場所は再びセプテントリゾート。
まぁ前回も書いたので周りの風景その他諸々の説明はめんどくさいので省く。
ケイにもらった紙切れによるとどうやらここに『ゲイムキャラ』が居るらしい。
「ゲイムキャラさん……どこでしょう……?」
コンパが周りを見回し呟く。
「ここら辺に居るはずなんですが……?」
ネプギアもケイから貰った紙切れを片手に周りを見回す。
「あーッ!もしかしてあれじゃないかな~!?」
突如日本一が遠くを指差す。
「………なんだあれ?さっきあんなのあったか?」
日本一の指差した先―――行き止まりで小さな広場みたいになっていたが、何故か橋上にもかかわらず小さなログハウス的な物が建っていた。
「………バリバリ怪しいわね……」
ネプギア達がログハウスに近づくと表札にはご丁寧に『★ラステイションのゲイムキャラ★』と書いてあった。
「………なんだこりゃ?随分と可愛らしい所に居るんだな。」
ソニックが首を傾げる。
「と、とにかく中に入ってみましょう!」
ネプギアはそういうと入口をノックした。
「失礼します。」
ギィ……
そして、ドアを開けると恐る恐る中を覗き込む。
外見に反して意外とログハウスの中は狭く、大人が七人程入れるスペースだった。
そしてログハウスの奥――天窓から差し込む太陽の光が降り注ぐベストポジションに木で出来た机が設置されていた。
そして、その上に黒いディスクが置いてあった。
「すみませ~ん……?」
一同が中に入るとネプギアがディスクに声をかける。
ポワァッ……!
すると、ディスクから漆黒の光がゆっくりと浮かび上がる。
「………お前は、プラネテューヌの女神候補生か……?」
ディスクの真上を浮遊する光からハスキーな声が響き渡る。
(―――こんな分かりやすい場所に居るのに、何で私達気づかなかったのかしら……)
アイエフが心の中で呟き、額を押さえる。
「は、はい!お願いです、私と一緒に来てください!」
「………待て、訳も分からぬまま同行できるはずが無い。」
(………おいおい、あの表札嘘だろ……全然キャラちげーじゃん……)
そんな二人のやり取りを聞いていたソニックは肩をすくめやれやれと首を振る。
「お姉ちゃん―――女神達がギョウカイ墓場で捕まっているんです。だから助けるためにあなたの力を貸して欲しいんです!」
ネプギアの言葉に光はふむ……と声を発する。
「やはり、女神は余所の地で捕らわれているのか……」
「はいです。ですから、私達と―――」
コンパが口を開くが……
「ならば尚のこと、お前達と一緒に行くわけには行かない。」
「Huh?」
「私は……女神の身に何かが起きたとき、代わりにこの地を守護する………それが、『ゲイムキャラ』としての使命。」
何故だか、ゲイムキャラの言葉が皮肉っぽく聞こえた。
「私がこの地を離れれば、この地を守る者が完全に居なくなってしまう。私は約束を交わしたのだ―――古の女神、そして桐生という男と………」
ドクンッ―――!
「?」
突如背中が熱くなった気がして、ソニックは自分の背を見つめる。
「けど、それじゃあ女神様はどうするの?」
「………………」
ゲイムキャラはすぐには答えなかった。
「――――私の使命は女神の代理だ。女神を助けることではない。」
「で、でもそれじゃあ………」
ゲイムキャラの言葉にネプギアが口籠もる。
その時だった―――
バンッ!!
ログハウスの出入口が勢いよく開く。
その音に反応して一同は振り返った。
「見~つけたッ!!ようやくラステイションの『ゲイムキャラ』を見つけたッチュ!!」
そして、なんだか可愛らしいというか、若干高めの声が響き渡る。
「誰ッ!?」
アイエフがカタールを構え振り返る。
そこに居たのは―――
「―――ネズミさん?」
コンパが素頓狂な声を発する。
そこに居たのは体調およそ………30cm程であろうか?全体的に灰色で二足歩行のネズミだった。まるで某人気キャラのように丸い耳をしており(規制されたらやばいんでこれ以上は言わry)、腹には割れハートの絵が描かれており、細い尻尾の先っちょにはでっかい割れハートがくっついていた。
「チュ?」
ネズミ――――ワレチューはコンパの声に顔を上げる。
「…………ッ!!!!!!!?????」
ドギューーーーーーンッ!!!!!
