数:2020

ケーキを食べてもらった後、キッチンで七人分の皿を洗う俺

 

 

背後を一瞥すると、楯無さんが中心となってガールズトークに花を咲かせていた。本当にあの人は“人たらし”というか、人を丸め込むのが上手いというか……

 

 

その中にあの簪もいるところを見ると、本当に変わったんだなぁと思う。

 

初めて彼女と会った時は人を寄せ付けない雰囲気を醸し出し、孤立していた感じだったが、楯無さんと和解してからはかなり明るくなった

 

 

やっぱり兄弟や姉妹は仲が良いと他人ながら気持ちがいいな

 

 

「士くん?」

 

 

「うわっ……っと、楯無さん。何ですかいきなり」

 

 

「ふふ、ゴメンね。ちょっと君にお礼が言いたくて抜け出してきちゃった」

 

 

「お礼って……俺、何かしましたっけ?」

 

 

「してくれたじゃない。私と簪ちゃんの仲、元通りにね」

 

 

ああ、なるほど。けれど俺自身、大したことはしていないと思ってるんだよね

 

 

最後は結局、楯無さんが簪に言葉を掛けたからこそ、仲が戻ったんだから

 

 

「実を言えば、今日ここに来たのも、君にお礼を言うためだったりして♪」

 

 

「あっ、えっ……そうだったんですか? そんな、わざわざいいのに」

 

 

「生徒会長として、お礼くらいはちゃんとしないとね」

 

 

そう言うと、楯無さんの顔が俺の頬に近づいてきて――

 

 

 

 

 

…………えっ? 何か温かいものが触れたような……

 

 

「次に来る時は、ちゃんと事前に連絡を入れるわ。でも士くんの方から誘ってくれると、おねーさん嬉しいなぁ♪」

 

 

悪戯っぽい笑みを浮かべ、楯無さんはリビングへ戻っていき、再びガールズトークの輪の中に入った

 

 

「あ……」

 

今されたことをゆっくりと思い返す。自然と自分の顔が熱くなるのを俺は感じた

 

 

駄目だ。俺はこの人に一生勝てそうにない

 

 

ISでは勝ったけどな!

 

 

リビングにいる箒から呼ばれるまで、石のように固まったままだった

 

 

 

 

 

それからしばらくして……

 

 

「なんだ、やたら靴があると思えばお前らか……」

 

 

「あ、士くん!お、お邪魔しますぅ~~///」

 

 

千冬姉と……山田先生!?

 

 

「あれ?山田先生まで?」

 

 

「ああ……お前のケーキを一口食べたいと言い出してな……連れてきたのだが……まさか」

 

 

「すまん、食べちった。千冬姉の分しかないわ」

 

 

俺が片手で平謝りしていると

 

 

「いえ、いいんですよ。突然来てしまったので……」

 

 

「いや、すいません。あ、とりあえず座ってください。お茶入れますね」

 

 

無くなりかけてたお茶を沸かしながら、残していたケーキと……

 

 

「山田先生には何をだそうか……」

 

 

「来客用の羊羹が冷蔵庫にあったろう」

 

 

「羊羹?……あったあった!」

 

 

一番上の段に高そうな包みに入った羊羹らしき長方形を発見!

 

 

「山田先生はたくさん食べるからな……全部だしてやれ」

 

 

「そんなに食べませんよ~」

 

 

目をバッテンにして手をブンブン振る山田先生

 

 

可愛いな……

 

 

「はい。お待ちどうさま……千冬姉には紅茶とケーキ。山田先生にはお茶と羊羹っす」

 

 

「ああ、いただこう」

 

「いただきます」

 

 

ふぅ……これで一段落……

 

 

「ところで、何故こいつらがいる?」

 

 

ビクッ!!

