直江大和には無数の赤い糸があり、その分岐点は2年F組になった頃に一本になる。
赤い糸を選ぶのは本人の意思で、最強の存在である川神百代さえ変えることができない。
それが相手がロボットであっても………だ。
大和の部屋には彼のほかに、一人の女の子いた。
その女の子は、大和の頭を自分の膝に乗せて耳かきをしてあげている。
大和は、とても気持ち良さそうな顔をしていた。
「どうですか……大和?」
エプロン姿の女の子が大和に具合をきく。
「問題ないよ、クッキー」
大和は気持ち良さそうな顔のまま答えた。
「他に耳かき以外で用事はありますか?」
クッキーと呼ばれたエプロン姿の女の子は、すがるよう眼差しを大和に向けていた。
「それじゃあ……夜の相手を」
「了解しました」
クッキーは微笑んで承諾した。
この女の子の正体は、九鬼財閥が作り上げた人工知能搭載型ロボット、クッキーだ。
クッキーは普段はもっとメカらしい姿をしているのだが、人間との絆をもっと深めたいという思いが強くなったとき、この第四形態と呼ばれる女の子の姿になる。
この形態のクッキーは、なぜかやたらと大和の世話を焼きたがっていた。人間との絆を深めたいがためだけなのか、それは少しばかり判然としない。
だけど恋人のいない大和にとって、クッキーの行動は恋愛感情に目覚めさせるキッカケとなった。
「今日も身体汚れたね。綺麗に拭くね」
「……はい」
ロボットに恋を抱いてしまう大和。
クッキーはその好意に喜んだ………が。
「私では、大和を本当の意味で幸せに出来ない」
絶望する。
だから――――。
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絶望