途中経過 東4局・1本場 親・鮫島 京子
2年 鮫島 京子(吾野) 135900点
2年 喜多見 凛(名細) 100000点
3年 小野崎 樹(越谷女子) 100000点
2年 綺羅星 りりあ(月宮女子) 64100点
(このままじゃ本当にあの人にトバされちゃう……!)
『立直』
4筒を切り、鮫島の立直が入る。
(うぅ…点棒は欲しいけど…もうこれ以上振り込めない…)
りりあは自分の手牌と鮫島の河を見て逡巡する。
鮫島の捨て牌
九北發一二東③(④立直)
りりあの手牌
四四五六八①①①⑤⑦⑨南南ツモ7 ドラ四
現物は一枚も無い上、鮫島の河に一枚も出ていない索子を持ってきてしまった状況。
(4筒、とりあえず筋…1筒が通ればとりあえず3順は大丈夫…)
1筒の暗刻落としをして凌ぐ事に決めたりりあ、だが…
『ロン』
手牌を倒される。そして裏ドラをめくる。
『立直一発七対子、裏裏、18000の一本、18300だね』
『は…はい…』
第13局 後押し
東4局・2本場 親・鮫島 京子
(うちと名細は蚊帳の外、だな、しかしこのままでは吾野の優勝…)
樹はそんな事を考えていた、実際ここまで来て鮫島以外は焼き鳥である。
しかし今回はほぼ動きが無いまま中盤まで差し掛かった、だが3順前にドラの4筒を手出しで打った鮫島がずっとツモ切りし続けている。
(恐らく鮫島は張っている、また月宮への直撃を狙ってのダマだろう…どうしたものか)
その樹も聴牌していた。しかし立直はしない。
(これ以上は振り込めない…振り込めない…!)
鮫島のドラ切りで聴牌を悟ったりりあは、ひたすら鮫島の現物を切っていた。
『ロン』
しかしロンの発声がこだまする。声の主は樹だった。
『西ドラ2、5200の二本場は5800です』
『はい…』
(やはりそこから出てしまう、か…だがこれ以上見逃す余裕も無さそうだったからな、許せ、月宮)
『越谷女子、小野崎選手!この試合初の和了りでトップの鮫島の親を流しました!これでようやく南入です!』
『鮫島選手はヤミで11600を聴牌してましたからね、見事に和了ってトップの独走をきっちり阻止しました』
南1局 親・綺羅星 りりあ
(親が回ってきた…取り返したい…けど)
『立直』
7順目、鮫島の立直が入る。
(まただ…もう振り込みたくない…!)
親番で1向聴であったが、鮫島の現物を対子で落とす。
『あ、ロンです、3900』
『あ、はい…』
鮫島の立直を警戒した結果、りりあは名細の喜多見に振り込んでしまった。
『おっと、月宮高校、綺羅星選手、自身の放銃で貴重な親番をあっさり流されてしまいました』
『鮫島選手の立直を警戒した打牌でしたが、結果として喜多見選手に振り込んでしまいましたね、これは月宮高校、苦しい展開です』
南2局 親・喜多見 凛
---吾野高校控え室
『この展開になったら、もう月宮は無理だなあ』
『他の2校もまた、血の匂いに釣られた鮫の様に、また一匹、また一匹と獲物に群がる、的なー?』
『こうなっちゃうと、京子ちゃんが直接手を下すまでもなくなっちゃうもんねー、こわいこわい』
『立直』
またも鮫島の立直が入る。
(うぅ…どうしたら、これ以上は…これ以上は…)
最早思考が回っていないりりあ、手牌から鮫島の現物を打ち出し続ける。
『通らば立直で』
そこに越谷女子、樹の追っかけ立直が入る。
次順のりりあのツモ、ドラの5筒。
(ドラ…、あ、でもとりあえず吾野の人には通る…)
鮫島の現物であるドラを打ち出す。
『ロン』
『あっ…』
思わずあっと声を漏らすりりあ。完全に樹の立直に気づいていなかったようだ。
『立直一発ドラ3、8000』
『はい…』
樹がりりあを見る、俯き、対局開始時の覇気が全く感じられない。
(月宮…鮫島に完全に心が折られてるな、私の立直に気づいてすらいなかったようだし、しかしこのままでは泥沼だぞ、去年のうちみたいに…)
去年の地区大会決勝戦、越谷女子の先鋒であった3年の選手が、鮫島相手に5万点近くの失点をし、それが響き敗退していった。樹はその時の情景を思い出し、りりあに同情の眼差しを向ける。
南3局 親・小野崎 樹
(吾野とは約37000点差、そして月宮は残り3万点を割っている…となるとツモか鮫島への直撃で点棒が欲しい所だが…)
難しい、断トツトップである鮫島が振り込む要素がほとんど無い。
『立直』
そこに鮫島の立直が入る。
(もうやめてよぉ…どうしたらいいの…)
涙目になりながら、りりあも現物を打つ。
(月宮はまたベタおりみたいだね…こっちも勝負できそうにないし…)
喜多見も合わせて安全牌を切り出す。
(この点差でもまだ立直するのか、だがしかしこっちは勝負できる手では無い…)
樹は悩んだ挙句、結局鮫島への安全牌を切り出す。
その様子を見て、クスッっと小さく笑う鮫島、そして…
『自漠っ!リーチ一発ツモ平和一盃口ドラ、裏はなしっ!3000・6000!』
『おおっとー!鮫島選手、全員合わせてこの対局初の自漠和了りです!そして一発跳満ツモ!2位の越谷に55600点の大差をつけてダントツトップです!』
『2着の越谷の親番に跳満ツモは大きいですね、小野崎選手の跳満親かぶりで越谷との差を18000点広げてトップをより強固なものにしました』
オーラス 親・鮫島 京子
(もう誰一人として、私に向かってこないのね、ま、無理もないか…さて)
『立直』
鮫島以外の三人の表情が引き攣る、そして…
『自漠っと、リーヅモ一発、裏が一枚、4000オールかな、んーで、和了止めはしないで続行で』
『鮫島選手!オーラスの親番に親満ツモです!そして和了止めはせずに続行を宣言しましたー!』
『流石吾野のエースと言った所でしょうか、この連荘で更に他校との差を広げられるか、見所ですね』
オーラス・1本場 親・鮫島 京子
(立直するか…?いや、もう点差がどうこう言ってる場合じゃないか、とにかく鮫島の親を蹴らないと…)
2順にしてヤミピンフを聴牌したきり、立直をかけずにそのまま現状維持していた樹、だが逡巡し、結局ダマで通すことにした。
『立直』
そこに鮫島の立直宣言が入る。
(もう…無理だよ…誰か助けて…!)
