No.475332

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史編ノ二十七

 お待たせしました!

 今回は前回の続きから始まります。

 ようやく華雄さんの出番です。

続きを表示

2012-08-25 21:41:48 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:10243   閲覧ユーザー数:7683

 

「我が名は董卓軍が将、華雄なり!!我が主君を貶めし愚か者どもよ、我が戦斧の錆となれ!!」

 

 華雄の雄叫びが戦場に響き渡り、それと同時に進軍が始まる。

 

「なっ!?今まで全然出てこなかったのに…」

 

「もしかして馬騰軍がここまで来るのを待っていたの?」

 

 顔良と文醜は驚愕と絶望に彩られる。しかし、

 

「あちらから門が開きましたわ。二人とも今です!華雄の軍を撃破してしまいなさい!」

 

 袁紹はこの期に及んで現実から目をそらしているとしか思えないような命令を下す。

 

「姫~、後ろの馬騰軍はどうするんですか~」

 

「そうっすよ、幾らあたいと斗詩でも両方なんて相手出来ないっすよ!!」

 

 二人は必死に訴えるが…。

 

「で・す・か・ら!それを何とかするのが家臣たる者の役目だと言ってるでしょう!!」

 

 もはやこの残念な駄名族には何も見えないし聞こえないようである。

 

「どうしよう、文ちゃん…このままじゃ私達全滅だよ」

 

「本当だったらさっさとこんな所から逃げ出すべきなんだろうけどな…姫があんな調子じゃ

 

 逃げるなんて口が裂けても言わないだろうしな」

 

 二人は主君の命令か兵達の命のどちらを優先させるべきか悩むが…。

 

「申し上げます!後方より馬騰軍が来ます!!先鋒は馬騰の長子、馬超です!!」

 

「申し上げます!華雄がそこまで来てます!!どう迎撃すれば…」

 

 もはや事態はそんな悩みすらする時間も与えてくれなかった。

 

「ああっ、畜生!!こうなったらもうヤケだ!!あたいが華雄の相手をするから、斗詩は

 

 馬超の相手を頼んだ!!」

 

 文醜はそう言うと自らの得物である斬山刀を肩に担いで走っていった。

 

「ええっ!?私が馬超さんの相手って…ちょっと文ちゃん!?…ううっ、仕方ないか。他に

 

 出来る事は無いし」

 

 顔良の戸惑う声と諦めの声が陣に響いたのであった。

 

 

 

「華雄!お前の相手はこの文醜だ!!」

 

 文醜は華雄の行く手に立ちふさがり、剣を構える。

 

「ほう、お前が袁紹配下の二枚看板の一人の文醜か。ならば相手にとって不足はない。

 

 いざ、尋常に勝負!!」

 

 華雄はそう言うと同時に戦斧を振り上げ、文醜に打ちかかる。

 

「それはこっちの台詞だ!だぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 文醜も負けじと剣を振り下ろす。

 

 そのまま二人は数十合、互角の戦いをするが、

 

「は~っ、はっ、はっ、はっ、くそぉ」

 

 文醜はずっと陣頭で指揮を執り続けていた疲れからか肩で息をしており、

 

「ふん、そこまでか。まあ、良く頑張ったな。さすがは袁家にその人ありと言われた

 

 だけはあるようだな」

 

 対する華雄はまだまだ余裕があった。

 

「文醜、武人としてはまだまだお前と戦っていたいがな。我が主君、董卓様に勝利を

 

 捧げる為にも、袁紹の首を貰い受けねばならん。だからここで終わりだ」

 

 華雄は息も絶え絶えの文醜に止めをさすべく戦斧を振り下ろした。

 

 

 

「馬超さんですね。ここからはこの顔良が通しません!」

 

 馬騰軍の先鋒として突撃しようとした馬超の前に立ちはだかったのは顔良だった。

 

「ほう、私を馬超と知って出てくるとはいい度胸だな。そういえば、顔良といえば

 

 袁家の二枚看板の一人だったな。だが私の前に出てきた以上は生きて帰れないと

 

 覚悟しろ、この野郎!!」

 

 馬超はそう叫ぶと槍を構えて突撃する。

 

「そう簡単にはやられません!!」

 

 顔良も大金鎚を構えて応戦する。

 

「さすがは顔良、なかなかの気概だな!!だが、ここでそんなに時間はかけられないんだ。

 

