注意 本作の一刀君は能力が上方修正されています。
そういったチートが嫌い、そんなの一刀じゃないという方はご注意ください。
城を出て、しばらくの時が過ぎた。
俺は華琳の隣を並走し、その後ろからは多くの兵達が付いてきている。
俺は以前と同じく、一般兵の鎧を纏い、腰に愛刀を差している姿だ。
「ふふっ、一刀。なかなかその姿も、様になってきたじゃない。」
「そういってもらえるは嬉しいけど、この格好動きづらいんだよな。」
「あら、そうなの?」
俺は肩や肘の関節を動かしながら、渋い顔をする。
「ああ、忍者ってのは、素早さや身軽さが売りだからな。
それを、こう重い鎧でガチガチに固められちまうと、生かすこともできない。」
「その割には、随分と動けるようだけど。」
「まあ、それなりにはね。ただ、本来の実力は発揮できないよ。」
俺はおどけるように、華琳の質問に答える。
まあ身を守るって意味では、これくらい頑丈な方がいいのかもしれないけど。
この時代のものは、武器も防具も俺には重すぎる。
俺は駄目もとで、華琳に頼んでみることにした。
「だからさ、この装備と「駄目よ。」って、最後まで言わせてくれよ。」
「どうせ、とりたいとかそんなことでしょ。将でもない貴方が、皆と違う格好をしていたら、怪しまれてしまうでしょ。」
「いや、それはわかるんだけど。」
まあ、元々駄目もとで聞いたことだし、華琳の言ってることも正しいことなんだけどさ。
もうちょっと、優しく言ってくれても言い気がするんだよなー。
「わかってるなら、もういいわね。私の許可があるまでは、外しちゃ駄目よ。」
華琳はそう言うと、この話はお終いとばかりに先へと行ってしまう。
「ちょ、待てって。」
俺は慌ててその後を追いかけ、また並走する。
「あら、まだ何かあるの?」
「華琳を守るって、桂花と約束したんでね。」
「賊ごときに、私が遅れをとると思ってるのかしら?」
華琳は絶を取り出し、その刃を俺に向ける。
殺気はないから、からかってるだけなんだろうけど、あまり心臓に宜しくない。
はー、ペットは飼い主に似るって言うけど、春蘭や桂花は絶対華琳の受けてるよな。
「はーっくしょん!!」
「春蘭様、風邪ですか?」
「何を言ってる、私は生まれてこのかた、風邪なぞひいたことなどない!」
「そ、そうんなんですか?」
「うむ。これはきっと、華琳様が私のことを褒めて下さっているに違いない。
待ってて下さい華琳様、今すぐ戻ります!」
「ちょっ、春蘭様、待って下さいよー!」
「くしゅん!」
「荀彧様、お風邪ですか?」
「いえ、そんな感じはしないわ。
はっ!これはきっと華琳様が、私のことをお話して下さっているんだわ。
あ~、華琳様見ていてください。この桂花、必ずやこの任務をやり遂げてみせます♪」
「「「・・・はぁ~。」」」
(うん、なぜか二人の姿が浮かんできたけど、俺の想像だよな。 ・・・そう思っとこう。)
俺は頭に浮かんだイメージを一旦置いておき、華琳と話の続きをすることにした。
「そんなことはないと思うけど、戦場ってのは何が起こるかわからない。万が一ってこともあるだろ。」
そう言いながら、目の前に突きつけられている絶をどかす。
「その時は、私の天命もそこまでだったということね。」
華琳は絶をしまいながら、どこか達観した顔でそう答える。
「もしそんなことになったら、俺も皆の手で天命を終わらされちまうよ。」
「ふふっ、心中みたいね。」
「勘弁してくれ。」
「あら、一刀は私と一緒は嫌なのかしら?」
華琳は、少し不機嫌そうな顔で俺を睨む。
「勘違いしないでくれ。俺は一緒に死ぬより、好きな子とは一緒に生きて行きたい、少しでも一緒に歩んでいきたいって思ってるんだよ。」
「そ、そう。悪かったわね、変なことを聞いてしまって。」
そういうと華琳は、なぜかそそくさと顔を反らしてしまった。
(うーん、あまりにくさいセリフに、あきれちゃったかな。)
俺はそんなことを考えながら、どうしようかと空を見上げる。
