No.486861

ぬこの魔法生活 第36話

pluetさん

A's編

2012-09-21 19:54:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4200   閲覧ユーザー数:3838

 ◆ 第36話 ぬこと幼女の逃走劇 ◆

 

 

「えぐっ、おねぇーちゃ~ん! おかーさ~ん! どこぉ~」

(スバル嬢のお姉さん! お母さんっ!! 何処にいらっしゃいますかぁ~!!)

「くっ、待たないかッ!!」

 

 どうもこんにちは。

 突然ですが、助けてください。

 現在幼女……もといスバル嬢をロリコン(仮)の魔の手から逃がすために逃走中なのです!

 次元を超えるとロリコン(仮)の質も変わるものなのですね! 超アグレッシブだし、ムキムキなのですが!!

 怖い、さすが変態紳士超怖いッ!!

 

(CQ、CQ、こちらぬこ! SOS、SOSです!!

強面(こわもて)の炉の字に追われてるんです! 誰か助けてくださいっ!!)

「誰が炉の字かッ!! 人聞きの悪い事をそこら中に念話で言いふらすんじゃないッ!!」

(YesロリータNoタッチ! 紳士ならそれを遵守したらどうなのです!!)

「うわぁーーんっ!! おねーちゃ~ん! おかーさ~んっ!!」

 

 うむ、グッドカオス。

 いったい、どうしてこうなった……。

 

 事の始まりは、そう、一通のメールからでした。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 先日、ご主人の携帯にアースラから一通のメールが届いた。

 まぁ、正確にはご主人当てではなく、ユーノとぬこにだった訳ですが。

 

 んで、その内容なんですが、ユーノはフェイト嬢の事件(暫定でPT事件って言う事になったらしい)に関して資料作るから顔を貨せ(意訳)との事。

 主にジュエルシード関連のことはクロノ達だけじゃ報告をあげるのも大変らしい。

 そして、ぬこはと言うと管理局本局で精密な検査を受けた方がいい、というかさせろ。

 とセラスさんが怪しげな色味の注射器をチラつかせて脅し……交渉してきたらしいので、ユーノと一緒に行く事になったのである。

 気分はドナドナである。子牛じゃないけども。

 

 んで、本日はその出発日なのである。

 

「それじゃあ、なのは行ってくるね」

「うん、またこっちに帰ってくるんだよね?」

「そうだね。長くて三日ぐらいじゃないかな」

「そっか。ちょっと寂しいかな」

 

 ……そろそろユーノを殺っちゃっても構わんのだろう? 

 なんだこの出張前の新婚夫婦の会話みたいなのはッ!!

 うぎぎ、ぬこの目が黒いうちはそういうことは ゆ゛る゛さ゛ん゛!!

 

(うおっ、盛大に口が滑った!!)

「えっ、うわぁあぁぁぁぁ!!?」

「え、ゆ、ユーノ君ッ!?」

 

 つい、ぬこビームを浴びせちゃったんだ★

 ぬこの怒りが有頂天になった。この怒りは留まるところを知らない。

 

 しかし、倍以上の威力でぬこまでもが吹っ飛ばされることになった。

 ハハハ、こうなる事は予測できていましたよ。

 だがッ! ぬこには、雄にはッ! 例え自分の身を犠牲にしようとも、やらねばならんときがあるのだ!!

 だから、ぬこは決して謝らないッ!!

 意地があるだろっ! 男の子にはッ!!

 

「反省しなさい」 ゴゴゴゴ……―――!!

(ゴメンナサイ……)

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

(と言う事があったんだ)

「ふむ、まぁ君がボロボロな理由は分かったが、さっさと行ったらどうだ?」

 

 あの後、ご主人にいつものようにOHANASHIされ、ボロボロになってからアースラへと転送されたぬことユーノだったが、息をつく間もなくユーノは局員にドナドナされて行った。

 

 そしてぬこは悪あがき中。

 いや、だってただでさえ検査に行くというのにボロボロの状態とか……ご褒美だろ。

 セラスさんの。

 

(はぁ、それが自分の身が危なくなりそうだからって、ぬこを生贄にした奴が言うセリフですか?)

