No.479826

IS外聞-BS/ビーストラトス

青辰さん

Mission-1-1 憤りの獣

2012-09-04 21:08:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:384   閲覧ユーザー数:381

 

インフィニット・ストラトス、通称-IS-は、日本のとある天才科学者、篠ノ之 束(しののの たばね)が、十年前に生み出した宇宙での活動を目的としたマルチ・フォーム・スーツ。

その性能は現行のあらゆる兵器を凌駕し,一夜にして、各国の軍事力が平伏すほどのものであった。

ただ、ISが現行兵器を普通に凌駕しただけであるのなら、世界は銃が、戦車が、戦闘機が出てきたように、さほど変わらなかっただろう…

 

しかし、ある1つの理由において、世界は急激に変革をした。

 

『ISが女性にしか扱うことが出来ない』

 

ということであった。

 

ISと操縦者の数がすべての軍事力を決め、その国の国力を表わすともなれば、女性の立場の向上は必須である。

 

-社会において男女の立場の逆転-

 

世界の軍事力の崩壊だけでなく、社会の崩壊をも、もたらしたのだった。

さらなる崩壊を防ぎ、秩序を保つため、各国は国を超えて、ISに対しての法整備、アラスカ条約や超国家機関、IS学園などの研究機関の設立が行われた。

その急激な変革は、各政府機関や国民は受け入れても、ISに対し大きな反発を持つ者も当然生まれた。

 

ISにより、立場を追われた者、職を失った者、様々な理由を持つ者により、武装蜂起、テロ活動が行われた。しかし、現行兵力を凌駕するISがある以上、戦闘はすぐに鎮圧されていった。

 

ISが世に出て、十年大規模な戦闘は減っていったが、IS保有国ではないところやISの保有が少数の国では、変わらず戦車や戦闘機による戦闘は繰り返されていた。

 

ここ広大な荒野、少数の森林であっても、豊かな自然と古き過去と新しき今を内包するオーストラリア大陸、タナミ砂漠の大空と大地に置いても、それは行われていた。

その行為は無為であっても、その意味が遥か先のことであっても、自らが持つ憤りを表わす事が出来る唯一の牙であったからだ。

 

藍色の円状の周りに赤と黒の二匹の蛇が描かれたエンブレムをした暗緑色のF-2Aに乗った目つきの鋭い少年、美空 鷲一(みそら しゅういち)もまた、その一人だった。

 

「へっ!派手にやってやがるな。」

 

と前方の戦闘を見て、にやりとする。

眼下の大地では、対地上戦は終わったらしく、十六車輌の戦車-M1エイブラム-が煙を上げ、走行不能に陥っていた。

戦車の操縦者達はハッチを開けて、叫び憤っている者、散り散りに逃げ出している者などが見えた。

 

空ではまだ戦闘は続いており、褐色にカモフラージュされたトーネードADV三機一編隊を三編隊で構成された部隊と、九機とF-2Aと同じエンブレムが入ったF-22ラプター三機が飛び交い、音速と銃弾の音が鳴り響いていた。

 

F-22ラプター三機は、ISの技術解析により、現在可能技術を持って、カスタム化されていた。さらに、操縦者の腕とも合い余って、トーネードADV三編隊相手に善戦していた。しかし、相手の数と編隊戦術に押されつつあった。

鷲一はその戦闘空域を睨み吼える

 

「テロリストども、空の戦い方ってのを俺が見せてやる!」

 

その言葉の勢いそのままにスロットルを開け、アフターバーナーを噴かし、あっという間に音速の域へと押し上げ、戦闘空域を両断した。

 

「F-2A!?なんだ、何者だ!?」

「藍丸に二匹の蛇…ニーズヘッグ・デンの援軍か!?」

「くそ、援軍だと!!」

 

テロリスト達は突然の乱入者に驚き、挙動が乱れた。

少年はF-2Aを上空へ宙返りさせつつ、左に翼を回転することで、空を頭上に位置修正する起動飛行-インメルマンターン-により、機体を一気に上昇させた。

そして、挙動の乱れた褐色のトーネードADV一編隊に、遥か上空から獲物を狩る鷲が如く急降下し、F-2Aは襲い掛かった。

 

キィヤ---イン

ズダダダンダダダン

 

音速の急降下から二丁のM134ミニガン7.62mmの銃撃浴びせ、トーネードADV二機の左翼、尾翼に風穴を開けた。

勝者たるF-2Aはツバメ返しのように機首を上げ、空高く舞い上がり、トーネードADV二機は左翼、尾翼から煙を上げて、緩やかに大地へと落ちていく。

 

それを見ていたリーダー格の者は、

 

「ふんっ、遅刻者が来たか…後で一発落としてやらんとな」

 

と口元を上げ、ニヤリとする。

 

「シュウのやつがきたか、遅れてきたやつに負けるわけにはいかないな!」

「へっ!俺もかますぜ!」

 

と他F-22ラプターに乗った操縦者、二人の士気も上がり、トーネードADVの編隊へ攻撃を仕掛ける。

 

「くっ、左翼が!高度が保てん!おのれ!」

「我々にこそ正義があるのだ!ニーズヘッグ・デンの蛇野郎が邪魔ばかりしてくれる!」

 

と被弾した二機の操縦者が毒づく声にシュウと呼ばれた少年の声が割り込む

 