するとその空に、数本の煙が昇っていくのがみえた。
俺はその視線をそのまま下におろし、目を凝らす。
そこには建物の大きな影と、それに群がる黄色い集団の姿が薄らとだが確認できた。
「華琳、見えた!あの町だ!」
「!どこなの、一刀?」
「ほら、あそこだ。」
俺の言葉に、華琳はすぐさまこちらに向き直り、俺の指さす方向へと目を向ける。
「確かに、そのようね。 聞け、我が勇敢なる兵達よ!相手は弱者から奪うことしかできぬ盗人ども!奴らに、我らを敵に回したことを後悔させるのだ!全軍、突撃!!」
「「「「「うおおおーーーーー!!!!!」」」」」
そのまま俺達は、兵全体に号令をかけ、町へと一直線に駆けて行った。
時は少し遡る。
【side 秋蘭】
私は今、黄巾党に襲われているという町にいる。
そんな私の格好と言えば、腕や足に血の滲んだ包帯を巻き、民家の壁を背にもたれかかる様に座り込んでいる状態だ。
この町を襲っていたという黄巾党はすぐに討伐できたが、問題はその後だ。
まさか我らの3倍近い数の黄巾党が、さらにやってくるとは。
この対応の良さからみても、やはり裏切り者が情報を流しているのは明白か。
忌々しいことだ。
なんとか籠城し、伝令も出すことができた。
距離から考えて、援軍は今日あたりにはつくはずだ。
それくらいならば、今の戦力でもなんとかもちこたえられるだろう。
「秋蘭様、怪我の方は。」
「流琉か、ああ、大丈夫だ。それよりすまないな、お前に負担をかけてしまって。」
そんなことを考えていると、流琉が心配そうに私の様子を窺う。
流琉は武人としては申し分ないが、将としてはまだまだ未熟。
そんな流琉にこんな状態をまかせていることに、私は少なからず心が痛んだ。
「そんな、気にしないでください。それに私の方は、凪さん達が手伝ってくれるんで、大丈夫です。」
「そうか。すまないな3人とも、助けに来たはずが、逆に助けられてしまうとは。」
私は、流琉の後ろにいた3人にお礼を言う。
「いえ、ここは私達の町なのですから、自分達が秋蘭様達に手を貸すのは当然です。」
「そうなのー。それに、秋蘭様達が来てくれなかったら、籠城さえできなかったのー。」
「せや、むしろうちらがお礼を言わなあかんくらいやしね。」
そう、流琉でもなんとか持ちこたえられているのには、彼女たち大梁義勇軍の協力が大きい。
数こそ少ないものの、それを率いていた彼女たち3人が、優秀な人材で助かった。
「それでは我々は、それぞれの持ち場へと戻ります。」
「じゃあ、私も」
「流琉は、もう少し秋蘭様の傍におってええよ。」
「で、でも」
「何かあったらすぐ呼びに来るから、それまでゆっくりしてていいのー。」
「それでは。」
そういって3人は、流琉を置いてそれぞれの持ち場へと戻っていった。
「あっ、行っちゃいました。」
「あまり休んでいないのだろ、流琉。3人が気を利かせてくれたのだろ。」
「そ、そんなことはありません。」
流琉はそう言っているが、慣れない指揮に精神的にまいってるのは確かだ。
だから私は、若干卑怯な手を使うことにした。
「そうか、流琉は私と一緒にいるのは嫌か。」
「えっ、そんなことは。」
「なら、少し話し相手になってくれないか?」
「うう、秋蘭様いじわるです。」
「ふふっ、褒め言葉と受け取っておこう。」
流琉は頬を膨らませて、可愛らしく怒っていた。
そのまま私が流琉と他愛無い話をしていると、
「た、大変なのー!!」
于禁こと沙和が、慌てながら駆けてきた。
「どうしたんですか?」
「西の方の防衛にあたってたんだけど、ずーっと向こうの方から、大きな砂煙とたくさんの行軍がみえたの。」
西、ということは陳留の方向。
「旗印は?」
「曹ってかいてあったの。味方の旗なのー。」
「華琳様が・・・。」
助けに来たのが華琳様とわかった私は、すぐさま流琉に指示を出す。
「流琉、残った兵を集めて、こちらも西側から出撃するんだ。
華琳様のことだ、こちらの意図を呼んですぐに対応して下さるだろう。」