「あはは、クロノ君ったら昔っからセラスさんには頭が上がらないからねー」

(そうなんですか?)

「エイミィッ! 余計な事を言うんじゃ―――ほわぁっ!?」

「これでよし。でね? 何でクロノ君がセラスさんに頭が上がんないかって言うと……」

 

 ふむ、要約すると、小さいころに魔法を習ってた人達にぬっこぬこ……失礼。

 ボッコボコにされていたクロノは近所に住んでいたセラスさんによく治療してもらってたってことですか。

 

(つまり、近所のお姉さんが気になる思春期の少年を気取っているわけ……と)

「まぁ、セラスさんにはそんな気はないから安心なんだけどねー」

(へぇ、そうなんですかぁー)

 

 激しくどうでもいい。

 なんかぶっちゃけられた気もするけど、どうでもいいです。

 床に転がってる黒いのの安否ぐらいどうでもいいです。

 

「ふむ、話は終わったかなリミエッタ君」

「はい、どうぞ連れてってください。あ、床に転がってるのは私がやりますんでお気遣いなく~」

「む、そうか……。実に残念だ。ほら、行くよ猫くん。あまりに遅いから私から出向いてきてしまったではないか」

(ぬおっ!? 謀ったな!エイミィさんッ!!)

「それじゃ、ごゆっくり~」

「うむ、君の健闘を祈ってるよ」

 

 いつの間にかぬこの後ろに来ていたセラスさんに抱かれて連行される。

 

(あ、あのっ、セラスさん、久しぶりです! 久しぶりに会ったんだからどこかでお茶でもしませんかっ)

「フ、それはそれで魅力的なお誘いではあるが、そんなものは検査の後でいくらでもできるさ。

それに、そんなにボロボロなんだ、治療もしなくてはいけないだろう?」

(待って、まだ心の準備が……)

「大丈夫だ。怖くない、すぐに良くなるよ」

 

 何が良くなるんでしょうか、今日って検査ですよね。

 その胸ポケットにある極彩色な試験管とは無関係ですよね?

 

「対薬試験、そういうものもあるのさ」

 

 その検査ってぬこの身体がメインじゃなくて、薬がメインじゃないですか、やだー。

 抗議をしてみるも、笑って誤魔化される。クソ、なんて世の中だ。

 投薬試験は本人の同意を得ましょう、ぬことの約束ですよ。

 

 

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

 む……? ここは……あぁ、セラスさんに検査してもらったんだっけか。

 とりあえず起き上がり、身体を伸ばす。

 

(ん~~っ)

「ん? 起きたのかい?」

(えぇ、例によっていつの間にか始まって、終わってるっていう奇妙な感覚ですが)

「ふふっ、まぁいいじゃないか。結果はしばらく待ってくれるかな?

なにせ機器が多いからね、時間もそれ相応に掛かるというものなのだよ」

(そうですか。それじゃあセラスさんもしばらくここに缶詰って訳ですか?)

「まぁ、一応 君の事は機密となってるんでね。見られたら困る結果が出るかもしれないから、一応ね」

(……迷惑を掛けます)

「気にする事はないよ。これも私の仕事だからね」

 

 そう言ってぬこにウィンクをするセラスさん。

 ホントにマッドな部分を除けば完璧と言ってもいい人だな。

 そのマッドな部分が良い所を完全に打ち消してる気がしなくもないけど。

 

(それじゃお茶はしばらくお預けですか)

「そうなるね。あぁ、暇なら私は気にせずブラブラしててもらっても構わないよ。

もし、面倒な事になりそうだったら私の名前を出してくれれば、すぐに収まると思うよ」

(……なぜその場が収まるかは訊かないほうがいいんでしょうねぇ)

「む、心外だな。私はただ怪我をしていた実験だ……もとい木偶(でく)……ゲフン

患者を治療してあげていただけだと言うのに」

 

 ぬこよく五体満足だったな!

 木偶って、ア○バ様ですか? 似非北斗○拳ですか?