ツモった牌を確認もせずにりりあは手牌から鮫島の現物を打ち出す。
(これが流れ、か…とはいえこのタイミングで見逃すわけにもいかない…か)
『ロン、3900の一本場は4200』
『はい…』
りりあの打牌で樹が和了し、長かった半荘が終了した。
『試合終了ー!先鋒戦前半戦が終了致しました!得点状況はこうなっております!』
スクリーンに各校の点数が表示される。
2年 鮫島 京子(吾野) 171200点
3年 小野崎 樹(越谷女子) 111000点
2年 喜多見 凛(名細) 97900点
2年 綺羅星 りりあ(月宮女子) 19900点
『前年度インターハイ出場の吾野が大幅リードとなっております、越谷女子の部長、小野崎選手も善戦しましたが6万点弱の点差をつけられてしまいました、この点差、後半戦で逆転することができるのか!』
『月宮高校は厳しい立ち上がりになってしまいましたね、一度沈んでしまってからは各校の和了りを回避することが難しくなってしまい、厳しい状況でした』
『そうですねー、後半戦の巻き返しに期待です!さて、後半戦は20分のインターバルを置いてから開始します!』
対局終了後、すぐにりりあは対局室を飛び出した。
---月宮女子控え室
りりあが対局室を飛び出した様子は、スクリーンで4人も見ていた。
『りりあちゃん…泣いてた?』
『よく、見えなかったけどな…かもしれない』
『行こう、りりあ先輩の所に』
『『うん』』『ああっ!』
華南の一言で、全員が控え室を飛び出した。
りりあは会場のすぐ入り口で蹲っていた。
『りりあー!こんな所にいたかっ』
『いず…みん…、皆…』
顔を上げたりりあは目が真っ赤だった。
『ひっく…みんな…ごめん…点棒、いっぱい、いっぱい、取られちゃった、ごめん…ごめんね…!』
駆けつけた4人の顔を見てまた泣き出すりりあ。
『綺羅星先輩、気にしないで下さいっ』
『そうそう、次で取り返したらいいのよー、ねっ?』
『相手は吾野のエースです、気に病む事はないですよ』
『だけど…だけど…!ひっく…私…いっぱい振り込んじゃったし…一人で8万点も…ごめんなさい…!』
なだめる3人、しかしりりあは謝るばかりで泣き止まない。そこに泉がゆっくりと歩み寄る。
『ほら、涙拭けよ、アイドルさん、こんなのお前らしくないぞ』
りりあの肩を抱き、ハンカチを渡す泉。
『だけど…折角決勝戦まで来たのに…私のせいで…』
『366700点』
『…えっ…?』
また謝ろうとするりりあの言葉を遮って、泉が言う。
『りりあが決勝までに、稼いだ点数の合計だよ』
そういうと泉はりりあの頭の上に手を置く。
『おかげでずっと楽させてもらったよ、ありがとう』
そうですよ、と頷く後ろの3人。
『だからさあ、たかだか8万点程度の失点なんかきにすんなよっ、な?後は私達が取り返すから!』
『いずみん…みんな…』
『んーまあでも、このまま吾野にナメられたまんまってのも嫌だよなあー、よしっ、りりあ、何点取られてもいい!とりあえず鮫島から直撃1発とってこい!それで失点はチャラだっ』
言って、優しく微笑む泉。さらに続ける。
『主人公はさ、最後に笑うんだろ?』
『…いずみん…本気で惚れちゃうよ…?』
涙を拭って、一生懸命笑ってみせるりりあ。
『ははっ、そんだけ軽口が叩ければ大丈夫だなっ、その方がお前らしい、さあ、いってこいっ!』
ぽんっとりりあの肩を叩く泉。
『…うん。行ってくる…!』
『一分前ですねえ、綺羅星選手の姿が見えませんが』
『そうですね、どうしたのでしょう?』
---対局室
(終局した時の月宮の表情…あ、もしかして対局を続けるのが嫌になって逃げちゃったか…?勘弁してよーそうだとしたら罪悪感半端ないんですケド)
鮫島がそんな事を考えていると誰かが走っている音が聞こえた。
『はぁ…はぁ…すいません、遅くなりました!』
息を切らせてりりあが対局室に戻ってきた。
(あーよかったぁー、まあでも…後半も手は抜かないよ!)
『おっと、全員そろったようですね!それでは先鋒戦後半戦、スタートです!』
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---月宮高校麻雀部での城山華南と麻雀部の仲間達の紆余曲折ありながらもインターハイ優勝を目指していく、もうひとつの美少女麻雀物語---