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IS -インフィニット・ストラトス- ~恋夢交響曲~ 第二十二話

キキョウさん

恋夢交響曲・第二十二話

2012-08-27 20:42:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:813   閲覧ユーザー数:784

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

場所は保健室。第三アリーナの出来事から大体一時間が経過していた。ベッドの上には打撲の治療を受けて包帯の巻かれた鈴とセシリアがむくれた顔で視線をどこかへと向けていた。

 

「別に助けてくれなくてもよかったのに」

 

「あのまま続けてれば勝っていましたわ」

 

あのまま放っておいたらどうなってた事やら。生命の危険性が出てきていた状態だったのに『割って入るな』とは呆れてしまう。

 

「お前らなぁ・・・。でもまぁ、怪我が大したことなくて安心したぜ」

 

「こんなの怪我のうちに入らな――いたたたたっ!」

 

「そもそもこうやって横になっていること自体無意味――つううっ!」

 

二人は強がって無理に起きようとするが、体のほうは正直に悲鳴を上げていた。

 

「はぁ・・・。そんな体で動いたら治るもんも治らないぞバカ。もう少し自分の心配をしろよ」

 

「バカってなによ、バカって!」

 

「奏羅さんこそ大バカですわ!」

 

せっかく心配をしてやったのにコレだ。何に意地を張っているんだか。

 

「好きな人に格好悪いところを見られたから恥ずかしいんだよ」

 

シャルルが飲み物を買って部屋に入って来た。二人がぎゃあぎゃあうるさかったのっでいまいち聞き取れなかったが、二人は聞き取れたようで顔を真っ赤にして怒り始めた。

 

「なななな、何を言ってるのか、全っ然わかんないわね! こここここれだから欧州人って困るのよねぇっ!」

 

「べべっ、別にわたくしはっ! そ、そういう邪推をされるといささか気分を害しますわねっ!」

 

二人とも考えがばれた恥ずかしさと怒りでさらに顔が真っ赤になっている。よっぽどのことを言われたのだろうか?

 

「はい、ウーロン茶と紅茶。とりあえず飲んで落ち着いて、ね?」

 

「ふ、ふんっ!」

 

「不本意ですがいただきましょうっ!」

 

二人は渡された飲み物をひったくるように奪うと、自棄になったように一気飲みをした。まったく、騒ぐ元気は有り余ってるんだな。

 

「ま、先生も落ち着いたら帰っていいって言ってるし、しばらく休んだら――」

 

そこまでシャルルが言った時、廊下の方から雪崩のような音が響いてくる。

 

「な、なんだ? 何の音だ?」

 

この音に驚く一夏。それはだんだんとこっちへ近づいてくるのがわかる。そして音が最大限になった瞬間、保健室のドアがはじけ飛ぶような音を立てて開いた。

 

「織斑君!」

 

「天加瀬君!」

 

「デュノア君!」

 

その音の正体は数十名の女子だった。しかも大所帯なのにどうでもいいといわんばかりに保健室へと入ってくる。そしてあっというまに俺、一夏、シャルルを取り囲むと、まるで壁から手が生えてくるかのようにこちらに向けて手を伸ばしていた。

 

「な、なんだなんだ?」

 

「ちょっ、狭い・・・」

 

「ど、どうしたのみんな、ちょっと落ち着いて」

 

「「「「「「これ!」」」」」

 

驚いている俺たちに女子生徒一同が突出してきたのは、学内の緊急告知文が書かれた申込書だった。

 

「な、なになに・・・?」

 

一夏がその紙を受け取ると、その内容を読み上げ始めた。

 

「『今月開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行うため、二人組ででの参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者には抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは』――」

 

「ああ、そこまででいいから! とにかくっ!」

 

そしてまた俺たちに伸びてくる手。あー、なんとなくわかってしまった。

 

「私と組もう、織斑君!」

 

「私と出よう、天加瀬君!」

 