 トキを呼んでください。

 

 ……まぁ、とりあえずお言葉に甘えて散歩に行かせてもらおう。

 

(それじゃ、お言葉に甘えて散歩に行ってきますね)

「あぁ、2、3時間ほど経ったらまた帰って来てくれ。その頃には結果が出揃っているはずだからね」

(了解しましたー)

 

 それじゃ、適当にぶらつきますかね。

 知らないところをぶらつく、これぞ散歩の醍醐味。

 みぃさんぽ なのである。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 迷った……orz

 

 大体広すぎるんだよッ!

 それだけ人がいるってことなんだろうけどさっ!

 もうちょっと訪問者に気を使った造りにしてよねッ!!

 

 ……うん、八当たりかっこ悪いよね。

 はい、ぬこが方向音痴なだけです。

 

 方向音痴なぬこって……。

 人に道を訊こうにもこんなときに限って人がいないとか、いじめですか?

 

「うわぁ~~んっ!! おか~さ~ん、どこ~~?」

 

 とりあえず人を探そうと当て所も無くトコトコ歩いていると、どこかから女の子の泣き声が聞こえてきた。

 なんかシンパシーを感じる……って、そんなこと考えてる場合ではないな。

 困ってる女の子を放って置けるぬこではないのですよっ!

 

 ということで、声のする方へ近寄ってみる事に。

 

「うぅ……っ、ぐすっ」

(どうして泣いてるんですか?)

「ふぇ……? だ、だれ?」

 

 そこにいたのは青い髪の女の子。

 だいぶ泣いていたのか、目元が赤くなっていますね。

 

「だ、だれもいないの……?」

(ここにいますよー)

「え? ねこさんがはなしてるの?」

(そーなのですよー。ぬこはみぃって言います)

「みぃ?」

(そ。みぃなのです。お嬢さんのお名前は?)

「……す、スバル」

(そっか、スバル嬢……いいお名前ですな)

「えっと、ありがとぅ……」

(いえいえ、どういたしまして。それで、スバル嬢は何で泣いてたんですか?)

「あ……」

 

 うおっ、やばっ、折角泣き止んだのにまた涙目になっちゃったよ!?

 

「お、おかーさんたちとね、は、はぐれちゃって、ひっく……っ、うぅ…」

(あーあー、泣いちゃだめですよっ。だ、大丈夫ですッ! ぬこも一緒に探しますから、ね?

だから、もうちょっと泣くの我慢しましょう?そしたらきっとお母さん達もスバル嬢のこと

『えらかったね、頑張ったね』って褒めてくれますよ!)

「ほ、ほんとに?」

(勿論ですとも。だから、我慢できますよね?)

「う、うん…ぐすっ……がんばる……っ」

(よしっ、それじゃ一緒に探して見ますか!)

「……うんっ」

 

 

 

 【システムウィンドウ】

 スバル嬢が仲間に加わった!

 

 

 べ、別にぬこが心細かったわけじゃないんだからねっ!!

 などと、誰にするでもなく心の裡で言い訳をして、スバル嬢のお母さんを探し始める。

 

 ただ探すって言うのも退屈ですし、スバル嬢の気を紛らわすのも兼ねてちょっと雑談。

 

「それでね、きょうはね、おかーさんとおねーちゃんとごはんたべにいくんだ!」

(仲がいいんですねー。スバル嬢は何を食べるんですか?)

「えと、おむらいすでしょ、かれーらいすと…みーとすぱげってぃー、はんばーぐでしょ、らーめんにぃ……あっ、あとおこさまらんち!」

(……果たして一回の食事の量なのだろうか…?)

「……? どうかしたの、ねこさん」

(はっ!? いやいやなんでもないですよ)

 

 ……まぁ、間違えて好きな食べ物を言っただけかもしれないしね、深く考えない事にしよう。

 

 それにしても一向に人に会わないし、道も分からない。

 普通案内板ぐらいあるだろ。なんて一見さんに優しくない施設でしょうか。

 不親切にも程がありますよ。

 

「はぁ、ごはんのおはなししてたら、おなかすいてきちゃった……」

(もう少しの辛抱ですよ。スバル嬢のお母さん達もきっと探して「む、こんな所にいたのか」……お?)

 

 突然声をかけられたぬことスバル嬢。

 その声がした方を向いてみると……

 

「まったく、探したぞ……」

 

 そこにはムチムチ(筋肉的な意味で)なおっさんがががが!