 一気に行くぞ!!」

 

 馬超はそう言うと、馬腹を蹴って一挙に詰め寄り稲妻の如き一撃を放つ。

 

 さすがの顔良もこの一撃を受け止めきる事が出来ず、金鎚が吹っ飛び、顔良も尻餅を

 

 ついてしまう。

 

「きゃっ!…痛たたた」

 

「武器は無くなったぞ、まだやるか?」

 

「…このままでは終われないんです。もう少し付き合ってもらいます」

 

 顔良は傍に落ちていた槍を拾って構える。

 

「ふん、慣れない武器を使ったって役になんか立たな『でやぁーーー!』…何!?」

 

 顔良が繰り出した一撃は馬超の想像を遥かに上回る鋭さであり、馬超はそれを何とかかわす。

 

 

 

「でやぁ、でやぁ、たぁーーー!!」

 

 顔良は金鎚を持った時とは比べ物にならない位に速くて鋭い突きを連続で繰り出す。

 

「くっ、くそっ、このっ!」

 

 予想以上の攻撃に馬超は反撃もままならず、かわすのが精一杯であった。

 

 しかし慣れない事をした所為か、四半刻(約十五分)もすると顔良は肩で息をしていた。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」

 

「なかなかだったけど、ここまでだな。…しかし、何故これだけの技量を持っているのにあんな

 

 金鎚なんか使ってたんだ?元から槍使いだったら多分もっと戦えただろう?」

 

「はぁっ、はぁっ、それは、あれが友達がくれた大事な物だからです」

 

「友達?…ああ、文醜とかいう奴の事か。そいつも馬鹿だな、あんな金鎚持たせるなんて。人を

 

 見る目が無いのk『文ちゃんを馬鹿にするな!』おおっと!まだそんな元気があんのか?」

 

「言いましたよね、もう少し付き合ってもらうって。それにあなたは私の大切な人を馬鹿にしま

 

 した。このまま退く事なんて出来ません」

 

 顔良はそう言って馬超を睨みつける。

 

「そうかい、確かにあんたの友達を馬鹿にしたのは悪かったな。だがさっきも言った通り、ここで

 

 時間はかけられねぇんだ!行くぞ!!」

 

 馬超はそのまま一気に突っ込む。だがそこに一瞬の隙がうまれたのを顔良は見逃さなかった。

 

「そこです!たあぁーーーーー!!」

 

 顔良は馬超の一撃をかわし、体を回転させて遠心力を利用して槍を馬超の馬の首の辺りにに叩き

 

 つける。その一撃を喰らった馬は泡をふいて倒れ、馬超は地面に投げ出される。

 

「くっ、くそっ!!」

 

「でやぁーーーーー!」

 

 そこへ顔良がさらに一撃を加えようとしたが、

 

「翠姉様、危ない!でぇい!!」

 

 駆けつけた馬岱の攻撃を側面からもろに喰らい、吹っ飛ばされてその衝撃で気絶したのであった。

 

 

「袁紹様、正面より華雄軍が接近しております!!」

 

「申し上げます!後方より馬騰軍接近!!」

 

 次々と伝えられる危機に袁紹は完全に狼狽していた。

 

「斗詩さんは、猪々子さんはどうしたんですの!?何故私を守りに来ないんです!?」

 

 袁紹は悲痛な叫びをあげるが誰もそれに応える事が出来なかった。

 

 そうこうしているうちに袁紹は華雄と馬騰の両軍に完全に囲まれてしまったのであった。

 

 ・・・・・・・・・

 

「む、完全に袁紹は囲まれたな。これでこの戦いも終いかのぉ」

 

 黄蓋は汜水関の上でそう呟く。

 

「はい、後は袁紹さんが降伏してくれればそれで」

 

「しかし鳳統よ、戦況が動けば儂も出るはずじゃったのにこれでは出番が無いではないか」

 

「あわわ、申し訳ありません。もう少し何かあるかと思ってましたので…」

 

 黄蓋の嫌味に雛里は少し縮こまる。

 

「はっはっは、冗談じゃよ。戦いが早く終わればそれだけ損害も減るというもの。気にする事は

 

 無いぞ」

 

「は、はい」

 

 雛里と和やかに会話をしていた黄蓋が眼下の光景に目を向けた瞬間、再び厳しいものになった。

 

「どうされたのですか、黄蓋さん?」

 

