~聖side~
「何っ!!? ……すまんが、俺の聞き違いかもしれないからもう一度言ってくれ…。」
「…でっ…ですから~…。お金が~…残り少なくて~…。」
「SBN!!!!!!!」
「「「「????」」」」
流石に一刀も分からないか…。
低燃費、リッター27kmのマ○ダ社のCMは…俺は結構好きなんだけどな…。と言うか、小○向さんが好きなんだけどな…。
「確か、寿春を出るときには相当な額を持って来たと思うんだが…。」
そう、計100枚ほどの銀を持っていたはずだが…。
確か、蓮音様にもそれだけあれば一周するのに間に合うだろうとか言われてた気がするが…。
「はい~…。確かに十分な量の銀を持ってきたんですが~…道中、人が増えたことで必要なものも増えましたし~、食事代もそれなりに~…。」
芽衣は俺の傍にやってきて、小声で言った。
確かに寿春を出るときに比べれば、人数は倍以上になっている。
自然とそれに連れてお金がかかるわけで…。でも、言ってそんなにかかってる気がしないが…。
「なぁ芽衣。本当にそんなに食費がかかってるのか?」
「びくっ!!? はっ…はい~…。」
そう言って俺から目線をそらす芽衣。
…なんかおかしい…。
「もう一度聞くけど、本当に食費に金がかかってるんだよな?」
「ハハハッ。ダカラソウダトイッテルジャナイデスカ~…。」
「じゃあ何故視線を俺から外す?」
「そっ…それは…。」
視線の先で橙里と一刀を見る芽衣…。
「…とりあえず、真実を話してもらおうか…。嘘吐きはどうなるか…分かるな?」
「「「…はい…。」」」
三人は観念したようで、俺の前に来るや、三人共膝を地面につけた状態で話し始めた。
「どうか、慈悲深き処罰をお願いいたします。」
「…罪状が分からん…。処罰は罪次第だ。 芽衣、話せ。」
「…申し訳ございません!! …今回の買い物で……その…使ってしまって…。」
「そんなに買ったのか!!?」
「おっ…女の子の服は高いので、お金がかかってしまうんです!!」
「…すまん聖。俺にはどうすることも出来なかった…。」
「……。」
「なぁ、聖。皆を許s…。」
「…全員、首を前に差し出せ。(チャキ!!)」
「「「っ!!!!」」」
「ちょ…ひじr……。」
「「分かりました…。」」
大人しく首を差し出す二人を見て、一刀は何か言いたげだったが、口をつむいで首を差し出した。
「金銭面はこれから領地を持つ上で大事になってくる。その管理が疎かになっていると言うことは、それはそのままその国の滅亡を意味する…覚悟は良いな?」
「「「はい…。」」」
「…ふぅ~…。」
「せい!!(ポコッ)『痛った~い~!!』」
「せい!!(ポコッ)『あぅぅぅ~…。』」
「せいや!!!!(ドゴッ)『ほぶぅぅ…。』」
俺は二人には鞘つきの状態で頭を軽く小突いて、一刀には抜刀術の勢いのままボディーに打ち込んでやった。
一刀が泡を吹いていたが…そこは、ほらっ!!主人公補正と言うかギャグ補正と言うか…そんなんが働くから死にはしないだろ…多分…。
あれっ?? 一刀の魂が浄化されていくような…。ハハハッ…俺知らねぇ…。
「ったく…。金を使っちまったのはもう今さらしょうがねぇ…。それに、年頃の女の子だもんな。服を買いたくなるのも分かる…。ただ、次からは自重しろよ? 俺は二度同じ事をする馬鹿を好きにはなれない。」
「「…はい。すいませんでした。」」
「分かればよろしい…。で、一刀。お前にはしっかり監視を命じたはずだが…? お前は役目をほったらかしたんだ。そのぐらいの罰が適当だと思うが…文句は?」
「…ありません。」
「よろしい…。しかし、どうするかな…。」
「あの…聖様の手持ちは…?」
「俺はもう無い。」
「聖だって使ってんじゃん!!」
「俺のは必要経費だ!!」
「そんなん認められるか!!」
「認められるんだ!!俺こそが神!!俺こそがルールなのだ!!」
「…何馬鹿なことやってんのさ、お頭…。」
「ん?おうっ、奏と三姉妹。お帰り。」
「ただいま、お頭。『ただいま~!!聖さん!!』一体何の話だい?」
「実はな…と言うわけで…。」
「ふ~ん。つまりは、金が残り少ないと…。」
「あぁ、そういうことだ。」
「困ったねぇ…。私ももうそんなに残ってないんだ…。」
頼みの奏もそんなに持ってないか…。こりゃしょうがない…。
「とりあえず、洛陽までは行けるから、そこでまた資金を稼ぐかな~…。」
「そうするしかなさそうですしね~…。」
「でも、洛陽の城主 董卓は私達を雇ってくれるでしょうか?」
「少なくとも、この町を見る感じ悪政をしてるようには見えない…。と言うことは、悪い奴では無さそうだし…。」
「なら、雇ってもらえるチャンスはあるってこと?」