その刹那、ワレチューの脳内で発砲事件が生じた。(注 容疑者はコンパ〔前科者〕です。)
(か……………可愛いッ!!!!?)
発砲事件とは言ったものの、ただ惚れただけのようだ。
「……………ハッ!?いや、駄目ッチュ。いくらカワイ子ちゃんでも、ボスの命令ッチュ。」
そう呟くとワレチューはコンパの腕を掴み、そのままずんずんと歩き出そうとするが圧倒的な体重差で動かない。
「ふぇ?ネズミさん、どこに連れて行く気ですか~!?」
1人で勝手に進もうとしているワレチューにコンパが尋ねる。
「カワイ子ちゃん、悪く思わないで欲しいッチュ。『ゲイムキャラ』を消滅させろってボスの命令ッチュ。」
「「「「!!!!???」」」」
(え……何言ってんのコイツ……)
ソニックは冷や汗をかく。
どうやらワレチューはコンパをゲイムキャラと勘違いしているらしい。
「えっと……私はゲイムキャラさんじゃないですよ?」
「チュッ!?」
コンパの言葉にワレチューは目を爛々と輝かせて振り返る。
「ホントッチュか!?やったッチュ!!これで―――じゃなくて……か、カワイ子ちゃん、あの……お名前は?」
「こ、コンパですけど………」
「コンパちゃん!コンパちゃん可愛い……!コンパちゃんマジ天使!!」
むんず!
アイエフが1人で勝手にテンション上がって盛り上がってるワレチューの首筋を掴み持ち上げる。
「ヂュッ!?」
「………あんた、もしかして犯罪組織の一味?」
そして持ち上げたままワレチューの顔を覗き込み尋ねる。
「いかにもそうッチュ。」
バタンッ!
ドガッ!
アイエフはワレチューを掴んだまま出口を開けるとそのままワレチューを放り投げた。
「ヂュウゥゥゥッ!!!?」
痛かったらしくワレチューが悲痛な叫び声をあげる。
「な、何をするッチュ!」
ワレチューが立ち上がるとこちらを見つめてくる。
シャキッ!
アイエフは何も言わずにカタールを構える。
「悪いわね。私達、犯罪組織は嫌いなの。」
「ヂュッ!?」
ギギギ……!!とまるで機械のように首を動かし、不安そうにコンパを見つめる。
「……そ、それじゃコンパちゃんも……ッ!?」
そしてそっと尋ねる。
「大嫌いですッ!!世界をこんなにした犯罪組織なんて大ッ嫌いですッ!!」
がーンッ!!
急所に当たった!効果は抜群だ!
ワレチューに253のダメージ!!(HP -252/1)
「大ッ嫌い……!?しかも二度も言われた……!!う、う、うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!!!」
まるで駄々っ児の様にジタバタしはじめた。
やがて暴れだし、橋上の設備を次々と破壊していく。
「お、おいおい……!」
そんなワレチューの様子を見ていたソニックはポリポリと頭をかく。
「ネプギア、敵だよッ!」
日本一がログハウス内に居るネプギアに声をかけるが返事が無い。
「ネプギアーッ!!」
「は、はい!」
日本一がもう一度デカイ声で呼ぶと流石に気づいたらしいネプギアが出てきた。
「て、敵はどこですか?」
頬に汗を垂らしたネプギアがビームソードを取り出し構える。
「あれ。」
日本一が指差したのは半狂乱になり設備を破壊し続けているしているワレチュー。
「……え?」
強敵を想定していたらしくネプギアは目を丸くする。
スッ―――
どうやら落ち着いたらしく、ワレチューは破壊活動を休止するとこちらを振り向いた。
「………こうなったら自棄ッチュ。みんなぶっ飛ばしてやるッチューーッ!!」
バッ!
ワレチューが叫ぶとソニックめがけて跳躍してきた。
「ッ!」
バッ!
バキッ!
