貴方は今何処で何をしていますか
゛なぁ 華琳 キミは今も覇王としての責務を果たしているかい?"
この空の続く場所にいますか
゛この空の何処かから またキミの元に還ることが出来るのだろうか..."
you~道化師にさえなれなかった御使い~
聖フランチェスカの寮 夜の帳がおり、誰もいない一室に変化が起きた。
何もないはずの空間から、急に光が溢れ出し、暗闇の中を、真昼かのように照らし出した。
そしてそこから一人の青年が現れた。
「うぐっ...」
次第に光が収まってゆき、辺りは何事も無かったかのように静まりかえっていた。
そしてそこには、初めからいたかのように横たわる青年がいた。そこに在るのが当然かのように。
゛ここは..."
青年は辺りを見渡した。そこには見覚えのある一室で、紛れも無く自分が生活していた部屋だった。
鞄や時計の場所は、自分の記憶と寸分の狂いもなく置かれていた。
「俺は...帰ってきたのか?」
青年は呟いた。
変わらないはずの部屋を見渡しながら。あの頃から何一つも変わっていない部屋を。
「って...なっ!?」
゛何も変わっていない!?俺があっちにいってからどれだけの時間が経ったんだ"
青年は置かれていた電波時計に目をやった。
ソコに浮かんでいたのは、自分が消えたはずの日だった。
「ウソ...だろ?」
青年は激しく狼狽した。
仕切りに時計を見直したり、変わったモノがないかを探すように。
しかし現実は変わらず、あの場所が無かったかのように主張するばかりであった。
「まさか...あれは夢だったのか?」
【胡蝶の夢】
青年は彼女と話していた事を思い出していた。
゛どちらが本当の自分かわからない か..."
「でも...こんなにはっきりと覚えているんだ。」
彼女と過ごした日々。彼女達と駆け抜けた乱世。そして...
「彼女を...彼女達を愛したこの気持ちが夢だったとは思えない!」
彼女に拾われ、天の御使いとして祀り上げらた。
天の知識として彼女達の覇道の手助けをした。
赤壁の戦いで、自分が自分ではなくなってしまうような感覚があった。
自分が消えてしまってもいいと、決意した。
そして...消える瞬間に、やはり消えたくないと思ったこと。
その全てが今も自分の中にある。
「ほかの全ては否定されてもいい。だけど、この気持ちだけは この想いだけは否定させない!」
青年は誰もいない空間に向かって叫んだ。自分の気持ちをより強固にするかのように。
遠くに虫の鳴き声が聞こえ、青年は次第に落ち着きを取り戻していった。
夜も深い中、静かな部屋。嫌が応にも、独りだということを認識させられる。
「独り...か」
青年の呟きは闇に呑まれていった。青年は立ち上がり、音を立てないように気をつけながら窓のほうへと向かった。
そして空を見上げ、何かを思い出すかのように呟いた。
「綺麗な満月だ。あの時ほど星は見えないけど...あの大地で見た月と同じ、綺麗な満月だよ。」
そして青年は思い出す。愛しい彼女達を。
彼女達と愛し合った日々を。
「今、君達は何をしてる?俺の事を忘れないでいてくれると嬉しいな。」
一抹の願い。されど青年にとっては、縋るべき希望。
「本当は消えたくなんてなかった...ピエロでも良かったんだ。キミの笑顔を近くで見れるなら。」
些細な願い。しかしそれは過ぎた願い。世界が許さなかった理(ことわり)。
「華琳...今、無性にキミの声が聞きたいよ...」
青年...一刀は静かに涙した。
それは最愛の人と別れたことか、世界への恨みからか。
涙の理由はわからなかったが、一刀は涙を流し続けた。
「俺はもう...君達には会えないのかな。」
呟くと、それが酷く現実実を帯びているようだった。
それでも、もうこの気持ちは止まることなく、溢れ出した。
「皆に、会いたい。もう一度会いたいんだ...」
失意に呑まれ、朦朧と呟いた。誰からも返答はなく、辺りは静寂に包まれるだけだった。
一刀は覚束無い足取りでふらふらとベッドへ向かい、そのまま倒れこむように横たわり、意識を失った。
あとがき
調子に乗って第二弾です。ここまでが一先ずぷろろーぐ。次回から本編?スタートです。
物語を書くというものは、構成から考えるべきなのか、言葉の勉強(言い回しや表現力)から始めるべきか迷い、結局両方せずに書き始めました。
おかしな所等 いっぱいあると思いますので、気づいた方はどんどんご指摘して頂けるとありがたいです!
さて、今回は一刀編。前回とは全然違った形にしてみました。
次話からは、更に変則的な形になり、少々わかりづらくなるかもしれないですが、お付き合い頂けると幸いです。
これからも一人でも多くの方に満足していただけるように精進していきます。
では、ご指摘やご感想をお待ちしております。
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you~寂しがり屋の女の子~の続編?
一刀視点です。
乱世が終わり、自分の役目を終え天に帰った御使い。
彼は一人になり、何を想うのか。