~聖side~
パカッ…パカッ…。
「なぁ、聖。」
「どうした?一刀。」
「張宝ちゃんが…。」
「ちょっと!!姉さんたち、代わりなさいよ!!」
「や~だ。お姉ちゃん勝ったもん♪」
「そう。ちぃ姉さんは負けたでしょ。」
そう。つまり今は帰り道であって…俺の馬に張角ちゃんと張梁ちゃん、一刀の馬に張宝ちゃんが乗っている。
乗る馬の論議はかなり長いことになったので、俺がじゃんけんを提案。
じゃんけんの結果以上のようになったのである。
因みに、二人は俺の前に座っていて、陽華の上に前から、張角ちゃん、張梁ちゃん、俺の順に並んで乗っている。
「そんなに言うなら、もう少ししたら代わるか?」
「えっ!!良いの!?」
「えぇ~お姉ちゃんや~だ。」
「徳種さん。姉さんに優しくしなくても良いですよ。」
いやっ、俺としては代わってほしくもある…。
何故なら、さっきから俺が手綱を持つ手を、張角ちゃんが包むように握るせいで、その豊満な胸に…。
そして、張梁ちゃんは俺に凭れ掛かるように座ってるせいで、女の子特有の柔らかさと甘い匂いが…。
いかん、意識しちゃ駄目だ…。平常心、平常心。
「ほらほら♪ 聖さんが代わって良いって言ってるんだから、代わってよ。」
「い~や~だ~。」
「はぁ…。あんまり騒ぐと…。」
「いたぞ~!!あそこだ~!!!」
「はぁ~言わんこっちゃない…。」
さっきまで追っての影なんて見えなかったのに…まぁ、どうにかしますか…。
「二人とも、しっかりと捕まって!! 一刀!!急ぐぞ!!」
「分かった!! 張宝ちゃん、しっかり捕まってて!!」
「えっ!!ちょっと、ひあっ!!?」
馬を駆けさせて追手と距離をとる。
しかし、このままだと良くはない…。どうするか…。
確か、来る途中に川があったな…しかも橋もあったはず。
付近には他に橋はなかったし、川の流れは速く、渡るのは不可能だろう…。あそこでどうにかするしかない…。
「一刀!! 来る途中に橋があったろ? あそこまで急ぐぞ!!」
「OK!!」
俺たちは馬を駆けさせる。
追手の数は十数騎。流石に相手にするのは面倒だ。しかも、今は彼女達がいる。守りながら戦うのは厳しい…。
約1キロ先、橋が見えてきた。
俺達はその橋に急ぐ…が、そこには別の兵が見てとれた。
「聖!! 橋のところに誰かいないか!?」
「あぁ。多分敵兵だろう…。先回りされたか…。」
「どうする?」
「…しかたねぇ…。 一刀!!このまま突っ込むぞ!!」
「えっ!! 大丈夫かそれ!!」
「どうにかするよ…。 陽華!! 悪いけど一度手綱を放す。でも、このまま突っ込んでくれな!!」
「ブルルッ!!」
「そうか、頼むぞ!!」
「どうする気だ、聖!?」
「こうするのさ。武○錬金!!」
俺は蛇弓を出現させ、矢を数本番える。
橋の前には五人ほどの兵士。
砂塵が上がっているせいで見づらいが、まぁ何とかなるだろ。
「えっ…ちょっ…聖。 今、武○錬金って…。」
「話は後でな。 ギリッ…バシュ!!!!」
放たれた矢は放物線を描き、兵士達に降り注ぐ。
その矢を受け、兵士達は皆地面へ倒れ伏した。
「聖!!」
「大丈夫だ。鏃は潰してあるから、殺してはいない。このまま突っ込むぞ!!」
「待て~!!貴様ら止まれ!!」
「止まれと言われて、止まるやつなんかいるかよ!!」
「…なんかルパンみたいだな…。」
「じゃあな~とっつぁ~ん!! …ってか!?」
「ま~て~!!」
「さて、一刀。先行けよ。」
一刀が先に橋を渡る。俺も続いて渡りきる。
すると、追っては橋の入り口ほどに来ていた。
「待て!!」
「悪いな…さらばだ!!」
俺は刀で橋を落とす。橋は川に落ち、大きな水しぶきが立つ。
「くそっ!! おい!!別の橋を探せ!!」
警備兵たちは、別の橋を探しに川を下って行った。とりあえず、窮地は脱したな…。
俺は、そのまま馬を駆けさせて、一刀と帰路につく。
「なぁ、聖。さっき武○錬金って…。」
「あぁ、間違っちゃねぇよ…。これ見りゃ、お前なら分かるだろ!?」
「これは…核○!! 何でこんなものがこの時代に…。」
「話すと長くなるんだが…。俺が今から話すことを信じるか?」
「話によるかな…。」
