No.472961

デート・ア・ライブ 漆黒と邪霊のファンタジア

さん

遂に作者はやってしまった。
今やっている小説を放り投げてやってしまった……暴走状態の作者は誰にも止まらない!

2012-08-20 18:38:21 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3941   閲覧ユーザー数:3845

額から一雫の汗が流れる。

それは、彼の目の前にある光景があまりにも無残だったから。

ほんの数分前までは活気に溢れていただろう、街並みは巨大な力で押しつぶされたように滅茶苦茶になっている。

空を舞って周囲を見て、気づくここにはとてもいい街だったんだろう、っと

「ーーーーー」

刈る。

長い棒の先端に付けられた歪曲した刃は、禍々しい巨大な剣と共に踊る。

彼はそんなことを考えている暇ではない。

今この時を彼女と殺し合っているのだ。

まるで小規模の花火が、咲くように二人の常識を超えた速さと力が空を埋めるように爆発させる。

彼は怪しい格好していた。

体を覆い隠すような光を喰らう如き、漆黒のコートを纏い背丈からすれば、恐らく青年と呼べるくらいの十桁の後半ぐらいだろう。

その手に握るのは、彼の身のためを超えるだろう闇を形容させたような漆黒の大剣、罪深きものを裁くための武骨で斬る、というより断つ、を特化した刃は万物を嘲笑うかのように煌めく。

少女は笑っていた。

鮮血を浴びたような血色のドレスをしていた。

シルクのような材質なのか綺麗には見えたが、その鮮血は全てを台無しにしてむしろ、悍ましい程の恐怖感を覚えさせられるものだ。

そして、狂気が溢れる可愛げな容姿をした少女は玩具を弄ぶように命を狩る連撃を繰り出してくる。

「おにーさん、頑丈だね!」

無垢な子供を思わせる声音だった。

だが、降られるその鎌は確実に彼を殺すための殺人道具(オモチャ)となって襲い掛かってくる。

「鍛えているんでね!!」

彼はそう吠えるように叫ぶと迫った刃を真正面から大剣で受け止め、足を加速させた。

強い衝撃では易々折れてしまいそうな少女の腹部に突き刺す様に彼の脚が薙ぐるように叩き込まれる。

風に吹かれ飛んでしまった紙飛行機のように少女は乱回転しながら空中で舞う、その隙に彼は大剣を両手で握る。

同時に大剣の刃には妖気のようなものが包み込み、彼は自身を投げ出す様に剣を大きく薙ぎ払った。

「あはっ☆」

生み出される漆黒の斬撃は迷いなく少女を殺すために放たれた断罪の剣閃。

しかし、少女はそれを見て笑いくるりと斬撃を撫でるように紙一重で躱した。

「みんな、脆くてつまんないから私ずっと退屈してたのーーーあなたは、壊れないでね?」

「それじゃ、この遊びをやめてくれないか?」

大剣を肩に置いて、彼は疲労の籠った嘆息を付きながら少女を見つめた。

「それじゃ、私を満足させてくれたらいいよ」

彼は彼女の言葉に先ほどより大きい嘆息を付いて、大剣の柄を両手で掴み構えた。

「そういえば聞いてなかったな。お前の名前は?」

彼の思いだしたような質問に少女も手をぽんっ叩くと愛らしい笑顔を浮かべた

「私は、十禍(とわ)だよ!おにーさんの名前は?」

少女も彼と同じように死神のように鎌を構えながら質問を返す。

「俺か?俺はーーー零崎(れいざき) 紅夜(こうや)だ」

少女と彼は互いに名前を交換して知り合いとなりーーー殺し合い(お遊び)が再開された。

 

 

 

