『お…親倍ー!月宮女子、城山選手!倍満、親跳ときて、今度は親倍です!この和了でついに、ついに吾野高校を追い抜き一位!勢いが止まりません!』
『城山選手…会心の和了りで尚も親番を継続中です、ここから更に点差を広げるのでしょうか』
途中経過・東二局・二本場開始時
1年 城山 華南 (月宮女子) 159100点
1年 有栖川 雛姫 (吾野) 133000点
1年 藤金 千尋 (越谷女子) 68500点
2年 坂上 穂波 (名細) 39400点
---月宮女子控え室
『かなっち!』
『すごい…あっというまに逆転した』
華南を除く月宮女子一同はモニターを食い入るように見ていた。今の和了りでりりあは思わず歓喜の声を上げる、泉はそう呟いてただただ見入っていた。
『クールに決める華南ちゃんも可愛いわぁ~』
『やっぱり城山さんはすごいよ…ほんとにすごい…』
第21局 光明
東二局・二本場 親・城山 華南
(どうしたらいいの…このまま和了られ続けるのをただ見てるだけ…?そんな事…!どこかに攻略の糸口があるはず!)
『立直!』
雛姫がこの状況を打開する方法を考えている中、ついに2順という速さで立直をかけてくる華南。
(どうしたらいい…勝つために私は…何をしたらいい…!?)
平和確定の一向聴が入り、ようやく華南の親を蹴れると思った穂波。
逡巡、意を決して不要な牌を打ち出す。
(また…一発なのかな?このまま…終わっちゃうの…?皆…!)
千尋は半ば自棄気味にツモ切りをする。
『チー!』
即座に切られたその2筒を鳴く雛姫。
(ツモられるなら…せめて一発くらいは消してあげましょう…!)
次順、華南のツモ。
(また和了られるのか…くっ…)
穂波が心配するがどうやら和了牌ではなかったらしい。そのまま打ち出す。
打牌し、少し待ってみても、下家の穂波はツモらない。
『あの…切りましたけど…?』
1分程して、流石に声をかける華南。
『…あ、すいません』
(…あれ?和了られて…ない?)
確かに華南の立直宣言牌の横に、もう一枚牌が切られていた、確認してツモる穂波。
(あ…張った、しかしどうする…?いや…とりあえずこの親を流すのが…先決!)
引いてきた牌を手牌にしまい、更に不要牌を打ち出す穂波。
(親リー、しかもあの月宮のリーチ相手にあんな…もしかして、押してるの?)
穂波の打牌から、穂波が自分の手を押してるのを推測する千尋。しかし自分の手はどうにも押せない手らしく、渋々オリる。
そして下家の雛姫、穂波の打牌後からずっと訝しげに穂波を見つめる。視線を外すことなくそのままツモる。
(…とりあえず、月宮に和了られずに済んだ…けどこのままじゃいつ和了られてしまうか…)
自分の手牌を見やる、2向聴の上に一発消しでまともに和了りにいけないような鳴きを入れてしまっている、今から親リーをかわして和了るというのは些か厳しい。
再度対面の穂波の様子を見る。河を見る、手牌を見る…。
(名細の坂上…張ってるのかな?だとしたら…きっとここです!)
おもむろに自分の手牌で順子を構成している牌、2萬を手に取る。それは華南への安全牌という訳でもなかった…だが、打ち出す。
『ロン』
声の主は、穂波。
『平和のみ、1000は1600です』
『はい』
これでいいといった表情を浮かべ、点棒を支払う雛姫。明らかな差込みだった。
『おおっと!名細の坂上選手!ヤミピンフでトップの月宮の連荘を阻止したあ!』
『…これは、有栖川選手、差込みでしょうか?最終手出しで面子である所から2萬が出ています』
和は雛姫の最後の手出しが面子から打ち出されていることを見逃さなかった。
『差込み?やはりトップの連荘を阻止するためでしょうか?』
『ええ、そうだと思われます、有栖川選手、見事な読みでした』
『なるほどー、この短い順目と少ない情報で、流石全中王者といった所でしょうか?いずれにしてもこれでようやく東3局です!』
東三局 親・坂上 穂波
(月宮の親をとりあえず流せた訳だが…さて、どうする)
華南の親を蹴ったものの、9万点近い点差をどう埋めるかを考える穂波。
配牌を見やり、とりあえず中を打ち出す。
『城山選手、とりあえず一枚目の中をスルーです』
『一巡目で一枚目ですしね、鳴けば聴牌ですが、ここは様子見でしょう』
モニターを見ていた松浦と和が気づきがそう言う。華南の手牌はこうである。
一二三四34567北北中中 ドラ一
鳴けば3面張、中ドラ1の聴牌、後から北を引き入れても索子のノベ単に取れる形だった。
しかし4順目、今度は千尋から中が打ち出される、しかし華南は鳴かない。
『おっと?2枚目もスルーですね、これはどういう事でしょうか?』
『あくまで門前でいくということでしょうか…?ちょっと私にも意図が分かりませんね』
『立直』
次順、華南のツモ、8索を引き入れ聴牌し、華南はまたも6順という速さで立直をかける。
『ポン!』
即座に華南の打ち出した4萬を鳴く雛姫。
『月宮高校、城山選手!またも立直です!しかし中が枯れてしまっているので北の片和了りになってしまいましたね』
『そうですね、この形であればトップですし、立直はしなくてもよかったように思えますが…』
同順、華南のツモ、和了牌でない5索を切り捨てる。
(開幕からのあれはたまたまだったのか…?それとも…?)
