◆ 第35話 STUDY STUDY ◆
月日は百代の過客にして云々。
まぁ、何が言いたいのかと申しますと時間が経つのは早い……そう言うことです。
「? みぃ君、どうしたの?」
「なんやえらく達観した顔しとるな?」
「はやて、達観した顔って……みぃは猫よ?」
「あはは、でもなんとなく分かるかも」
(………)
ちょっと賢そうなこと言ってみたかったんですよ……
それなのにこの仕打ち、慣れない事はするもんじゃないです。
季節は夏。
本日はご主人達が終業式だったので高町家でお疲れさま会なのです。
まぁ、折角だからはやて嬢も呼んで一緒に遊んでいる。
今北産業的に説明してみるとこんな感じ。
うん、遊んでいた。
遊んでた、はずなんですけどねぇ……。
「フフ、なのは~そろそろ観念して後ろの物を渡したらどうなの~?」
「うぅ~……」
「なはは、なのはちゃんも往生際が悪いなぁ」
「アリサちゃん、はやてちゃんもだめだよ~」
(み、みぃ君助けてぇ……)
(いや、そんなこと言われましても……)
見ての通りピンチです!ご主人が。
ご主人が必死に背中に隠しているのは通信簿。一学期の成績表ですな。
どうして、ご主人がそれを全力で隠してるのかといえば、言わずもがな、悪かったんでしょうねぇ。
学校で先生から手渡されたときにご主人のツインテールがピンと逆立ったのをアリサ嬢が見逃さなかったようで、その成績を白日の下に晒そうと、手をわきわきさせながらジリジリ距離を詰めているのです。
ご主人は涙目。
別に助けないのは涙目になってるご主人が可愛いからとかそんなんじゃないんだからねッ!
(地味に鬼畜だね)
(うっさい。そういうユーノこそ鼻の下が伸びてるくせに)
(えぇ!? 嘘ッ!?)
(嘘だ。そもそもフェレットの鼻の下って伸びるの?)
(ぐぬぬ……ッ!)
何がぐぬぬだ。
そんな馬鹿な話をしている間に事態が動いたのであった。
「スキありやッ!!」
「え? あ~ッ!?」
「よくやったわ! はやて!!」
「は、はやてちゃん! 返してよぉ~」
素早くご主人の後ろに回りこんだはやて嬢が通信簿を奪取する。
(車椅子なのになんて機動力だ……)
(よく訓練された車椅子やからな!)
(車椅子の問題なのッ!?)
通信簿を奪われたご主人は取り返そうとしたのですが、アリサ嬢にとっ捕まっている。
そんなご主人にはやて嬢の追い討ちが!
「むふふ、んじゃ読み上げよかー」
「や、やめてよぅ!?」
「だが断る。えーと? おぉ、何で隠すん? いい成績やないの!」
「にゃーッ!?」
「なになに? 大変いい成績です。リーダーシップも発揮していて先生としては大助かりです」
「ん? リーダーシップ?」
「あれ?」
「しかし、先生の間違いをニヤニヤしながら指摘するのはやめてもらいたいです。立ち直れなくなります」
(な、なのは、そんなことするの……?)
(ち、違うよ!?私そんな事してないよっ!?)
おおよそご主人にあるまじき評価に皆が戸惑い始めるが、遠慮なく読み続けるはやて嬢。
「最後に、照れ隠しに男の子の事を英語で威嚇したり、バカ犬なんて罵るのはやめましょう。先生はバニングスさんの将来が心配です。って、アレ?」
「な、ななな~ッ!? そ、それ、アタシのじゃにゃいッ!?」
「やっぱりアリサちゃんのだったんだ……」
「うわぁ、アリサちゃん。これはひどいわぁ……」
「~~~ッ!! か、返しなさいッ!?」
顔を真っ赤にしながらはやて嬢から自分の通信簿を引っ手繰るアリサ嬢。
さすがくぎゅ、もといアリサ嬢。ぬこたちにはできない事を平然と(ry
「はぁ、助かったぁ~……。でも、どうしてアリサちゃんのが……?」
(フハハ! すり替えておいたのさ!(某蜘蛛男調)
どうやって、だって?
そんな野暮な事は訊いちゃダメですよ?
すり替えられていたという、その結果が重要なのだから!(キリッ
(むぅ、いつの間に。全く気付かんかったわ……)
(さすが、みぃ君! ありがとう!)