 

「ひぅっ……」

(スバル嬢!? ハッ まさかスバル嬢を誘拐する気かッ!?)

「な、何を言っている!?」

 

 怯えるスバル嬢の前に立って庇うぬこ。

 くっ、こんな公共の施設内で堂々と誘拐を企てるとは……許せんッ!

 しかし、明らかにぬこより強いですよ、この人……ならばっ!

 天さん、技を借ります!

 

(スバル嬢、目を瞑って!!)

「ふぇ?」

(秘儀 太陽拳!!)

 

 通路全体に光が満ちる。

 

「うおっ!?」

 

 よしっ、この隙に……!

 

(スバル嬢! 逃げますよ!!)

「え、う、うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~回想終了~

 

 

 

 んで、今に至ると……

 というか、回想長すぎだな。反省。

 

 まぁ、そんな訳でいまだ追われている所です。

 狭い通路を活かして、ぬこバリアで塞いだら簡単に逃げられるかなーとか甘っちょろいこと考えてたんですが、

 ご主人の全力全壊のSLBを3秒ほど防げる積層型(ちなみに9枚程展開しておいた)で配置したのに槍型のデバイスで紙の様に貫かれました……。

 ありえねー

 

「くそっ、いい加減に止まらないかッ!」

(ご免被ります!)

「はぁ、はぁ……ねこ、さん、わたしつかれちゃったよぉ……」

(むむむ、ピンチですね……!)

 

 ぬこの前を走るスバル嬢の疲労の色が強い。

 ご主人より小さいのによくここまで逃げられたと逆に褒めるべきなんだけど。

 かといって、ここで捕まるわけにもいかない。

 

 ……致し方なし。

 

(スバル嬢! ここはぬこに任せて先に行ってください!)

「え、でも、ねこさんが……!」

(はい、ぬこだけじゃ抑えられそうもないんで誰か呼んできてください)

「で、でもぉ……!」

(さ、早く。大丈夫です、スバル嬢ならできますよ。ぬこの自慢のお友達なんですから)

「 ! うんっ、すぐにもどってくるからねっ!!」

 

 そう言って走って行くスバル嬢を見送る。

 ふぅ、後の問題は――

 

「ようやく観念したか……」

(何を言ってるんですか? ぬこのターンはまだ終了してないぜ!)

「何……?」

(スバル嬢が保護されるまでここで足止めさせていただきます)

「いや、だからな、俺はあの娘の……」

(問答無用なのです!)

「むっ!」

 

 ぬこだってやればできる所を見せてやんよ!

 伊達や酔狂で、いつもご主人に吹き飛ばされてるわけじゃないんです!

 

 ぬこビームで牽制しつつ、いつぞやの似非ドリル型バリアで攻撃する。

 

「ふんっ、こんなものでどうにかなるほど俺の槍は甘くはないぞ!」

(うおっ! ぬこのぷりてーなおひげがッ!?)

 

 あっけなくバリアが塵となった。

 それと同時に、はらりと落ちる一本のおひげ。自慢のひげが……。

 

 ぐぬぬ! やっぱこのままじゃ防げないのかっ

 

(ならば、ご主人の砲撃を防ぐために寝る間を惜しんでだらだら作ったこれならどうですか!)

「そこは寝る間を惜しまずしっかり作れっ!」

 

 律儀に突っ込みながら、おっさんが振り下ろしてくる槍をバリアで防ぐ!

 ガガッ!! と、鈍い音を立て槍は停止した。

 

「なっ!?」

(ふふん!さっきまでのぬこバリアとは一味も二味も違うのですよ!)

「ふっ、そのようだな……認識を改めよう」

  

 ぬこが繰り出した新バリアは平面ではなく立体。

 ご主人の極太ビームにいつも紙のごとく貫かれる積層型をさらに改良し、3次元的な厚みを帯びたバリアを作ってみたよっ!!

 これは実際に流したぬこの血と涙の結晶なのだ!

 

 ふむ、意外にいけますね、これならご主人のも防げるかも。

 

 なんてことを考えつつもおっさんから繰り出される攻撃を防ぐ防ぐ防ぐ防ぐ防ぐッ……!

 回避回避回避回避回避ィィィッ!!