「ヂュッ!?」
しかし、ソニックがすばやく横にかわし回し蹴りをするとワレチューはあっけなく吹っ飛ぶ。
―――ポテッ。
そして地に落ちた。
この時の一同の心情は一致した。
(―――え、弱ッ…………)
ヨロヨロとワレチューは立ち上がる。
「き、今日はショックで本調子出ないッチュ……今日のところはひとまず引き上げるッチュ……」
ピューーーッ!
そう捨て台詞を残すとワレチューは一目散に逃げていった。
「な、何だったのあいつ……」
そんなワレチューの背中を眺めつつアイエフは呟いた。
「……あれが、今のゲイムギョウ界に仇なす敵か……?」
ログハウスから出てきていた光が一同に尋ねる。
「奴はその1人さ。今のは弱かったけど強い奴もゴロゴロ居るぜ?」
「しかも、その敵にゲイムキャラの居場所を知られたってことになるわ。」
「そのようだな。しばらくは身を隠さねばならない。」
だったら……!とネプギアが口を開く。
「私達と一緒に来てください!絶対に守ってみせます。」
「それは出来ぬ。」
しかし、あっけなく一言で切り捨てられた。
「も~!ゲイムギョウ界全体があんな感じなのに自分の土地さえ守れればいいの?」
日本一が地団駄を踏む。
「……………」
しかし、ゲイムキャラは何も言わなかった。
「――――暫くだな、ラステイションの『ゲイムキャラ』。」
「えッ!?」
突如聞こえた渋い低音に一同は振り返った。
そこに居たのはソニック。
だが、いつもと様子が違う。物静かな態度に低い声……いつものソニックとはまるで別人だった。
「その目、その声………まさかそなた、桐生か?」
(桐生!?)
ネプギアの額に汗が浮かぶ。
「ああ。この者の姿を借りてお前に話しかけている。」
「何故だ?何故生きている?」
「生きてはいない。魂がこの剣に宿っているだけだ。」
シャッ!
そういうとソニックは龍刀を抜き取る。
「……そうか、あの時そなたが使っていた剣か。」
「ゲイムキャラ、どうしてもこの者たちに同行できないのか?」
「ああ。それが例えそなたの頼みであっても、だ。」
「……フッ。」
「何がおかしい?」
「相変わらず、人を試すのが好きだなお前は。」
「…………」
「お前自身が同行できなくとも、お前には力の一部を託す能力があるはずだ。それをすぐにやらないのはこの者達を試しているのだろう?この者達の『力』を。」
「………実力が分からぬ者に、力を貸せるわけがない。先程のような雑魚と戦っても真の実力を知ることはできない。実力が無ければ例え私が力を貸したとしても、女神を救出できると限らない。」
スッ―――
ソニックは徐に剣を差し出した。
「―――まだそれほど時間は経っていないが、プラネテューヌを出てからこの者達と戦ってきた。そして、この者達は見事な技、コンビネーションで様々な困難を乗り越えてきた。俺はそれを何度も見ている。それだけでなくこの者たちは仲間を大事にしお互いを思いやり信じあう心の強さも持っている。」
「…………」
「きっと、この者達なら女神を救出できる……俺が保障する。この者達に力を貸してやってくれないか?」
「…………」
「それに、お前は女神の居ないラステイションを守ろうと必死だが、守るだけでは守れないものもある。それに気づいていないのではないか?」
「………分かった。そこまで言うのなら力を貸そう。」
光はネプギアの頭上で動きを止めゆっくりと下降しネプギアの手の中に舞い降りる。
「……え?」
そして光は黒いディスクとなった。
「これが私に出来る精一杯のことだ。この世界を……女神達をよろしく頼んだぞ。女神候補生。」
「はい、ありがとうございます!」
どこからか聞こえた声にネプギアは笑顔を見せ礼を言った。
「そして桐生。これからもこの者達をサポートしてやってくれ。」
「ああ、分かった。」
「では。」
ゲイムキャラの声が聞こえなくなった。
チャキンッ!
