きんと静かでただ広い宇宙のどこか。
まだ何もない場所にひとりの神様がおりました。
神様は何やら厳かな様子でその場に立ち尽くしておりました。
神様はそこに星をつくらなくてはならないことを知っていました。
そして星がどのように成長し、更にはどのようにして終焉を迎えるのか、その為に今から為すべき事をも、何もかもご存知でした。
いつかお母さんと手を繋がれた小さな少女がこの地に降り立つことも、
その少女が人のかみさまをつくることも、やはり隈なく知っておりました。
だから神様は、何よりまずその少女の為に世界を造ることにしました。
神様はまぁるいカタチの、まるで大きなシャボン玉のようなものを造り、地球と名づけました。
ちょっとイビツだけど、まぁるくて、キラキラと光る透明な地球ができました。
次に神様は、地球の殻に溝や穴をつくってゆきました。
山を造って、谷を造りました。
神様はとても器量の良い方だったので、それらの為事はすぐに終わってしまいました。
神様は、造った山と谷を見て、良しとされました。
次に、どろどろしたものを造りました。
どろどろしたものは山のてっぺんから絶えずあふれだしていました。
神様の手元には絵の具がありました。
筆も、水も、パレットもありました。
神様は沢山の絵の具とパレットで、造ったそれらに色を塗ってゆきました。
地球が美しくなりますように、
地球がすばらしくなりますように、
神様は全てを知っていながらも、そう願いを籠めずにはいられませんでした。
やがて地球は真っ赤になりました。
生まれたてだったころのシャボン玉のような様子はもうなく、それは誰が見ても宇宙に煌く星でした。
真っ赤な地球はとてつもなく暑くもえたぎっておりました。
神様は、少女が碧や他の色々な色のある世界を造っていく事もご存知でしたので、それ以上は何もせず後に来る者たちに託すことにしました。
そうして神様はとても優しそうに、それでいてどこかうそ寂しい面持ちで、訪れる始まりと終わりに思いを馳せながら丁寧に色を塗っておりましたが、やがて絵の具がすっからかんになると神様は地球を見渡して良しとされました。
神様は己の知りうる全ての為事を終えると、最後にぐるりと星を見渡し、瞬きと同じ速さでふっと消えてしまいました。
*
それから幾年経ったでしょうか。
少女がおりました。
少女は、小さな手をママに繋がれたまま、あたり全体を見回しました。
そこにはなんにもありませんでした。
草も花も、青いお空も蒼い海も、せっせと働く人も、のんびり寝転ぶ動物も、吹く風も、
なんにもありませんでした。
少女は不思議そうにしてママに尋ねました。
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広い広い宇宙のどこかに、生まれたばかりの透明なお星様がありました。