No.474561

IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第25話

Lさん

第25話です。

プロローグ
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2012-08-24 02:54:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8708   閲覧ユーザー数:8457

臨海学校2日目、専用機持ちの一夏達と箒、千冬、キラ、シン、ルナマリアは旅館近くの入り江に来ていた。

千冬とキラ達以外は全員ISスーツを着ていた。

 

「よし、専用機持ちは全員揃ったな?」

「ちょっと待ってください、箒は専用機を持ってないでしょう」

 

千冬の言葉に鈴が意見を出すと、それに千冬が説明しようとした、その時だった、遠くから女性の声が聞こえてきた。

 

『やぁあああっほおおおおおお!!!!』

 

崖を駆け下りる一人の女性の姿があった。

女性は一直線に千冬へ向って走っていた。

途中で大きくジャンプして、真っ直ぐ千冬へと落下していた。

 

「ちーちゃあああああああん!!」

 

しかし、千冬は右腕を突き出し、女性の顔を鷲掴みにした。

 

「やあやあ会いたかったよちーちゃん! さあハグハグしよう! 愛をたしかめぐっ!?」

「うるさいぞ、束!」

「相変わらず容赦の無いアイアンクローだね!」

 

アイアンクローから逃れた束は隠れてた箒の後ろに来て、満面の笑みを向けた。

 

「じゃじゃ~ん! やあ!」

「……どうも」

「えっへへ~、久しぶりだね~、こうして会うのは何年ぶりかな~? 大きくなったね箒ちゃん! 特におっぱいが……」

 

そこまで言うと箒は何処から取り出したのか、木刀で束の顔面に強力な突きを入れた。

 

「殴りますよ!」

「殴ってから言ったぁ、箒ちゃんひっどぉい!!」

 

突然にしてやってきた嵐の様な存在にキラ、シャルロット以外は唖然としていた。

 

「おい束、自己紹介くらいしろ」

「え~っ! メンドクサイなぁ」

 

面倒くさそうにする束だが、仕方なくやった。

 

「私が天才の束さんだよ~、ハロ~終わり~」

 

簡素な自己紹介だったが、その場に居た全員驚愕した。

 

「束って!」

「IS開発者で、天才科学者の!」

「篠ノ之 束……!」

 

鈴達が驚いている中、シンとルナマリアは束を警戒していた。

白騎士事件は束が起こした事件だとキラから聞かされていたので束は危険だと認識している。

そんな空気の中、束は無邪気に空を指差した。

 

「んっふっふ~、さあ! 大空をご覧あれ!!」

 

その場に居た全員、指差した先を見ると、上空から何かが落ちてきた。

それは銀色の立体水晶体の様な何かで、それが一夏の前に落下してきた。

束が持つリモコンを操作すると、落下してきた水晶体が開き、中から紅いISが出てきた。

 

「じゃじゃーーん! これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』!! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!!」

 

箒の専用機"紅椿"、見た限りでは他の第三世代と変わらない、だがISの生みの親である束が作った物だ、何かあるだろうと全員予測していた。

 

「何せ紅椿は、束さんが作った第四世代型ISなんだよ~!」

「第四世代……!」

「各国でやっと第三世代型の試験機が出来上がったばかりですのに……」

 

第四世代機の"紅椿"が完成しているという事実にこの場の代表候補生達が驚きを露わにする。

 

「そこがほれ、天才束さんだからぁ」

 

箒が実際に乗り込んで紅椿の最適化と適合化を始める事になった。

束はスカートからコードを展開し、紅椿に接続、OSの画面を展開、タッチパネル型キーボードを叩いた。

 

「箒ちゃんのデータはある程度先行していれてあるから。後は最新データに更新するだけだね」

 

そう言いながらキーボードをタイプする速度はキラと同じ速度だった

 

「す、凄い、キラさんと同じ速さでキーボードをタイプする人初めて見た……」

 

簪は唖然としながらその様子を見ていた。

そうこうしている内にフィッティングを終了させた。

 

「んしょっと、後は自動処理に任せておけばパーソナライズも終了するね、あ、いっくん、白式見せて。束さんは興味津々なのだよ」

「あっ、はい」

 

一夏は束に言われた通り白式を展開すると束は端末のコード端子を白式の装甲に刺した。

 

「ん~……何だろ、見た事の無いフラグメントマップを構築してるね。いっくんが男の子だからかな?」

 

フラグメントマップとは人間で言う遺伝子の様なもので、それぞれのISが独自に発展していくその道筋の事だ。

 

「束さん、その事なんだけど、どうして男の俺がIS使えるんですか?」

「ん? ん~……わかんない、ナノ単位まで分解すれば解る気がするんだけど、していい?」

「いい訳ないでしょ……」

 

束の頼み事に碌な事が無いのは一夏も知っているので断るのであった。

白式を調べ終わった束は一夏を押し退けて後ろの方へ進んでいた。

その先にいたのは、キラ、シン、ルナマリアだった。

 