「「「「ちゃんす?」」」」
「チャンスってのは機会って事だ。あぁ、確かに一刀の言うとおり、財政が逼迫してない状態なら雇ってもらえるかもな。」
「では…当面は洛陽で過ごす…と言うことですね。」
「麗紗の言うとおりかな…。三姉妹もそれで良いか?」
三姉妹に話を振る。
三姉妹は急に話を振られてか、驚いた表情をした後、悲しそうな表情をして呟いた。
「私達…邪魔??」
「は??」
「ちぃ達がいると邪魔かって聞いてるの!!」
「別にそんなことは…。」
「でも。実際人数が増えて、金銭面に余裕がなくなってるのは事実よね?」
「…まぁ、そうだが…。それは何も三人だけの問題じゃあ…。」
「元々次の町まで護衛についてくれるって言う話だったはず。なら、あなた達は今この時点では自由のはずよね?」
「私達としては~…。洛陽は都会だけど~、色んな町を回って、もっと多くの人に私達の歌を聞いて欲しいの~。だから~洛陽で滞在するって訳にはいかないんだよね~。」
「…つまり君たちは、俺たちとはもう一緒に行動できないってことか?」
「…はい。聖さんにはお世話になりました。」
「それでは、賊に襲われた時どうするんですか~!?」
「……なるべく賊に出くわさない様に善処します…。」
「…そうか…。頑張れよ!!」
俺の一言に、残りの皆は目を見開く。
が、三姉妹は直ぐに普段どおりの顔に戻ると、
「もっちろん!! 次に会うときにはこの大陸一の歌姫になってるんだから!!」
と、地和は笑顔で俺にそう言った。
「はははっ。楽しみにしてるな。」
「じゃあ、私達はここで…。」
そう言って三姉妹は俺達と分かれ、弘農の町に消えていく。
俺はその後姿を感慨深く見つめていた。
きっと、娘の旅立ちを心配する親心ってこんな感じなんだろうなって思う。
「良かったのか、聖?」
「あぁ…悲しいと言えば悲しいがな…。彼女達にもやりたいことがあるんだ。それを否定は出来ないよ。 …それに、彼女たちが出て行ったのは俺達のことを思ってのこと…。自分達がいなくなることで少しでも俺達の負担が軽くなればと、彼女達なりに考えた結果っぽいしな…。」
「大丈夫だよ、聖!! きっとまた会えるよ。この大陸にいる限り!!」
「…そうだな。もっと俺達もしっかりしなきゃ次に会ったときに笑われるな…。でもそのときは、彼女たちの歌をじっくりと聞きたいもんだ…。」
こうして、聖たちは計6人となって漢王朝の都 洛陽へと旅を続ける。
弘農から洛陽まではさほど距離があるわけではない。その為、移動にかかる日数はごくわずか。しかし、俺はどうしても見ておきたいものがあった。それが、首都洛陽を守る西の砦、函谷関だ。
別段、この時代に大きな戦いがあったわけでもない。前漢の時代では首都長安を守る砦であったぐらいか…。
後の時代の話ではあるが、ここで故事成語が生まれている。それは『鶏鳴狗盗』。
意味としては、一見役に立ちそうも無いものでも時には役に立つことがあるとかそういう意味だが、俺はこの言葉が好きだ。
人は誰しもその人に合った役割が存在すると思う。
先見の銘があり、頭の回転の速い者なら軍師などの文官に。武器を扱うのに優れ、人を纏める力のある者なら武官へ。そして、歌を歌うのが好きで、人々を惹きつけれるのなら、アイドルになる。
俺は、適材適所の仕事を与えることが、町を治めることに繋がると考えてる。
そりゃあ、自分に合った仕事をやった方が効率が良いのは言わずもがな…。まぁ、あくまでメインをその人に合った仕事にするわけで、サブで色んなことをして貰う様にはなるだろうがな…。
仕事とか役割っていうのは色々とあるもんだ。だから、万人が各々の得意なものの専門家になってくれれば、仕事のカバーが出来る。鶏鳴狗盗なんて故事、いらなくなるかもな。
そんな考え事をしながら函谷関を眺める。
「どうかしたか、聖?」
「いやっ、ちょっと感慨に浸っていただけだ。」
「さては三姉妹のことか? そんなに思ってたら嫉妬神たちが怒ってくるぞ?」
「…一刀、それがお前の死亡フラグだと気付いてないのか?」
その後一刀は首根っこを掴まれて、とても良い笑顔の芽衣に引っ立てられていった…。
口は災いの元とは良く言ったものだ…。
一刀、南無…。
「先生!!洛陽の町が見えてきたのです!!」
橙里の嬉々とした声が響き、俺がその方を見ると、目の前には想像以上のでかさの門…いやっ、確かに今までにも大きな門は見てきたけど…これはちょっと規格外も良いところで…。
流石洛陽…漢の都なだけはある…。
町に入ってみて気付くのは、とんでもない規模の大きな市場とそこを行きかう人々の活気のある顔…。とてもじゃないがここを董卓が治めてるとは思えない…。