 

 

全員の背中が震えた

 

 

楯無さんまで……

 

 

「いや、何か皆急に来ちゃってさ~」

 

 

「士!」

 

「まずいですわ」

 

「こ、殺される……」

 

 

箒とセシリア、鈴が呟く

 

 

「ほぉ……急に、なぁ」

 

 

千冬姉は笑顔だ………笑顔だ

 

 

「僕が士一番だったのに……」

 

「うう……いくら教官でも私の恋路は……いや、しかし……」

 

「すごい、殺気……」

 

 

シャルとラウラ、簪も何か怯えている様子

 

 

「織斑先生」

 

 

声を上げたのは……楯無さん?

 

 

「なんだ?更識姉」

 

 

「いえ、突然お邪魔してしまったことをお詫びしようかと」

 

 

「ほう、士の袖を掴みながらか……」

 

 

千冬姉に言われて気づいた

 

 

たしかに楯無さんは俺の袖を掴んでいる

 

 

「あ、あの……これは……」

 

 

「寒かったですか?まぁ、もう九月ですしね……」

 

 

俺が窓を少し閉めて振り返ると……

 

 

皆がすごい目で見ていた

 

 

「嘘だろう……」

 

「冗談にも程がありますわ」

 

「なんて言ったらいいのよ」

 

「つ、士……」

 

「さすが、嫁だな……」

 

「どん、かん……」

 

「ふん。こんなものだ」

 

「士くん、凄いですね~」

 

 

え?何?

 

どうしたの……

 

 

「ぶぅ~。士くんは~」

 

 

はは……楯無さん。可愛いですよ

 

 

 

 

 

 

「あ、皆は今日晩飯食ってくだろ?」

 

 

「いいのか?」

 

 

箒がおずおずと千冬姉の方を見ながら言う

 

 

「ああ、いいぜ。今日はバーベキューでもして盛り上がろうぜ!」

 

 

「バーベキュー。野うさぎでも捕まえるか?」

 

 

「そんなことしなくてもいいよ」

 

 

ラウラの頭を撫でながら答えた

 

 

「バーベキュー、楽しそうだね」

 

 

「そうですね~。バーベキューなんていつ振りでしょうか……」

 

 

シャルに山田先生が続いた

 

 

「折角だし、本音ちゃんと虚さんも呼びましょうよ……楯無さん」

 

 

「分かったわ」

 

 

「ダリルさんとフォルテさんは……」

 

 

「あの二人は母国で専用機の調整中だ……」

 

 

千冬姉が言う

 

 

「そうか、じゃあ二人が来たら役割分担だな」

 

 

それから数分後……

 

 

「呼んでくれてありがとー、つっち~」

 

 

「ありがとう、士君……お嬢様よろしいのですか?」

 

 

「ええ。呼んでくれって言ったのは士くんだしね」

 

 

本音ちゃんは俺に抱きつきながら感謝の意を

 

 

虚さんはお菓子を持ってきてくれた

 

 

感謝感謝

 

 

「さて、じゃあ準備しますか!役割分担だな……とりあえず買い物班と準備する班、あとはおかず作る班だな……さすがに肉と野菜焼くだけじゃな……」

 

 

「そうだな……」

 

 

千冬姉……アンタは料理できないんだから納得しなくてもいいんですよ

 

 

「さて、千冬姉と山田先生は省いて……俺は準備する係りかな」

 

 

「いや、お前は買い物に行って来い……この辺の地理にはお前の方が詳しいし、バーベキューの準備だろう?倉庫から運ばせるくらい私に任せておけ……」

 

 

「じゃあ、私はお料理の準備をお手伝いしますね~」

 

 

「ありがとうございます。じゃあ俺と買い物行くのは誰にする?一人でいいよ。てーあーげて」

 

 

ピシッ!!

 

 

って、全員かい!

 

 

本音ちゃん、そんなにシャキンってしたキャラじゃないだろう

 

 

「えーと……はは……じゃあ、じゃんけんで」

 

 

その後、なぜか軽傷者まで出たじゃんけん大会の末

 

 

買い物班 俺、虚さん

 

準備班 箒、セシリア、ラウラ、本音ちゃん

 

料理班 鈴、シャル、簪、楯無さん

 

 

となった


 
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