「やあ! 初めまして。キラ・ヤマト君、シン・アスカ君、ルナマリア・ホークちゃんだね?」

「……ええ」

『初めまして』

「君達のIS、『ストライクフリーダム』『デスティニー』『インパルス』を見せてくれないかい? IS初のビーム兵器の搭載機に興味津々なのだよ、無論、それを開発したき・み・た・ち・に・も・ね♪」

 

目の前で起きている事を正確に理解していたのは一夏と箒、そして千冬だった。

他の皆はただ何でもない様に思っていた。だが、一夏達は束が他人に興味を示している事に驚いていた。

他人嫌いで箒、千冬、一夏ぐらいにしかまともに接しようとしなかった束が全く関係の無いキラ、シン、ルナマリアに自分から話し掛けているのだった。

箒は信じられないという顔をしていた。

 

「お断りさせてもらいます」

 

キラから帰ってきた答えは余りにも素っ気ないものだった。

 

「……どうしてかな?」

「機密事項を明かす事は出来ませんよ」

「ふーん……箒ちゃん、もう紅椿のパーソナライズも終わったはずだから稼働テストに入ろっか」

「は、はい……」

 

束は無表情でキラ達の元を離れていく束。

"紅椿"から調整の為のケーブルが外され丁度今から稼働テストに入った。

 

「行きます!!」

 

箒が顔を上げると同時に、衝撃波と砂塵が発生すると箒の姿はそこには居なかった。

一夏は白式のハイパーセンサーを展開して箒を探す、すると、上空200メートルの高さを飛行する"紅椿"の姿を見つけた。

 

「うんうん、機体反応速度、機動力共に問題ナッシングだね、じゃあ次は武装いってみよー。右が『雨月』、左が『空裂』ね~」

 

箒は束から武装データを受け取ると、両腰の近接ブレードを慣れた手付きで抜刀して構える。

 

「ここで親切丁寧な束お姉さんの解説講座~~♪ 雨月は対単一仕様(ワンオフアビリティー)の武装で打突に合わせて刀身からレーザーを放出、連続して敵を蜂の巣にする武装さ~~! 射程はアサルトライフルぐらいだよ」

 

束の説明通り、箒は構えから突きを放つ。

刀身とその周囲からレーザーが雨の様に走り、近くを漂っていた雲に幾つもの穴を空けた。

 

「そして空裂は対集団仕様の武装だよん、斬撃に合わせて帯状にレーザーを放出するんだよー、振った範囲に自動で展開するから超便利♪ んじゃこれ撃ち落としてみてねーっと、ほい」

 

束の傍にミサイルポッドが展開され、一斉射撃される。

 

「やれる、この紅椿なら!!」

 

箒は右脇下に構えた空裂を自身が一回転するように振るう。

帯状のレーザーが剣筋に添って円を描くように放出され、ミサイル全機を撃ち落とした。

 

「すげぇ……」

 

紅椿の性能に思わず声が漏れてしまう一夏。

束は予想以上の仕上がりに大変満足しているのか、ご機嫌そうに笑っている。

だが、その時、真耶の切羽詰った声が聞こえてきた。

 

「た、大変です! 織斑先生!!」

 

片手に端末を持った真耶が駆け足で千冬の元に走り寄って来た。

 

「これをっ!」

 

真耶に渡された端末を開いた千冬の顔色が変わった。

 

「特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし……テスト稼動は中止だ! お前達にやってもらいたい事がある!」

 

 

旅館の一室、緊急作戦司令室として用意されたその部屋では、千冬と真耶、多くのオペレーターの教師の他に、キラ達、専用機持ちが集まっていた。

 

「2時間前、ハワイ沖で試験稼動にあった、アメリカ・イスラエル共同開発の第三世代のIS『シルバリオ・ゴスペル』通称『福音』が、パイロットの制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった、情報によれば、その後、衛星による追跡の結果、福音はこの先2kmの空域を通過することが判った、時間にして50分後、学園上層部からの通達により我々がこの事態に対処する事になった」

 

教員は学園の訓練機、つまり"打鉄"と"ラファール・リヴァイヴ"を使って空域と海域の封鎖を行う事になっていた。

キラ達を除く全教員が封鎖に駆り出される、その為、本作戦の要となるのはキラ達と専用機持ちが担当する事になった。

 

「それでは作戦会議を始める! 意見がある者は挙手するように」

 

早速手を上げたのはセシリアだった。

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

「うむ、だが決して口外するな、情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と、最低でも2年の監視が付けられる」

「了解しました」

 

モニターに映し出された"福音"の詳細なスペックデータ。

データによると広域殲滅を目的とした特殊射撃型のISであった。

 

「この特殊武装が曲者って感じだね、連続しての防御は、難しい気がするよ」

「このデータでは格闘性能が未知数……偵察は行えないのですか?」

「それは無理だな、この機体は現在でも超音速移動を続けている、アプローチは一回が限界だ」

 

そこまで言うと今度はシンが手を上げる。

 