「私と組んで、デュノア君!」

 

ともかく、今こうしてやってきているのはリボンを見る限り全員一年生の女子だ。学園内に三人しかいない男子とともかく組もうと、迫っているのだろう。

 

「え、えっと・・・」

 

そう、シャルルは実は女子なのだ。誰かと組むということは、それだけ正体がばれる可能性が上がる。シャルルも不安なのか、困ったような顔でこちらを見ている。たぶん助けを求めてるんだろう。

 

(そうだな、頼れって言ったのは俺なんだし)

 

俺は心の中で苦笑すると、大騒ぎをする女子全員に聞こえる声を出せるように、大きく息を吸うと宣言した。

 

「悪いけど、俺シャ――」

 

「まって、まって~」

 

突然の声に言葉が止まってしまう。周りの女子もその声の持ち主の方へと注目する。そこには一人のろのろとやって来た女の子がいた。

 

「は~、やっとおいついたよ~・・・」

 

「のほほんさん?」

 

そう、そこには一夏の言葉通り、布仏さんが立っていた。彼女は他の女の子をかき分け俺のところにやってくる。

 

「まかせ~は私と出るんだよ~」

 

「あ」

 

そういえばそうだった。ていうか、第三アリーナに行く前に約束してたな・・・。

 

「なんだぁ・・・」

 

「でもまあ、他の女子ならともかく本音ならいっかぁ・・・」

 

他の女子じゃまずくて布仏さんならいいっていう匙加減がわからない。しかし、問題はそこじゃない。

 

「・・・・・・」

 

横にはジト目で見てくるシャルル。悪い、約束があるので俺とは組めそうにない。

 

(シャルルは俺と組めない・・・。ならっ!)

 

「あー、そういえば一夏とシャルルが組むって言ってたよなぁ、な?」

 

俺は一夏に目配せをしながら喋る。一夏は俺の意図はわかってなさそうだったが、同意はしてくれたようで、

 

「あー、ああ。そうなんだよ」

 

と言ってくれた。その言葉にどうやら女子たちは納得してくれたようで、

 

「まぁ、そういうことなら・・・」

 

「男同士ってのも絵になるし・・・ゴホンゴホン」

 

と言って、一人また一人と保健室を去って行った。

 

「一夏っ!」

 

「奏羅さんっ!」

 

しかし、一難去ってまた一難。鈴とセシリアがものすごい勢いでベッドから飛び出してきた。

 

「一夏、あたしと組みなさいよ! 幼なじみでしょうが!」

 

「奏羅さん、クラスメイトとしてはここはわたくしと!」

 

俺たちを締め上げるような勢いの怪我人ふたりは、さっきの女子生徒とは違って説得なんか聞いてもくれなさそうだ。

 

「駄目ですよ」

 

いったいどうしたものかと考えていると突然山田先生が現れた。びっくりしたのは俺だけではなく、その場にいた全員が目をぱちくりさせていた。

 

「おふたりのISの状態をさっき確認しましたけど、ダメージレベルがCを超えています。当分は修復に専念しないと、後々重大な欠陥を生じさせますよ。ISを休ませる意味でも、トーナメント参加は許可できません」

 

その言葉に悔しそうな顔をする二人。ISは戦闘経験を含むすべての経験を蓄積することで、より進化した状態へと自らを移行させるが、その経験には損傷時の 稼働も含まれる。ISのダメージがレベルCを超えた状態で起動させると、不完全な状態での特殊エネルギーバイパスを構築してしまうため、それらは逆に平常 時での稼働に悪影響を及ぼすことがある。なので、今ISを発動するのは適切ではないということだ。大体、代表候補生なので、専用機のISは国の威信がかかっている。自分のわがままで起動は出来ないだろう。

 

「うっ、ぐっ・・・。わ、わかりました・・・」

 

「不本意ですが・・・非常に、非常にっ! 不本意ですが! トーナメント参加は辞退します・・・」

 