「どうやら、まだ終わりにはならぬようじゃな」

 

 その黄蓋の言葉を聞いた雛里がそちらへ目を向けると…。

 

 

 

 その時、袁紹は馬騰と華雄に追いつめられていた。袁紹を守る親衛隊も残すは数百となっていた。

 

「さあ袁紹、残るはお前だけだ。我が主君を貶めた罪、我が戦斧で断罪してやる」

 

「残念だったな袁紹。お前の敗因は、董卓がどれだけの人間に慕われていたかを知ろうともしな

 

 かった事だ。涼州の人間の怒りを思い知れ!!」

 

 華雄と馬騰が得物を構え、じりじりと袁紹に詰め寄る。

 

「ひ、ひいぃぃぃぃぃ!わ、私を誰だと思っていらっしゃるのです!?私は三公を輩した…」

 

「三公になって偉かったのはお前の先祖だろうが。名門、名門ってお前には他に何もないのか?

 

 だったら偉大な先祖達も、さぞや草葉の陰で泣いているだろうよ」

 

 袁紹がこの期に及んで言おうとした強がりを馬騰があっさりと断ずる。

 

「名門だか何だか知らんが董卓様を悪者にした罪は消えん。さあ、覚悟は決まったか?」

 

 華雄にとっては袁紹の強がりはもはやどうでもよかったようだ。

 

 二人が袁紹へ最後の攻撃を仕掛けようとしたその時、

 

「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そこへ突っ込んで来る者がいた。それは何と文醜であった。

 

「なっ、文醜!?…あのまま兵に抱えられて逃げたのではなかったのか?」

 

 実は先程、華雄が文醜に止めをさそうとしたその瞬間、近くにいた袁紹軍の兵士が自らの身を以て

 

 代わりに犠牲となり、その隙に他の兵が文醜を無理やりに引っ張っていったのであった。華雄は

 

 袁紹の首を取る事を優先した為、逃げていく文醜を放っていたのである。

 

 その後、文醜は止める兵士達を振り切って袁紹を助けに来たのであった。

 

 

 

「よ、よく戻ってきましたわ、猪々子さん。さあ、私を討とうとするこの者達を討ちなさい!!」

 

 文醜が戻って来た事に気を良くした袁紹は文醜にそう命じるが…。

 

「何言ってんすか、姫!あたいがここで防いでいる間に南皮へ逃げてください!!お前ら、姫を

 

 連れて早く行け!!」

 

「ちょっと?猪々子さん!?こら、放しなさい!私がこんな逃げ方を許すとでも…」

 

 文醜がそう命じると、残った袁紹軍の兵士が嫌がる袁紹を連れて逃げていこうとする。

 

「おのれ!逃がすと思っているのか!?」

 

 華雄は追おうとするが、

 

「お前の相手はあたいだ!!」

 

 文醜が立ちはだかる。

 

「ふん、お前では相手にならんのは先程のでわかってるはずだと思っていたが?」

 

「そんなのわかってるっつーの、でも姫が逃げる時間稼ぎ位にはなってやるぜ!!」

 

 そこから再び文醜と華雄は討ち合いを始める。

 

「とおりゃあぁぁぁ!!」

 

 文醜が剣を振り下ろし、薙ぎ払いを繰り返し華雄を後退させる。しかし、

 

「ちょっとは頑張るようだが、ここまでだ!たあーーーーーっ!!」

 

 華雄が戦斧を一閃させると文醜にそれを受け止める力は残っておらず、もろにその攻撃を喰らって

 

 倒れこむ。

 

「ぐっ、くそっ!!だが、姫には…」

 

「残念ながらもう遅いようだぞ文醜。あれを見ろ」

 

 華雄がそう言って顎をしゃくった方を文醜も見ると…。

 

「ここまでだな袁紹。我が名は孫策が将、黄蓋。これ以上まだ騒ぐというのなら容赦なく射る!」

 

 そこには雛里より合図を受けて飛び出した黄蓋が袁紹を捕まえんとする所であった。

 

「ここまでだと…この私が!?…えっ!?あれはまさか…!」

 

 袁紹が悲痛な叫びをあげようとしたその時、汜水関の上に袁紹が驚くべきものが翻ったのであった。

 

 

 

 ~劉備軍side~

 

 同じ頃、孫策軍と対峙していた劉備軍は圧倒的に不利の中、先鋒の張飛の踏ん張りや姜維の指揮に

 

