ベルカ王国編
3:何でこうシリアスが続かないんだ?
そこは草木の一本も生えていない荒野。
朝日に照らされて熱を帯びた大地に轟音が木霊していた。
剣や槍や弓や杖など、一人一人が多種多様な武器を持って、対峙する敵を討ち果たさんとする。
飛び交う爆音に、止まぬ叫び声が耳障りで、血霧の匂いが鼻を突く戦場の中に彼はいた。
黒い髪を無造作に伸ばした整った容貌の男。
その手に持った、鞘に収まったままの無骨な剣を片手で振るい、周囲の敵を薙ぎ倒して行く。
平和を望み、嘗てはとことん争い事から逃れようとしていながら、彼は逢えて戦場に立っていた。
理由は単純だ。
「この国が好きになったから」
長い時を生き、忙しくも充実した祖国での生活を送る内に彼は強い愛国心に目覚めていたのだ。
国を守り、民を守り、そして自分が選んだ主を守る。
その義務を負った家に生まれたのだから当然と言えなくもないが、彼は義務ではなく権利で戦場に立っていた。
ただ己の意思で自分の大切なものを脅かす輩と戦う。
ベルカ王国の騎士、シオン・インサラウムは今日も戦場に荒れ狂っていた。
シオン「消し飛べぇ!!」
剣を逆さに握った右手を前に突き出す。
拳が限界まで引き伸ばされた瞬間、腕の中に圧縮されていた魔力の塊が一片に解放され、更にそれが彼の魔力変換能力によって文字通り光の速さで目標に飛来する。
射線上にいた者達は閃光に目を瞑る前に吹き飛ばされ、跡形も無く吹き飛んだ。
一撃で絶命した者達の成れの果てなど眼中に無いかのように彼は次の動作に移り、未だに刀身をさらしていない剣をすくい上げるように上へ振り上げて空を切った。
鞘の表面が風に接触する図太い音を響かせるだけに終わるかと思われた一撃は、敵方の思惑を大きく裏切り巨大な衝撃波となって襲い掛かった。
攻撃に直接的な殺傷性を与える武器も、魔力の増幅器であり制御装置である杖も使用せずに、彼は持ち前の膂力と魔力だけで大軍勢を圧倒する。
その後も度々爆音のようなものが響き、回数が十を超えた辺りで喧騒は消え去った。
残ったのは所々クレーターの様なモノが出来た焦土のみで、彼以外に立つ者はいない。
敵対勢力の全滅を確認し、気だるそうに肩を鳴らしながらシオンはその場から一瞬で姿を消した。
それから数時間後
ベルカ王国の王宮の一室、謁見の間にてシオンは眼前の玉座に座する壮年の男に跪き、頭をたれていた。
この男性こそがシオンの仕えるベルカ王国の頂に立つ者。
第13代目聖王レオンハルトである。
シオン「シオン・インサラウム、リモネシア連邦国侵攻部隊の討滅、滞り無く完了いたしました。」
仰せつかった任務の報告を短く済ませ、主の返答を待つ。
それに対し、聖王は満足げに赤と緑のオッドアイを細めて若き忠臣に笑いかける。
レオンハルト「遠征の任、誠に大義であった。否、お主にかかればこの程度の距離の横断など遠征とも言わぬか。」
シオン「恐縮の限りです。」
苦笑混じりに答えるシオン。一回りも二回りも歳の離れた主君と臣下であったが、二人のこういった強い主従関係を思わせる光景は驚く程にしっくりとしていて違和感が無かった。
レオンハルト「それにしても、リモネシアにもほとほと困ったものだな。連邦への加盟を拒否しただけで敵対行為とみなすとは。」
シオン「元々我が国の豊かな資源と発達した技術が目的だったのです。首を縦に振らぬと言うならば力づくで……実に彼等らしいやり口です。」
レオンハルト「全くだな。お主の父が存命しておった頃は大人しくしておったと言うに、今更のこのこと忙しないことよ。」
シオン「私めが国外に力を示してさえいれば他国から侮られ、つけ入る好機などという世迷い言を吐かせる事もありませんでした。この身の未熟さ故の罪、申し開きの仕様もございません。」