「わかってくれて先生うれしいです。ISに無理をさせるとそのツケはいつか自分が支払うことになりますからね。肝心なところでチャンスを失うのは、とても残念なことです。あなたたちにはそうなってほしくありません」

 

「はい・・・」

 

「わかっていますわ・・・」

 

しかしこの中でただ一人わかってないような一夏。

 

「一夏、後でIS基礎理論の蓄積経験についての注意事項を教科書かなんかで確認しとけ」

 

「あ、ああ、わかった。しかし――」

 

ここで一夏が今まで疑問に思っていたであろうことを鈴とセシリアに質問した。

 

「なんだってラウラとバトルすることになったんだ?」

 

「え、いや、それは・・・」

 

「ま、まあ、なんと言いますか・・・。女のプライドを侮辱されたから、ですわね」

 

「? ふうん?」

 

言いにくそうにしている二人だが、何かしらの挑発でも受けたのだろうか?

 

「ああ、もしかして一夏と奏羅の――」

 

「あああっ! デュノアは一言多いわねぇ!」

 

「そ、そうですわ! まったくです! おほほほほほ!」

 

二人は何かをひらめいたシャルルをものすごい勢いで取り押さえる。おいおい、あまり無理するなって・・・。

 

「こらこら、やめろって。シャルルが困ってるだろうが。それにさっきから怪我人のくせに体を動かしすぎだぞ、ホレ」

 

一夏が騒いでいる二人の肩をつつくと、『ぴぐっ!』という奇声とともにその場から動かなくなってしまった。

 

「あ・・・すまん。そんなに痛いとは思わなかった。悪い」

 

「い、いちかぁ・・・あんたねぇ・・・」

 

「あ、あと、で・・・おぼえてらっしゃい・・・」

 

二人は怨みがましい目で一夏を見ると、必死に体を動かしながらベッドへと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

夕食後、部屋に戻ったが、それまでにシャルルと会話が一切なかった。まぁ、なんとなく理由はわかってるんだが。

 

「・・・シャルル、いいかげん何かしゃべってくれないと気まずいんだが」

 

「・・・・・・」

 

「いや、でもあれは先に布仏さんと約束してたからさぁ・・・。あの場面では一夏と組むっていうしかなかったんだって。それにほら、一夏って鈍いから万が一でもないと女の子って気付かないよ。・・・たぶん」

 

必死に苦しい言い訳をしてみるが、シャルルの機嫌は治らない。そりゃあそうだろうな・・・。

 

「一緒に組めないけどサポートはするからさ、機嫌直してくれないか?」

 

「ぷっ・・・」

 

「へ?」

 

いきなり噴き出すシャルルに、俺は何が起こったのか分からず唖然としてしまう。

 

「あはははは、奏羅ったら必死なんだから・・・。大丈夫、怒ってないよ」

 

いたずらが成功して楽しそうなシャルルに安堵しつつも、今まで必死こいて謝っていた自分を思い出して苦笑してしまった。

 

「だけど罰として、一つだけ言うことを聞いてもらうよ」

 

「ああ、いいよ。俺に出来ることなら」

 

これは約束を守れなかった俺に非があるから仕方ないだろうな。甘んじて受けよう。

 

「あとさ、助けようとしてくれたことにはちゃんと感謝してるよ」

 

「俺もアリーナで助けられたしな。おあいこだよ」

 

「ふふっ、それもそうだね」

 

ほほ笑むシャルルをみて、俺はふと思いついたことがあった。

 

「そういえば、俺と一緒にいるときくらいは普通の口調に戻したらどうだ?」

 

「う、うん。僕――私もそう思うんだけど、ここに来る前に『正体がばれないように』って、徹底的に男子のしぐさや言葉づかいを覚えさせられたから、すぐには治らないかも」

 

「なるほど・・・。じゃあ、話しやすいほうで話したら?」

 

