No.472891

超次元ゲイムネプテューヌ Original Generation Re:master 最終話

ME-GAさん

最終話です。長いようで短い第一期でした。
mk2もぜひ、応援お願いします!

2012-08-20 14:22:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1459   閲覧ユーザー数:1385

竜姿のマジェコンヌの額からゆっくりと大剣を引き抜く。ブシュッ、と音を立てて少しばかりの鮮血が迸り、そしてすぐに止む。

ガラン、と音を立ててテラは剣を地面に落とす。がくんと力を全て抜いて地面に座り込み、そしてその状況をひたすらに見続ける。

 

 

数分待っても、動き出す気配はない。

終わった。

遂に終わったのだ。

長きに渡る、マジェコンヌの陰謀も全て断ち切ったのだ。

それを理解した瞬間に、安堵の空気と、そして自然と笑みが零れてくる。

「終わった……」

ゴクリ、と息を呑み、もう一度、その現実を確認する。

全てが終わった。

世界を救ったのだ。

「ッ――!」

しかし、何故だかテラは心から喜べない。

自分たちを壊した、全ての不幸の始まりである、敵であるマジェコンヌを討ち倒すことが出来たというのに、何故だかテラは心から嬉々とすることが出来なかった。

突如としてテラの身体を襲う脱力感と、疲労感――罪悪感。全てが渦巻き、ごちゃ混ぜになって何もかもの力を奪っていく。

遂にテラの身体を支える最低限の力すらも奪い取り、テラの身体は崩れ落ちる。

「ッ――!」

声が出ない。声にならない呻きを上げてテラは地面を這う。微かに動く両腕を使って匍匐のようにゆっくりと身体を引きずって。

見かねたノワールがテラの肩を担ぎ、立ち上がらせる。

「あ、りがと――」

掠れた声でテラはノワールに告げる。ノワールはテラの右足の傷に一度視線を向けた後にコンパについと映して

「コンパさん? 悪いけどテラの治療してあげてくれる?」

と声を掛けた。

コンパはテラの方を向き、全身を軽く眺めた後に医療バッグを抱えてテラの元に歩み寄る。

いつの間にか、先程の屋敷の中に景色が映っていた。近くの壁に寄り掛かりテラは黙って右足を出す。

怪我はそこまで深くないらしい。コンパが軽く傷薬を塗って包帯を取り出した。

――のはよかったのだが。

「あー、こんぱ! こんぱは包帯巻くの苦手なんだから大変なことになるよ!」

と、ネプテューヌの言葉でテラは思い出したように微かに首を揺らした。旅路の途中で怪我をすることは多岐にわたってあったのだが、最初期にコンパに包帯を巻かせると大変なことになったと今更ながらに思い出したのである。

僅かに微笑を携えてテラはそんな過去の記憶に思いを馳せる。

いつの間にか、傷の手当てが終わっていたらしい。

知らぬ間に消え去っていた脱力感を不思議とも思わずにテラは壁に手をついて支えにしながらゆっくり立ち上がる。

「これで、何もかも終わりなんだな」

ゆっくりと彼女たちを見据える。

そう、全て終わってしまったのだ。

思えば、彼女たちはマジェコンヌを倒すという共通の意志の元に集まった。その目的が達成されてしまった以上、もう共に過ごすことは出来ない、とテラは感じていた。

その現実を認識すると共に、次第に胸の内に悲しみが湧き起こる。

マジェコンヌを倒し、嬉々とするネプテューヌやコンパの傍らでブランはいつも以上の不機嫌そうな表情を浮かべていた。

「ブラン……?」

「……マジェコンヌは倒した。けど、これからどうするつもり?」

おおよそ、最後の敵を倒したという最大の目的を達したモノの発言とは思えないほどの事態にネプテューヌはキョトン、と首を傾げる。

「どういうこと?」

「マジェコンヌを倒したって、モンスターが消えたワケじゃない。疲弊した大陸だってすぐに戻るわけでもないでしょ……?」

はた、と一同は気付く。

そう、それは守護神だからこそ抱える問題だった。大陸を率いる彼女たちからすれば、これはまだ第1段階。国を安定させて、元の姿に戻すまで――まだ安心できない事案なのだ。

