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IS インフィニット・ストラトス ~転入生は女嫌い!?~ 第五十話 ~ジ・アンブレイカブル~

Granteedさん

第五十話です。
クロウファンの皆様、お待たせいたしました!
この回は短い時間ですがクロウの無双っぷりが垣間見れる話です。
それではどうぞ。

2012-09-13 22:13:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:9592   閲覧ユーザー数:8978

クロウが装備しているISはブラスタとは大きく違っていた。まず随所に赤いカラーリングが施されていて機体も一回りも二回りも大きくなっている。更にバンカーが無くなっていて代わりに両手首に篭手の様な物が装着されていた。両肩には半円状の物体がそれぞれ取り付けられており、背部のスラスターも大型化している。そして顔に付けられているバイザー越しにはいつも通りのクロウの顔があった。

 

「クロウ!無事だったのか!?」

 

空中で大声を上げながらクロウに近づこうとする一夏だったが、右手でその行動を制するクロウ。

 

「おっと、まだ一応戦闘中だろ?状況を説明してくれ」

 

すると今度は箒がクロウに近づく。箒は状況がまだ飲み込めていない様で惚けた顔をしていた。

 

「え、えっと、クロウが心配で俺たちで福音を倒そうと思ったんだけど……」

 

「そうか、んで他の奴らは?」

 

「多分無事だと思う。今は通信が取れないけど」

 

「じゃあさっさとあいつを倒すか」

 

そう言って海上を見つめるクロウ。そこには何故か動かずに海上付近で浮かんでいる福音の姿があった。二人の会話が終わると、今度は黙っていた箒が口を開く。

 

「ク、クロウ。私は……」

 

「お前の話は後だ、箒。今は戦闘に集中しろ」

 

完全に戦闘体勢に入ったクロウが冷ややかな声で促す。その言葉を聞いて箒も両手の武器を握り直した。

 

「でもクロウ、あいつ動かないぜ?」

 

「やっちまったか?」

 

先程の突撃位で落ちる様な機体ではないとクロウは思っていたのだが、予想に反して福音は一切動かない。しかし次の瞬間、リ・ブラスタが警報を上げる。

 

『Pi──Pi──Pi──!!』

 

「ど、どうしたんだクロウ!?」

 

「……またお客さんだ」

 

クロウが遥か彼方、空中の一点を見つめる。すると五つの黒点が空に浮かんできた。一夏達にも見えた様で慌て始める。

 

「クロウ!!」

 

「慌てるな。一分で片付けてくる、一夏達は福音の方を頼む。どうやらあっちも動き始めたようだしな」

 

クロウが言葉を発すると同時に海から水柱が立ち上る。その中心では体中から白い羽状のエネルギー体を生やした福音が一夏達を睨みつけていた。

 

「あ、ああ!!でもクロウ、一分って──」

 

「じゃあ、頼むぜ」

 

一夏の言葉を途中で遮ると、リ・ブラスタの背部スラスターが音を立てて展開される。空気を取り込んで数秒宙に静止したかと思うと次の瞬間、目にもとまらない程のスピードで空中を駆けた。

 

『ク、クロウ!?』

 

「そっちを頼む!持たせるだけでいい、相手を頼む!」

 

『お、おう!箒!!』

 

『わ、分かった!!』

 

クロウの動きに戸惑っていた二人だが、クロウからの叱咤を受けて行動を開始する。クロウも敵との距離を物凄い速度で詰めていく。その姿が確認出来る距離まで飛ぶと、クロウは思わず声を漏らした。

 

「……おいおい、いくら何でもしつこすぎねえか?」

 

その五機のISはクロウを撃墜寸前まで追い込んだ機体だった。クロウが確実に仕留めたはずなのに、新品の装甲を纏ってクロウを睨みつけている。

 

(このタイミング……ほぼ間違いなく福音とこいつらの後ろにいる人間は同じか)

 

考えながらもクロウは動きを止めない。そのまま宙を飛行して距離を500m程まで詰めると一旦停止する。敵機も距離をおいたままクロウと同じ様に停止した。

 

「さて、一夏達に一分って約束しちまったからな。さっさと終わらせるか」

 

静かに呟くと力を溜める様に両手で握り拳を作って腰の両脇に持っていく。その動作と同時に頭部、胸部、腹部、両膝の計五つの緑色のクリスタルが輝き始めた。

 

「俺とVXとリ・ブラスタが今、一つになる……」

 

クロウが再び呟くと同時に今度はリ・ブラスタの赤い装甲が緑色の光に包み込まれる。段々と輝きを増していくクリスタルから光が溢れ出し、装甲を照らしていく。クロウの瞳も黒から金色に変わっていた。

 

「はあぁぁぁぁ!!!」

 

クロウが雄叫びを上げると同時に両肩に装備されていた半円状の物体が肩から外れてクロウの目の前で連結されて、一つの円を作り出す。敵もクロウの行動に己の危機を感じたらしく、各々の射撃武器でクロウを攻撃するが全く効かなかった。砲塔から放たれるレーザーはリ・ブラスタの装甲にあっさりと止められて傷一つ付ける事も出来ない。

