No.483317

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第六十二話 獅子の選択

2012-09-13 14:08:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6605   閲覧ユーザー数:6040

 第六十二話 獅子の選択

 

 

 

 闇の書の欠片。フェイトの偽物の件であったことを知ったはやてや守護騎士達は自分自身や自分自身の主。がまず説得することにより相手の戦意喪失や疑問をぶつけることにより欠片の者達が自壊していくのを見送った。

 中には主であるはやての事や今の状況を呑みこめずに戦うこともあったがそれでも事態は収拾に向かっていた。

 

 それは相手の心の隙間を埋めてあげること。という優しい意味合いも含まれていた。

 …だが。

 

 今の状況で相手と自分。互いのことをよく知っている者同士が最悪の形で発展したらどうなるのだろう?

 

 

 

 荒野が広がる世界。地面は煉瓦で出来たかのような地面とでかいキノコのような小さな山から大きな山までゴロゴロとした世界だ。

 高志は転送される前からアリシアとユニゾンしてこの世界に転送された。

 

 「…この辺にモニターで見たカオス・レオーがいる。というか、いた」

 

 (うん。いたね)

 

 その世界に転送されて早々。カオス・レオーに遭遇した。

 

 

 

 五十体以上の。

 

 

 

 「ふざけんな!多いよ!どこに隠れていたんだコンチクショウ!」

 

 (知らないよ!いきなり地面から現れてきたから隠れていたじゃないの!)

 

 ギャアアアアアアアアアアアアッ!

 

 チェインデカッターを起動させながら手当たり次第に襲ってくるカオス・レオーを両断していく。

 この五十体以上もののカオス・レオーはカラーリングが水色で量産機を思わせるカラーリングだった。モニターで見た金色のカオス・レオーは量産機のカオス・レオー。以下レオー。の群れの陰に姿を隠したというか見えなくなった。

 見た目と変わって装甲は紙に近い、腕を振りぬくだけで相手を両断できるのだが、その装甲の薄さを知ってか知らずか、俺と戦っているカオス・レオーの後ろから別の量産レオーの爪が目の前にいる味方すらも貫いてガンレオンに攻撃してくる。

 

 ガァンッ。

 (…か)

 

 「ぐっ」

 

 (まだまだ。この程度の攻撃ならあと千回はよゆーだよ)

 

 千回も喰らいたくはないけどな。

 とはいえ、腕を振り回しているだけでチェインデカッターに粉砕されていく途中でレオーの攻撃をひっかき傷程度に受けていると高志の頭に声が響いた。

 

 「…アリシア?何か言ったか?」

 

 (…?何も言っていないよ?)

 

 ガギィンッ。

 (…のか?)

 

 ガンレオンの装甲にレオー達の爪が何度も何度も当るたんびに、装甲を削る音と共に高志の頭に低い男性の声が聞こえてくる。

 

 「…だー、ウザったい!ライアット・ジャレンチ!セット!」

 

 (イエッサー!)

 

 両腕に持っていた電動ノコギリを投げ捨てると、そのノコギリは地面にぶつかる前に魔力の光となって消えた。そして、それの代わりに現れたのはガンレオンの背よりも高い巨大なレンチがガンレオンの前に現れる。

 

 「こいつでまとめて殴り飛ばしてやる!」

 

 ガンレオンの全身から各関節部分から大量の蒸気と音を吐き出しながらレオーを殴り飛ばしていく。

 殴り飛ばされたレオー達は宙に舞い、地面に落ちる頃にはバラバラになって崩れ落ちていく。

 そんな中でもレオー達は意志が無い人形のように殴られながらもその鋭利な爪をガンレオンに突き刺してくる。

 

 ガンッ。

 (それでいいのか?)

 ギィンッ。

 (お前の望みは?)

 

 ガギャンッ。

 (…嘘をつくな)

 

 ギリィッ。

 (この世界はそんなにも大事か?)