何も分からないテラには、理解しがたい事柄ではあった。ただ、同じ守護神としてかかえる問題としては理解の出来る事柄でもある。

「……ハードのチカラをつかえば、モンスターをけしさることはできますよ?」

いつぞやに投げかけた思考を、イストワールはもう一度投げかけた。

しかし、やはりネプテューヌの答えは変わらないらしかった。

「だから、そんな卑怯なやり方ダメだってば!」

「そうも言っていられませんわ。今、こうしている間にもモンスターの被害で苦しんでいる人はいますのよ? それを放っておけるわけないですわ」

ベールにそう言われてたじろぐ。確かに、下界に住まう人々のことを考えればそう成り得る事態である。

「じゃあ、リーンボックスのモンスターだけ消しちゃえばいいんじゃない? 他の大陸のモンスターは私達が何とかするし」

「何ソレ? 私達も参加する系なの……?」

ノワールは呆れたように発言する。ハア、と少しばかり大きめの溜息を吐いて再び口を開く。

「悪いけど、私もベールに賛成ね。モンスターを消せるのなら簡単な方がいいわ」

「む……」

ネプテューヌはブランにチラ、と視線を向けるが発言しようとしたのを遮ってテラは声を上げる。

「ブランはどっちでもいいんだよな?」

その問いにこくんと小さく顔を頷かせる。

「モンスターが消えるのならどっちでも……」

と、そこでテラは思い出したようにコンパに視線を向けて疑問を投げかける。

「コンパの学校はモンスター被害で休校なんだよな?」

「はいです」

「……つまりモンスターが収まるまで休校ってことよね?」

アイエフが確認するようにそう投げかける。コンパはこくりと頷いてにこやかに答える。

「だからモンスターさんがいる限り、ずっとお休みです!」

嬉しいのか……とテラとアイエフは思ったが、微苦笑を携えてテラは言いにくそうに切り出した。

「あのさ、休校ってコトはいつまで経っても授業がないってコトで……」

「はいです」

「つまり、それはいつまで経っても卒業できないワケで……」

そこまで言って、ようやく事態が飲み込めたらしい。ゆっくりと瞳に涙を溜めて、涙声で答える。

「じゃ、じゃあ……私はいつまでたってもオトナになれないってコトですかぁ……?」

「う、うん……。そうなるのかな……?」

テラは少しばかり言葉を濁したが、だいたい的を得ている。

そんな状況を横から見ていたネプテューヌは意を決したように頷く。

「うん、コンパが卒業できなかったら大変だよね。私、やっぱりモンスター消しちゃうよ」

ネプテューヌは微笑を浮かべてそう答える。

イストワールは5人の守護神を見回して再確認するように口を開く。

「では、みなさんのチカラでモンスターをけしてもいいですね?」

一同がこくんと頷き、イストワールは光を発しながら本の形態に直る。

『では、皆さんの手を私に添えてください』

イストワールの指示通りに全員が右手を添える。

『そして念じてください、モンスターを消し去る――と』

全員が、目を閉じて一斉に願う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5人の周りから光が起き、コンパとアイエフは思わず目を瞑る。少しばかりに旋風が巻き起こり、そして光はここ一番の輝きを振りまく。

 

 *

 

