婚礼まであと二日
「目の届きにくい場所を中心に探して見ましたが、特に異常は見当たりませんでした」
「そうか。って事は前もって罠を仕掛けてる訳じゃなさそうだな・・・・・・」
昼前、一刀は明命を連れて、街を歩いていた。
麗羽はと言うと、華琳との邂逅の後すっかりへそを曲げてしまったのだが、一刀が一晩頑張ったおかげで、現在は気持ちよさそうに寝ている。
それゆえに、一刀は少々やつれぎみである。
「大丈夫ですか?コーチ?」
「・・・・・・あんまり大丈夫じゃないな。このままじゃいかん。どこかで精のつくものでも食って、二日後に備えないと・・・・・・」
そう言いながら、一刀は通りにある店を見て回っていた。
その途中、
「もうちょっとまけてよおじさん。もう少しまけてくれたら買うから・・・・・・ね?」
「はあ・・・・・・仕方ねえな。いいぜ姉ちゃん。半額で売ってやるよ。持ってけ泥棒!!」
「おじさんありがと!・・・うふふ。いい買い物しちゃったわ」
酒屋からほくほく顔で出てくる女性と鉢合わせした。
そう、彼女は・・・・・・
「しぇ、雪蓮様!?」
「・・・・・・明命?貴方、何でこんな所にいるのよ。袁紹の所でこきつかわれてたんじゃないの?」
「え、ええと・・・・・・」
言いよどむ明命。
そこに一刀が助け舟を出した。
「今もこきつかわれてるよ。現在は護衛の一人として使われてる所だ」
「ふうん・・・・・・ていうか、貴方はだ・・・・・・」
雪蓮は誰かと聞こうとしたが、途中で言葉を切り、一刀を上から下へ、じっくり眺めた。
「・・・・・・何だよ。そうやって観察されるのは、あんまりいい気分じゃないぞ?」
「そうね、ごめんなさい」
一刀の言葉に、雪蓮は眺めるのを止めて謝った。
「貴方からなんだか懐かしい感じがして、つい・・・・・・ね。それで、名前は何て言うの?」
「北郷一刀。一刀と呼んでくれ」
「一刀ね。私は孫策。袁術の下で客将やってるわ」
雪蓮と一刀は互いに自己紹介をする。
「それで、その一刀は何で明命と一緒にいるのかしら?袁紹の関係者?」
「ああ、袁紹の補佐・・・・・・ってところか」
「ふうん・・・・・・」
それを聞いて、雪蓮の目が少し細まる。
「ねえ一刀」
「何だ?」
「袁紹はいつになったら明命を返してくれるのかしら?明命はうちの重要な将の一人なんだから、いつまでもそっちにいられたら困るんだけど・・・・・・」
「あと少しだと思う。確実な期日までは分からないけどな・・・・・・」
「そう」
一刀の言葉に雪蓮はそれだけ言うと、一刀たちに背を向けた。
「もう戻らないと。冥琳に黙って出てきちゃったしね・・・・・・明命」
「は、はい!」
「早く帰ってきなさいよ。みんな待ってるからね」
「は、はい・・・・・・」
背を向けたまま手を振って去って行く雪蓮。
「・・・・・・」
明命は無言で、その後姿を見つめていたのだった・・・・・・
婚礼まであと一日
一刀は一人で大通りを歩いていた・・・・・・のだが
「かっずとさ~~ん!!」
その声と共に、いきなり誰かがドーン!と一刀の背中にぶつかってきた。
背中に柔らかな感触が伝わる。
「うお!?」
一刀は驚き、背中越しにぶつかってきた人物を見る。
「もう!遊びに来てって言ったのに、ちっとも来てくれないんですから・・・・・・」
その人物とは、桃香であった。
そのまま一刀をホールドし、背中に大きな胸を押し付けてくる。
「色々忙しかったんだよ・・・・・っていうか、一人なのか?」
「いえ、愛紗ちゃんと鈴々ちゃんも一緒だったんですけど、鈴々ちゃんがはぐれちゃって、愛紗ちゃんと手分けして探してた所だったんです・・・・・・」