 ……これ絶対人間だったら防げない。ぬこの動体視力がなかったら2撃目でお陀仏だったな、うん。

 

 でも、実際問題防ぐだけで手一杯です。

 それにそもそも攻撃手段がないしな!

 そしてぬこのなけなしの魔力が底を尽きそうなんだが、どうしたらいいんだろうか。

 

「ククク、ここまで防がれたのは久しぶりだな」

(そりゃどうも。それに免じて、そろそろ諦めて引いてくれたら嬉しいなーなんて……)

「どうやら、俺も全力で行く必要があるようだな」

(え、なにそれ怖いです)

 

 まだ全力じゃないとか、おま、汚いだろ!

 ぬこはここまでなのか!?

 

「往くぞっ、フルドラ「そおぉぉぉぉいぃぃぃッ!!」ガハァッ!?」

 

 ズザザザァァァッと凄まじい勢いで吹っ飛んでいくおっさん。

 え?なに!?なにが起こったの!?

 

 突然現れた薄紫色のポニーのお姉さんにぬこが戸惑っていると、お姉さんが話しかけてきた。

 

「あなたがスバルの言ってたネコさんね? もう大丈夫よ、後は私に任せなさい」

(あ、あなたは……?)

「この管理局で犯罪を起こすなんて……しかも私の娘を誘拐? フフフ、命が要らないようね……!」

(ひぃっ)

 

 ご主人並みのプレッシャー!

 話からするとスバル嬢のお母様みたいですね。

 母は強し。名言ですね。

 名前も知らないおっさんに若干の同情を覚える。

 南無~

 

 

「さて、覚悟はいいかしら……って、あれ? 隊長……?」

「ぐっ、いきなり拳を叩きこむとはいい度胸だなナカジマ」

「あ、あはは~(ちょっ、何で隊長が!?)」

「ふ、始末書と反省文は何枚がいい? 安心しろ、たっぷりと書かせてやる」

(……えと、お知り合いだったりします?)

「あぁ、そいつは俺の部下だ。お前が連れていた娘の母親でもあるな。

俺はその娘をコイツに言われて探していたんだがな」

 

 

 全部勘違いだったってこと、ですか?

 ………あれ? この騒動ってもしかしてぬこのせいだったりする?

 

 

 

 ◆

 

 

 

 膝を折り

 両手は前でそろえ

 頭は床にこすり付けて

 

 平身低頭ォォォォォォォォ!!

 

(本当に申し訳ありませんでしたぁッ!!)

「ネコなのに土下座なんて器用なことするわねー」

「ナカジマ、貴様反省してるのか?」

「スイマセン……」

 

 えー、なんというかぬこが先走った結果こんな事になってしまって真に申し訳ないと思っています。

 現在、スバル嬢のお母さん達に連れられて食堂で事情説明を受けてるところです。ぬこは全力でDOGEZA中。

 やらかした……ぬこはとんでもないことをやらかしちゃったよ!

 ご主人にこの事を知られたらぬこの身がががが!!

 

 惨めにもぶるぶると震え上がってるぬこを心配して、スバル嬢がなでてくれています。

 

「だいじょーぶ?」

「もうっ、スバル! 元はと言えばあなたがゼストさんにビックリするからこんな事になったんでしょ!」

「だって、だってぇ、おねえちゃんだってきゅうに、でてきたらびっくりするでしょ!」

「うっ……」

 

 まぁ、あの顔じゃねぇ……。

 

「フン、気にする事はない。こんな扱いは慣れている。あぁ、慣れているとも……」

(かなり煤けてますけど、大丈夫ですか?)