「パイロットの状態はどうなっているんですか?」

「バイタルは弱っているが健在だ、恐らく意識を失っているものと思われる、強制解除に持ち込めば、後の救助は容易い筈だ」

 

続いてキラが手を上げる。

 

「アメリカ、イスラエル軍の動きは」

「残念だが、試験空域に待機していて即時鎮圧にあたった両軍の戦力殆どを撃破され戦闘不能状態にしている、今すぐ対応は望めん、しかも目標は既に日本空域に侵入している以上、両軍が表立って動くとなれば世界的な失態を晒す事になる、大国のお偉方はなんとしても避けたいだろうよ」

「何だよそれ! 人の命が係っているのに自分達のプライドが優先かよ!」

 

責任から逃れようとするお偉方に怒りを露にするシン。

だが、両軍が動けないとなると此処に居る者で対処しなければならない。

一回きりのチャンス、つまり一撃必殺の攻撃が出来る機体で当たるしかない。

 

「……俺の、零落白夜か」

 

作戦の結論を悟った一夏が、誰に促されるでもなく静かに口にした。

だが、問題があった。

一夏の"白式"を"福音"の所までエネルギーを消費させずに移動させる手段が無かった。

移動にエネルギーを使えば、シールドエネルギーは激減する。

零落白夜がアプローチするときには使えなくなりましたでは話にならない。

全てのエネルギーを零落白夜に回さなければ一撃で落とす事は出来ない。

 

「織斑、これは訓練ではない……実戦だ、もし覚悟が無いのなら、無理強いはしない」

「……人の命が関わっているんだ! やります、やって見せます!」

「よし、それでは現在、専用機持ちの中で、最高速度が出せる機体は……」

『ちょっと待ったぁ!』

 

場の空気を読めていない能天気な声が聞こえた。

作戦司令室の天上から逆さまに顔を出す束が居た。

空中で回転しながら飛び降りてきた束は一瞬で千冬の前に移動する。

 

「ちーちゃんちーちゃん! もっと良い作戦が私の頭の中にナウプリンティング~!」

「出て行け……!」

「聞いて聞いて! ここは断然、紅椿の出番なんだよ~!」

「……何?」

 

 

川原に移動した一同は箒がISを展開するのを待っていた。

箒の左手首に巻きつけられた金と銀の鈴が一対になってついている赤い紐が輝き、箒は紅い光に包まれる。

 

「紅椿、行くぞ……!」

 

"紅椿"が展開されたのを見て、束は機体に歩み寄り、調整を始めた。

それを後ろで見ていた千冬と真耶だが、真耶は束の姿を見ながら神妙そうな表情であった。

 

「織斑先生、篠ノ之博士が此処に居る事を、学園上層部は」

「連絡は着いている、今は暴走したISを止める事が最優先だ」

 

調整を済ませた束は紅椿から離れると、一つ指示を出した。

 

「よし、それじゃあ箒ちゃん、展開装甲オープン!」

 

束の指示と共に展開された"紅椿"の全身に搭載されている展開装甲がオープンされた。

すると簪は紅椿を見てある事に気付いた。

 

「今の……雪片弐型と同じ?」

「よ~く気付いたね……そう、この紅椿は雪片弐型の展開装甲を発展させた機体なんだよね~、あ、展開装甲はね、第四世代型の装備なんだよ!」

「ち、ちょっと待ってください、雪片弐型に第四世代の展開装甲が使われている事はもしかして白式は……」

「一言で言っちゃえば白式も第四世代型になるね!」

 

衝撃の事実にその場に居た全員が唖然とした。

 

「それにしてもアレだね~、海で暴走って言うと、10年前の白騎士事件を思い出すね~」

 

束の言葉で千冬の顔色が若干だが変わった。

 

「白騎士って誰だったんだろうね~? ね、ね、ちーちゃん?」

「知らん」

「うんうん! 私の予想ではバスト88cm……ウグッ!?」

 

千冬の出席簿が、今までで一番強い力で束の頭に振り下ろされた。

 

「きゅ~う、酷いちーちゃん! 束さんの脳は左右に割れたよ~!?」

「そうか良かったな。これからは左右で交互に考え事が出来るぞ?」

「おお! そっか~! さっすがちーちゃん、あったま良い~!」

 

束に抱きつかれたうっとおしそうする千冬は、強引に束を引き剥がすと紅椿の調整にどれ位掛かるのかを聞いた。

聞き終わると今度はキラが千冬の元に寄って来た。

 

「織斑先生」

「何だ? ヤマト先生」

「確実に成功するために、全員で作戦に参加するべきです」

「それは確かにそうだが、お前達のISならともかく、他の専用機達が戦闘宙域に到着するのにかなり時間が掛かるぞ」

「それに関して、僕の方で作戦があります」

「分かった、全員に準備をするように伝えておく」

 

千冬の指示で専用機持ちは、出撃準備に入る。

いつもは和気藹々としていた一夏達も殺伐とした空気が醸し出されていた。

しかし、束と紅椿の姿を千冬、キラ、シンの目は警戒の色を帯びていたのであった。


 
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