(ぬはは、ユーノとは違うのですよ、ユーノとは!)
(何でそこで僕を引き合いに出すのさッ!?)
などと、魔法組で話していると
「あれ? ここに何か落ちてるよ?」
(あ、マズイっ! ご主人、早くすずか嬢から回収しないと!!)
(ふぇっ!?)
「それは……! よくやったわ、すずか!」
「あ、アリサちゃん! ダメぇー!?」
「ふんっ、私のを勝手に見たんだからお互い様よッ!」
聞かせたのは、はやて嬢なんだが……聞く耳持ってなさそうです。
なんという横暴。だが、そこがいい。
「なのは、アンタ……」
「うぅ~ひどいよぅ……」
「これはヒドイ」
「あはは……ちょっと、フォローできない、かな」
どれが誰の反応かは言うまでもない。
まぁ、つまるところご主人の得意な理数系以外はヒドイ結果に終わったということです。
いや、一応ご主人の代わりに言い訳させてもらうとですね、例のジュエルシードの件の所為で授業も上の空だったし、塾もお休みしてたからなんです……ご主人は悪くないよっ!
元々、文系科目は苦手ですからねぇ、ご主人。
「なのは。いくら休みがちだったからってこれはちょっと酷すぎない?」
「うっ、でもでもっ! 赤点はないよ……?」
「そういう事言ってんじゃないのッ! いままでの成績を考えなさいって事よっ!!」
「そやね。先生も『お休みしてたのは仕方ないですが勉強はしましょうね?(怒)』って書いとるし……」
「あぅ」
なんという集中砲火。
ぐぅの音もでないご主人であった。
「ふんっ、仕方ないから私が解らないところを教えてあげるわ」
「えっ、ホントに!? ありがとう、アリサちゃん!!」
「べ、別になのはのためなんだからっ! 勘違いしないでよねッ!!」
「アリサちゃん、それなんか違わん?」
「ふふっ、アリサちゃん優しい~」
「! ~~~ッ! うるさいうるさいうるさ~いッ! いいからどこが解んないか教えなさいッ!」
アリサ嬢のご主人に対してのデレっぷりを傍から眺めながらニヤニヤしてるぬこが変態なのは確定的に明らか。
(なんと言うツンデレ)
(さすがアリサちゃん。これが本物なんか……ヴィータも見習わんとダメやな)
(あの、ツンデレって……?)
(む、ユーノ君ツンデレを知らんのか! ツンデレってゆーのはな……)
はやて嬢がユーノにツンデレの講義をしている間にご主人は勉強を教えてもらうのであった。
◆
「にゃあ(む、ご主人。ここ間違ってます)」
「こらっ、なのはの邪魔しちゃダメじゃない……って、なのは間違えてるわよ」
「えっ? 嘘っ!?」
「この地図記号は工場じゃなくて発電所。似てるから気を付けなさいよ」
「はーい……(ど、どうしてみぃ君が知ってるのッ!?)」
(よく訓練されたぬこには朝飯前だったのです)
(答えになってないよっ!)
なんだかんだで勉強会に突入したわけですが、暇を持て余したぬこはテーブルの上でゴロゴロしながら勉強を教えていたりします。
これでも中の人は腐っても大学生だったのでこれぐらいはやってできない事はないのだ。
む、ご主人に教えながら夏休みの宿題をやってるアリサ嬢も間違えてます!
「にゃ!」
「アリサちゃん、みぃ君が手を当ててるとこ間違ってるよ?」
「なっ!?」
「おー、みぃ君頭ええなー」
「あ、あはは(み、みぃ君!自重してぇー!?)」
(サーセン)
つい、やっちゃったんだ☆
たまにはぬこだって頭がいい事をアピールしてみたいのです。
「な、この私が……? みぃに、猫に教えられたと言うの……?」
図らずもアリサ嬢に大ダメージを与えてしまった!
あわわ、予想外デース!
(みぃ君。後でお仕置きなんだから…)
(………はぃぃ)
・
・
・
・
お勉強会も一段落し、皆でお茶を飲んでいるところです。
みんなはキャッキャッウフフと、楽しんでおられますがぬこは……
(大丈夫?)