 より、何とか五分に戦っていた。

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃーーーーーー!!」

 

 一斉に押し寄せてくる孫策軍の兵士達を張飛は自慢の蛇矛で打ち払う。

 

「どうした!?鈴々はまだまだ元気なのだ!!そんな程度の攻撃なんてへっちゃらなのだ!!」

 

 疲れを知らないかの如くに暴れまわる張飛に孫策軍も迂闊に手出しが出来なかった。

 

「今だ!あそこの陣形が伸びきっている所に一斉射!!」

 

 そこへ姜維が孫策軍の弱い所を即座に衝く。その為、孫策軍は劉備軍を押し込みきる事が出来

 

 なかったのであった。

 

「ふふーんだ!!いくら孫策軍でも鈴々にかかればこんなもんなのだ!!」

 

 張飛は調子に乗ってそう言ったがその時、

 

「ふ~ん、随分な大言壮語ね、張飛。でもそれもおしまいよ」

 

 そこへ孫策が出てきて張飛に向かって剣を構える。

 

「お前が孫策なのだな!!この張飛が相手なのだ!!」

 

「あっそう、でも私はお子様には用は無いの。私の相手を出来るのはあんたの所じゃ関羽位かしらね」

 

 孫策のその言葉に張飛はムカッとした顔になる。

 

「愛紗なんかより鈴々の方が百万倍強いのだ!!お前なんかちょちょいのぷーなのだ!!」

 

「あらそうなの?でもそうは見えないけど。私にはあんたは踊らされてる人形にしか見えないわ」

 

「うがーーーーーっ!!鈴々は人形じゃないのだ!!もう怒ったのだ!!」

 

 張飛は怒りに任せて孫策に討ちかかるが、

 

「そんな単調な攻撃じゃ私は殺せないわよ」

 

 孫策はその攻撃を全てかわす。

 

(さて、蓮華はうまくやってるかしら?)

 

 

 

 張飛の様子を見ていた姜維は危険を感じ、趙雲に指示を出す。

 

「まずいな…趙雲殿、すまないが鈴々殿を連れ戻して来てほしいのですが」

 

「鈴々を?…確かにあれは危険だが、私がここを離れても大丈夫なのか?お主一人では…」

 

「大丈夫です、あなたが鈴々殿を連れて帰ってくる時間位は何とか」

 

「わかった、無茶はするなよ」

 

 趙雲はそう言うと、張飛が戦っている方へ馬を走らせる。

 

 そしてまるでその瞬間を狙ったかのように…。

 

「たあぁーーーーーっ!」

 

 周泰が姜維を狙って攻撃を仕掛けてきた。

 

「おっと、危ない。…趙雲殿が離れた瞬間を狙うとは、先程からそこにいたという事か」

 

「姜維殿、お命頂戴します!」

 

「そうはいかない。皆の者、こやつを討ち取れ!!」

 

 姜維の命を受け、兵が周泰を取り囲む。

 

「どうだ、如何にあなたが武勇に優れていようとも、これだけの数と戦えるのかな?」

 

 姜維は勝ち誇った顔になるが、周泰は懐から黒い丸型のものを出し地面に叩きつける。

 

 その瞬間、もうもうと煙が立ち込めて辺りを白く覆う。

 

「な、何だこれは!?」

 

 そして煙が晴れるとそこには既に周泰の姿は無かったのであった。

 

「くそっ、目くらましか!?せこい真似を」

 

 姜維はそう口ごちるが、その姜維の目に飛び込んできたのは一人で駆けてくる劉備の

 

 姿であった。

 

「どうされたのです、劉備殿!?何故お一人で…」

 

「私達の所にも孫策さんの軍が来て、それと白蓮ちゃんの軍が蹴散らされてそのまま呂布さん

 

 の軍も…」

 

 劉備の報告を聞き、姜維の表情が驚愕に包まれる。

 

「…まさか、孫策が鈴々殿を挑発して戦わせていたのはこの為か!?」

 

「お願い姜維ちゃん、援軍を…今、愛紗ちゃんが一人で戦っているけどあれじゃ多分長くは

 

 持たないよ!星ちゃんは?ここにいるんじゃないの?」

 

 劉備は涙目で辺りを見回すが、姜維は自分の見通しの甘さに絶望感を味わっていた。

 