「わかりました。」
流琉はそう答え、そのまま駆けだして行った。
「え、えっと。」
「沙和すまないが、お前たちは兵が出て行き手薄になった所の防衛にあたってくれ。
そんなに時間はかからんだろうから、なんとか持ちこたえれられるはずだ。」
「わ、わかったの。」
沙和は突然の出来事に驚きながらも、何とか状況を理解し、行動しにいった。
しかし、華琳様が救援にくるとは。
華琳様ご自身がお決めになったことだが、やはり心配だ。
このまま、何事もなければ良いのだが。
私は、動けぬ今の自分の状況を歯がゆく思うのだった。
【side 華琳】
結果から言えば、無事賊は追い払え、秋蘭達も救い出すことができた。
私達の接近に気付いた秋蘭の指示により、賊を内と外から挟撃できたのが大きかった。
おかげでこちらの部隊には、さほど大きな被害はなかった。
ただ一点、気になることがある。
賊達の撤退が早すぎたことだ。
初めに接敵した千人ほどは倒すことができたが、残り二千は私達が戦闘に入るや否や、救援にくるでも、そのまま町を攻め続けるでもなく、あっさりと退却していった。
伏兵なども考えしばらくは警戒していたが、そういった動きはまったく見られなかった。
気にはなるが、ここでこうしていても始まらない為、私達は町へと入ることにした。
「華琳様ー!!」
町に入ってすぐ、流琉が出迎えてくれた。
「御苦労だったわね、流琉。」
「いえ、そんな。 でも、秋蘭様が・・・」
私が褒めると流琉は嬉しそうな顔をしたが、それも一瞬であり、すぐさま沈痛な面持ちになってしまった。
「そうね。 秋蘭の所に案内してもらっていいかしら。」
「はい。」
「貴方達は、町の復旧作業と負傷者の救護にあたりなさい。それと、周囲への偵察も怠らない様になさい。」
「「「御意!」」」
私は秋蘭の所に向かう前に、近くにいた兵士に指示を出しておく。
そしてそれを聞いた兵士たちは勢いよく返事をし、駆けだして行った。
「ちょっと待ちなさい。」
「ぐえっ!」
私は、背を向けて駆けだそうとしていた一人の兵士の服を掴みひきとめる。
「げほっ、ごほっ、な、なにすんだよ華琳。」
一刀だ。
どうやら首がしまったらしく、涙目で咳き込んでいた。
「それはこちらの台詞よ、一刀。貴方は私の護衛なのでしょ。それが、どこに行こうとしてるの?」
「あー、そういえばそうだった。つい、いつもの雑用係の癖が。」
「まったく、そっちはいいから、貴方も行くわよ。」
「お、おう。」
私はそんな一刀に呆れつつ、流琉の案内で秋蘭の元へと向かうのだった。
町の中心に近づくにつれ、女・子供や老人などの姿を多くみかけるようになった。
どうやら中心部のあたりを、一時的な避難所にしたようだ。
そんなことを考えながら進んでいくと、民家の壁に寄りかかる様にして腰かける、秋蘭の姿を見つけた。
「!華琳様。」
向こうもこちらに気がついたようで、急いで姿勢を正そうとする。
「そのままで構わないわ、秋蘭。」
「は、はい。」
私はそれを手で制し、そのままの姿勢でいるようにいう。
秋蘭は気まずそうにしながらもそれを受け入れ、また同様の姿勢へと戻る。
「申し訳ありません。華琳様のお手を、煩わせるようなことになってしまい。」
「構わないわ、これは私が選んだことなのだからね。それよりも、よく持ちこたえてくれたわ。」
「流琉が、私の分まで頑張ってくれましたからね。」
「そう、よく頑張ったわね、流琉。」
「いえ、そんな。 秋蘭様の指示がなければ、とても私一人じゃ。それに、凪さん達も手伝ってくれましたし。」
「それは、誰なの?」
私の労いの言葉に流琉は謙遜の言葉で返すが、その中に聞きなれない名前があったため、それが誰なのかを尋ねる。
「あ、はい。義勇軍の方で「秋蘭様、流琉様。」あ、噂をすれば。」
その時、二人の真名を呼びながら近づく、3人の人物が現れた。
「負傷者の確認と搬送、終了しました。」
「うむ、御苦労。」
「ええと、ところでそちらにいるのは誰ですか?」