俺の知る董卓は残酷非道…。酒池肉林のため、自分のやりたいようにやる、ならないものは斬って捨てる。そんな、髭の生えた太ったおっさんなのだが…。そんな奴がこんな善政をするわけが無い…。
しかも、町民にやらされてる気が見えないってことは自分達がやりたくてやってるんだ。そんな人心も把握しているような徳があるやつではなかったはずだ…。
と言うことは、やはり董卓も女で、しかも性格も変わっていると考えたほうが無難だ…。どんな娘なのだろうか…。出来れば、史実のように太っていて欲しくないものだが…。
「どうした、聖?」
「一刀…俺の知る董卓は暴政を敷く、残酷非道、残虐無道な髭を生やしたメタボ野郎だったはずなんだが…。この町にはそんな影が一欠けらも見えない…。ってことは、きっと董卓はこの世界では心優しい良い女の子だと思う!!」
「俺もそう思う!!」
「美少女だといいな~…。」
「俺もそうだと良いと思う…。」
「何がそうだと良いんですか~?」
「「芽衣!!!」」
まだ見ぬ董卓に思いを馳せていると、後ろから芽衣に話しかけられた。
「男二人でなにやらコソコソ…。男らしくないねぇ!!」
「「奏!!!」」
「どうせ、先生達のことですから…董卓が可愛い女の子だと良いな~とかそんなんじゃないですか?」
「「ぎくっ!!!」」
「お兄ちゃん…やっぱり可愛い娘の方が良いんですか…?? ぐすっ…。私は…確かに…あんまり可愛くは…無いけど…。」
「麗紗!! そんなこと無いから…。麗紗は可愛いから…。な? 泣き止んでくれよ…。」
「…ここは俺無関係なのね…。」
「まったく…。お頭たちは贅沢だねぇ。」
「ですね~…。こんなに可愛い女の子が四人も傍にいるって言うのに…。」
「おっ…男って言うのは!! …そういう生き物なんだ!!」
「「「「へぇ~…。(シラ~)」」」」
おふっ!! 皆の視線が冷たすぎる…。
俺の心へのダメージが、そろそろ臨界点を超えるぞ…。
「うぅ…。」
「はぁ~…。慣れよう慣れようと思っても、なかなか慣れるものじゃないのです…。」
「…ゴメンな皆、こんな俺で…。そろそろ幻滅したか? もしそうなら俺の許を離れてくれても構わないぞ…。」
「「「「!!!!!!!!!!」」」」
「そっ…それは、私達のことを嫌いになったってことですか!!」
「一体何が問題だってんだい!?」
「不満があるなら言ってくださいです!!」
「お兄ちゃん…!!」
皆が一斉に俺に迫ってくる。その迫力があまりにも強くて、少し気圧されてしまう。
「ちょっ…!! 一体皆どうしたんだ!?」
「だって、聖様が~!!」
「…俺が原因なのか? 俺が嫌われるならともかく…なんで皆を嫌いにならなきゃいけないんだよ…。」
「…私達は…あなたに…聖様に嫌われたら…生きていけないんです…。」
「脅かすのはやめてくれ…お頭…。寿命が縮む…。」
「大袈裟じゃ…なさそうだな…。でもな? 俺は皆を嫌いになることは無い。前々からそう言ってるだろ?」
「しっかりと、その言葉を言ってくれない先生が悪いのです…。」
「お兄ちゃん…私…まだお兄ちゃんに好きって言ってもらってない…。」
一体こいつらはまた何を言ってるんだか…。俺だって恥ずかしいんだよ!!
「聖、言ってやれよ…。」
「人事だと思って…。 んんっ………好きだよ…皆…。」
ここっ…この場が収まらないから、しっ…しかたなく言ったんだからね!!
「「「「………。」」」」
沈黙が場を支配する。これだけ恥ずかしい思いをさせておいて沈黙とは……あぁぁぁ穴があったら入りたい…。
「…わ…。」
「…わ??」
「私達も大好きです~!!!!」
と言う芽衣の掛け声にも似た一言をきっかけに、皆が抱きついてくる…。
ってかここ、町の大通りのど真ん中!! 人たくさん往来してるから!!
ってか、ほら!! 周りの皆が珍しいものでも見るように人だかりが出来かけてるじゃん!!
町の中心で愛を叫ぶ…ってか!!! 何この公開辱め!!! いやぁん~聖、恥ずかしい!!
はぁ~…いかんな、俺の人格が壊れそうだ…。果たして何時まで我慢してないといかんかな…。
それからしばらくは、洛陽の人々に奇怪な物でも見るような目で見られ続ける聖たちなのであった。
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どうも、作者のkikkomanです。
タイトル通り、誰かしらとのお別れです。
とは言え、言わなくても分かりますよね…。だってこのままだと黄巾の乱起きませんし…。
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