 

 

 その後、何とか張飛を連れ戻してきた趙雲と共に劉備は関羽が戦っている所に戻ってきたの

 

 だが、そこには関羽の姿は無く、犠牲になった劉備軍の兵の死体の山と、孫権と呂布の軍勢が

 

 待ち構えているだけであった。

 

「劉備、覚悟!!…全軍、突撃!」

 

 孫権の号令で孫呉の軍が迫ってくる。

 

「これで終わり…」

 

「皆の者、劉備軍へ突撃なのです!!」

 

 呂布と陳宮の号令で呂布軍も攻撃を開始する。

 

「くっ、これはまずいな…どうするのだ姜維」

 

「後ろからも孫策が迫っている。ここは逃げるしか…」

 

「そんなにダメだよ!!愛紗ちゃんはどうするの!?」

 

 劉備が行方不明の関羽を捜そうとするが、

 

「ダメだ劉備殿!ここであなたまで死んでしまっては…」

 

「…愛紗ちゃんは死んでない!!こんなので死ぬわけない!!」

 

 押しとどめようとする姜維に涙目で叫ぶだけであった。

 

 しかしそのままでいるわけにもいかず、姜維と趙雲の指揮で何とか離脱しようと試みるが

 

 ほぼ周りを囲まれてしまい逃げ場が無くなってしまった。

 

 さらに畳み掛けるように汜水関の上に翻った旗を見た全員に衝撃が走る。

 

「なっ、あれは…」

 

「どういう事だ?」

 

「あの旗印って…」

 

 

 

 時は少し遡り、北郷軍と曹操軍の戦闘が繰り広げられている場所にて。

 

 俺達は曹操軍の前衛を撃破し、本隊と対峙していた。

 

 曹操軍はまだ士気は保っているようだがその数を大きく減らしており、曹操を守るように

 

 して陣形を作るのがやっとの状態であった。

 

「なかなか粘るな…」

 

「わざと逃げる経路は開けてあるんですが、誰一人逃走するつもりはないようですね」

 

 俺と朱里は曹操軍を見ながら今後の協議をしていた。

 

「ふ~んだ!華琳様がお前達に負けるわけなんかないんだからな!!」

 

 後ろでぐるぐる巻きに縛られたままの許楮がこんな風に喚いていて、その度に流琉に小突か

 

 れていたりする。

 

「これ以上、正面からの攻撃を続ければ損害も少なくありません。出来ればここで曹操さんが

 

 旗を降ろしてくれればいいのですが…」

 

「でもおそらく曹操軍は降伏するつもりはなさそうですよね」

 

 輝里が指摘するように曹操軍からは戦いを終わらそうとする意志は感じられない。

 

「やはり曹操さんを説得するにはあの方のご登場しかないのか…朱里、董卓さんからは何か連絡

 

 はあったか?」

 

「今の所はまだ…ご本人はそのおつもりのようですが、体調の方がよろしくないとかで…」

 

「う~ん、こればかりはどうしようもないしな。ならばこのまま曹操軍が疲れるまで待つしかない

 

 か…『申し上げます!董相国閣下からの使者が参られております』…来たか、朱里!!」

 

「はい、おそらくは!」

 

 そしてその使者からの伝言は…。

 

「そうか、来ていただけるか!」

 

「これでこの戦いも終わりです!」

 

 その報告に俺と朱里は人目もはばからず抱き合って喜んでしまい、

 

「一刀も朱里もそういうのは帰ってからにしてくれんか~?」

 

 霞にそうツッコまれてしまったのであった。

 

 

 

 ~曹操軍side~

 

「秋蘭、残存兵力は?」

 

「およそ六千ほどかと…」

 

「桂花、劉備軍と公孫賛軍は?」

 

「公孫賛軍は呂布軍によって壊滅、公孫賛は行方不明との事です。それと劉備軍はまだ生き残って

 

 ますが…」

 

「…? どうしたの、生き残ってるのでしょう?」

 

 曹操は荀彧が急に歯切れが悪くなったのを訝しく思いながら、先を促す。しかしそれは彼女にとって

 

 最悪の報告であった。

 

「いえ、その、関羽が劉備を逃がす為に一人で孫権と呂布を相手にして乱軍の中で行方不明になったと

 

 の事なのです」

 

「なっ…関羽が!?馬鹿な、どうして!!彼女がいなくなったら今までやってきた事が全て無駄に…」

 

