「────・・・つまり、その夢を見て記憶が戻り、俺が現れるのを待っていた・・・と」
「そういうことなのですよ~」
いつもの三人組の賊が逃げ出した後、一刀、星、風の三人は、
曹操たちに発見される前に場所を移動し、近くの街の飯店で食事をとりつつ、
一刀は、何故記憶が戻っているのか、稟はどこに行ったのか、その理由を聞いていた。
「俺のとっては都合が良いけど、一体どうなってるんだ・・・・」
風の話によると、
以前までは星、風、稟の三人で旅をしていたらしいが、
ある日、風は夢を見たらしい。
いままでならば『風が日輪を支える』といった内容だったが、
この外史の風が見たのは、『他の外史で、風と俺が一緒に過ごした思い出』だったそうだ。
そこで、星にその話をしたところ、突如、星にも記憶が戻ったということだ。
何故風や星に記憶が戻ったのか、それは『北郷一刀の起点』に近かったためだ。
全ての外史において、彼が外史に降り立ったとき、すなわち、『起点』に最も近い、
つまり、一刀が外史に降り立ったときに星、風と出会う回数が最も高い、ということである。
記憶が戻った二人は、稟にもこの話をしようかと思っていたが、
もし稟に記憶が戻れば、必ず稟に迷いが生じてしまう、という結論に至り、
最終的に、稟には話さないことにした。
その後、星と風は「路銀が尽きたから、近くの太守の客将になる」
と、稟に嘘をついて、天の御遣いの噂が出回り、白い流星が現れるまで、
二人で旅をすることにした。
ちなみに稟は通常よりも時期が早いが無事、曹操のもとに仕えることができたらしい。
「けど、いいのか?稟に嘘を吐いてまで俺のところに来るなんて・・・」
「風は夢のお告げに従っただけなのですよ」
「我が仕えるべき相手は、主のみですからな」
一刀は親友とも等しい人を置いてきて、後悔していないか心配だったが、
二人とも、言葉通り、後悔なんて感じられない、明るい表情だった。
「けど、賊に絡まれてる奴が俺だってよくわかったな?」
「お兄さんの服装はこの世界では目立ちすぎるのですよ」
「それに、見たことのない武器をお持ちでしたからな」
一刀の格好は、いつものフランチェスカの制服。この世界では
異様な服装である。
更に、この世界には存在しない、日本刀。
これを二つも提げて、目立たないほうがおかしい。
一刀の持つ日本刀、右側に提げているのが、銘を「空牙」。
左側が「蒼天」。
空牙は、彼が『外史の観測者』として歩き始めたとき、
貂蝉が彼の家から持ってきた北郷家の家宝で、
蒼天は、ある理由で貂蝉が一刀に作った、
特殊な性能を持つ刀である。
「しかし主よ。いつのまにそれほど強くなられたのですか?」
「風の知っているお兄さんは兵卒よりもすこし強いくらいなのですよ」
二人はずっと思っていた疑問を口にする。
二人は一刀がここまで強くなっていたことを知らなかったのだ。
「えっ?二人とも、記憶が戻ったんじゃないのか?」
一刀は少し驚いた。
一刀の武力はこの世界に来ていきなり身についたものじゃない。
他の外史の記憶があるなら、知っているはずなのに、
彼女たちは知らない。
「・・・・・・もしかして」
一刀はある可能性に気付いた。
「二人が知っている俺って、どんなのだった?」
「風の知っているお兄さんは、曹操様に仕えて、警備隊の隊長をしていたのですよ」
(!!・・・・やはり)
「星は?」
「私の知っている主は、桃香様・・・ではなく、劉備様とともに、我らを引っ張っておりました」
そう、彼女らが持っている記憶は、北郷一刀の始まりとなった
三つの外史のうち、星には蜀の時、風には魏の時の記憶しかなかったのだ。
つまり、彼女たちが知っているのは、『最初の北郷一刀』だけ、ということだ。
(はぁ・・・・・・こりゃ説明が面倒だな)
心のなかで嘆息しつつも、彼は今までのことを説明しだした。
余談だが、説明が終わり、二人が理解した頃には、すでに二刻が経過していた。
飯店を出た一刀たちは、まず始めに宿を探すことにした。
しかし、最近急増している賊たちのせいで、まともな宿は少なかった。
「そういえば、今っていつ頃なんだ?」
宿を探している最中、ふと二人に聞いてみた。
「今はちょうど黄巾党が増えていっているくらいですね~」