 

 ゴッ。

 (お前は…)

 

 「うるせぇええええええええええええええええええええ!!」

 

 高志はその声に覚えがあった。

 ただ、その声は転生してからは聞いたことが無い声。だが、転生する前は嫌でも聞いていた…。

 大人だった頃の自分自身の声だった。

 

 「はぁ、はぁ、はぁ…」

 

 (お兄ちゃん大丈夫?)

 

 「ん?体力・魔力ともにまだまだいけるぜ」

 

 レオー達全てを空に高々と打ち上げた高志は辺りの光景を見ながら息継ぎをしているとアリシアが話しかけてきた。

 

 (そうじゃなくて…。なんて言うのかな、今すぐに眠りたい。て、感じがしたから)

 

 高志は精神力が多大に消費していた。

 いつもの戦闘ならこんなにも疲労はしない。疲労の原因はあのレオー達の爪を受けた時に流れ込んできたメッセージ。

 それは俺に本当にこの世界でこのまま生きていくのか?と問う声だった。

 特殊な念話だったのかアリシアには聞こえていなかったようだけど…。

 

 ガシャンがシャンッ。

 

 「っ。やっと真打の登場か」

 

 (あ、金色。本物だよお兄ちゃん)

 

 レオー達の瓦礫の山の中から黄金の獅子が這い出てきた。そして、

 

 「…『太極』を求めろ」

 

 カオス・レオーは爪を鞭のように伸ばして襲い掛かりながらガンレオンとの距離を縮めようとする。量産型のレオーと比べると二回りほど素早い動きで襲い掛かる。

 高志はその爪をジャレンチで受け止めてやり過ごすと懐に飛び込んできたカオス・レオーがジャレンチで守れていない右脇腹に一撃を加える。

 

 「ぐぁあ!」

 

 (お兄ちゃんしっかりしてよ)

 

 「分かっている。スパナだ!」

 

 高志は瞬時に三本のスパナを取り出すと一本のヌンチャクにする。

 そして、それを振り回しながらカオス・レオーを滅多打ちにしていく。

 が、カオス・レオーはダメージを無視して俺と殴り合いを始める。すると、俺の持っていたヌンチャクレンチが奴の爪に引っかかり、奪われてしまう。

 

 「げっ。…なら、こいつだ!」

 

 ギャアアアアアアアアアアアアアアアアンンッッ!!

 

 再び電動ノコギリを両腕に装着してカオス・レオーの爪を削ぎ落す。

 そのままの調子で兜、背面部、足を削ぎ落した。

 丸刈りになったカオス・レオーは立っていられない状態になっても前のめりに倒れても俺に向かって何かを言ってくる。

 

 「何故、お前は『太極』を求めない?」

 

 「俺はそんなものはいらない」

 

 カオス・レオーの右腕を削ぎ落す。

 そぎ落とされた右腕は光り輝く本のページに変化して、輝きながら空中に溶けていった。

 

 「嘘だ。『太極』があれば帰ることが出来る。その可能性を思お前は見ないでいようとしている」

 

 「…黙れ」

 

 両足を力任せにぶった切る。

 カオス・レオーはガンレオンにもたれかかる。それでも言葉を紡ぎだす。

 

 「スフィアが手には言った時、喜ばなかったか?『太極』に近付けたときお前は何を思った」

 

 「黙れ」

 

 ガンレオンは電動ノコギリで金色の獅子の脇腹を抉る。

 

 「お前は分かったはずだ。スフィアの力を使えば世界を、歴史すらも作り変えることが出来ることを!」

 

 「黙れっ」

 

 胸部を覆っている装甲を引きはがす。

 

 「『太極』があればお前はこの世界から脱することが出来る。元いた世界に帰ることが…」

 

 「黙れ!」

 

 荒野の大地にカオス・レオーを叩き付ける。

 

 「目の前の奴らが羨ましかったはずだ。テスタロッサの家族を、守護騎士達を妬んだはずだ」

 

 「黙れ!」

 

 チェインデカッターを放り投げてただ、カオス・レオーを殴りつける。その黄金の兜に亀裂が入った。

 

 「『選べるんだ』。元いた世界に帰ることが!なのに何故ここを『選択』する!満足できるはずがない!見ているだけで苦しむ道を選ぶというのか!」

 

 「黙れよぉおおおおおお!」

 

 高志は馬乗りになった状態でライアット・ジャレンチを掲げ、その矛先でカオス・レオーに叩き付けて魔力を集中させる。

そして、

 

 ズドォオオオオオオオンッ!!