 曹操はそう言ってうなだれてしまった。

 

「華琳様、今は関羽の事を考えている場合ではありません。目の前の北郷軍を何とかしないと…」

 

「…そうだったわね。桂花、何か策はある?」

 

 曹操にそう聞かれた荀彧は力無く首を横に振る。

 

「今となっては…おそらく降伏すればこれ以上攻撃はしてこないでしょうが…」

 

「それは出来ないわね。そんな事をする位なら誇りを胸に果てるまでだわ」

 

「しかし、春蘭は傷が重く動ける状態になく、季衣は北郷軍に捕らえられ、真桜と沙和があれでは…

 

 秋蘭一人では事態の打開のしようも…」

 

 曹操軍には絶望感が漂おうとしていた。しかしそこへ、

 

「何を言ってるか、桂花!!我らは華琳様の願いを叶える為にどのような事態でも打開するのが使命

 

 であろうが!!」

 

 

 

 何と重傷を負った夏侯惇が入ってきたのである。

 

「春蘭!大丈夫なの!?」

 

「ご心配なく、少々華琳様のお目汚しになるような顔にはなってしまいましたが…」

 

 そう言う夏侯惇の左目には眼帯がしてあった。 

 

「何言ってるの、どこも変になってないわよ。それどころかオシャレ度合いが少し上がったかしら?」

 

「華琳様…ありがとうございます」

 

 そして夏侯惇の後ろから李典と于禁も顔を出す。

 

「「あの~、華琳様?」」

 

「…どうかしたのかしら、二人とも」

 

「「ごめんなさい!!」」

 

 二人は揃って頭を下げる。

 

「…! どうしたの?一体何が…?」

 

「ウチら、ちょっといろいろ変な事ばかり考えてて…」

 

「大事な事を忘れてたの~」

 

「大事な事?」

 

「ウチらが華琳様に仕える事を決めたんは、華琳様が大陸の全ての事を考えてたからちゅう事を

 

 ですわ」

 

「だから華琳様が連合に参加したのもちゃんと先を考えての事だと…だから沙和達も華琳様を信じ

 

 なきゃって…」

 

「「ですから、今更だけど、ごめんなさい!!」」

 

 二人はそう言って再び頭を下げる。

 

「何を言っとるか二人とも、華琳様が間違える事など今までもこれからも無いのだ。なあ、桂花」

 

「何で私が春蘭の意見に賛同しなきゃならないのよ。…でも、今回だけは賛同しといておくけど」

 

「だそうですよ、華琳様」

 

 一連の話を黙って聞いていた曹操は改めて皆を見回す。

 

「ありがとう、みんな。これからもよろしく頼むわね」

 

「華琳様、それは季衣を取り戻してからもう一度お聞きします」

 

 夏侯淵の言葉に皆が頷く。

 

「…そうだったわね。それじゃ、北郷から季衣を取り戻すのと北郷軍を撃破するのと二つの大仕事

 

 が待ってるわよ!!難しい局面だけどしっかりやるのよ!!」

 

「「「「「応っ!!」」」」」

 

 ここに来て曹操軍は再び結束を取り戻し、事にあたろうとしたのだが…。

 

「申し上げます!!汜水関に新たな旗印が揚がっております!!」

 

「新たな旗印?」

 

 そしてその旗印を見た瞬間、全員に戦慄が走る。

 

「まさか…」

 

「あれって…」

 

「華琳様、あの旗印はもしや…」

 

「姉者、もしやではないぞ…」

 

「華琳様、あの旗印が揚がったという事は…」

 

「ええ、ここまで来られたという事よ……………………………皇帝陛下が」

 

 

 

 

 

                            続く(という勅命がくだりました)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回、華々しく華雄さんを活躍させようと思いましたら

 

 他の方々の活躍の方が目立ってしまいました。

 

 そして最後に満を持して皇帝陛下の御成りとなりました。

 

 次回は皇帝陛下の御成りまでの経緯と出来ればこの戦いの

 

 決着をつけたいなぁと思っております。

 

 

 それでは次回外史編ノ二十八でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸 愛紗さんはちゃんと生きてますので。…えっ、白蓮さん?

 

     その人は多分どこかで強く生きていくのではないかと。

 

     白蓮さんの戦いは今始まったばかりだ(笑)!

 


 
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