随分と変わったしゃべり方をする子が、私のことを指さしながら尋ねる。
その態度に、流琉は慌てた様子で説明し出す。
「ああ、こ、この方は、私達の主の曹孟徳様です。」
「えっ、孟徳様っちゅうことは・・・」
「陳留の太守の、あの曹操様なのー。」
「この、馬鹿!曹操様、申し訳ありません!知らなかったとはいえ、大変な無礼を働いてしまい。」
私の正体に気付いた三人の反応は様々だった。
初めに指を差していた子は顔を青ざめさせ、眼鏡をかけた子も驚いた顔で私を指さす。
報告をしていた真面目そうな子が、そんな二人の頭を掴み下げさせながら、謝罪の言葉を述べる。
「流琉、この三人が。」
「はい、私達を助けてくれた義勇軍の方々で、この三人はその代表者です。」
「そう。秋蘭や流琉が真名を許すほどの者なら、信用には値するわね。
三人とも、気にしていないから、顔をあげなさい。」
「「「ありがとうございます(なの)。」」」
私は、今だ頭を下げたままだった三人にその頭をあげるよう告げる。
「それで、義勇軍と聞いたけど。」
「はい、我々はこの町を拠点として大梁義勇軍を立ち上げ、賊に対抗していたのですが。」
「逆に、黄巾党どもに追い詰められ、救援を頼んだということね。」
「面目次第もないなのですが、その通りです。そして、そこを秋蘭様達に助けて頂いた次第です。」
「まあ、その我々も追い詰められ、お前達の手を借りたのだからな。あまり偉そうなことは言えんよ。」
「なるほど、そうゆうことだったのね。まさか助けに来たつもりが、助けられてしまうなんてね。
二人の主として、お礼を言わせてもらうわ。ありがとう。」
状況を理解した私は、改めて三人に向き直り、お礼の言葉を述べる。
「そ、そんな、もったいないお言葉です。」
「なんか、照れるわ―。」
「えっへん、なのー。」
そんな三人の反応は、また様々だった。
そこへ、流琉がおずおずと近づいてくる。
「あの、華琳様。凪さん達なんですが、私達の軍へと編入することはできませんか?」
「彼女たち義勇軍を?」
流琉の言葉に、私は三人の顔を見る。
「はい。我々は、この大陸の未来を憂い、少しでも何かできないかと義勇軍を立ち上げたました。
しかし今回のことで、我々だけでは限界があることを知りました。
そんな時、曹操様が大陸の平和を願っておられる人物と知り、そんなお方に我々の力を役立ててほしいと思った次第でして。」
話を聞き終え、三人の瞳を見る。
皆が澄んだ瞳をしており、今の話が嘘・偽りでないことを物語っていた。
「秋蘭、彼女たちの実力は?」
「はい、まだ未熟ですが、季衣や流琉と同様に、光るものをもっております。
鍛えれば、きっと皆よい将になれるかと。」
「そう、あなたがそこまで言うならばそうなのでしょう。
よろしい、貴方たち大梁義勇軍は、本日をもって我々の軍へと編入することにするわ。」
「あ、ありがとうございます!」
「よっしゃー。」
「やったのー♪」
私が部隊の編入を許可すると、三人はとても嬉しそうにはしゃいでいた。
「改めまして、私は姓は楽、名は進、字は文謙、真名は凪と申します。
お仕えする証として、どうか我が真名をお預かり下さい。」
「うちは、姓は李、名は典、字は曼成、そんで真名は真桜言います。今後ともお世話になります、大将。」
「沙和は、姓は于、名は禁、字は文則で、真名は沙和って言うのー。
凪ちゃん・真桜ちゃん共々、よろしくお願いしますなのー。」
三人がそれぞれ自己紹介をする。
しかし一点、どうしても気になることがある。
よくよく見てみると、皆、胸が大きいわね。
特に真桜、あれはなんなのかしら、麗羽ぐらいあるんじゃないかしら。
そんなことを考えていると、
「・・・・・」
「ふんっ!(ギュッ)」
「くぁswでfr!」
後にいた朴念仁から、何やら不愉快な気を感じたため、とりあえず足を踏んでやった。
それですっきりしたのか、私も改めて事項紹介をすることにした。
「知っていると思うけど、私は姓は曹、名は操、字は孟徳よ。
