翌日、第59管理世界付近の次元空間にてなのは達を乗せたツュッヒティゲンの拠点にしている艦船、ディメルニアには各々が準備をしていた。
さほど準備することではないのだが、そろそろ第59管理世界へと向かうので最終確認みたいなものである。
そしてなのはは自分の一室で一つのデバイスと一つのロストロギアを見つめていた。
レイジングハートに関してはなのはが魔法少女になってからずっとなのはのデバイスで、最初の頃はレイジングハートにいろいろと教えてもらっていた。
かなり愛着があるといっていいデバイスであるが、どうしてレイジングハートをなのはが使いこなせたのかという理由を知ってからは少し複雑な気持ちでもあった。
「……レイジングハート、ちょっといい」
〈マスター?〉
「レイジングハートは、私が魔法を手に入れたときから聖王の末裔だと知っていたんだよね?」
〈……はい。ですが、何事もなければ黙っているつもりでした。マスターが管理局を離脱し、管理局の実態を知らされるまでは〉
まぁ、聖王の力をむやみに教えるものではないだろうなと、なのは思った。
「正直、管理局の実態を知った時は驚かされよ。まさか、私が所属していた管理局が違法研究を促進させていたなんて……」
〈だがそれが、マスターの意志を変えるきっかけにもなりましたね〉
「うん。私は管理局を崩壊させるというところまではさせなくても良いと思っているけど、管理局の統制の仕方は変えなければならないと思う。たとえそのことが手を赤く染めようとも、誰かがやらないといけないことだから」
〈……やはり、マスターには力を授けてもよろしそうですね〉
「ありがとう。レイジングハート。そして今までついてきてくれて」
なのはは今までの事を振り返り、心からレイジングハートに感謝するのだった。
今のなのはがいるのはレイジングハートのおかげでもあるし、魔法を手に入れてからいろいろな事が変わっていった。魔法のおかげでフェイトとはやてにも知り合う事も出来たし、何より自分がやりたいことを見つけられた。
だからこそ、今まで騙していた管理局が許せないでいたのである。正義感があって今まで管理局に働いていたのに、裏切られたのだから。
そしてなのははレイジングハートとテュディアを持ち、みんなが集まる場所へと向かうのだった。
----
第59管理世界、少し前にもふれたがここはシルフィア姉妹の生まれ故郷であり、管理世界と言いながらも自然が多くて科学技術が進んでいるようには見えない場所でのどかな世界だった。
空気もかなり澄んでおり、本当にここが管理世界なのかと思うぐらいの世界であった。
「ん~ やっぱり故郷は良いわね。空気がかなり澄んでるしね」
第59管理世界に着いて早々、デュナは両腕を上に伸ばしながら言うのだった。
デュナはツュッヒティゲンの仲間になる以前もよく故郷に戻ってきていたりしていたのだが、それでも戻ってくる度にそう思っていたりするのであった。
「……お母さん、私の事心配してないかな?」
その一方でリィナは四年間も研究所に閉じ込められていたので、久し振りに戻ってきた自分の故郷を見て、そう思ってしまったのである。
だがその言葉を聞いたデュナはその心配は必要ないと言うのであった。
「それは大丈夫よ。リィナが誘拐された事については私しかしらないから。あまり心配を掛けないためにも、リィナは数年間仕事で忙しいからと伝えてあったの。まぁ、久しぶりに帰ってきたから喜ぶかもしれないけどね」
「そこまでしてくれたの?」
「うん、あまり親には心配されないようにと思ってね。やんない方が良かった?」
「ううん、ありがとうお姉ちゃん」
リィナは自分が誘拐されたのを知って、デュナがいろいろと手を回してくれた事にありがたいと思うのだった。
その様子をなのは、フィルノ、アリシアは見ていたが話しに入らない方がよさそうだったので何も言わなかった。ちなみにエメリアはディメルニアにて待機している。
それからシルフィア姉妹は今までのんびりと話せなかったのもあってか、二人で戯言なども含めた会話を繰り返すのだった。
