No.482391

真・恋姫無双 恋姫恋慕~あの日の君に~ No.7

OTIKAさん

恥ずかしさから顔から火が出てしまいそう
一度構想を練り直し、時間をかけてじっくりとおもしろいと思っていただけるような文章を書きたいと考えています
このような駄文を閲覧し、評価してくださってありがとうございました

2012-09-10 22:00:36 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3259   閲覧ユーザー数:2677

 

今、私が見ているものは全て、夢か、幻想か。

 

感じるのは「郷愁」

 

感じるのは「戸惑い」

 

感じるのは・・・「喜び」

 

 

――――――――――――――――――――――――北郷 一刀

 

 

私の中は、全てアイツで埋められて、それでも、まだ足りないのか、私の手は、アイツを探すかのよ

うに、ゆらゆらと、ふらふらと、空をつかむ。

 

「ふぅ・・・」

 

 

感じるのは「痛み」

 

感じるのは「疼き」

 

感じるのは・・・「後悔」

 

私は再び、還ってきた。

 

私の「北郷」がいる世界に。

 

「私達」の北郷がいる世界に。

 

全てを守ってみせる。

 

雪連様も蓮華様も、無論、本郷も。

 

「どうかしたの?思春」

 

・・・しまった、気をゆるませすぎていたようだ。

 

今は、雪連様達と合流するための行軍の途中。

 

いつの間にか蓮華様が私の横に馬を付け、話しかけていらっしゃった。

 

「いえ、このように限りなく続く大地を、忘れていたもので」

 

とっさに思いついたのは、当たり障りのないこと。

 

「そうね、私も少しばかり嬉しい気分よ。軟禁状態となって早二年。まさか袁術公認で出陣出来るよ

うになるとはね」

 

言いたかったのは、そのような意味じゃない。

 

だが、本当のことは伝えられない。

 

「はい。袁術が愚かであって良かったです」

 

「本当に愚かで良かったわ。でも、愚かだったおかげで姉様と合流出来る。・・・いよいよ孫呉独立

に向けての戦いが始まるのね」

 

「御意。およそ半日後には雪連様に合流できるでしょう。そこからが正念場です」

 

私は知っている。

 

これから始まる蓮華様の初陣から、全てを賭けた赤壁の戦いまで。

 

私は、全て、知っている。

 

「そうね。心して掛からないと」

 

「御意にございます」

 

そこで私たちの会話はいったん途切れた。

 

前を向いて馬を駆る蓮華様の顔には恐怖の色は見られないが、やはり、内心では恐々としているので

あろう。

 

「・・・やっぱり少し変よ。あなた、この頃ため息ばかりついているわ」

 

私の視線に気づいたのか、蓮華様が振り返ってお尋ねなさった。

 

そんなにため息ばかりついてただろうか?

 

「いえ、どこにも体調には異変は無いのですが」

 

「体調じゃないわ。なんていうのか・・・ずっと遠くを見ている感じ。郷愁を感じてる、という感じ

かしら?」

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

「それはそうです、蓮華様。雪連様たちと再び、共に戦うことができるのですから」

 

「そんなものかしら?」

 

「ええ、そのようなものです・・・」

 

本当に、久しぶりで、再び、だ

 

「本当に、姉様たちと会うのは久しぶりね。姉様、お元気かしらね」

 

「雪連様のことです。必ずやお元気でいらっしゃることでしょう」

 

「冥琳に迷惑を掛けっぱなしでしょうけどね」

 

「その自由闊達さこそ、雪連様です」

 

ふふっ、そうね。と、蓮華様がお笑いになった。

 

自分の心を落ち着かせようとしているのだろうか

 

雪連様たちのことを話題にお出しになった。

 

「でも・・・そう、確か、天の御遣いとか言ってる男を拾ったという話だったわね。そういうのは良

くないと思うんだけど」

 

「そのようなことはございません、蓮華様」

 

しまった

 

思わず本音が出てしまった。

 

「えっ?」

 

「いえ、なんでもありません。ですがその御遣いとやらは周喩殿や黄蓋殿もお許しになっているから

には、何か事情があるのでしょう」

 

「そうね・・・ただ、私は自分自身の目で見て、考えたことのみを信じる。その男がどういった人物

なのか。しっかり観察させていただきましょう」

 

「御意。そうされるのが一番かと」

 

そしてまた、蓮華様も北郷のことを・・・ふん、私一人で満足すればいいものを、あの種馬め・・・

 

