「ねぇパパ?
サンタさんはどんなひとなんだろう?
サンタさんはどうしてプレゼントをくれるんだろう?」
男の子はぼそぼそと尋ねました。
その顔はひどく青白く扱けておりましたが、しかし満面の笑みを浮かべ幸せそうです。
男の子のパパは言いました。
「少し昔の話だよ」
昔々二人の兄弟がありました。
可哀相な事に両親の居ない孤児で、とても貧しい暮らしぶりでした。
集めた鉄くずを売って生活していた二人は
その帰り道にふと道沿いのお家の窓を遠くから覗きました。
メリークリスマス!
メリークリスマス!
窓の奥では、テーブルに寄り添うように方を並べた人々がみな静かに、
暖かそうなお家の中で神様へ清らな夜を祝いぶどう酒を傾ける姿がありました。
弟は眉をひそめてそんなお家を覗きます。
そうしてお兄さんに手を繋がれながらねぐらへ帰っていきました。
「メリークリスマス」
お兄さんはいいました。
「メリークリスマス」
弟もお兄さんの真似をしていいました。
二人は祈りました。
「天にまします主なるかみさま」
二人は教会で良く教わったようにひとしきり祈ると目を開けました。
するとどうしたことでしょう。
そこにはさっきまでは影すらなかった
ずいぶんと年老いた男性が静かに佇んでおりました。
「おじいさん、さむくはありませんか」
二人の兄弟よりもずっとみずぼらしい身なりをした彼にお兄さんは尋ねました。
外の雪は積もる一方です。
「それはもう、今にも凍えてしまうほどとてもさむいよ
指一本動かすのだってよいじゃないほどさ
だからどうか、キミたちが持っているそのマッチを一本わけてもらいたいんだ」
おじいさんはいいました。
おじいさんの言葉を聞いたお兄さんはとても迷いました。
弟の方も一緒になって迷っておりました。
だってマッチは二本しかないのですもの。
明日も知れない生活を送る二人にとってその小さな小枝から産まれる炎は、
目の前に立つ哀れな老人を助けるのも迷うほど、心強いものでした。
散々悩んだ末二人は言いました。
「メリークリスマス、おじいさん」
お兄さんも、弟も、苦しい生活でしたが、かといって目の前の如何にも惨めな身なりをした老人を見放せるほど、残酷にもなれなかったのです。
兄弟は、少しの未練もないと言えば嘘になるもの、それをおくびにも出さずにおじいさんにマッチを一本譲りました。
おじいさんは嬉しそうに、その目の際に深い皺をよせて、人差し指を口元にあてながら囁きました。
「メリークリスマス、心清らかな少年たち
ぼくはキミたちにいつかきっと素晴らしい贈り物をするだろう
これは約束だよ
だからね
キミたちが持っている靴下の中でいちばん綺麗で丈夫な靴下を今晩柱に吊り下げて眠るといい」
寒さのせいなのか指先が壊疽した両手で二人の頭を撫でると、おじいさんは顔を綻ばせました。
ところがおじいさんは、兄弟たちがほんの一瞬瞬きしているうちにどこかへ消えておりました。
「ふしぎなおじいさんだね」
弟が言いました。
お兄さんは肯きました。
二人は自然と胸の前で十字を切りました。
二人はその晩、最後のマッチで火を起こしありったけの服や藁のなかで眠りました。
おじいさんに言われたとおり、いちばん綺麗でいちばん丈夫な靴下を柱に釣る下げました。
次の日の朝、靴下の中にはなんと金貨が二枚入っておりました。
驚きながら手のひらに乗せた金貨は、ずっしりと重く、宝石のようにキラキラと光っておりました。
「ふしぎなおじいさんだね」
弟が言うと、お兄さんも肯きました。
それはそれは華やかな笑顔でした。
その年その兄弟は生きてきたなかでいちばん、暖かいクリスマスを過ごすことが出来たそうです。
メリークリスマス。
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サンタさんのルーツのお話です。昔自分が聴いたものを断片的に憶えていたのを思い出して作ったものなのでパロディだと思っていただいて構いません;