ソニックはそっと剣を鞘に納めた。
その刹那ソニックはハッとし、周りを見回した。
「………What?どうなってんだ?」
そしてそう呟く。
どうやらソニックは桐生に体を乗っ取られた時の記憶がないらしい。
「まぁ、ちょっとね。でも、ゲイムキャラの協力は得られたわ。」
「?まぁ、よく分かんねえけどどうやら上手くいった様だな!」
「うん!ありがとうソニック!」
ソニックの言葉にネプギアが笑顔で礼を言う。
「Huh?俺何かお礼を言われることしたか?」
しかし、何故礼を言われたのか分からず聞き返す。
最後に、アイエフが口を開いた。
「そうね、どうやら私達には『龍』が味方してくれてるみたい。」
「?」
しかし、やはりよく意味が分からなかった。
しかし、その言葉を聞いたとき再び背が熱くなった気がした。
「―――どうやらゲイムキャラの協力を得られたようだね。」
「はい。」
場所はラステイションの教会。
ネプギア達はケイにゲイムキャラ入手の報告に来たのだが、やはり知られていたらしい。
「ラステイションでの君達の用事は殆ど終わったと思うんだけど、次は何処へ行くつもりなんだい?」
「はい、次はルウィーに向かいます。」
「大分時間がかかったしな。すぐに向かったほうがいいぜ!」
「そうか……けど、今から行くのは危ないんじゃないかな?もう暗くなるだろう。」
現在時刻18時12分。
確かに遠出をするには少し遅い時間だった。太陽が西に沈みかけて空全体が茜色に染まっている。
「折角だから泊まっていったらどうだい?今からルウィーに向かったら凶暴な夜行性モンスターが出没するだろうし。」
「……………」
しかし、アイエフはジーッと細目でケイを見つめる。
「―――泊まる代わりにまたビジネス云々の話になって素材持って来いとか言うんじゃないでしょうね?」
「いや、それはない。君達にはユニとブラックが世話になったようだし、是非泊まっていって欲しい。むしろこれは僕からのお礼と捉えて欲しいな。」
ユニ―――その名を聞くとネプギアは「あ……」と口を開く。
「あの、ユニちゃんはどうなったんですか?」
――――最後に会った時、何も言わずに行っちゃった……
――――もしかして、私嫌われちゃったのかな……?
「ユニなら、先程から部屋に閉じこもっているよ。普段からよくあることだ。気にしないでくれ。」
――――ユニちゃん……
心の中でその名を呼ぶ。
何故だか、気になって仕方が無かった。
「――――じゃあ、シャドウ―――いや、ブラックはどうなったんだ?」
続いてソニックが口を開けた。
「ブラックなら、現在別の場所で救護を受けている。彼ならすぐに回復するだろうし心配は要らないだろう。」
よかった~!と日本一が安堵の声をあげる。
「でもびっくりしたよね~!突然攻撃してきたんだから!」
日本一がそういうとケイは一同に背を向けた。
「―――彼の代わりに僕が君達にお詫びする。突如君達に攻撃をして悪かった。けど、あまり彼を責めないでやって欲しい。彼も可哀想な身なんだ。」
「……………………」
ソニックは眉間に皺を寄せ腕を組んだ。
――何故だか分からないが、何となくそんな気がしたのだ。
「どういうことなんですか?」
コンパが尋ねる。
ケイは何かを思い出すかのように高い天井を見上げる。
そして、語り始めた。
―――実のところ、僕達も彼の事はよく分かっていない。彼はどこからやってきたのかも分からない。元々ラステイションの住人じゃなかったんだけど、教会のすぐ傍の森の中で彼がボロボロの状態で倒れているのをノワールが見つけたんだ。ノワールが彼をラステイションの病院へ連れて行き、朝まで看病すると目を覚ましたんだがノワールを初めとする人間達を見るや否や急に暴れだし、どこかへ飛び出していってしまったんだ。
「君達はまた意味も無く僕を殺そうとする気かッ!?」
その言葉を残してね。ノワールがその後を追って辿り着いたのは彼が倒れていたあの森だったんだ。
まるで悪魔を見るようにノワールを睨みつける彼はこう言ったんだ。
「何故だ?何故君達は僕を殺そうとする?『人間ではないから』だと!?それだけで僕は殺されなければならないのかッ!?人間でなければ『存在』することすら許されないのかッ!?」