「あぁ、問題ない。っと、一応自己紹介をしておこう。

ゼスト・グランガイツだ。ここの首都防衛隊に所属している」

(ご丁寧にどうも。ぬこは高町みぃと言います。見ての通りぬこです。ここへは……検査? に来ている、はず)

「? ずいぶんと曖昧なのね。まぁいいわ、次は私ね。私はクイント・ナカジマ、この娘達の母親よ。

それと、さっきのことは気にしなくてもいいわよ? 私が隊長のことちゃんと確認せずにぶん殴っちゃったのが悪いんだから」

「それはその通りなんだが、やはり反省が足りないようだな……ふむ、反省文の量を増やすか」

「ちょっと、隊長! 横暴ですよ!?」

 

 ぬこへのフォローはありがたいんですけど、自爆覚悟でやってくれなくてもいいんですが。

 

「えと、ギンガ・ナカジマです。あの、スバルの面倒見てくれてありがとうございます。

わ、私がちゃんとスバルのこと見てなかったから、ごめんなさい……」

(謝ることなんて何にもないですよ。こうやってギンガ嬢やスバル嬢たちと知り合えたんですしね。むしろ感謝してるぐらいなんですよ、ぬこは。こうやってご飯ももらえてることだし……)

「………」

「ほら、ギンガもそんな顔してたらみぃくんだって困っちゃうでしょ?」

(そうそう、おにゃのこは笑ってなきゃダメですよー)

「……うんっ」

 

 なにやらぬこに迷惑を掛けたと思って罪悪感を感じてるみたいですなぁ。

 気にすることないのに。

 ま、最後はぎこちなくだけど笑ってくれたのでよしとしよう。

 

「それにしても、先ほどの防御魔法はいい出来だったな……お前が考えたのか?」

(あー、実際考えたのはぬこの……ぬこの、ゆ、友人? 何か違うな、なんかこう、宿敵と書いてともと読む的な奴がやってくれました。まぁ、向こうは使えなかったみたいですけど)

「? てきさんなのにおともだちなの?」

(むぅ、口で説明するのが難しいです……。ま、スバル嬢も大きくなったら分かりますよ)

「む~、わたしこどもじゃないもんっ」

(口にケチャップ付けたままそんなこと言う娘が子供なのは明白に明瞭ですな)

「ッ! (ごしごしっ) つ、ついてないもんっ!」

(何この可愛い生き物……)

「こらっ、そんなとこで拭いちゃダメでしょ! ほらこっち向いて」

「むぁ~なにをしゅるやめひょ~」

「あらあら」

(微笑ましすぐる)

 

 こんな感じで和やかな時間が流れていくのであった。

 

 

 

 しかし、終わりはすぐそこに近づいていた。

 

 

 

「おや、こんなところにいたのか……。ずいぶんと探してしまったよ」

(! せ、セラスさん……?)

「何、約束した時間が過ぎても一向にやってこないから、

厄介ごとにでも巻き込まれたんじゃないかと心配して探し回っていたんだ。だというのに、その当の本人は優雅に食事をとっているじゃないか。

私と終わった後にお茶でもしようと約束をしていたのに……ねぇ?」

(あ、あわわっ)

「ふぅん? それにこんな美人や美少女達と一緒にか? なるほど、こんな薬品くさい白衣女とお茶をするよりも、君の敬愛するご主人様よりもちっちゃな娘達と遊んでいるほうがいいと? 見せ付けてくれるじゃないか」

 

 やばい、ぬこの命が風前の灯!

 ゼ、ゼストさ……おまっ、冷や汗たらしながらご飯食べてないで助けてください!

 ク、クイントさ~ん(うるうる

 

「せ、セラス?」

「ん? あぁ、なんだクイント先輩か。ご無沙汰でしたね。まぁ、それはさておき、私はそこの猫君に大事な話があるんですが、連れて逝っても構いませんかね?」

「セラス? いくの文字が違わないかしら?」

「いいえ?」

「そ、そうみたいね。ごめんなさい、デバイスの翻訳魔法が壊れてたみたいだわッ! どうぞっ、私達のお話は終わったからっ!!」

(ちょ、クイントさん!?)

(ごめんなさいね……骨は拾ってあげるわ)

(ちょ、おまっ……)

 

「それに、君のご主人様のなのは君からもメールが届いていてね?

あまりにオイタが過ぎるようなら遠慮なく殺っちゃってくださいと聞かされているんだよ。

あぁ、勿論、事の次第は全て報告する事になっているよ」

( オ ワ タ ! )

「さぁ、部屋に行こうか……? 楽しい実験の始まりだ」

 

 アーハッハッハー

 セラスさんの笑い声とともにどこからともなくドナドナが聞こえてくるのであった。

 

 

 

 

 


 
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