「主の言う黄巾の乱が始まる少し前くらいですな」
「あれ、久しぶりに黄巾の乱の前に来れたんだな」
様々な外史をわたってきた一刀にとって、黄巾の乱が始まる前に
ここに来れたのは久しぶりのことだった。
反董卓連合の直前に降りたこともあった。
赤壁の戦いの直前に降りた時にはどうしようかと思ったりしたことは良い思い出である。
と、そうこうしているうちに三人はまともそうな宿を見つけた。
「とりあえず見つけられましたね~」
「なんとかな。じゃあ、ここでいいか?」
「さすがに他の宿に泊まりたいとは思えませんな」
まともそうな宿を見つけて少しばかり安堵する三人。
しかしここで、一刀にあるひとつの疑問が。
「なぁ・・・・・俺、金とか持ってないんだが・・・」
ほぼ毎回ではあるが、外史に降り立った時の一刀は無一文である。
いつもなら昼間にそこらへんの飯店とかで金を稼ぐのだが、
風たちへの説明と宿探しで、時間がなかったのだ。
しかし・・・
「そんなこと、知っているのですよ。」
「大丈夫ですぞ主。ちゃんと主も泊まることができますぞ」
と言って、宿に入っていく二人。
「えっ?ちょっと待て!どういうことだ?」
と、言いつつ二人を追う一刀。
しかしこの時、一刀は気付けなかった。
ふたりが怪しげな微笑を浮かべていることに・・・・・・・
「何名でしょうか?」
一刀が宿に入ると、二人はすでに受付にいた。
「三人なのですよ」
宿で受付をしている二人。そこにはなぜか謎の『やる気』のようなものが発されていた。
そんな二人を見た一刀な悪寒のようなものを感じていた。
受付の人は、俺の姿を確認すると、
「では、二部屋でよろしいでしょうか?」
と、とびっきりの営業スマイルで二人に聞いた。
そして二人も、とてもにこやかな笑顔で、はい、と────────────────
「「いいえ」」
「・・・・・え?」
────────言ってほしかったなぁ・・・・
「「一部屋でお願いします」」
「わ・・・わかりました・・・」
ほら、宿の人あきらかにおびえてんじゃん。ここからでもすごくわかるもん、お前らの
「一部屋にしないと許さない」みたいなオーラ。
あぁ、もう店員さん涙目だよ。なんかマジすいません店員さん・・・
「では、行きましょうお兄さん(主)」
「・・・・・・・はい・・・」
こいつらのさっきのオーラてきなの、
あれ『やる気』じゃなくて『犯る気』の間違いだったわ・・・・・・
これから部屋で起こることを予測しつつ、一刀は力なく二人に半強制的に
連れ去られるのだった・・・・・・・・・・・・・
あとがき
どうも。暇神です。
「北郷一刀です・・・・・ってちょっと待て」
おや、どうしたんだね一刀君?
「こないだのあとがきであった予告と内容が違うんじゃないか?」
えっ?!・・・・・・い、いやぁ・・・その・・・
「・・・・・とりあえず、理由を聞こうか」
え、えと・・・
ほ、本当はこの話の後に賊の討伐を入れる予定で・・・
「あぁ・・・」
『ボリューム的に第二話で賊討伐までいけるんじゃねぇ?』
とか、調子に乗って・・・
「あぁ・・・」
『よーし!じゃあ早速書くぞぉー!』って
思ったとこまではいいんだが・・・・・
「ふむ・・・」
書いてる途中にめんどくさくなっちゃった!(ゝω・)テヘペロ♪
「うん・・・・・・・って、は?」
いやー、宿の所まで行くのに結構かかっちゃっt・・・・・・・・・
え?い、いや、一刀・・・さん?
そ、そんな怖い顔でにらんで・・・・ど、どうしたんですか?
え、いや、ちょ、まって、そんな、
ノ、ノォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!
一刀制裁中・・・・・・・
「・・・ふぅ、では、次回も・・・」
「お楽しみにー!」
お、おたの・・・・・しみ・・・にぃ・・・・・
ドサッ・・・・・・・・
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早速謝罪です。
投稿が遅れてしまいました。
しかも、予告とは変わってしまいました。
とりあえず、詳しくはあとがきにて・・・・・・
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