一刀をホールドから解放し、てへへと舌を出す桃香。
「ところで一刀さん。月ちゃんの事ですけど・・・・・・」
「その事なら心配すんな。既に奪還作戦は立ててある。後は明日になるのを待つだけだ・・・・・・」
「本当ですか?・・・・・・くれぐれも月ちゃんの事、お願いしますね。私に出来る事があったら・・・・・・」
「大丈夫だから任せとけ・・・・・・ところで、鈴々の事はいいのか?」
「あ!そうでした・・・・・・あの、一刀さんも一緒に探してくれません?」
「・・・・・・いいけど」
「やった!それじゃあ行きましょう」
そう言って、桃香は一刀の腕に自分の腕を絡めた。
「おい・・・・・・人探すのに腕組む必要ないんじゃないのか?」
「まあまあ、細かい事は気にしないで行きましょう」
ご機嫌な様子で一刀の腕を引く桃香。
やれやれといった感じで、一刀は桃香と歩き出す。
ちなみに同じころ、愛紗は屋台で特大ラーメンを食べていた鈴々を見つけ、ラーメンを平らげた鈴々と共に、桃香と合流すべく街を歩いていた。
その後、ほとんどデートの様相を呈していた一刀たちに、鉢合わせした愛紗のカミナリが落ちる事になるのである・・・・・・
一刀たちが愛紗から説教を受けているころ・・・・・・
「断じて断る!」
宮廷内の一室で、あるいざこざが起こっていた。
明日の婚礼に使う作戦について説明する干吉に対し、左慈が異議を唱えたのだ。
「しかし、これが考えうる限り一番有効な作戦なのですよ?左慈」
「黙れ!何故俺がそんな事をしなければならん!百歩譲ってその作戦が有効だと認めたとしても、俺がその役をやる必要性がどこにある!!」
「おや?ならば北郷一刀が貴方以外の手にかかって、それで貴方はすっきりするのですか?片目まで奪われているのに・・・・・・」
「ぐむ・・・・・・」
干吉の言葉に、左慈は口を噤む。
確かに、出来る事ならやつは俺の手でやりたい!・・・だが、こいつの策は死ぬほど嫌だ!
左慈はそう思っていた。
「多少成功率が低くても構わん!他の作戦にしろ!!」
「そうは言っても、この作戦の準備しかしていませんし、やるなら確実性のあるほうがいいではありませんか・・・・・・」
「・・・・・・」
左慈はすごい目で干吉を睨んでいる。
「正直、貴様の趣味だとしか思えんのだが・・・・・・」
「否定はしませんが・・・・・・ならばこうしましょう。この作戦が失敗した時には、私の管理者としての力の全てを貴方に移します。そうすれば左慈。貴方は管理者二人分の力を持つわけですから貂蝉や卑弥呼、ましてや北郷一刀など敵ではなくなるでしょう・・・・・・いかがです?」
「・・・・・・」
左慈は目を閉じ、悩んだ。
悩んで悩んで、そして、
「・・・・・・いいだろう。だが覚えておけ。もし失敗して貴様の力を全て奪ったあかつきには、貴様をちり一つ残さず消し去ってやるからな!!」
そう言うと、左慈は部屋を出た。
バン!と扉を力任せに閉めると、ずかずかと廊下を歩いていく。
そして残された干吉は・・・・・・
「あらかた準備は整いましたね。後は、最後の仕上げを・・・・・・ふふふ」
そう言いながら、不気味な笑顔を浮かべるのだった・・・・・・
どうも、アキナスです。
随分と引っ張りましたが、ついに次回が婚礼の当日となります。
左慈と干吉の策(主に干吉の策ですが・・・)に、一刀の策。
二つの思惑が交差する中で、果たして何が起こるのか?
すべては次回ではっきりします。
それでは次回に・・・・・・
「リモコン下駄!!」
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婚礼まであと・・・・・・