いくつかの仮説を立てながらも、点数が必要な中、親番である穂波は手を進めていく。
(本来なら月宮のツモ牌…)
そして同順、雛姫のツモ、ツモ牌は、北だった。
(月宮の風牌…これでまた高目ツモだったのかな?)
持ってきた北を手牌に入れ、華南の現物を打ち出す雛姫。
『おっと!有栖川選手、城山選手の当たり牌を掴んでしまったー!しかしきっちり抑えましたね!いやーしかし有栖川選手の鳴きがなければまた城山選手の一発ツモでしたねー』
『そ…そうですね』
(た…たまたまですよね、そんな非科学的な事…)
次順の雛姫のツモ、またも北。
(とりあえずこれが月宮の和了り牌なら…抑えきったかな?)
2枚目も手牌に入れ、安全牌を打ち出す。
(どうにか張ったが…和了れないか)
遅れて聴牌した穂波だったが、結局和了りきることが出来ずに流局してしまった。
『『テンパイ』』
『『ノーテン』』
華南と穂波が聴牌、そして牌を倒す。
(やっぱり…!北が和了り牌!鳴かなかったら一発ツモだった…!)
華南の聴牌形を見て自分の判断が正しかったことに安堵する雛姫。
牌を卓の中に落とす時、雛姫は裏ドラ表示牌になる筈だった牌がちらっと確認できた。
それは西だった、鳴きがなければ立直一発ツモ北ドラ4の倍満手になっていた事になる。
ふと華南を見やる、澄ました表情で新しく積まれた牌を手に取ってゆく。
(この人…強い…でも、この人にだけは、負けられない!)
東三局・一本場 親・坂上 穂波
『立直』
またも6順にして華南の先制立直、全員の表情が強張る。
(あ~も~どうにもならないっ!)
まともな手になってない千尋は現物を打ち出しオリる。
(せめてもう少し時間が欲しいものだな…)
まだ字牌整理すら終わってない手牌をみて、嘆息する穂波。現物もないので字牌整理を進める。
(鳴けなかった…!また和了られてしまう…!)
打牌し、俯きそのときが来るのをただ待つしかない雛姫、だが。
(まさかとは思うが…ここまで立直と同順に鳴きが入った時は月宮は和了ってない、ならば…無理してみようか!)
『ポン!』
予想とは違う発声が、対面から聞こえる。穂波が鳴いたのだ。
『チー!』
穂波の切った牌を鳴く下家の千尋が鳴く。
(鳴きでズレた回は月宮は和了ってないっ!てことは本来のツモ牌は月宮の当たり牌、月宮の和了り牌なんて握ってられないよっ)
そして再度雛姫のツモ、本来なら華南が引く筈だった牌…。
赤5萬、これが和了り牌なら恐らく最高目だっただろう。
当然雛姫は切らない、手牌から現物を落とす。
同順、華南のツモ、和了り牌でないそれをそのまま切る。
『おっと!今度は名細の坂上選手の鳴きで、またも城山選手の一発ツモが阻止されました!これはいい鳴きでしたね!』
『そうですね…しかし坂上選手和了りにいくにはちょっと厳しい形になってしまいました』
そして次順、雛姫のツモ、8萬。
次順、5萬、次順、8萬、次順、6萬…。
(…このツモ、もしかして…)
当然5萬も、その筋である8萬も打たない。手牌の面子を崩してさらにオリる。
『ポン!』
(どうにか対々で和了れる形になった…あと一息)
またも穂波が鳴く、この鳴きで聴牌のようだ。
(またズレた…、今度は名細が本来月宮がツモる牌をツモる…)
同順、雛姫のツモ、5萬でも、8萬でもない、もってきた西をそのまま切り出す。
そして次順、穂波のツモ、6萬。
(折角張ったが、一発目から厳しい所を持ってきたな…だが、ここまで来たんだ、行こう!)
『ロン』
そのままツモ切る穂波、だがそれは華南の当たり牌だった。
『立直のみ…』
裏ドラをめくる、表示牌は5萬。
『裏裏、5200は5500です』
『はい』
点棒を支払う穂波、上家の雛姫は華南の手牌を見て思わず絶句する。
華南の手牌
六七七七⑤⑥⑦123567 ロン六 ドラ三 裏ドラ六
あのまま鳴かずに華南が赤5萬を引いていたら、立直一発ツモ平和三色ドラドラ、またも倍満ツモだった。
そしてもう一つ、その待ちが5,6,8萬であったこと…。本来華南が引く位置にその牌がほぼ全て積まれていた事。雛姫はただただ驚愕していた。
だが、雛姫はそこにある光明を見出した気がしたのだ。
(…もしかしたら…攻略法、見つかったかもしれません!)
下家の華南を見据え、心の中でそう呟く雛姫。
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---月宮高校麻雀部での城山華南と麻雀部の仲間達の紆余曲折ありながらもインターハイ優勝を目指していく、もうひとつの美少女麻雀物語---