(………)
(返事がない、ただの屍のようだ)
(……なで回された。あんな所やこんな所まで……もうお婿に行けない……)
(何を今更……初めてじゃなかっただろうに)
(うっさい……)
なんというお仕置き。
ご主人だけじゃなく、途中から面白がってアリサ嬢達まで参入してきたもんだから……。
ひぃ、ぬこの体がいくらあっても足りないですよぉ。
(なんや、さっきのセリフを何も知らずに聞くとベーコンレタスみたいな会話に聞こえるな。非生産的やから、やめたほうがええよ)
(やめてよッ!?)
(そんな事になるくらいならばぬこは自分の舌を噛み切って死ぬ方を選ぶ。というか、はやて嬢には言われたくないです)
(や、別に私薔薇も百合も興味ないんやけど)
腐ってないよ? などと言ってくるはやて嬢。
だが、ネタは上がってるんだよ!
(最近シグナムさんとシャマルさんからはやて嬢のセクハラについて相談されたんですけど。
気がついたら胸ばっかり見てるとか、目が血走ってるとか、風呂ではこれでもかと触ってくるとかなんとか)
(む、何ゆーとるん! アレは愛であっても家族愛や! むしろおっぱいを愛でとるだけやッ!! ジークおっぱい! ジークきょぬーッ!!)
(………)
(特にな、シグナムのは抜群や! 大きさといい、形といい、感d(アウトーーーッ!!)もうな、堪らんわッ!)
なんというおっさん……。信じられるか、この子これでも小学3年生なんだぜ?
ぬこには、はやて嬢を止める事はできなさそうだ……。
相談された手前何とかしたかったんだけども、最早手遅れだったようです。
どうして、こんなになるまで放っておいたんだ!
シグナムさんとシャマルさんに黙祷を捧げる事にします。
Amen。
◆
「なぁなぁ、この写真の女の子って誰なん?」
「あ、その子はフェイトちゃんって言って―――」
ようやく興奮が収まったはやて嬢がとある写真立てに気付いた。
それはアースラ組から送られてきたフェイト嬢の写真。
まぁ、事の経緯を説明すると。
その写真は、つい先日、以前ご主人がフェイト嬢に送ったビデオレター(アリサ嬢とすずか嬢も一緒に撮った)の返信と一緒に送られてきたものなのだ。
これが届いた日のご主人と言ったら、もうね、当社比8割り増しぐらいニコニコしてました。
そんで何度も何度もお母様や士郎さんに説明してあげてたんですよ。
何故か士郎さんのお母様の自慢と言うか惚気話をしてる姿とかぶったんですが、可愛いから許せる!
そして、その姿はぬこの脳内に焼き付けました。永久保存版です。
誰にも焼き増ししてあげるつもりはありませんので悪しからず。
「ふーん。何かええなぁ、そうゆーの。今度送るときは私も一緒に紹介してくれん?」
「うんっ! もちろんっ!!」
む、一応 はやて嬢にも魔法関連だって事教えておいた方がいいかね?
はやて嬢はともかくヴィータ達の事はマズイかも分からんし。
(ご主人、はやて嬢。そのビデオレターを撮るときはヴィータ達の事は黙ってた方がいいかも分からんです)
(あ、そっか……)
(む、なんでなん?)
(いや、フェイト嬢たちとは魔法関連で知り合ったんですよ。
前に言ってた管理局の人達にお世話になってるから、大丈夫だとは思うんですけど、万が一って事があるんで……)
(むぅ、残念やなぁ……)
(まぁ、フェイト嬢はいい子なんでまたいつか紹介できますよ)
そのためにもなんとか方法を考えなきゃいかんですな。
とりあえず管理局の本局にある無限書庫とやらに行けばなんかいろいろと情報が転がってんじゃないかってユーノが言ってたから、まずはそこでの情報収集からだなとは思ってるんだけどねぇ。
……そこに行く口実がないのが痛い。
下手なことしてばれたら本末転倒ですしね。
はぁ、悩ましいです。
そんな風にぬこが悩んでいる間にも、物語は動き始めていたのであった。
とか、言ってみるとちょっとシリアスっぽく見える件。
まあ、ホントにその日の夜にご主人の携帯に届いた一通のメールによってぬこたちは行動し始めるのだが、ユーノと一緒にご主人達のおもちゃ(性的な意味ではない)にされてるぬこには知る由もなかったのであった。
◆ あとがき ◆
読了感謝です。
なのは達の得意分野は
理系:なのは、すずか
文系:はやて
万能:アリサ
こんなイメージですね。すずかは文系科目もできそうだけど。
では誤字脱字などありましたら、ご報告いただけるとありがたいです。
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