更に深く頭を下げるシオンに、レオンハルトは玉座から腰を上げて歩み寄る。
自身も膝を付いて目線を同じ高さにし、凛々しい面構えをした臣下の目を覗き込んだ。
レオンハルト「シオンよ。己を責めるでない。例え歴史に名を残す名勝とて駆け出した頃は名も無き兵卒に過ぎぬのだ。故に無名であることは罪では無い。お主はいずれ“王国の星槍”とまで謳われた父ジェラウド・インサラウムすらも超える騎士になるであろう。未熟を悔いるのならば我を支えてくれ。そして共にこの国を支えてくれ、我が聖剣よ。」
親が息子に言い聞かせるように一言ずつ、聖王は若武者に言葉を紡いで行く。
主から直々に励ましの言葉を賜り、青年は身体が高揚する感覚を覚えた。
シオン「はっ!もったいなき御言葉、光栄至極にございます!今後も粉骨砕身の思いで務めを果たす所存です!」
熱の篭った返事にレオンハルトは小さく頷いて玉座に戻った。
そして、思い腰を降ろして一息ついた所で、何かを思い出したように一瞬目を泳がせた。
レオンハルト「それはそうと、せっかくだから娘に顔を見せに行ってやってはくれまいか?最近会っておらなんだろう?寂しがっておったぞ?」
後半から悪戯っ子の様な笑みを浮かべて語る聖王は先程の威厳に包まれた姿が虚像に思える程にフランクで柔らかい雰囲気を醸し出していた。
突然の態度の変化に、思わずずっこけそうになりながらも、シオンはまた苦笑しながら答える。
シオン「そ、そうですか。では御顔を拝見に伺わせて頂きます。殿下は本日はどちらに?」
レオンハルト「庭園でユートに付きっ切りで魔術を学ばせておる。探せばすぐに見つけられるだろう。だが、シオンよ。何故素直に名を呼んでやらんのだ?昔は互いに名指しであったと言うに。」
若干不満気な聖王。本当に先程の気迫に満ちた姿はどこへやら。
主の公私の差の激しさを改めて実感させられる。
シオン「この身はインサラウム家の当主となったもの故、公私は分けねばなりますまい。」
レオンハルト「律儀な奴よ。お主の父にそっくりだわい。彼奴も当主の座に付いた途端に余所余所しくなりおった。我軽くショックだったのだぞ!。・゜・(ノД`)・゜・。」
シオン「へ、陛下?何かテンションがおかしなことになってますよ!?お気を確かに!Σ(゚д゚lll)」
レオンハルト「ええい黙れ黙れ!全くどいつもこいつもお硬くなりおってからに!少しはフレンドリーに出来んのか!?( #`□´) 」
シオン「陛下いい加減にして下さい!あんまり騒いでグラシアさんにO☆HA☆NA☆SHIされても知りませんよ!」
レオンハルト「ひぃぃ!お、O☆HA☆NA☆SIだと!?我はまだ死にとうない!!((((;゚Д゚)))))))」
シオン「だったら落ち着けって言ってんだろうが!O☆SI☆O☆KIすんぞこのクソジジイが!!」
突然カオスになった場は暫く収まる事は無く、レオンハルトがシオンにO☆SI☆O☆KIされた事で漸く落ち着いた。
シオン「では陛下、失礼致します。」
抑揚の無い声でそう言い残し、シオンは謁見の間から立ち去った。
後には玉座に座ったままぐったして何かをブツブツと呟く聖王だけが残されていた。
あとがき
お久しぶりです。
スランプ真っ盛りのうp主です。
シナリオは考えてるのに文章に出来ないオラに文才分けてくれぇ!
多分ベルカ編はもうちょい続くと思うんで早く本編入れよって人はゴメンなさい。
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時間が二年ほど飛んでますけどまぁ気にしないで下さい。