今、俺達は水鏡塾まで後少しの所にある小川で休憩している。
一刀は、さっきのことを俺に聞きに来る。
「実は、俺は神様に能力を開花してもらってな…。核○は贈り物だ。」
「へぇ~そうなんだ。(棒読み)」
「お前信じてないだろ!!」
「あぁ、信じてる信じてる。(棒読み)」
「嘘付け!! さっきからセリフが棒読みなんだよ!!」
「だって…な…。」
「…じゃあ、どうしたら信じるってんだよ。」
「まぁ、聖が嘘をついてるとは思わないけど…流石に直ぐに信じろって言うのも…。」
「まぁ、普通は無理だよな…。」
「でも、聖の強さの秘密に納得はいったかな。」
「あくまで才能の開花だけどな…。基本は蓮音様に鍛えられたし、弓は前から使えるしな…。」
「因みに、才能ってどんなのがあるんだ。」
俺は一刀に才能を紹介していく。
「…羨ましい…。」
「そうか!?」
「ずるい!! 聖だけずるい!!」
「ねぇ~聖さん♪ そろそろ行かないと暗くなっちゃうよ?」
「おっ!!じゃあ、そろそろ行こうか。 一刀、行くぞ!!」
「くそ~…。聖がモテる理由が分かっただけに悔しい…。」
「俺はこっちに乗るな。」
「「えぇ!!!!!」」
「もう水鏡塾までそんな距離もないし、一刀がそっちでも大丈夫だろ。一刀の練習にもなるしな…。良いか、陽華?」
「ブルル。」
「陽華が良いって言ってるしそういうことで。」
「ちょっと!! 徳種さんだけで勝手に自己完結しないで!!」
「そうだよ~。お姉ちゃん納得行かないもん。」
「んっ?何でだ? 一刀じゃ嫌か?(キョトン)」
「そっ…それは…。( ///)」
「確かに一刀じゃあ不安かもしれないが、陽華だし大丈夫だろ。」
「ひ…聖……。」
「「…馬鹿。(ボソッ)」」
「何か言ったか今?」
「何でもないです!! さっ、北郷さん行きましょう。」
「あっ…あぁ…。」
「…なんか怒ってないか?? どうしたんだ張梁ちゃん…。」
「はははっ…。これは聖さんが悪いと思うな…。」
「ん?? どうしてだ??」
「分からないなら良いんじゃない? さぁ、聖さん私達も行こう♪」
「ん~~????」
俺は、張宝ちゃんと馬に揺られながら帰路についた。
因みにその時の一刀はというと…。
「あっ…あの~…張梁ちゃん??」
「なんですか!!?」
「いやっ…その~…怒ってるのかな~と…。」
「怒ってません!!」
「そっ…そうですか…。」
「北郷さん…。そっとしておいてあげて…ね♪」
「うん、どうやら突っ込んで聞いちゃ不味そうだしね…。」
と、気まずい空気が流れていたとか…。
水鏡塾へ着くと、張角たちを門の所で待たせて、俺と一刀は水鏡先生に事情を説明した。
水鏡先生は、少し困った顔をした後、「三人とも同じ部屋で良いのでしたら何とかなると思います。」と言ってくれた。
水鏡先生にお礼を言って、俺達は張角たちのところに戻り、状況を説明。三人ともそれで問題ないとのことだったのでとりあえず一段落だ。
水鏡塾に戻っても張梁ちゃんの機嫌は戻らず、まだ何か怒っているようだった。
俺は、流石に気になったので彼女達の部屋へと向かった。
廊下を歩き、角を曲がると彼女達の部屋まであと少し。
すると、彼女達の歌声が部屋の中から聞こえてきた。
やはり町で聞いたときに思ったが、彼女達の歌のセンスは抜群だ。
しかし、何か引っ掛かる…。
彼女達の歌声が、部屋の中から聞こえなくなった時を見計らって声をかける。
「ごめん、ちょっと入って良いかな?」
「は~い♪どちら様?」
そう言って部屋の扉が開く。扉を開けた張角ちゃんと目が合った。
「やっ。」
「聖さん!!」
「「徳種さん!!??」」
「入って良いかな?」
「どうぞ~♪」
「ありがとう…。 張梁ちゃん。」
「…はい?」
「ゴメン!!!!」
「えっ!!!」
部屋に入るや否や、俺は張梁ちゃんに謝った。
「謝って許される問題じゃないのかもしれないけど、とにかくゴメン。」
「…良いですよ。もう怒ってもないですから。」
「本当か!?」
「えぇ。あんなことで怒ってた、私が馬鹿でしたから。」
「そうか…良かった…。」
「はぁ~…。」
「「はははっ…。」」
張梁ちゃんは溜息吐くし、残り二人は苦笑いだし、なんだって言うんだ??