そう言って彼はノワールに襲い掛かった。
初めは苦戦したようだけどなんとか彼を静めたノワールはそのまま教会へと彼を連れて来て再び朝まで看病した。ノワールからその言葉を聞いた僕は色々調べた。
当時、ラステイションではモンスター狩りが盛んなことだけあって『闘技場』が建設されていたんだ。ラステイションの凶暴なモンスターと狩りに自身があるハンター達が戦うその闘技場は一時は人気があったけど、モンスターの数が減ってしまったことで取り壊されてしまった。しかも、その闘技場というのは僕達―――女神の了承を受けていない非公式の闘技場だったんだ。
きっと、彼はその時ストレスが溜まったハンター達から虐待されたのだろう。元々戦闘能力が高い彼はハンター達の恰好の相手となった。ハンター達はよく2人、4人と数を作り彼を襲った。彼が仲間と言う言葉を嫌う理由はそこにあるんだろう。きっとハンター達から逃げ切ってあの森で力尽きたのをノワールが見つけたのだろう。
それを知ったノワールはラステイションの国民に注意を呼びかけた。
『今後、無意味に彼に手出しするものはラステイションから永久追放する』と。
それから、彼はノワールそしてその妹ユニに徐々に心を開くようになっていった。
彼の強さを認めたノワールは女神の名を一部とって彼を『ブラック』と名づけ、女神の側近そしてラステイションの特殊警備に任命された。それで今に至るんだ。
「―――酷い……」
ケイから一部始終を聞き胸が痛くなったネプギアは小さくそう呟く。
「思えばあれから3年以上経つかな?天涯孤独の身の上、表には出さないけどブラックは今、世界の誰よりもノワールとユニを大事にしている。そんなユニと戦っていたあなたを見て頭に血が上ったのだろう。」
「でも、それじゃ仕方が無いよね。」
日本一は腕を組みうんうんと頷く。
「けど、時々彼は虐待されていた時の事を思い出して発作を起こすんだ。心の傷は完全に癒えていないからね。」
「「「「「あ……!」」」」」
その言葉に一同はあの時のことを思い出す。
―――ギルドで苦しそうに頭を押さえていたブラックの姿を………
「……そうだったのか。」
「さて、暗い話はもう終わりにしよう。君達は教会の奥にある客室で寝泊りして欲しい。部屋は沢山あるから問題ないだろう。僕はそろそろ仕事に戻る。何かあったら教祖室まで来て欲しい。」
「分かりました、ありがとうございます!」
「それでは。」
そう言い残すとケイは踵を返しスタスタと歩いていった。
「さて、それじゃ部屋に行きましょう。」
「All right!」
ネプギア一行も歩き出した。
現在時刻は23:00。
辺りはすっかり暗くなっていた。良い子ならとっくに寝ている時間である。(俺は良い子じゃないのか?)
先程シャドウ………いや、ブラックからモンスター討伐を頼まれた時言っていた通りコンパがポケ●ンカレー(甘口)作ってくれたので皆で食べた。アイエフがめっちゃ美味そうに食っていたのが今でも忘れられない。
その後、水が苦手な自分を除く皆がラステイションの風呂に入った。だが、流石に体を洗わないのは汚いのでGA●SBYで体を拭いた。おかげで今体がスースーする。
そしてそれぞれ、部屋に入った。恐らく皆もう寝ているだろう。アイエフはTwi●terやってるかもしんないけど。そういや俺最近ログインしてないな……最後に呟いた内容は確か「チリドックなう」だった気がする。
まぁそれは置いといて、俺は正直あんまし眠くないから現在教会のバルコニーで壁に寄りかかって座り足を組んで星空を見上げていた。
「いや~、最っ高だねぇ♪」
なんて、1人で呟いてみる。たまにふと誰も居ない所で呟いてみたくなることってあるよな?
俺は1回大きく伸びをして再び空を見上げる。
静寂と優しい闇に支配された大空から俺と同じく丸くて綺麗なお月様がこんばんはしている。お月さん、夜勤ご苦労さん!
月光がちょっと強く、少しだけ明るかった。
「………………」
テイルスやナックルズ達も今頃俺の元居た世界でおんなじ月をみてるだろうか?