しかし、俺の言葉にシャルルはなんだか納得していない様子だった。

 

「で、でも、その・・・やっぱり女の子っぽくない、かな?」

 

「うーん、一人称は特に気にならないかなぁ・・・。シャルルがどんな口調でしゃべろうとも、俺はシャルルは女の子だと思うよ」

 

まあ、不可抗力とはいえ見てしまっているので今更男だとは思えない。

 

「でもでも、やっぱり可愛くない・・・よね・・・?」

 

「いや、シャルルは十分可愛いと思うよ」

 

「か、可愛い・・・? 僕が? ほ、本当に? ウソついてない?」

 

急に落ち着きがなくなったシャルルがしきりに俺に聞いてくる。やっぱり男っぽい所が不安だったんだろうか。

 

「ついてないよ。彼女に欲しいくらい可愛いさ」

 

「か、彼女・・・。も、もう、奏羅ったら口がうまいんだから!」

 

褒められてうれしいのか照れてるのか、ニコニコしながら俺をぺしぺしと叩いてくるシャルル。やっぱりこういう所が女の子だよな。

 

「そろそろ着替えるか。なんだかんだで制服のままだったし。俺外に出てるから、シャルル先に着替えていいぞ」

 

「い、いいよ、奏羅に悪いし・・・。それに・・・僕は気にしないから・・・」

 

「そう言われてもなぁ・・・。じゃあ、洗面所にでも――」

 

「だ、だからそんなに気を遣わなくていいってば! ほら、普通にしてて。奏羅も着替えなきゃいけないんでしょ?」

 

どうしてこう一生懸命俺を引きとめるかは解らないが、シャルルは変なところで頑固なんだからいったん言いだしたら説得に苦労するんだよなぁ。

 

「・・・わかったよ、ここで着替える」

 

「うん、そうして」

 

シャルルの言葉に促され、自分の着替えを出す。そろそろ暑くなってきたので一旦家に帰って半袖とか出しとくべきだな。

 

「・・・・・・」

 

「どうした、こっちばっか見てじっとして」

 

「い、いや、なんでもないよ、うん」

 

今までボーっとしていたシャルルはいそいそと自分の着替えを探し始める。まったく、なにやってるんだか。

 

「俺、後ろ向いとくから」

 

「う、うん。じゃあ着替えるね」

 

しばらくの静寂の後、布がこすれる音がする。なんだろう、静かすぎる中に響くせいか、なんだか緊張する。

 

「そ、奏羅、着替えないの?」

 

「ん、ああ、そうだな。じゃあ着替えようか」

 

いきなり話しかけられドキッとしたが、すぐに自分の行動に移る。とりあえず上着を脱いでっと。

 

「・・・・・・」

 

気のせいだろうか、いつぞやの更衣室で感じた視線と同じ視線を感じる。さらには布がこすれる音もしていないことに気付いた。そういえば、さっきシャルルは「着替えないの?」と言ったような・・・。

 

「シャルル?」

 

「ふぁっ!? な、なにかな!?」

 

ものすごく驚いた声が聞こえて、こっちまでびっくりしてしまう。なんだか動揺しているのがわかる。

 

「俺の勘違いかもしれないけど、こっちみてないよな?」

 

「そ、そんなことはないよ」

 

「ならいいけど・・・」

 

全力で否定されたので俺の気のせいだろう。さて次はズボンを――

 

「ゴ、ゴクリ・・・」

 

「やっぱり見てない?」

 

「ふぇっ!? い、いや、僕はその――きゃんっ!」

 

焦ったような声が悲鳴に変わる。それと同時にどんっという音が聞こえて、反射的にシャルルのほうを見てしまった。

 

「だ、大丈夫かシャル・・・ル・・・」

 

「いたた・・・。足が引っ掛かっちゃっ・・・」

 