「ふざけんな!無差別テロに正義なんざねえ!テロリストが吼えるんじゃねぇよ!」

 

と怒気を当てる。それにテロリスト達は

 

「ISなんぞ認めるわ…」

「あんな物のために俺た…」

 

憤りを現そうとしたが、

 

「うるせ―――てめぇ等と問答するつもりはねぇんだ。とっとと落ちろ!」

 

さらにシュウはテロリストの言葉を両断する。

それと同時にF-2Aの機首を下げ、右に翼を回し、逆宙返りをさせて、一気に高度を下げる-スプリットS-でトーネードADVの背後に回り、ミニガンの銃弾を容赦なく叩き込み、戦闘機の翼に風穴を開ける。

今度は下げた高度をインメルマンターンで押し上げて、攻撃優勢の位置へとF-2Aを操縦していく。

 

「あ、あれは本当にF-2Aか!?」

「F-2Aだけじゃねぇ、他のラプターもそうだ!」

「普通、あそこまで動いたら、ブラックアウトかレッドアウトして、落ちるはずだぞ!?」

 

トーネードADVに乗っている操縦者達は驚いていた。

現行戦闘機において、M(マッハ)2を超えたところが限界とされている。なぜなら、人間の耐えられる限界とされているからだ。

 

そこに上下に重力がかかると、血液が眼球内の血管に集中し、視野が赤くなるレッドアウト。

 

心臓より上にある脳に血液が供給できなくなり、完全に視野を失うブラックアウトになる等。

 

大きな操縦ミスや墜落となるはずなのだが、F-22にはまったく見られなかった上、現行の戦闘機の限界を超えた急制動を行い、攻撃と回避、機体移動を行っていた。さらにいえばF-2AはF-22より群を抜いていた。

現行の戦闘機の限界を超えた動きは、F-2Aの急襲も併せて、戦闘を終結へ導いていった。

 

四分後。

 

テロリストたちの戦闘機はすべて落ち、鷲一とニーズヘッグ・デンの仲間達は戦後処理を行っていた。

F-22のリーダー機に乗った操縦者は戦闘終結をしたとはいえ、辺りを警戒しつつ、

 

「マイルス。どうだ、下の反応は」

「はい、ゲイル隊長。今、結果が出るところです…生命反応(バイタル)確認終了、動けないのもいるようですが、問題はないようです。リッシュそっちは?」

 

マイルスは同僚のリッシュに訊ねる。

 

「こっちも特に問題はね…」

 

と報告しようとしたとき

Pippi---

とアラートが鳴る。

 

「レーダーに観あり、大型反応一機と小型反応九機、この反応は…オーストラリア軍だな」

 

と一瞬その場の全員に緊張が走ったが、敵ではなく、政府軍だった。

 

「お、ようやっとおでましか。ここの処理を任せて、ミッション終了だな。とっとと帰ろうぜ」

 

と鷲一が陽気に話しかけたが、リッシュは話を遮った。

 

「ん?こいつはそうもいかないようだ。大型のやつからISの反応が飛び出したぞ」

「なんだ?戦後処理の現場にISだぁ?」

 

とシュウは首を傾げる。

 

「この反応は………いつものお嬢ちゃんだぞ」

「げげっワン子かよ。あいつに拘わるとろくな事がねぇんだ…」

 

それを聞いた鷲一はげっそりとする。

 

「だが、あのお嬢ちゃんのお相手出来るのは、おまえだけだ。俺たちのF-22じゃ、いじってあるとはいえISに敵わんからな」

「じゃしんがりはまかせたぞ」

 

とマイルスは肩をすくめ、ゲイルはすえなく命令を下す。

 

「な!?ゲイルの兄貴、そりゃないぜ!」

「遅刻の罰だ。それに任務中は隊長と呼べといったはずだ。面倒はシュウに任せて、俺たちはさっさと帰還するぞ」

 

とF-22の三機は機首をニーズヘッグ・デンの駐屯地がある方向へ向けて、無情にも飛び立っていった。

 

「はぁ、面倒くせぇぜ…まってねぇでふけるか」

 

溜め息をつき、上空旋回から機首を駐屯地へ向けようとしたとき、

 

「ここで戦闘があったって聞いたから、飛んで来たけど!またあんたなの!」

 

無線にキンとした声が通った。レーダー反応があった方をみると、褐色のISが飛んできた。

日に焼け、膨らみを持った長い赤い髪をたなびかせ、少し釣り上がった目元に褐色の瞳で、鷲一のF2-Aを睨んでいた。

鷲一は褐色のISの上空に機体を飛ばし、旋回をし始め、無線を返す。

 

「キャンキャン、うるせぇぞ!ワン子!」

「ワン子じゃない!犬飼 銀子(いぬかい ぎんこ)だ!何度言わせるんだー!」

「じゃ犬子だな。どっちにしても同じ犬でうるさいのはかわらんけどな」

 

とクツクツと笑うと、銀子と名乗った少女は、右肩をわなわなとさせ、右肩から下げられたアサルトライフルの握り、引き金を引いた。

 

「死なす!」

「ハイハイ、ワンちゃんこちら。手の鳴る方へ」

 

と不意打ちにも拘わらず、鷲一はなんなくかわし、

 

「キィーーーーーーイ!!!」

 

と銀子は空中で地団駄を踏むという珍しい光景を見せていた。

 

 

 

 

 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択