………なんて思うことがたまにあるんだよな。どうしても元居た世界のことが心配になることがある。まして今はあの髭のオッサンが何しでかすか分かんない状況だしな。まぁ、テイルスにナックルズ、シャドウが居るから大丈夫だろうけどな。
ラステイションに来てから建物壊したりしてバタバタしてたからあんまし探す暇がなかったけど、早くカオスエメラルドを探さないとな……。けど、今はゲイムキャラを探すのに忙しいから本格的に探せるのはその後か……?
ガララッ!
なんて色々考えてたらバルコニーの窓が開いた。
「?」
誰だ?
俺はゆっくりと視線を窓へと向ける。
「………あ、ソニック。」
夜風に髪を靡かせたパジャマ姿のネプギアだった。左胸に『N』って書いてあるピンク色の極普通のパジャマだった。
「よ!どうしたんだこんな遅くに。早く寝ないとお肌に毒だぜ?」
「うん……何だか寝付けなくって……」
「何か悩みでもあるのか?」
「ううん、そういう訳じゃないんだけど……」
なんて会話をしていると、ネプギアはそっと俺の隣に来て体育座りする。
俺とネプギアは少しの間星空を見上げていた。
今、俺の耳に入ってくるのは虫の鳴き声くらいだった。
「………綺麗だね。」
「あぁ。」
「………お姉ちゃんにも見せてあげたいなぁ……」
「そうか……じゃあ、早く助けてあげないとな。」
「………ねぇ、ソニック。」
「What?」
「………ソニックは寂しくないの?」
「Why?」
「……だって、知ってる人が誰も居ない世界でたった一人ぼっちなんだよ?」
「別に寂しくはないな。慣れっこだし、それに一人ぼっちじゃないぜ?ネプギアやコンパ、アイエフに日本一のような友達が居るしな。」
「………そっか、ソニックは強いね……」
ズッ、と鼻を啜り涙声になっているネプギアに俺はそっと目をやる。
「………私だったら耐えられないな………今も耐えられないもん………」
顔を膝につけて嗚咽を漏らすネプギアの背中に俺はそっと手を置いた。
「………でも、普段はしっかりしなきゃって思うから必死でこの気持ちを抑えるんだけど、どうしても抑えられない時があるんだ………本気で、早くお姉ちゃんに会いたいって思えば思うほど寂しくなるし………」
「そうか………」
「……お姉ちゃん、会いたいよ………!」
――――辛いはずだよな………
正直言って、誰も居ないこの世界で俺もこれっぽっちも寂しくないって言うとそれはやっぱり嘘となってしまう。
ましてネプギアの場合はたった一人の肉親が捕まってるんだからな……
「…………それに、お姉ちゃんもそうだけど………私、どうしてユニちゃんと喧嘩することになっちゃったんだろう……。明日も会えなかったら仲直りも出来ないままラステイションを去ることになっちゃう………」
「―――大丈夫さ、ユニはもう怒ってないぜ。」
「…………え?」
ネプギアが涙で濡れた顔でこちらを見つめてくる。
「―――きっとあの時ユニはお前が原因で怒ったんじゃない。自分自身に怒ったのさ。」
「………それは………どういう………意味……?」
ネプギアの声が途切れ途切れに聞こえてくる。上手く喋れないんだろうな。
「………黙ってようかと思ってたけど、ユニと一緒にクエストに行った時ユニがどっか行っただろ?俺あいつの後を追って話をしたのさ。何であんな事言ったんだってな。あいつ、こう言ったんだ。『本当は自分が弱いから連れて行ってもらえなかったことは分かってる』って。別に弱くはないけど、ホントはネプギアのことじゃなくて自分の弱さに怒っていたのさ。ホントはあいつはお前のことが羨ましくて仕方ないのさ。」
――――ポロポロポロ……
ネプギアの瞳から更に大粒の飴玉のような涙が零れ落ちる。
ガッ!
