No.470827

東方西行寺兄録 其の三『再会』

春風さん

東方西行寺兄録の其の三です。

2012-08-16 02:40:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2225   閲覧ユーザー数:2181

 

幽希が白玉楼に向かう頃、先ほどに幽々子に絵を渡した魔理沙は博麗神社に戻り霊夢に先ほどの幽々子が兄を知らない様にみえた事を霊夢に話している。

 

「なんか自分に兄がいるというのを知らないようにみえたぜ」

 

「いくらなんでもそれは無いでしょ。だって自分のお兄さんなんだし」

 

それを言った時、ふと霊夢の脳裏に先ほどの幽希が言った『1000年程前になる』と言う言葉を思い出した。そして魔理沙にその事を話す。

 

「そういえば幽々子のお兄さん、1000年程前になるとか言ってたわね。それに幽々子の居場所も知らない様にみえたし、でも、それでも自分の兄を忘れてしまうものかしら?」

 

「霊夢、わかったぜ!。恐らく幽々子は兄を忘れていたんじゃなくて、兄が長いこと別れていたから忘れたふりをしてたんじゃないか」

 

霊夢はその言葉に半分あきれた様な表情になりジト目で魔理沙を見ている。

 

「幽々子が忘れたふりをしてるだけなら、なんでお兄さんが居場所を聞いたりするのよ。それともお兄さんも忘れたふりをしてると言うの?」

 

「・・・たしかに私の言ったのじゃ、兄さんが忘れているのはおかしいな」

 

『私もそれは気になるわね』

 

突然、魔理沙と霊夢のいる所に紫がスキマを開けて姿を現した。二人は紫の方を向く。

 

「紫、聞いていたの」

 

「ええ、少しだけ聞いていたわよ。先ほど幻想郷に来た西行寺幽希の話をね」

 

「・・・どこで名前を聞いてきたのよ?実際に本人にでも会ってきたの」

 

紫はコクっと頷く。そしてスキマから出て魔理沙の隣の座布団へと座る。

 

「つい先ほどね。冥界の場所が分からない様に見えたから私が教えてあげたのよ」

 

その言葉にますます霊夢と魔理沙は考えさせられる表情になる。それは何故幽希が冥界を知らないかによるものだ。そして考え終え魔理沙が紫に話かける。

 

「その言葉だと1000年前には幽々子は冥界にはいなかった事になるぜ」

 

「だとすると、お兄さんが知っていた幽々子の場所とは幽々子の生前の場所?」

 

霊夢と魔理沙は紫の方を向く、紫は『わかったようね』という感じで二人を見てる。そして立ち上がりスキマを開けるところで紫が二人に一言語りかける。

 

「貴方達が前に解決した春雪異変。それが再び起こらない事を願っているわ。それは貴方達のためであり、一番に幽々子のためでもあるからよ」

 

それを言って紫はスキマへと入って行きスキマを閉じた。

 

無音の時間が流れる。掛けている時計の音だけが聞こえるこの場所で二人は先ほどよりも真剣な感じで考えている。そして暫くの時間が過ぎた頃、二人は互いに話かける。

 

「兄さんが幽々子と会うということが異変に関係するのか?」

 

「最後に言った『幽々子のため』というのが分からないけど、もしそれであの異変が再び起きるならこのまま黙っている訳にはいかないわね」

 

「行くか」

 

「そうね」

 

魔理沙と霊夢は部屋を出て博麗神社を出た。この後、二人にとってとんでもない真実が待ち受けているとも知らずに。そして二人が冥界へと飛び立ったあとに紫が神社の祭壇から姿を現したのも恐らく二人には分からないだろう。

 

「幽々子・・・」

 

 

 

 

白玉楼の客室に一人座る幽希は妖夢に淹れて貰ったお茶を左手に持ち幽々子が来るのをじっと待っている。

 

幽希は天井を見ながら1000年前の事、つまり幽々子が生きていた頃の記憶を思い出す。でも何故か記憶の中に封じ込めたあの西行妖の記憶しか思い出せない。

 

「私がもっと早くに気づいていれば・・・。あの時に幽々子は・・」

 

途中にフスマが開いた。幽希は幽々子が来たかと思ったが来たのは妖夢一人だった。

 

「幽々子さまはまもなく来ます。その前に私に少し教えてください。貴方は幽々子さまの何にあたる人なんですか?」

 

「私の名前は西行寺幽希。それを聞けば恐らく貴方にも分かるはずです」

 

「幽々子さまの血族の人!?」

 

妖夢は一瞬だけ冷静さをなくした表情になる。そして幽希にさらに聞く。

 

「でも、幽々子さまは兄はいないとおっしゃってましたよ。でも私は貴方が嘘を言っていないのはわかっています。念のため聞きますが、貴方が幽々子さまのお兄様でよろしいのですか?」

 

「お兄様なんて言わないでください。幽希でいいですよ。ところで幽々子が私の事を知らないというのは一体どういう事ですか?」

 

「・・・それは私にもわかりません」

 

『まさか、本当に私の兄なの』

 

突然、幽々子の声がした。

 

その言葉が幽希の耳にはいったとき幽希の時間が一瞬止まった気がした。そしてゆっくりと声の方を向き幽希はその姿を確認する。

 

「幽々子・・」

 

どう言葉に表していいかわらない思いが心の中を走る。ただその姿を見て過去の記憶が鮮明に洗い流されるそんな感じがする。

 

幽希はあの時の記憶、幽々子を守ることができなかった事について幽希は幽々子に語りかける。

 

「幽々子、あの時は本当にすまなかった。私がもっと早くに気づいていればお前を庇ってやれたのに・・・」

 

だが幽々子には何を言っているのかわからない様に見える。考えている素振りも見えない。

 

「・・・何を言っているのか私にはわからないわ。それに私は貴方を完全に認めた訳じゃないのよ。もし本当に貴方が私の兄ならその証拠を見せなさい」

 

「・・・!?。幽々子、まさか生前の記憶がないのか?」

 

「私は証拠を見せてと言ったのよ。無理なら貴方は私の兄でもなんでも無いということになるわね」

 

幽々子は妖夢を連れてそのまま部屋を出た。幽希は余りのショックの為に言葉を失ってしまった。

 

 

 

 

客室の外、幽々子と妖夢は何かを話している。

 

「妖夢、今すぐに中にいる人を切りなさい」

 

「幽々子さま!?待ってください。どうしたのですか、あの人に会ってから急に人が変わったように感じますよ」

 

「妖夢、これは私のたのみよ」

 

妖夢はすごく困った表情で楼観剣の方に手を持っていく。

 

だが、妖夢は手をつけず幽々子に一言だけ呟く。

 

「幽々子さま、一度あの方を西行妖の前に案内してもよろしいですか?もしそこで幽々子さまが前におっしゃった事と違う事を言った場合、私がたしかに手をくだします」

 

「・・・わかったわ。あとは妖夢にまかせるわね」

 

そう言って幽々子は自分の部屋の方へと歩いていった。それを見る妖夢の表情は何か悲しげな感じがしたのは気のせいなのだろうか。

 

妖夢はフスマを開けて幽希のいる部屋へとはいる。そして幽希に案内をする様に妖夢は幽希に話かける。

 

「ちょっと見せたいものがあります。着いて来てください」

 

幽希は妖夢のあとに続き西行妖のある所へと歩いていく。幽希にとって一番に封じ込めた過去が蘇るであろう西行妖の所に。

 

 

 

 
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