テラはそっと目を開く。

いつの間にか元の人の形態に戻ったイストワールがにこやかに微笑を浮かべている。

「せいこうです。セカイからモンスターはきえさりました」

「そっ、か……」

テラは安堵したような声を上げてイストワールから手を離す。

確かに、感じていた肌にまとわりつくような邪気が消え失せたようにも感じられた。

「これで、ホントに終わりか……」

テラは寂しそうにポツリと呟いた。

そして一同に視線を向けて問い掛ける。

「みんなは、この後はどうするんだ?」

テラの問い掛けに全員が目を伏せる。何となくテラの質問の真意が分かっているのだろう。

少し遠慮がちにノワールが口を開く。

「そうね……私はラステイションに帰って女神を続けるわ。やり残したことも沢山あるし、ね……」

それに呼応するかのようにベールも頷く。

「ええ。私もまだ女神としての仕事をやりきっていませんわ。だから、これからも――ね」

ブランもひととき目を閉じてから決意の秘めた声で呟く。

「私も、女神としてやらないといけないことがたくさんあるから……」

テラは小さく「そうか……」と呟くとネプテューヌに視線を向けた。ネプテューヌは何とも言えない曖昧な表情を浮かべている。

「だよね……私にも女神様としての役割があるんだし……」

しかし、未だに女神としての自覚を飲み込めていない彼女としては、これは重い選択であったかもしれない。

それでも、全てを吹っ切ったように明るい声で答えた。

「うん、私も女神様として頑張るよ!」

その答えを聞いて納得した表情を浮かべ、コンパに視線を移す。

「私は、看護学校に戻るです。いっぱい勉強して、立派な看護士になるです!」

テラは何度も頷いてコンパの頭を軽く撫でた。最後にアイエフをチラと見る。

アイエフも分かったように頷く。

「そうね、私はもう少しギルドに所属するわ。私達ギルドの人間が、ただの異端者集団じゃないってコトも証明していかないといけないしね……」

少し悲しそうな表情を浮かべて、アイエフは答えた。心配そうな表情をしていたテラだが、アイエフの次第に決意に満ちていく表情を見て安堵の息を漏らした。

皆、少し心配ではあるが自分が気に病むような娘たちではない、きっと自分たちの意志で歩いていってくれる――そう思い、テラは安堵した。

しかし、テラ以外の少女達が気になることはどちらかと言えば自分たちのことではなく彼の動向なのである。

ネプテューヌが何の包みも隠しもなく単刀直入に問う。

「テラはこれからどうするの?」

「……う」

少なくとも、テラはもう士官生ではいられない。何故なら彼が『鬼神』であるからだ。

それを認める以上、他の守護神同様に己の役割を全うしなければならない。それに――彼自身、もう士官校には戻れない、と感じていた。

ギルバを、殺したのだから、己の手で――。

きゅっ、と彼を貫いた右手を握る。未だに手の内に残る生々しい感触。血が滴り、肉を抉る不快――それでいて、快感をつかみ取った鬼神の思いを……。

テラはしばらく目を瞑る。大きく息を吸って吐いて、の深呼吸を繰り返し、そして目を開く。

「俺は――しばらく一人になろうと思う」

テラの答えに少女達は驚愕した。

何処かに、共に生きたいという思いがあったのかもしれない。いや、恐らくここにいる少女達全員が、そう願っていた。

テラとて、そう思っていなかったわけではない。長らく共に旅をしてきた仲間、数百年の時を越えてようやく出会えた家族、共に過ごしたいという欲がないと言えば、それは嘘となる。

「別にみんなのことが嫌になったワケじゃない。前にも言った通り、俺はみんなのこと好きだよ」

テラが全員に微笑を見せる。

「だけど、俺にもやらないといけないことがあるって分かったんだ」

『己の大陸』のこと、己の為すべきこと、己が在るべき場所、マジェコンヌと死闘を繰り広げる中で、テラは感じた。

贖罪、いや役割か――己の役割は人々を絶望から救い出すこと、そう分かってしまったのだ。

だから――。

「俺は、みんなといられない」

前にも言ったであろう言葉を繰り返す。

けれど、そこには以前のように突き放すモノではなかった。己の運命を受け止め、そして理解して、思案した上にテラはそう言い放った。

「みんなにはみんなの役割があるし、俺にも俺なりの役割がある」

テラ、鬼神が絶望を集める存在だとすれば、それと対となる女神達は希望を集める貴ぶべき、綺麗な存在でいなければならない。

「俺なんかが関わったって、下界の人達に示しが付かないだろう?」

もし、己がマジェコンヌを打ち倒すことに協力したことが知られれば、己に集められるのは絶望ではなく、希望。

では、行き場を無くした人々の絶望はどうなる?