秋蘭達が真名を許しているのなら、私のことも真名の華琳と呼んでいいわ。
これからよろしく頼むわね、凪、真桜、沙和。」
「「「はい(なの)!」」」
一通り自己紹介が済んだ所で、私は秋蘭へと向き直す。
「さて、じゃあ秋蘭。あなたは他の負傷兵と共に、城へと戻ってもらうわ。」
「はい。 ・・・しかし、華琳様はいかがなさるのですか?」
「私?そうね、まだこの町でしなければならないことも多く残っているでしょうし、ある程度の目処がつくまではここに滞在して、指示をしていくつもりよ。」
「一緒に、お戻り下さいませんか。」
「秋蘭。」
「また、先ほどの賊が襲ってこないとも限りません。そんな危険に華琳様を晒すわけには・・・。」
秋蘭が必死な顔で懇願する。
私の身を案じてのことなのだろうが、今回はその願いを聞くわけにはいかない。
これは私が選んだ道、例え命を賭けてでも歩み続けると決めた。
「駄目よ。それにもしまた襲ってくるようならば、それこそ私がいた方が良いんじゃないかしら?」
「・・・そうですか。申し訳ありません、差し出がましい発言でした。」
「私のことを思ってのことなのでしょ、気にしていないわ。
心配しなくても、優秀な護衛も連れて来ているから、安心なさい。」
「この者が、ですか?」
私は自分の後ろにいた兵士を、一歩前に出させる。
目深に兜をかぶっているため、秋蘭からは顔がよく判別できないのだろう。
その兵士をいぶかしんでいた。
「まかせとけって、秋蘭。華琳は、絶対守って見せるからさ。」
「一刀、なのか?」
「ああ。」
一刀が兜を少し押し上げ、目元を露わにする。
そして一刀を確認した秋蘭は、先ほどまでの不安そうな表情をやめ、安堵した表情となる。
「そうか、ならば安心だな。但し、華琳様にもしものことがあった時は・・・」
「肝に銘じます。桂花にも、同じこと言われたからね。」
「ふふっ、冗談だ。華琳様のこと、頼んだぞ北郷。」
「ああ、秋蘭も頑張ってな。」
そんな約束を北郷と交わした秋蘭は、他の負傷兵とともに城へと戻って行った。
その後は、秋蘭に言った通り町の復旧作業や炊き出しなどの指示を行い、慌ただしく時間が過ぎて行った。
その間も、逃げた賊達への警戒は行っていたが、今の所そんな気配は見られなかった。
作業を続けていく内に日も暮れて来て、あたりが茜色に染まってきた。
そんな私の近くに、流琉が近づいてきた。
「華琳様、お疲れさまです。」
「ええ、流琉もね。進行状況は、どうなっているのかし?」
「はい、今の所、問題ありません。賊の方も追い払えたみたいですし、順調ですね。」
私の質問に、流琉は笑顔で答えた。
しかしそんな流琉とは裏腹に、私の表情は優れなかった。
「順調、ね。」
「華琳様?」
「なんでもないわ。流琉、あと二刻(30分)程したら、今日の作業は終わりにすると、伝えてきてくれないかしら。」
「は、はい。」
そんな私の様子に気付いたのか、流琉が不安そうな顔をする。
私は無理矢理笑顔をつくり、流琉に作業の終了予定を指示する。
流琉はいぶかしみながらも、その指示を伝えにいった。
そんな私に、後ろから声をかける人物が。
「流琉には、話さないのか?」
一刀だ。
「ええ。あの子は、春蘭達ほどじゃないにしろ、こういった隠し事には向かないわ。」
「まあ、そうだな。」
「一刀、奴等の動き、あなたはどう考えているのかしら?」
「早すぎる撤退に、今のこの状況、十中八九、襲ってくるだろうな。」
私の問いに、一刀はほぼ同じ考えを答える。
「それにしては、随分と遅いんじゃないかしら?」
「それは、俺もそう思うけど。何かを待ってんのか?」
「待つ?何を?この周辺は探らせたけど、こちらを窺ってる者や潜んでいる部隊はいなかったわよ。」
「いや、それは俺もわかんないけど。」
そう、伏兵なども考え、この周辺は徹底的に探らせたが、それらしい姿は一切なかった。
それどころか、かなり遠くまで逃げてしまったようだ。
本当に、追い払うことができてしまったのか?