「孫権様!!」

 

報告があったのはその時だった。

 

「どうした!」

 

蓮華様の代わりに私が報告を受ける。

 

「前方に騎馬の群を発見!牙門旗には「孫」の文字!孫策様の隊かと!!」

 

そうか、意外と早く着いたものだな

 

「よし解った!下がって良し!」

 

「はっ!・・・それともう一つ伝達が」

 

・・・おそらくだが

 

「なんだ?言ってみろ」

 

「はい、その、孫策様なのですが」

 

「姉さまがどうした!!??」

 

やはりな、あのお人には困ったものだ

 

「はいぃぃ!単騎で敵の小隊に突入!その後無事に合流されたそうです!!」

 

「・・・分かった。さがってよし!!」

 

報告に来た兵士が早足で駆けていく。

 

まあわかっていたことなんだがな・・・

 

「全く姉さまったら本当に迷惑ばかりかけて・・・急ぐわよ、思春!」

 

「御意」

 

・・・やっと会えるな

 

 

 

    北郷――――――――――――

 

 

 

 

 

「雪蓮っ!」

 

馬に乗り、揺れるその長く美しい髪を光に反射させながら走って来る親友は、大声で私の名前を呼んだ。

 

優しい声ではなかったけれど。

 

「はーい!私はここでーす♪そしてごめんなさーい♪♪」

 

明るく返事を返す私を、彼女は叡智に満ちた鋭い、涼しい眼光で射抜く。

 

まるでイケナイことをしたわが子を咎めるように。

 

「全く・・・雪蓮、これ以上私の心の臓を冷やさないでくれ。これ以上されると中から何かが飛び出

してしまいそうだ」

 

馬から降りることなく、彼女は心底疲れきった顔で私に冗談を言う。

 

・・・冗談よね?

 

「飛び出して来るって、何が飛び出して来るって言うの?冥琳」

 

何も出てこない、そんなこと分かりきったことだけど、まあ意地悪のような物かな?問い返してみ

る。

 

「・・・知りたいのか?」

 

今度はじとっとした湿った目で見られた。

 

単純に言ってバカにした目で。

 

これが私には結構、効く。

 

これが私の冥琳。

 

「いいえ、結構よ。もう、ちゃんと謝ったんだから許してよね~」

 

この話はもう終わり、ということを彼女に伝えるため、そっぽを向いて手を一度、二度、三度、振

る。

 

まあ、まだ冥琳のお小言は終わらないだろうけど。

 

それでこそ私の冥琳。

 

「ふん・・・まあいいだろう、私は許してやろう」

 

「さっすが冥琳ー、分かってる~~~~・・・「は」?」

 

・・・おかしい。

 

いつもなら「王としてうんたらかんたら~」とか言ってこのままお小言ルートなのに。

 

怒り、と言うよりはむしろ可笑しさをこらえる様にして、口を、どうして口角を上げているの?

 

「後ろを見てみろ、雪蓮」

 

びっ、と指差すのは私の後ろ。

 

私はその指につられて後ろを向いた。

 

振り返るまでの冥琳の顔は愉快なものを見た。

 

そんな顔。

 

「後ろって・・・・・・げっ!」

 

私の後ろに広がるのは果てまで抜ける青い空、針のごとくそびえる岩の山と、地平の果てまで広がっ

ている赤茶に焦げた荒野。

 

そして無人・・・じゃない。

 

「あの「孫」の牙門旗。おそらく蓮華様の旗であろうな」

 

でしょうね、薄っすらと見える広がった桃色の髪がその証拠。

 

お母様譲りの美しい、長い髪が、風を切る度に脈動する。

 

・・・それにしてもあの髪、広がり過ぎじゃない?

 

「お姉さまーーーーー!!またお一人で特攻なさったそうですねーーーーー!?そこで待っていてく

ださいッ!」

 

なんだ、髪じゃ無かったんだ。

 

あんなに広がっておかしいと思ったのよ。

 

あれは蓮華の桃色オーラだったんだ。

 

ずいぶんとトゲトゲしいオーラね、桃色なのに、ね?

 

私はもっと甘ったるい方がいいんだけどねー?