そして、突如俺の背へ手を回すと俺の胸へと顔を埋めてきた。
ちょっと痛かったけど俺は何も言わずにされるがままにしておく。
「………ユニちゃん………私……強くないよ……?」
そして、やはり途切れ途切れで小さく呟く。
俺はゆっくりとネプギアの髪を撫で続けた。
―――沢山の出来事が一気に降りかかってきたんだから泣きたくもなるよな……
俺は、ネプギアが満足するまでネプギアの髪を撫で続けていた………。
「――――すー………すー………」
いつの間にか、ネプギアは俺の胸の中で眠りについていた。
「………寝てるし。」
流石に眠くなって少しウトウトしていた俺もそれに気づくとそっと顔を覗き込む。
ネプギアは何だか安心しきった面持ちでその瞳を閉じている。
「……ったく、俺が寝れないじゃん。」
そして、もう一度その髪を撫でる。
俺はそのままネプギアをお姫様抱っこし立ち上がる。
ネプギアの両腕は未だに俺の首筋(自分でもあるか分かんないけど)まで回っていて、何だかネプギアが俺に縋り付いてる様に見える状態だった。
俺はそのまま教会内へ戻り、ネプギアを部屋まで運んでいった。
―――あった、ここだな?
そして、ドアを開け中に入るとそっとネプギアをベッドに寝かせ掛布団をかぶせる。
「……Good night。」
パチッ!
部屋の電灯を切り、俺は部屋を後にする。
―――さて、俺もそろそろ寝るとするか……
(……なんで今回こんなギャルゲっぽくなったんだろ……?by 作者)
朝を迎えた。
小鳥の鳴き声が聞こえる。
「ケイさん、泊めてくれてありがとうございました!」
教会の教祖室でネプギアがケイに礼を言った。
「かまわないよ。さて、ルウィーへの行き方だけどこの教会を出てすぐ右にある森を通っていけば早く着くよ。」
「あら、随分とサービス良いのね?やっぱり何か企んでるんじゃないかしら?」
アイエフの言葉にハハハ、とケイが乾いた笑いを漏らす。
「そうだね、じゃあ次来た時に新しい素材を持って来てもらおうかな?」
「遠慮しとくわ。」
教祖室に一同の笑い声が響いた。
「よーし、じゃあ早速ルウィーに向かおうよ!」
「ああ!行こうぜ!」
ケイが微笑む。
「そうか、気を付けて行ってきて欲しい。」
「はい!色々とありがとうございました!行ってきます!」
一同は教祖室を後にする。
「―――思ってたより、嫌な奴でもなかったわね。」
「お前最初めっちゃ怒ってたけどな。」
ソニックとアイエフを初め一同は教会内の廊下を歩きながら歓談していた。
「それにしても、昨日のポ●モンカレー美味しかったね~!コンパって料理上手いんだね!」
「はいです。ナースになるためには料理が出来ることが必須だったです。」
「それにしても意外だな、日本一が中辛と辛口苦手なんてな。辛いの好きそうかと思ったけどな。」
「う~ん、なるべく好き嫌いは無くすようにしてるんだけどどうしても辛いのだけは苦手なんだ!」
「けど、中辛はいけるだろ?」
「中辛は………ちょっとトラウマがあってね。」
「どんなトラウマなんですか?」
トラウマが気になったのかネプギアが尋ねる。
「―――知り合いが1人帰らぬ人となった事件でね。」
「Huh!?」
「えぇッ!?」
なんかこいつさらっとすげー怖いこと言ったよ……
「あれは悲惨だったな……」
そして、日本一はあさっての方を向き遠い目をする。
「か、カレーの中辛で誰かが死んじゃったんですか!?」
「うん……知り合いが、ね。」
「どんな奴だったんだ?」
「―――アタシの友達のペンギン君だよ。」
「いや食わすなよッ!なんで食わしたんだよッ!?」
「んと、アタシがカレー食べてたら卵が無いことに気づいて取りに行ったらその間に間違って食べちゃったらしくてね。冷蔵庫まで卵取りに行ってたらリビングから『ァ、ァ……ヴァ―――ッ!!』って声が聞こえてね。戻ったら倒れてたんだ。」
「に、日本一さんの家にペンギンが居たんですか?」
「うん。どっかの家から逃亡してきたらしくてアタシが保護してたんだ。後日電柱の貼紙で『探してます』って写真貼ってあったしね。」
「……なんか色々カオスなんだけど……んで、その後どうしたの?」
「―――そっと、その人の玄関に置いておいてあげたんだ。」
「最低だ―――――――――――――ッ!!!!!」
「うんうん、良い事したよね!」
「アンタ、それが正義のヒーローのすることッ!?」
ザッ――――
なんて話してる内に、一同の目前に『彼』の姿が現れた。
そんな彼の姿に逸早く気づいたソニックは足を止めその名を呼ぶ。
「――――ブラック。」
そう、ブラックだった。昨日戦ったブラック。
「あ………」
ネプギアも思わず声を出す。
(―――ブラックさん、まだ怒ってるのかな……?)