ぶつけるモノもない、心の内に積もり、積もって破裂してしまう。そうなればきっと世界は別の意味で崩壊してしまうだろう。

テラはそれを危惧した。

彼女たちもそれが分かっていた。

「だから、俺は汚いままでいい。事実は、ここにいるみんなの心の中にだけあればいい」

それは、きっと悲しいこと。

たった一人、全ての人々からの絶望と孤独に向かい、戦わなければならない。

それが、テラの使命だから。

「俺は、ひっそりと生きられるならそれでいい」

世界を影で支えるもう一人の守護神。それは、いまや在るべき存在。

「みんながいる世界で共に生きられるならそれでいい」

それ以上は何も望まない。望めない。

日陰者でもいい、それで共に歩んでいけるのなら。

 

 

 

 

 

 

 

「みんながいるこの大好きな世界で生きられるのなら、それがいい」

 

 

 

 

 

 

 

 †

 

世界なんてつまらない。

世界なんて嫌いだ。

そう思っていたはずなのに。

 

何故なら、皆は彼を否定するから。

絶望という肯定で、彼を否定していたから。

 

『みんな、俺のことなんて嫌いなんだ』

 

いつしか、そう思うようになっていた。

子供なりの思いこみであったかもしれない。

しかし、そう思うのも当然と言えば当然であったのだ。

愛を知らない、何も知らない、真っ新なデータのように生まれた鬼神にとってそれは当たり前、愛されない、嫌われた、ごくごく自然なシステムだ。

 

『うわべだけの愛なんだ』

 

心の隅で、そう思っていた。

へし折られた彼にとって、当たり前であった。

テラは心から、家族の中で幸せを感じていた。しかし、心の更に、更に奥底でそんな思いがあったのだ。

 

『信じていても、いつかきっと裏切られるに決まってる』

 

『だって、みんな俺のことが嫌いだから』

 

『俺の悲しんだ姿を見て喜んでるんだ』

 

だって自分は世界から嫌われているのだから。

鬼神は膝を抱えてその中に顔を埋めた。

耳を塞いで、外界からの情報を断って、何もかもを否定した。

 

――否定したかった。

 

 

それなのに

 

「それは――違う」

 

『ッ――!』

 

 

 

 

「みんな、貴方のことが好きですよ……」

 

声。

大好きな声。

初めて自分を護ってくれた声。

 

『ッ――!』

 

涙を零した。

泣かないと思っていた。

泣いてはいけないと思っていた。

完全な神だから。

そう言われてきたから。

けれど、泣いた。

嬉しかったから。

好きだから。

楽しかったから。

 

『ゴ、メン……ごめんな、さい……』

 

光の中から差し伸べられる手を躊躇いなく掴む。

彼女が常に浮かべていた微笑、それだけが鬼神を安心させた。

 

『テラ、ありがと――』

 

 

 

 

――鬼神は、昇華した。

 

 

 

 

 

 

 

テラも鬼神も、一つ、

 

世界が、好きになれたのだ――。

 

 †

 

 

 

 

 

 

 

かくして――

世界を混沌に陥れたマジェコンヌの野望はマジェコンヌ本人と共に打ち砕かれた。

 

魔王、ひいてはマジェコンヌを信仰していた異端者達は『とある人物』の意志により厳重注意、及び定期監察の処置が下されるのみであった。

 

モンスター被害により、各大陸に甚大な被害、損害が出たものの、人々はそれでも生きていく。女神達が振りまく『希望』を信じていたから。

そして『絶望』を糧に人々はまた立ち上がることが出来たから――。

 

そして、女神と共にマジェコンヌの野望に立ち向かった『一般人二人』の名はしばらく世間を馳せ、そして人々に勇気を与えた。

 

 

 

ただ、

 

 

 

彼女たちと共にマジェコンヌに立ち向かい、そしてマジェコンヌを打ち倒したもう一人の守護神がいたことは誰も知らない。

 

その守護神の名は今も陰に隠れ、そして陰ながらに世界を、人々を支え続けているということも、誰も知らない――――。

 

 

 

………………。

 

…………。

 

……。

 

 

 

物語は『新たな世代』へ――。

 

きっと、また出会えると少年は信じていたから。

 

そして、今もまた、信じ続けているから。

 

 

 

 

「――ん」

少年は上体を起こし、ベッドから立ち上がる。

日光を遮っていたカーテンを勢いよく開き、にっこりと満足のいったような表情を浮かべて差し込む朝日を眺める。

「よし、いい朝だ!」

少年はコートを引っ掴み、意気込んだ表情で玄関へと向かっていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『超次元ゲイム ネプテューヌ Original Generation』

 

~To be continued…

 

 

 

 

 


 
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