「これからどうするつもりなんだ?」
「さぁ? とりあえずここら辺の町には居られなくなっちゃったから、別の町に行かないと。」
「うっ…。ゴメン…。」
「謝らなくて良いよ~♪聖さんたちのお陰で助かったし。」
「本当なら、私達が御礼をしないといけないくらいなのに…。」
「それは何度も言った…。」
「あなたは良くても、私達は良くないのよ。ちゃんと御礼をさせて。」
「う~ん…。そうだ!! 俺、もう一度君達の歌が聞きたいな。聞かせてくれないか?」
「ごめんなさい。私達お金にならない歌は歌わないの。」
「そうか…。」
「まぁまぁ、人和。徳種さんはさっき大金払ってくれたんだし。お礼なら一回ぐらい良いんじゃない?」
「お姉ちゃんも良いと思うよ。」
「…姉さん達がそういうなら…。」
先ほど町で聞いた歌を、彼女達は歌い始める。
三人の声は、綺麗なハーモニーを奏でながら流れていく。
俺は静かに聞いていたが、ある部分に差し掛かったときに声を上げる。
「ちょっと待った!!」
「っ!! 何!?どうしたの!?」
「…今のところもう一度聞かせてくれないか?」
「…分かったわ…。」
再び歌が始まるが、同じ所でまた止める。
「今の所さ、和音が若干ハモってないんだよね…。なんと言うか、不協和音がする。張角ちゃんが高音、張宝ちゃんが低音、張梁ちゃんが間の音を出してるよね?」
「分かるの!?」
「まぁね。で、張角ちゃんが若干高い、あと半音だけ下げて。で、張宝ちゃんは逆に低い。あと半音上げる。で、張梁ちゃんは二人に引っ張られちゃって音がぶれてる。もっと自分の音に自信を持ってやってみて。」
「え~聖さん。半音ってどのくらい~?」
「ちぃたち感覚でやってたからよく分かんない。」
「お手本をお願い。」
「はぁ~…。まぁ、口を出したものとして責任持つか。良いか、まず張角は『♪~♪』だな。」
「「「!!!!」」」
「で、張宝は『♪~♪』。張梁は『♪~♪』でやってみればどうだろう。」
三人は驚いた表情のまま、口を開けて固まっていた。
「お~い…。」
「信じられない…。」
「はい?」
「何でそんなに上手いの!? ねぇ、徳種さん何で!?」
「えぇ~っと…。何ででしょうね…。」
「すっご~い♪ お姉ちゃん感動しちゃった♪」
「ねぇ、徳種さん!! ちぃ達の歌の先生になってくれない?」
「ちぃちゃんそれ良い考え~!!」
「う~ん。残念だけどそれは出来ないかな…。」
「…どうして?」
「俺にはやらなきゃいかんことがあるんだ。だから、悪いけどそれは出来ない。」
「ちぃ達の誘いを蹴ってまでやることってなんなのよ!?」
「俺はこの世界を平定する。」
「「「!!!」」」
「そして、この世界に住む人全てが手に手をつないで、平和に暮らせる世の中にする。そのために必死でね…。悪いけど君たちの歌の先生にはなれないんだ。 …ゴメンね。」
三人とも口を閉じている。それだけ重い話なのだと理解しているようである。
「でも、こういう風に助言くらいは、時間が空いた時には出来るよ。それで良いかな?」
「(パァ~)はい!!!!」
彼女達の顔に笑顔が浮かぶ。これで良かったのだろう。
彼女達は再び歌を歌い始めた。
先ほど俺が言ったところが直ぐに修正されているあたり、彼女達もプロだ。
ただ、この娘達はすべて自己流でやってきたのだ。その為、歌う姿勢とかそういう基本的なところは教わっていないのだろう。
「張梁ちゃん、ちょっとゴメンね。」
「えっ!?」
「もっと背すじはこうで。」
「ひゃあぁ!!!???」
「胸張って!!」
「ひゃん!!??」
「声は腹から!!」
「……。(プルプル)」
「ん??どうした?」
ドゴッ!!!
「はぁはぁ…。いやらしい手つきで触らないで!!」
「きゅ~~…。」
「いいな~人和…。」
「ふふっ、ねぇ~聖さん。私にも教えて~♪」
「ちょっと、姉さん。ちぃが先に教わるの!!」
「ちょっと!!姉さんたち!!」
「…人和だって実は…。」
「っ!! だっ…誰があんなことされて嬉しいのよ!!」
「あれ~?嬉しかったの~?」
「うぅっ…。」
「にゃは♪人和も墓穴を掘ったわね。」
「皆~もう聖さんの虜になっちゃってるもんね~♪」
「…だって、卑怯じゃない!? 顔も良くて、強くて、しかもピンチに颯爽と登場して、困ってる私達を救う大器を見せて、そして歌も上手いのよ!?」
「そうね…。私達を惹き付けるには十分だったわ…。」
「女の子なら一発だね♪」
「どうにかして、このまま徳種さんたちと一緒に旅できないかな…。」
「…良い方法があるわ。」
「えぇ!!?なになに!?人和教えなさいよ。」
「ふふふっ…。これほどの大器だもん、きっと断りはしないと思うわよ。」
そう言って、微かに笑う張梁なのであった。
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どうも、作者のkikkomanです。
これにて、三章が終了です。
第四章は書き溜めたぶんがあまり無いんですが、自分なりに面白くかけているものが多くあるので、早めに出そうと思います。
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