 

 カオス・レオーを中心に小規模な爆発が起こる。その爆発の中で消えていく。カオス・レオー。

 その爆発の際に兜が砕けた。そして、その兜の奥にあったのは二十一歳の男性の顔。

 この世界に転生する前の姿の沢高志だった。

 

 

 

 「あ~あ。金色、負けちゃったね。せっかく僕と星光が作ったのに…」

 

 青い魔力光を放つ少女はガンレオンのいる場所を見てカオス・レオーが飛び散っていったのを確認する。

 

 「ですが、獅子は順調にももがいているようです。順調に心を痛めつけていると言ってもいいでしょう」

 

 「そうか。『砕けえぬ闇』を手に入れる。その()になると思っていた獅子もあわよくばと思っていたが…。さて、では仕掛けるか?」

 

 「お待ちください。王。いくら心が疲労しきっているとはいえ、あの頑強な鎧は打ち崩すには今の所、雷光しか出来ません」

 

 炎のように赤い魔力光を放つ光は黒に近い紫色の光を諌める。

 

 「えっへん」

 

 「我が雷光より劣るというのか!」

 

 「そうではございませんが、何事にも得意分野というのがあります。雷光は力。私は理。王はそれを総べる。全体的に見れば王と私達は比べるのもおこがましいですが力だけ(・・・)なら雷光が上です」

 

 「…む」

 

 「んう?なんかひっかかるような?」

 

 紫の光は何か納得いかない様子だったが、赤色の光の謙虚な言葉に一応矛を収めた。

 

 「力ならあなたには誰も勝てないという事ですよ雷光」

 

 「えへへー♪もっと褒めて♪」

 

 「雷光は強い、偉い」

 

 「そんなことも…。あるよ♪」

 

 「…では、どうするというのだ?」

 

 「そうですね。体の疲労はしていない獅子も、心があれほどまで疲労すればすぐには動けないでしょう。ですから、我々は獅子が動けない間に『悲しみの乙女』から手に入れます」

 

 「あの融合騎か」

 

 「でも、あれってボロボロだったんじゃないの?それにまだ完全に熟成していなかったんじゃいの?」

 

 「アレを狙いながら守ろうとする私達のオリジナルと守護騎士達が出てきます。それを雷光と王が相手してください。彼女の仲間である守護騎士や主があなたに倒されれば彼女は悲しみ、成長を促せます。まだ戦える彼女を見逃すわけにはいかないです」

 

 「お主はどうするのだ?」

 

 「私は未だに出てこない私のオリジナルを倒してきます。温存しているのかそれとも融合騎の護衛をしているのか分かりませんが…」

 

 「不安材料を取り除くという訳か」

 

 「…えーと、つまりどういう事?」

 

 青色の光は未だに状況を把握できていないのか、首を捻っていた。

 

 「つまり、あなたは守護騎士を一人残らず倒してくれればいいんです。あの獅子はまだ手をつけてはいけませんよ」

 

 「わかった。それじゃ、行ってくるねー」

 

 バシュン。と音を鳴らせながらその場から去る青い光を慌てて黒い光が追う。

 

 「あ、これっ。待たぬか、雷光!我を置いていくでない!」

 

 「さて、それでは私も行きますか…」

 

 赤い光は一度、未だにその場から動こうとしないガンレオンを視線の先に移しながらその場を去っていった。


 
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