俺の視線の先には、シャルルがズボンを引っ掛けてうつ伏せで床に転んでいた。よりにもよって、上は何も着ておらず、パンツと足に引っ掛かったズボンだけというあられもない姿で。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「そ、奏羅・・・」

 

「あー、明日は食堂で何食べようかな。シャルルは何食べるつもりだ?」

 

「げ、現実逃避しないでよ! 僕が恥ずかしいだけになるから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんでこうなってるんだ?」

 

いざ、寝ようと部屋の電気を消した時、シャルルが先ほどの『一つだけ言うことを聞く』という約束から命令を出してきた。そしてその命令とは『一緒の布団で寝る』という、なんだかよくわからない命令だった。

 

「僕の着替えを覗いた罰だよ」

 

「いや、あれは不可抗力だって・・・。ていうか、いったいどんな罰なんだ、これ」

 

「そ、それは・・・。ほら、僕が恥ずかしい思いをしたんだから、奏羅も恥ずかしい思いをするべきなんだよ、うん」

 

恥ずかしいって・・・。俺の変な寝言でも聞く気なんだろうか?

 

「まぁ、明日も早いしさっさと寝よう。俺、昨日提出用のレポート書いててあんまり眠れてないんだよなぁ」

 

「そういや、奏羅の所属してる研究所のレポート書いてたよね。じゃあ、疲れてるだろうし、僕に気にせず寝ちゃっていいよ」

 

「悪いな、なんか話したかったりするんじゃないのか?」

 

「ううん、大丈夫だよ。じゃあ、おやすみ奏羅」

 

「ああ、おやすみシャルル」

 

 

 

 

 

 

 

 

奏羅におやすみといった後、しばらくシャルルは考え事をしていた。

 

(なんで一緒に寝ようなんて言っちゃったんだろ・・・)

 

シャルルは、あのときは恥ずかしさのあまり勢いがあったので思わず口走ってしまったが、自分がなんでそんなことを言ったのか、いまいち理解できていなかった。

 

(今日の奏羅にする対応だってそうだよ。話しかけられるたびにドキッてしたり、奏羅が他の女の子としゃべってただけでモヤモヤしたり・・・。着替えの時に見られるのも嫌じゃなかったし、それに今だって・・・)

 

そこまで考えたとき、シャルルは自分の気付いていないなにかに突き動かされ、行動に移していた。

 

「奏羅、起きてる・・・?」

 

返事がない。それもそのはず、奏羅はとっくの昔に夢の中だ。

 

(もしかして・・・ううん)

 

シャルルは奏羅が寝ているのを確認すると、奏羅の顔を覗き込んだ。見つめる距離は近く、規則正しい寝息すら聞こえるほどである。

 

(そっか、僕は奏羅のことが――)

 

そこまで考えたシャルルは奏羅の言った言葉を思い出して苦笑してしまう。

 

(でも、奏羅は僕のこと『友達』としか思ってないんだろうなぁ・・・)

 

あの時の奏羅が言ってくれた言葉がよみがえる。シャルルは、いままでこの世の中にはどこにも自分の居場所がないと思っていた。でも、彼は言った。『俺と友達になろう』――それはスパイ目的で来ていたシャルルのことを知っててなお言ってくれた言葉。こんな自分を受け入れてくれた、居場所を作ってくれた。

 

「ありがとう、奏羅・・・。好きだよ・・・」

 

そう言って眠っている奏羅のほほにキスをすると、背を向けて布団にくるまった。

 

(でも、ライバル多そうだよね・・・。布仏さんはなついてるだけかもしれないけど、セシリアはそうなんだろうね・・・)

 

もしかしたらまだまだ増えるかもしれない。しばらく自分の恋敵のことを考えると、シャルルはもう一度奏羅の顔を見るために寝がえりをうった。

 

「ねぇ、奏羅、君は今どんな夢をみてるの・・・? その中に僕はいるのかな・・・?」

 


 
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