「そろそろいいか? 管理局には気づかれたくないからなるべく早く終わらせたいのだが」
「あ、ごめん」
そして大体切が良いところでフィルノが二人の話しの間に入り、シルフィア姉妹は会話を止めるのだった。
「それで、目的地は一体どこにあるんだ?」
「その事なんだけど、一度私たちの家に行かないと正確な場所は分からなくて。私たちでも一応できるのだけど、今はまだお母さんが担っているから」
「なるほど。それじゃあまず行く場所はシルフィア姉妹の実家か」
「そういうこと。場所はここから少し歩いたところにあるから」
それからデュナを先頭に歩いて行き、目的地であるシルフィア姉妹の実家へと向かうのだった。
歩いて行くうちに先ほどまであった町から離れていき、森林の中にある道をただ歩いて行くのだった。
一体どこに家があるんだろうとシルフィア姉妹以外が思っていると、それを察したデュナが答える。
「私とリィナの家は周りが木々で覆われてて上空からでも確認できないようになっているの。だからこうやって歩いて行かないといけないし、この道しか行ける道はないの」
「それはシルヴェルン家の末裔だと他人に気づかれないようにか?」
「多分そうだと思うけど、詳しいことは親も知らないらしいの。さて、そろそろ着く――」
デュナが前に顔を戻した瞬間、突然足が立ち止まるのだった。
そしてすぐに後ろにいた全員に声を小さくして言い放った。
「全員、周りの森林の中に隠れてっ!! なぜか家の玄関でお母さんと管理局員が話してるっ!?」
その言葉に全員が納得し、ばらばらになってそれぞれ管理局員に気づ荒れないように森林の中に隠れていくのだった。
全員隠れ終わり、シルフィア姉妹の母親と管理局員の様子を全員隠れながら見るのだった。
どんな内容を話しているのかまでは分からなかったが、多分シルフィア姉妹についてだろうとなんとなく思った。そうでなければこんなところに管理局員が来ることなんてないからである。
そして話が終わって管理局員が帰ろうと振り向いた。
「っ!? あいつはっ!?」
だが、その管理局員の顔を見て、フィルノは目を大きく開けて声を抑えながらも驚いていた。
フィルノが驚いていた理由はここに来ていた管理局員の一人を見てであった。
それは両親を逮捕した張本人であり、フィルノが一番恨んでいると言っていい人物であったのである。
彼の名前はヘレスナ・リュベル一等陸佐。なのはやフェイトほどではないが、管理局員の中では知らない人は居ないというほどの有名人。彼の功績はフィルノの両親も含めて良く、任された任務には確実に成し遂げる男性である。
彼のような魔導師になりたいと思う人物もおれば、逆に性格が合わないと嫌っている人物も多い。なのはやフェイト、はやてなどは後者に含まれていたりしており、少々過激な部分があるのである。
そしてリュベルがもう一人の管理局員と一緒にこの家から見えなくなると、なのは達は森の中から出てきて集まってくるのだった。
「どうして、奴がここにいるんだ?」
「フィルノ君、もしかしてリュベル一等陸佐の事を知っているの?」
フィルノはなんでリュベルがこんなところにいるのかと思い、ついそう呟いてしまった。
なのははフィルノが驚いていたところを見ていたので、それから管理局員を見ていると管理局員の片方がリュベルであったので、もしかしてフィルノはリュベルについて何か知っているのかと思ってについて聞いてしまったのである。
「あぁ、俺の両親を逮捕したのは奴だ。当時あいつは執務官で両親に冤罪をかけた本人だよ。それ以外にも奴に関してはいろいろと縁があるのでね」
「そうだったんだ」
「まぁ、今はその事よりシルフィア姉妹の親に会って場所を聞かないとな」
そう言ってフィルノ達はシルフィア姉妹の実家の玄関に向かうのだった。
Tweet |
|
|
1
|
0
|
追加するフォルダを選択
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
続きを表示