ただ、全員が西の方角に逃げたことがどうも引っかかる。
一刀の言うとおり、待っているとしたら一体何を?
「た、大変で御座います!!」
私が答えの出ないそんな疑問に頭を悩ませていると、一人の兵士が慌てて駆け寄ってきた。
「何事だ!」
「は、はい。逃げた賊達を追っていた、細作の者からの報告なのですが。」
そういえば、どうしても奴等の足取りが気になり、何人か細作を放っていたのだった。
そしてその細作からの報告により、私が悩んでいた疑問は解決できたのだった。
「ここから西四十里(約20km)の所に、黄巾党の大部隊がおり、逃げた賊どもはその部隊と合流したと。」
「なんですって!」
「し、しかも、合流した部隊のその数、お、およそ三万だと。」
「なっ!?」
予想を超える、最悪な形として。
あとがき
sei 「またえらく中途半端な形ですが、第12話はここまでとなります。
今回もあまり動きがなく、最後にちょっとだけ動かしたって感じですね。
凪、真桜、沙和の三羽烏を仲間にするってのが主だった気がしますね。
更新のペースも遅いのに、本編進めないって何やってんだか・・・
まあ、過ぎたことは置いといて、ゲストを紹介しましょう。
魏ってか、北郷の忠犬、凪ちゃんでーす。」
凪「だ、だれが忠犬だ!!」
sei 「あれ?一刀のこと嫌いですか?」
凪「え、いや、違うと言ったのは忠犬という所であり、隊長のことが嫌いとかそういうことではなく、むしろ尊敬しているというか、好きというか・・・」
sei (ニヤニヤ)
凪「はっ! な、何を言わせるんですか、話を進めましょう!」
凪「前回、あとがきの最後に春蘭様の出番はないと書いていたのに、出番がありましたね。」
sei 「そうですね。」
凪「一体、どういう心境の変化ですか?」
sei 「別に、ただ無性に春蘭を出したくなっただけですよ。」
凪「じゃあ、なんでそんなにボロボロなんですか?」
sei 「別に、誰かの密告により、修羅にぼっこぼこにされたかたとかじゃありませんから。」
凪「それって・・・」
sei 「別に、三枚おろしになる一歩手前で、なんとかねじ込むから勘弁して下さいとか、土下座してませんから!!」
凪「自業自得ですね。」
sei 「・・・ひどい。」
凪「次は、コメントについてですね。
私も気になっていたのですが、隊長は桂花様に何をお渡しになったんですか?」
sei 「そうですね、ヒントとしては一刀の私物です。」
凪「隊長の、私物? 隊長が渡したのですから、それは当たり前なのでは?」
sei 「ですよねー。まあ、あまり言っても何なので、今回はこれくらいで勘弁して下さい。」
凪「随分と中途半端なヒントですね。」
sei 「まあまあ。ちなみに、答えがわかってもはっきり書かないでくださいね。ぼやかす分には問題なしです。」
凪「次のコメントは、ああ、秋蘭様と春蘭様の所の書き間違えですね。」
sei 「ちょー、せっかく黙ってたのに、ばれ(ザスッ)ぎゃーーーー!!」
凪「これも、自業自得ですね。」
凪「さて、今回のあとがきもこれくらいで終わりにしたいと思います。」
sei (ピクピク、ピクピク)
凪「次回予告をしたいのですが、作者のsei さんが突然倒れて動かなくなってしまいました。どうすれば・・・」
sei (ピクピク、ピク・・・)
凪「ん?こんな所に紙が。 どうやら、次回予告のカンペみたいですね。
何々、『圧倒的な数の黄巾党を前に、華琳はある決断をすることに。一刀はその決断を聞いて、どう動くのか。』という話みたいですね。」
sei (・・・ピク、・・・)
凪「ふぅ、一時はどうなるかと思いましたが無事に次回予告も済んで良かったです。
それでは、次回も隊長や華琳様のご活躍をお楽しみください。」
sei (・・・・・・)
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天和達を助ける決意を固める一刀。
しかしそんな時、秋蘭・流琉が黄巾党により窮地に陥っていると知らせが届く。
一刀と華琳は、そんな二人を救うべくその場所へと向かうのだった。