零崎 紅夜。

彼は、いま非常に憂鬱の表情で紅い絨毯の上を歩いていた。

黄金色の天井を霞ませない様に全て計算されて飾られた美しき装飾の数々に、穢れない紅い絨毯はまるで王様でもお迎えているような気分にさせる豪華な場所だったが

紅夜はそんな意識は次元に吹き飛んでいるのかノロノロと歩き、全てを台無しにしている。

「………帰りたい」

そんな紅夜の足が止まった。

そこには見上げてしまうほどの巨大な扉があり、それは猛獣と視線を合わせている錯覚を覚えるほどの威圧感を放っている。

紅夜はめんどくさそうに自身の頭を数回掻いて放たれる威圧感を全く気にしない様子で扉の一部(・・)を開けて入室した。

「ーーー来たね」

そこには黄金の髪をした美しい男性とも女性とも捉える容姿をした人物が、机に座り腕を絡ましている。

紅夜の入ったこの部屋は丸い形をしたものを少し潰した形になっている。

潰れているのは扉の方で、室内は丸くなっておりその人物は部屋の真ん中にどこにでもありそうな机に座っており部屋の壁は全て本で敷き詰められていた。

「帰ります」

「ボク、まだ何も言ってないけど……話だけでも聞いてよ」

紅夜は誰もが見惚れてしまうほど容姿をした彼に向かって堂々と自分を偽らない心のまま発言をする。

その人物も苦笑いをしながら紅夜を静止するように指示する。

「今度はなんだ?世界の破滅を企む魔王に討伐して来いか?それとも喧嘩する神々の仲介役になれか?接近つつある巨大な隕石を消し飛ばしてこいか?」

人の都合を考えず次々と難題を押し付けてくる彼に向かって紅夜は怒りを込めて睨む。

「にゃはは、今回の任務は長いから休み休みでいいよ」

「やっぱり、なにかあるのかよ……」

意識が薄れていくほどの絶望感を味わいながら、紅夜はゾンビのようにその場でフラフラとした足取りで倒れそうになるがあるキーワードに直立する。

「待て、休み休み…だと?」

「そうだよ。今回は宿題というより依頼という実戦形式だから長い時間がいるだろうね」

「今までのはなんだったんだ……?」

「うん?買い物に行って来い的な感じ」

「………倒れていいですか?」

「今は辞めて」

オッドアイの瞳に涙を堪えながら紅夜はいままでの苦労はその程度なのかと絶望し、同時にこれから依頼される内容に恐怖する。

「ーーー逃げるが」

「ダメだよ。逃げるなんて」

「な、なん……だと」

紅夜は当たり前のように恐ろしい地獄に連れていくこの悪魔のような存在から逃げようとするが、肩を掴まれこれ以上足が進まないように絡められた。

一瞬、紅夜と彼の距離は少なくても十メートルは離れている。

それを逃げようと走り出した紅夜から座っている状態で紅夜の隣に移動した。

異能的感覚は感じられないと紅夜は感じ取り、同時にただの肉体能力だけで、この差を刹那の時間で詰められた。

なによりーーー悪魔の手からは逃げらないと諦めた。

「それでこそボクの親友だよ」

「もう、焼くなり煮るなり好きにしてくれ………」

「はーい、それじゃ好きにするね」

拘束を解除して逃げられないように服の一部を掴まれて。

さきほど、彼の座っていた机まで引っ張られる。

「それじゃ、依頼内容を言うね」

「…………」

ゴクリっと紅夜は生唾を飲み込んだ。

どんな人外魔境の地へ飛ばされるのか、最近なぜか気に入られ、盟友関係を結ばされた神族の長であり、宇宙の彼方に住む白痴の神様との鬼ごっことか思い出しただけで紅夜の全細胞は停止する。

「おーい、顔が真っ青だよ?大丈夫?」

「ダイジョウブデス、モンダイアリマセン」

全然大丈夫でないと彼は嘆息を付いた。

「あの白痴の神との鬼ごっこを比べればこれは天国に近いよ」

「マジで!?」

彼の発言と共に紅夜の全細胞が息を吹き返した。

「オマケに可愛い精霊たちが相手をしてくれるよ!」

「お、おぉぉぉ……!!!」

彼の発言に紅夜の紅と蒼の双眸から涙が零れ始める。

「どうーー受ける?」

「この零崎 紅夜!その依頼を完遂するために全力全開で頑張らさせていただきます!!!」

ハイテンションを突破した紅夜の心境は誰にも分からないだろう。

「それじゃこのゲートを通って、この先にはどこにでもありそうな町に通じていてこの封筒には君の新しい住所とか書いてあるよ」

「なっ!?そこまで用意してくるのか!?」

紅夜は驚愕した。

今までの依頼は、なにも用意されなくて更に修行という名目で武器も取り上げられその世界のお金すら貰えなく、野宿で寂しく夜を過ごした日々もあった。

なのにこれは違う、今まで味わった地獄のパターンとは全てが乖離している。

「さすが、破壊神(・・・)様。俺はこの依頼を必ずやり遂げてます………」

「にゃははは……」

親友の変貌にさすがに彼も引いてきたので、なんとか話を逸らす様に彼は拳を紅夜に向けた。

「ーーー頑張って」

彼の心配、期待それらを全て込めた声音は、紅夜の耳に響き、紅夜も真剣な眼差しになり向けられた拳に自身の拳を合わせた。

「行ってきます」

そして零崎 紅夜は彼に振り向くことなく異世界へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【友情というのは綺麗だね】

「ん?あぁ、そうだね」

突如、彼の隣で男なのか女なのかそれは声という認識しかできない声音が彼の耳に届いた。

彼もさすがにそれ(・・)の存在を明確に捉えることが出来ず不思議な気分を抱きながら答える。

【君は動かないのかい?】

「ボクが動いたらそれで終わりでしょ?それはつまらないよ」

【世界の命運を傍観して楽しむの?】

「うん、そうだよ」

くすくすと顎に手を置いて心底楽しみように彼は笑う。

彼のとなりにいる『何か』はそれをただ見るように漂うことしかできない。

彼の言うとおり、確かに彼が動けば全てが終わる(・・・)

塵も残らない、そこにいた存在すら許すことない絶対の破壊が無慈悲に全てを蹂躙していく未来しかない。

強すぎるが故の退屈。

それを晴らすのには世界一つや二つ程度の危機を小さき者が必死で解決していく物語を見ることが、この退屈を発散させてくれるだろうと彼は期待している。

「それに主人公は勝つというのは世の理だし」

邪霊(・・)の力は予測不可能なんだよ。彼にそんな怪物のような存在を倒す力があるのかい?世界はご都合主義で回るものではないんだよ】

『何か』の言葉に彼は鼻を鳴らした。

「分かっているよ。紅夜にはそれらを殺す力はある。けどね、何もすべて戦いで終わるだなんてそれはあまりにも貧相じゃないか。友情、恋愛、挫折、決断ーーーそれらのスパイスが物語は深みを増していくんだよ」

本来であるなら起きるはずのない異例の存在が現れるこの事態に対処する彼の存在、この二つがどんな物語を破壊して創造していくか考えるだけでも、彼は楽しみで楽しみで楽しみで仕方ないように両手を広げる。

【なにも感じない筈の私でも、君には恐怖を感じるよ。破壊神】

「クスっ、さぁて……話して和解、戦って殲滅、恋させてデレさせる。楽しみだよーーー心底ね」

零崎 紅夜は精霊と人間。

更に邪霊というイレギュラーが積み込まれた世界で、どんな物語を展開していくのかーーー全てはまだ始まったばかりである。

 


 
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