 

「リ・ブラスタ!スクランブル・シュートだ!!」

 

クロウが言葉を発した瞬間、リ・ブラスタを包んでいるエネルギーが一層輝きを増す。そしていきなりクロウはスラスターを吹かせてその円に飛び込んだ。

 

「うおおおおおおっ!!」

 

リ・ブラスタが円を通ると、ただでさえ目にもとまらぬ速さを誇っていたリ・ブラスタが更に速度を上げて敵に突っ込んでいった。敵もそれを見て慌てて散開したがもう遅い。500m程あった距離は一瞬で詰められ、あっという間に一機撃墜された。

 

「まだまだ!!」

 

敵の一団を通り過ぎたクロウは方向を変えて再び突撃する。リ・ブラスタは緑の尾を引く流星と化していて、無人IS達ではどうあがいても触れられないスピードに到達していた。そのまま何度も往復して一機、また一機と無人ISが空中で爆発していく。

 

「これで!ラストだっ!!」

 

一際大きく輝きながら最後の一機に突撃する。あっさりとその装甲をぶち破ると、空中で静止する。

 

「これが俺の生き様だ……」

 

クロウが呟くと同時に最後の一機が空中で爆散、破片が海へと落下していく中クロウは一夏達の方向を振り向いてスラスターを吹かして飛び去っていく。そのまま飛行して十数秒後、一夏達が戦っているのが見えてきた。

 

「一夏、どうだ?」

 

『クロウ!そっちは終わったのか!?』

 

「ああ。さて、最初の作戦通りお前の零落白夜で決めるぞ。準備しろ」

 

『しかしクロウ、攻撃を当てようにもその肝心の攻撃が当たらない。どうするのだ?』

 

箒が不安げな声でクロウに通信を送ってくる。しかしクロウの声は消沈した箒とは対照的にいつもの飄々とした口調で続ける。

 

「ああ、大丈夫だ。次は必ず当たる」

 

『え?』

 

「いくぜ、リ・ブラスタ!!」

 

クロウが相棒に語りかけると、すぐさま反応として現れた。空中で停止すると今度は青色の円の形をしたフィールドにクロウもろともリ・ブラスタ全体が包み込まれる。数秒後、フィールドが音を立てて壊れると、その中心には先程と変わらないクロウがいた。

 

「さあ、第二ラウンドといこうか!!」

 

しかしリ・ブラスタの姿は大きく変わっていた。まず先程まで各所が赤かった装甲が青色に染め上げられている。しかも左手にはバンカー、右手には灰色の無骨な大型の銃が握られている。背部のスラスターはブラスタの物をそのまま大型化したような形だった。今度の青いリ・ブラスタは先程とはまた違い、全体的にブラスタの面影を強く残している。空中でその光景を見た一夏と箒は一瞬、その姿に心奪われるがクロウの言葉ですぐさま前を向く。

 

「ほらお前ら、俺を見たって一円にもなりゃしねえぞ。前を見ろ、前を」

 

≪で、でもクロウ!それでどうすんだ!?≫

 

「一夏、お前はまず零落白夜を発動させる事に集中しろ。箒、お前は前で福音を攻撃し続けるんだ。俺は後方から援護に回る」

 

≪了解!!≫

 

空中で福音と切り結んでいた二人はクロウの指示に従う。一夏は後方に逃れて集中を初めて零落白夜発動の準備を、箒はクロウの言葉に従い両手にそれぞれ武器を構えて福音に突撃した。

 

「さてと、お前の初陣だ。派手に行こうか」

 

そう言って新しい銃、“AX-99 RAPTOR(ラプター)”のスコープを覗き込む。ダットサイト越しに箒と福音が切り結ぶ様子がはっきりと見える。息を整えて、集中しながら箒に通信を送る。

 

「いいか箒、俺が合図したら一直線に福音に突っ込んで攻撃を仕掛けろ。退路は俺が断つ」

 

箒の返事を待たずに通信を切る。そしてとうとうそのタイミングが来た。

 

「今だ、箒!!」

 

そう言って連続で引鉄を引く。RAPTORの銃口から発射された弾丸は青い尾を引きながら福音の退路を完全に断っていく。

 

≪はあああっ!!≫

 

箒もクロウの射撃に合わせて突撃、すれ違いざまに見事福音の胸部に深い切り傷を与えた。通信から箒の嬉しそうな声がクロウの耳に届いてくる。

 

≪や、やった!!≫

 

≪待たせたな。クロウ、箒!!≫

 

その声を聞いてクロウと箒が一夏の方向を見ると、エネルギーに体を包まれた白式がいた。素早くクロウは福音を無力化する準備に入る。

 

「来い、SPIGOT!!」

 

クロウは最強の武装であるSPIGOTを呼び出す。しかしその形は変わっていた。円形なのは変わらないのだが、明らかにサイズダウンしているのである。

 

≪クロウ、そのSPIGOTで大丈夫なのか?≫

 