ブラックは歩きながら何も言わずにこちらを見ていた。
ブラックはフン、と鼻を鳴らすと口を開く。
「―――まだラステイションに居たのか。まだ何か用でもあるのか?」
「別にないけどぉ………」
ブラックの問いにソニックがぶっきらぼうに答える。
「ならばさっさと出て行くんだな。生憎、僕は君達に構っていられるほど暇ではない。」
「………Hun。」
すれ違いさまに言ったブラックにソニックはため息をつく。
しかし、そんなことなどお構いなしにブラックはどんどん歩いていく。
――――トッ。
――と思っていたら突如足を止める。
「――――ネプギア、と言ったか……そしてソニック。」
ブラックは顔を少しだけこちらに向ける。
「―――僕の代わりにノワールを頼んだぞ。」
「………はい!」
気持ちが軽くなったネプギアは笑顔でしっかりとそう答えた。
そう言い残すとブラックは再び歩き始めた。
そんなブラックの背を一同はずっと見つめていた…………
ラステイションを一同が去ってから30分程が経過した。
ケイは教祖室で書類の管理をしていた。
ドタドタドタドタ――――
バンッ!
突如扉が勢いよく開く。
ケイは動じずに扉の方へ顔を向けた。
「―――どうしたんだい?ユニ。」
正体はユニだった。
ユニは何かを探すように教祖室の中を見回す。
「ケイ……ネプギア達はッ!?」
息を荒くし、尋ねる。
「あの方達ならルウィーに向かったよ。」
「そう………」
(―――そんな……すぐにでも会わなきゃいけないのに……!)
「でも、どうかしたのかい?」
「な、何でもないわ!」
ブンブンと両手と頭を振り、ユニは教祖室を出て行く。
「……ふふ、相変わらず素直じゃないね。」
たった今ユニが閉めていった扉を眺めながらケイは微笑んでいた。
ユニは再び自室へ戻った。
そして、ベッドに腰かけ倒れこむと天窓を見上げる。
――――『カオス・エメラルド』?
――――ああ。俺はこの世界でそれを探す旅をしている。早くあの世界に帰らないと、あのヒゲオヤジが何しでかすか分かったもんじゃないぜ……
――――どんな宝石なの?
――――見た目はちょっとでかめのダイヤモンドみたいな感じだな。色が七色ある。
――――ふーん……
ユニは片手を天窓に向ける。
その手に握られた『それ』は天窓から差し込む太陽の光を反射し、眩い光を発していた。
―――ソニック達がラステイションを訪れるちょっと前に、あの草原で拾った物……
「――――もしかして………これが………?」
ユニの手に、白い『カオス・エメラルド』が握られていた。
――――案外、ソニックが思っている程エメラルド集めは難しくないのかもしれなかった。
【次回予告】
ラステイションのゲイムキャラの協力を何とか得ることに成功。
しかし、ソニックの目的であるカオスエメラルド捜索は一向に進まない。
ソニックは無事に元の世界へと帰れるのだろうか・・・?
次回、ルウィー編でもお馴染みの女神候補生とソニックシリーズから『彼女』が登場します。
お楽しみに!
P.S
ネプテューヌアニメ化おめでとう!!
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
.ソニックはいつものようにエッグマンの計画を阻止しようとしていた。だがそれはエッグマンの罠だったのだ。カオスエメラルドの力で別世界へと飛ばされてしまったソニック。そこはゲイムギョウ界と呼ばれた異世界だった。そしてその世界でネプギアと言う名の少女に出会い―――……ネプギアは姉を助け出すことは出来るのか?ソニックは元の世界へ帰れるのか?これは、ネプテューヌmk2にソニックが居たら――のもしもの物語である。―――