 

 

 

 

 

「穏。確か城内の地図があったな?」

 

我々は、雪連が特攻した一戦を除き、黄巾党と出会うことなく無事に敵が引き篭る城までやってきた。

 

その間、蓮華が雪連に色々と文句を言っていたが、雪連には馬耳東風、全く反省の色が見えないままだ。

 

「ありますよー。この城はもともと太守さんの持ち物だったお城ですからねー・・・はい、これで

す」

 

用意した机の上に置いてあった袋の中から、革で作られた長い包みが姿を表す。

 

「すまんな。・・・・・・」

 

その中から地図を引き出し、その机の上に広げる。

 

そこには簡略化はされているが考えるには十分な情報が詰まっていた。

 

さてと・・・どう攻略したものか。

 

机に広げた地図を覗きに、全員が近寄ってくる。

 

「後ろにそびえる絶壁・・・さらには狭まる左右の壁・・・前面からでしか攻略は無理、か」

 

なんとタチの悪い城だろうか。

 

まるで教科書にのってるみたいなお城ですねぇ、と穏がつぶやいた。

 

ふむ、と冥琳は地図の上に敵味方と見立てて置いている白黒の石をなにやら考えながら動かしてい

る。

 

「それはそうと」

 

雪蓮がパンッ、と手を鳴らして右に左にと目をやる。

 

「我らが孫の旗に加えて曹に袁に公孫、そして劉と。いい感じに集まってるじゃない」

 

「それは当然じゃろうに。この戦は良い宣伝になるだろうしの」

 

「そうですね、この多さで計算通り・・・といったところです」

 

「じゃが儂らが参戦する場所がなければ、功名もたてられんぞ?」

 

うーむ、と腕を組み深く考える祭。

 

「そのところは私たちの腕の見せ所というものです、そうだな穏?」

 

「はい~、一生懸命考えますよ~~!」

 

地図とにらめっこをしていた穏は一度顔を上げ、大きな胸を突き出して腰に手を置いた。

 

そしてまたすぐににらめっこだ。

 

「うーん・・・そうだ。ねえ思春、あなたはどう攻めればいいと思う?」

 

考えに詰まってしまった蓮華は、戦いにおける先輩であり師匠である思春に問いを投げかけた。

 

「・・・・・・」

 

だが思春は答えない。

 

「?・・・どうかしたの思春?」

 

いつもならすぐに答えが返ってくるはずなのに、と蓮華は思いつつもう一度話しかけた。

 

「・・・いえ、どう攻めれば良いか考えておりまして。申し訳ありません」

 

「あら、そうだったの。あなたにしては珍しいわね」

 

思春でもどう攻めると良いかわからないなんて、なんて城かしら、と考えつつ蓮華は地図をのぞき込

む。

 

「ですがどう攻めればよいか案はあります」

 

淡々と、まるで学生が先生に指名され答えを発表するときのように、思春は言葉を続けた。

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

と驚いた声をあげたのは蓮華、雪蓮、祭、穏、明命の五人。

 

「ほう」

 

とメガネがキラリと光ったのは冥琳だ。

 

「その案とやら、聞かせてもらおうか」

 

「御意」

 

思春は「前回」と同じように兵糧を焼き払う作戦を発表した。

 

冥琳を含めた六人は死角になっている倉の話に、してやられた、という顔になり、囮を使って潜入す

る案になるほど、と頷いていた。

 

そして話終えたあと。

 

「すごいじゃない!これならきっと上手くいくわ!!」

 

「うむ!鈴の甘寧の名は伊達ではない、といったところかの」

 

「すごいです!」

 

とべた褒めの戦好き達と、

 

「う~、これじゃあ私たちがいる意味ないですよ~・・・」

 

「これは一本取られた、というところか」

 

と悔しがっている軍師達。

 

「ですがこれでは・・・お姉さまが危険に・・・」

 

と言葉に詰まっているのは蓮華だ。

 

「戦に絶対はありません」

 

「思春・・・」

 

「絶対に勝てる、絶対に負ける、ということは私たちにはどうあがいても分かるはずのないことで

す」

 

「そうよ、だから姉さまが前に出るのは――――――」

 

「と、蓮華様がおっしゃられておりますので突入部隊の指揮は雪蓮様が、その後は祭様にとっていた

だきたく考えております」

 

「へっ?」

 

きょとんとした顔の蓮華。

 

「―――――へぇ、奇遇ね。私もそう考えていたのよ?思春。それでいいわね?祭」

 

「うむ、承った」

 

トントン拍子に話が進んでいく中、じっと思春を見つめているものが居た。

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

そして夜を待つ――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 
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