箒から心配そうな声が送られてくる。まあ小さくなったら性能は下がっていると考えてもおかしくはないだろう。何せ前のSPIGOTの能力を目の当たりにしているのだ。小さくなっている事に不安を覚えても仕方のないことだろう。

 

「いや、こいつはこれでいいんだ。行け、SPIGOT!!」

 

クロウの所に一基残し、残りの三基が福音に襲いかかっていく。福音も空中を高速で移動して少しの間粘ったが、あっという間に頭部から生えている羽に二基が、福音の胸部に一基のSPIGOTがそれぞれ取り付いた。

 

「一夏、俺が射撃したら零落白夜を福音にぶち当てろ!!」

 

≪あ、ああ!!≫

 

「見せてやるぜ……」

 

そう言ってクロウはRAPTORを構える。それと同時に突撃しなかった一基のSPIGOTがRAPTORの銃口の前で動きを止める。福音は危機を察知したのか、SPIGOTを体に張り付かせたままクロウの方に突進してきた。

 

≪クロウ!!≫

 

「これが本当のゼロ距離射撃だ!!」

 

そしてクロウはRAPTORの引鉄を一気に引く。フルオート状態のRAPTORの銃口から弾丸が発射されるがその弾丸は全て消えてしまう。何故なら銃口の前に置かれたSPIGOTの中に全ての弾丸が吸い込まれていくのだった。しかも次の瞬間、一夏と箒はありえない物を目にする。

 

≪な、何だあれ!?≫

 

≪どうやっているのだ!?≫

 

何とどういう原理か、福音の羽と胸部に取り付いたSPIGOTから弾丸が続々と吐き出されて羽と胸部を打ち抜いていく。福音の羽は見るも無残な程ぼろぼろになり、箒が加えた攻撃とクロウの射撃が相まって胸部装甲はもう使い物にならない様な状態だった。呆気にとられる一夏をクロウが急かす。

 

「一夏、トリはお前だ。行けっ!!」

 

≪うおおおおっ!!≫

 

体にエネルギーを纏って一夏が突進する。羽と胸部にRAPTORの弾丸をくらった福音は既に動くことすらままならず、もはや空中にただ浮いているだけの状態だった。

 

≪これで終わりだあああっ!!≫

 

巨大化したエネルギーの刀身が福音を袈裟斬りにする。数秒、そのまま空中に留まったかと思うと、ゆっくりと海めがけて落下を始めた。

 

「一夏、回収しろ!!」

 

≪あ、ああ!!≫

 

一夏はクロウの指示を受けて福音の元へ加速し、無事に抱えた。既にエネルギーは残されていないのか、一夏が福音を抱えた途端装甲が解除される。

 

≪これで、終わったのか?≫

 

「ああ、お前ら良く頑張ったな」

 

≪や、やっと終わった~≫

 

へなへなと空中で力を抜く一夏。同時に福音の操縦者が一夏の腕から落ちそうだったので、クロウは慌てて一夏の元へと飛んで腕を支える。

 

「おっと」

 

「ご、ごめんクロウ」

 

「まあ気にすんな。初めてでこれだけ出来れば上出来だ。良く頑張ったな、一夏」

 

一夏に再度ねぎらいの言葉をかける。そのタイミングでクロウの元に通信が入ってきた。

 

≪クロウさ──、聞こえ──か!?クロウさん!!≫

 

ノイズ混じりの通信がクロウの耳に響く。ノイズがいくらか混じっているが聞こえない事は無い。

 

「おっ、セシリアか。どうだそっちは?」

 

≪クロウ、ラウラです。こちらは全員無傷……とはいきませんが何とか無事です。ただいま比較的ダメージの浅い私とシャルロットで鈴とセシリアを回収。両名とも無事です≫

 

≪クロウ、クロウ、本当に大丈夫なの!?怪我とかしてない!?≫

 

≪ちょっとアンタ、何が起きてんのよ!ISの反応が少しおかしいんだけど!!≫

 

「お前ら落ち着け、取り敢えず一人ずつ話してくれ」

 

一斉に送られてくる通信に閉口するクロウ。箒も二人の元に近づいてきて会話に加わる。

 

「クロウ、その女性を早く連れて帰って手当した方が良いのではないか?」

 

「そうだな。よしラウラ、お前は三人を連れて宿に戻れ。出来るか?」

 

≪速度がそこまで出ないので時間をかければ何とか≫

 

「そうか、なら現在位置で待機。俺と一夏、箒でお前らを回収した後一緒に宿に戻るぞ」

 

≪了解しました≫

 

そう言って通信を切るラウラ。クロウは同じ事を二人にもう一度言う。

 

「お前らも戻るぞ、何せ初めて命の取り合いって物をしたんだ。ラウラ達と一緒にさっさと検査を受けた方がいい」

 

「ああ、分かった」

 

「さて、じゃあ帰るぞ」

 

そう言って三人は大空を飛んでいく。夕焼けに染まった空を紅、蒼、白が並んで飛んでいった。

 


 
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